【アイマス】陽だまりの隣【はるちは】

前回の投稿分、意外とダメージが大きかったです（主に、私の）
まぁ、あの別れ方ならありなのかなって、ちょっと思いましたけど。千早ちゃんが救われねぇ！
というわけで、if扱いにして、気にせず続けます。

しかし、最近はどうにも、百合っぽさが少ない気がします。大きな問題ですわ。

　自分に出来ること、自分だけで出来ること。

　自分には出来ないこと、自分だけでは出来ないこと。

　どちらを理解する方が、この先にとってのプラスとなるのだろう？

　努力とは、何を生む為に行われるのだろうか？

　

　

　　　　　陽だまりの隣

　

　

　彼女の隣は温かい。傍にいるだけで安心させてくれる。

　彼女の隣は優しい。傍にいるだけで、私を笑顔にしてくれる。

　そんな彼女に御礼をしたいと考えるのは、至極当然のことであり、日頃からお世話になっている分だけ大きくなったとしても、問題にはならないでしょう。

　それなりに名前を知ってもらえる、そんな立場となった今なら、以前とは違う形での御礼も可能で、ある程度の願いなら叶えられると、過去の私は意気込んでいたと言うのに。

「ねぇ、春香。本当にこんなことで良いの？」

　洒落たことを言ったり、格好を付けた言葉で誘導するなんて、私には出来ない。含みを持たせた言葉で、本心を隠すことも出来ない。

　だから、素直に伝えたわ。いつも助けてもらっている御礼をしたいと、春香に喜んでもらえることをしたいと、そう伝えたわ。

　別に、派手なことをしたかったわけでもないの。心に残るような、大きなものを望んでいたわけでもないの。

　ただ、こんな地味なことで、春香は満足出来るの？

「こんなことなんて言っちゃダメだよ？　千早ちゃんの手料理が食べられる機会なんて、滅多にないんだから。今日は１日堪能させてもらいます」

　いくつかのプランを用意し、春香の望みを叶えられるよう、最大限の努力をした私に、彼女が望んだのは小さなこと。

　１日中一緒にいて、食事の用意を全て私が担当すること。

「その、ありがとう。まさか、こんなにも楽しみにしてもらえるとは、思わなかったわ」

　春香に指導を受けながら、時には指を切りながら、料理に励んだ記憶。それを過去のものにしない為に、可能な限り自炊するように心がけていたから。以前よりは、随分とマシになったとは思うの。

　ただ、春香に期待してもらえるような、そんな料理は作れないのだけど――私に出来る今を、全部出し切るだけね。

「千早ちゃんが私の為だけに、料理をしてくれる。こんな恋人冥利に尽きること、他にはないよ？　私、嬉しくてじっとしてられなかったもん」

「そうなの？　そう言って貰えるのなら、私も頑張るわ」

　スーパーでの買い物は、昨日の内に済ませてある。普段であれば、春香にバレないように隠してある調味料も、今日は活躍してもらえるでしょう。それなりに使えるようになったのよ？

　ふふふ……驚いてもらえるかしら？　春香の知らないところで、私は料理を続けたいたことに。いつもは使用感を隠すために磨いているシンクも、春香の手料理を楽しむための準備だということに。

　話せる内容ではないけれど、私なりの努力は積んできたから。その全てを今日、この場で発揮するだけね。

　大丈夫、心を込めた料理であれば、失敗なんて恐れない。春香への気持を、溢れるほどに詰め込めば、きっと美味しく作れるはず。

　ソースと醤油を、間違えていた頃の私から成長したのよ？

「それにしても、随分と買い込んだねぇ。お願いしている私が聞くのも変だけど、大変だったんじゃない？」

「そんなことはないわ。春香に喜んで欲しくて、用意したのよ？　買い物をしている間も、楽しかったわ」

　春香に喜んで欲しい。春香に、美味しいといって欲しい。それだけを考えていたから、鼻歌を歌いそうなテンションで、買い物が進んでいたわ。

　自分の身の丈に合うレベルで、美味しく仕上げられる食材を。春香に喜んでもらえる、料理の為の第一歩。

　それを大変だと感じるのは、おかしいでしょ？

「えへへ、なんだか照れちゃうね」

　はい、今日１番目の笑顔頂きました。カメラを持っていないことが、非常に残念です。

　これよ、この照れて笑う顔。この笑顔をこんな近距離で見られるのよ？　こんなチャンスを自ら逃すなんて、考えられないわ。

　そして、この笑顔を輝かせるためなら、料理でもなんでも頑張るに決まっているでしょ？　過去の私がなせなかったことも、今の私になら出来るはずなんだから。今の私が無理でも、未来の私になら掴めるはずだから。諦めるなんて、ありえないわ。

「さぁ、食事の準備をするから、ちょっとだけ待ってて。驚かせられるように、頑張るから」

「はーい。よろしくね、千早ちゃん」

　今までの努力を、形にする。それがこの瞬間。

　大丈夫、私には春香が笑ってくれている、未来が見えているわ。失敗さえしなければ、どうにかなるわ。

　ここが終着点ではない。まだまだ先へと続いていく、道の途中でしかない。それさえ見失わないのなら、私は幸せの中にいられる。

　さぁ、考え事はここまでね。集中していきましょう。

　

――あなたの笑顔の為に、今までの私がいる