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ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。 ※ 百合思考です。 最近は、なのは以外も書き始めました。
ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノ
プロフィール
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らさ
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1986/07/28
趣味:
SS書き・ステカつくり
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良いことだけではなく、嫌なことも共有できてこそだと思うのですよ
いや、幸せになって欲しいんですけどね。本当ですよ?




 世界は幸せに溢れていたりなんてしない。誰かが笑っている裏側では、常に涙を流す人がいて、不幸な話なんてそこら中に転がっている。
 報われない努力なんて数えられないほどあって、叶わない願いなんて山のように存在して、苦しみからつながる涙が河を作る。
 幸せをつかめる人間なんてほんの一部に過ぎず、その人達ですら不幸を味わった経験が必ずといっていいほどにあるものだ。
 だから、幸せなだけの物語なんて存在しない。幸せだけで彩られた生活なんて、求めてはいけない。
 
 
     苦さの共有
 
 
 オーディションに落ちた。自分が得意としているはずの分野で勝負をしかけ、他の応募者によりその道を断たれてしまった。
 それ自体は珍しいことでもないし、また別のオーディションに応募すれば良いだけの話。落ち込む前にはレッスンをすべきだし、反省するのなら自らの行動を思い出せば良い。ただ、それだけの話だったはずなのに。今日は少しだけ事情が違う。
「志保も落ちてしまったのね」
「ええ、2人そろって落ちるなんて、縁起悪いわね」
 縁起だなんてものは担ぎたくはない。自らの実力で掴む未来があると、神頼みではないと信じていたい。だから、いつもであればもっと厳しい対応をしているはずだし、落ちたことについて指摘されれば不機嫌になるはずなんだけど。静香の場合、気を使って声を掛けてくれているのが丸分かりだから、トゲトゲしい態度をとるのを時に控えたくなってしまう。
 それは大人になるという行為なのかもしれないけれど、ちゃんと指摘できなくなってしまうような、物事を曖昧な形で収めようとするような、そんなズルさが感じられてしまい苦手だ。静香と知り合ったばかりの私であれば、相手の状況なんて考えずに、ただ事実だけを見て必要と思われることを指摘したはずなのに、甘くなったのかしら? 彼女の頑張りと、その実力を認めてしまったからこそ、仕方がないと口にするようになってしまったのかしら?
「どこが悪かったのかしら。練習は積んだし、ミスがあったとも思えないわ。他の子達が上手だったのは理解しているつもりだけれど、次に繋げる為にもどこが悪かったのかが知りたい」
 オーディションになったもの、敗者となってしまったもの。その心に一度はよぎってしまうであろう願望を、静香が口にしている。普段であればそんなことを口にするような子ではないし、自信があったのかもしれない。自信を持って受けたからこそ、落ちた衝撃が大きかったのかもしれない。そこで落ち込むなとは言えないけれど、落ち込んでいたとしても何にもならないのは事実。理由が分からないのであれば、全体的な実力を上げていくしかないわ。
 あまり言いたいことではないけれど、審査員の好みも存在しているから、全てが純粋に実力で決められているわけではない。何より、オーディションには番組の方向性に沿った演者を選出するといった側面も持っているから、その方向性をどこまで理解出来ていたかというのも大きく影響しているのでしょう。
 ただ、そういったところについては私も理解が足らなかったのかもしれない。こちらは静香が強みにしている歌唱力とは違い、もっと直接的に影響する演技力で勝負したのだから。本来であれば、彼女以上に落ち込み、深く考えるべきことなのでしょう。もちろん、考えるべきことについてはしっかりと考えるし、足りなかったと思えるところについては精進するわ。次も同じ思いをしない為に、自分の存在を示す為に、必要と思われることは全部する。
「静香、オーディションの求めている方向性はちゃんと理解していた? 歌唱力を求められているのか、そうでないところを求められているのか、ちゃんと理解してからオーディションに臨んだ?」
「……理解はしていたつもりだけれど、勘違いしていた可能性は否定出来ないわ。渡された資料に目を通している程度で、能動で気に情報を集めたりはしてないわ」
「そう、結構冷静に見ているのね」
 アイドルであることについて、人一倍に気持ちの強い彼女は、どうしても内側に秘めている熱量に押されてしまって、視野が狭まってしまうことがある。特にこういったオーディションとか、直接的に活動の場に関わるものについては、その傾向が高かった。何度いさめたかは分からないし、嫌味をいったこともある。落ち込んでいる彼女を励まそうとして失敗した回数なんて、イヤになるから数えていない。
「私はまだ子供かもしれないけれど、アイドルとしての入り口には経っているつもりよ。志保に何度も注意されたしね、少しは成長するわ」
 人は成長していく。その速度は個人の心がけ次第で大きく変化するものだし、この仕事に関わっていると実感出来るところがあるから、驚きはしても疑うべきものではない。傍にいたから分かるはずだなんて、そんなうぬぼれは捨てるべき。そんな無駄なことをしている前には、静香の成長速度においていかれないように、彼女の背中を見なくていいように、努力を重ねなければいけないわ。
 彼女との関係は恋人であり、ライバル。お互いを高め合える存在であり、隣を歩いていく約束をした相手。その約束を破りたくはないから、自分に出来ることは全部やりましょう。
「私も、静香を見習うべきね」
 今日のオーディション、悪かったところはある程度把握している。演技として考えた場合、役作りとして考えた場合、昨日の晩に悩んでいたところがやはりマイナス点として見られたのでしょう。演技の方向性を間違えて、それを修正出来なかった。それが、今回のオーディションにおいて私の抱えていた悪いところよね。次の仕事にこれを引きずらず、活かしていく方法を考えなければいけない。
 さて、どうしたものかしら? 不足している部分を補うのには、どんな練習が必要なの?
「……ねぇ、志保。ちょっとでいいから、私の自主練習に付き合わない? 試してみたいことがあるの」
「静香が誘ってくるなんて、珍しいわね。いいわ、何をさせようというの?」
 自主練習、もしくは自主的なレッスン。呼び方はいくつかあるけれど、それらが目的とすることは1つ。自らの実力を高める為に、研鑽を積むこと。ただそれだけ。もちろん、1人で練習に励むこともあれば、何人かのグループで練習に励むこともある。私の場合は内容や練習方法の都合もあって、1人で練習していることが多いのだけれど、静香とであればそんなに問題になることもないでしょう。彼女は、私のことを良く知ってくれているから。甘えるつもりはないけれど、余計な気を使わなくて済むのは助かるわ。
「私の歌にとって、今足りないものは表現力よ。ただ歌うのではなく、想像させるような、連想してもらえるような歌い方が大切だと思うの。そこを鍛えるのには、どうしても1人では難しいわ」
「それで、私にでも頼ろうというの? 悪いけど、期待に応えられるようなものじゃないわよ?」
 静香は私のことを褒めてくれるし、認めてくれてもいる。確かに得意なことが何かと問われれば、私にとって今の武器となるのは演技であると、それは理解しているけれど。それは絶対的な物ではないから、あくまで私の中でアピールできるポイントだというだけ。本当であれば、歌やダンスも伸ばしていかなければいけないのに、そちらの伸びが悪いだけなのよ。どちらかといえば、私が教わりたいくらい。
「ねぇ、志保。私達って、今まで一緒に練習をしていてもお互いに、自分のことだけで精一杯だったでしょ? 多少のサポートをすることはあっても、基本的には一緒の場所で練習しているだけだったわよね?」
「当然でしょ? あくまで自主レッスンなんだから、自分で出来るようにならないと意味ないじゃない」
「その考え方変えてみない? 自分の実力を確固たるものにするためにも、誰かに伝えるという段階へ進んでみない?」
 なるほどね。静かの言っていることも、一理あるわ。勉強においては、誰かに教えられるようになってこその理解だと聞かされたことはある。分かったつもりになっていたり、自分なりの勝手なアレンジが入っていることを嫌うから、そのやり方で理解を深めることは出来たけれど、それはこういったものにも有効なのかしら? 歌やダンス、演技にも流用できる方法なの?
 キラキラと眩しい瞳をこっちに向けるのは静香の勝手だけど、私はその考え方に全面的に賛成することは出来ないわ。自分自身がマスターしたと思えるのであれば、その手法をとることにより自身の能力を向上させることが出来るかもしれない。けれど、そうでないのなら、まだ足りないと考えているのなら、そのやり方で身に付くものは何かしら? 相手の足を引っ張ってしまったことによる、余計な負荷をかけてしまったという罪悪感だけじゃないの? 私はともかく、静香がそうなりそうで怖いわ。
 私とは違って協調性を大事にするこだからこそ気付けた方法なのでしょう、けれど教える側になるほうにかかってくる負担、教えられなかった時の後悔、その2つが静香を押しつぶしてしまいそうで怖い。私は構わないの、自分が足りていないことを理解しているから、そんなものに押しつぶされるほど繊細な心を持ち合わせていないから。どれだけ寄り添ったとしても、そこは別物だと思っているから。
「そんな心配そうな顔しないでよ。志保ってば、いつもそうよね。自分が大変な時でも人の心配ばかりしているんだから、そんするわよ?」
「なっ……静香にだけは言われたくないわ。あなたなんて、いつも人のことを心配し過ぎて、落ち込んだりするじゃない」
 人の心配ばかりしているだなんて、静香にだけは言われたくない。自分のことよりも優先して、誰かのことを優先しようとして、そうして傷ついているのがあなたの心でしょう? 優しいからこそ、傷ついてしまうのはあなたの心でしょ?
 どれだけ言葉を並べたとしても無駄よ、こんなこと私じゃなくてもみんな知っているわ。静香がどれだけ優しいのか、みんな知っているからこそ頼るし、大切にしているの。私とあなたでは、そこに大きな違いがあるわ。
「ムキになって反論しなくていいわ。それに、心配してくれているとことは、否定しないのね」
 何よ、心配しちゃいけないって言うの? いくら私でも、恋人の心配くらいするわ。仲良くしてくれている子の心配もするわ。それが普通でしょ? 心配するあまり落ち込んだりするなんてことはないけれど、ある程度の心配くらいするわよ。仕方ないでしょ、私にだってそういう感情はあるの。氷で出来た心なんて持ち合わせていないわ。
「心配なんてしてないわ。ただ、それで静香が落ち込んでいたりしたら、こっちのペースが狂わされるだけ。迷惑なの」
 でも、それを伝えるようなことはしない。私らしくない優しさなんて、静香は求めていないはずだから。これから練習をしようというタイミングで、甘やかすようなまねをしたらあなたに失礼でしょ? そんなこと、出来ないわ。
 私は静香のことを認めているの、凄いアイドルだって認めているの。だから、心配しているなんて言葉かけられないわ。
「そう。志保がそういうのなら、それでも良いわ。私だって優しさを振りまいて歩いているわけではないのよ? 出来ることと、出来ないことはわきまえているつもり。その上で、志保とだからチャレンジしてみたいの。これなら、どう?」
「どうって……はぁ、どうせ言っても聞くつもりなんてないんでしょ? 分かったわ、試験的にやってみるのなら付き合うわ」
「うん。ありがとう、志保」
「お礼を言われるようなことじゃないわ。私の練習に都合が良いだけよ」
 歌唱力を伝えるのよりも、演技力を伝えるほうが簡単なはず。少し気をつけるだけで、静香の歌は劇的な変化を手に入れるかもしれない。それに比べて、私が教わるものは身につけるのが難しいから、一朝一夕で終われるようなものではないから、静香が落ち込まないようにフォローしないとね。
 ま、たまにはいいんじゃないかしら? 同意の上でなら、お互いに迷惑を掛け合うというのも、けして悪いことではないでしょう。
 それに、このやり方でならどれだけ静香に接近したとしても、仮にどこかにタッチするようなことになったとしても、自分への言い訳も立つからいつもよりも積極的になれるかもしれない。そういった面でも、私は静香から見習わなければいけないわね。アイドルとしての成熟度は勿論、恋人としても負ける気はないから。
 
――汲み取ってもらっているようでは、まだまだね
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