ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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夏祭りっていいですよね。TVとかで見ると、行ってみたいなーって思えます。
・w・) 虫がいなかったらね!
はい、そんな個人的な感想はいいとして、しずしほです。
夏祭りに行ってもらいます。可奈ちゃん達のお守りとして。
・w・) 虫がいなかったらね!
はい、そんな個人的な感想はいいとして、しずしほです。
夏祭りに行ってもらいます。可奈ちゃん達のお守りとして。
前に進みたいと願うのなら、自分を変えなければいけない。自分すら変えられないのに、今を越えていけるはずないから。
共にありたいと願うのなら、努力を重ねるしかない。今の私が辿り着けるのは、今しかない。未来に進みたいのなら、新しい自分が必要。
それが分かっているから、私は足を進める。彼女の隣にあり続ける、自分でいる為に。
遠のく音
夏祭り。正直なところ、大規模なものだとは思っていなかったし、買い食いを好むほうでもないから、あまり楽しみにはしていなかった。浴衣を着たりする手間を考えるなら、家に帰ってしまえば良いとすら思った。
ただ、こんな日にまで1人でいることを選んでしまえば、彼女に怒られるのは分かっていたから。何より、劇場のみんなが、それを許してくれるはずないのは、分かっていたから。諦めて、こうして出かけることにしたのだけれど――ここで帰りたいと言ったら、叶うのかしら?
元々、賑やかなメンバーが揃っていたのは、理解していたつもりだし、大人しくしているはずないと分かってもいた。すぐにでもバラけてしまうだろうし、集合場所と時間だけは決めたのだけど。まさか、5分も経たずにバラバラになるとは思いもしなかったわ。
これなら、私が来る理由はなかったはずだし、こんな気まずい雰囲気にもならなくて済んだ。私を誘ったはずの可奈なんて、1番最初にいなくなったわね。ほんと、落ち着きがないんだから。
確かに、私にとってのプラスもゼロではないし、今の状況全てに不満があるわけでもない。問題があるとしたら、静香の浴衣姿を見られただけで満足してしまった、私にもあるんだから。誰かのせいにしようとするのは、間違いなんだけど。
ほんと、こっちもこっちで、相変わらずなのよね。今の状況、分かってるのかしら?
「ダメね、繋がらないわ。まったく、どこに行ったのかしら?」
頭を振りながら、眉を寄せ、いつものようにため息をつく彼女。その姿は浴衣を着ていても変わることなく、日常的なものとしてこの場に存在している。
恋人と一緒にいるのに、静香の頭の中にあるのは、団体行動の輪を乱している、他のメンバーのことでいっぱい。どこかで迷子になっていないか? 財布を落としたりしてないか? ちゃんと帰ってこれるのか?
そんな心配事があり過ぎて、私のことなんて見てくれない。
ついでに、今電話をかけた相手なら、確認するまでもなく、私にも分かってしまう。
「未来、迷子になってないと良いんだけど……あぁ、もう、どうして星梨花までついて行ってしまったのかしら? 他のみんなもバラバラだし、見つけるのは大変ね」
「お祭りって、そういうものじゃないの? 静香が気にしたところで、誰も褒めてくれないわよ?」
私が目の前にいるのに、心配しているのは未来のこと。そして、くっついていってしまった、星梨花のことでいっぱいだ。
だから、私もついいつも通りに反応してしまう。恋人にここまで辛口なの、そろそろ直そうとは思ってるけど、思う矢先からコレなんだから。どうしようもないわね。
「志保はどうして、そんなに落ち着いていられるの? そもそも、私は誰かに褒められたくて、やってるんじゃないわ」
「未来がどこかに行くのも、可奈が食べ物に釣られるのも、星梨花を追いかけられないのも、いつものことでしょ? 少し場所が変わったくらいで、慌てても仕方ないわ。バラバラになっても良いように、集合時間を決めたんでしょ?」
「そうは言っても、心配になるじゃない」
自分のことよりも、みんなのことを。時間がないと焦っているのに、調和を重んじる。
もう少し、気楽に構えられれば良いんでしょうけど、それが出来ないのが静香よね。魅力なのは間違いないけれど、苦しそうなのはいただけないわ。
せっかく一緒にいるのに、困り顔しか見られないなんて、夏祭りに来た意味ないじゃない。私は、静香の笑顔が見られると思ったから、この場にいるのに。残念だわ。
本来ならもう少し、自然な形で、さりげなく誘いたかったのに。こんな形になって、本当に残念だわ。
「心配しても、状況は変わらないわ。それよりも、私たちも移動しましょ? ここにいても見えないわよ?」
「移動って、どこに行くの? 帰ったりしたら、本当に迷子になってしまうわ」
自分がどうにかしなければいけない。私がやらなければ、進まない。
そんなふうに責任感を持つのは大切なこと、なにより静香らしい意見ではある。けど、そればかりではいけないわ。
全てのことに干渉して、ちゃんと出来るかを知りたい。そう思う気持ちは分かるけど、ダメなのよ。
「静香、どうしてもみんなを探したい? それは、大切なことなの?」
大切に決まっている。時間がないといいながらも、みんなと一緒に進もうとする彼女にとって、大切なことなのは知ってるわ。
でも、だからこそ、気付いて欲しい。私の気持ちと、みんなの心遣いに、気付いて欲しいの。
思いが伝わない憤りに、思わず目元に力が入ってしまいそうになる。にらみたい訳ではないの、不機嫌な顔を見せたいわけでもないの。
「ねぇ、志保どうしたの? 何かおかしいわよ?」
「おかしくもなるわよ」
どうして、そうなるのよ! 私が分かって欲しいのは、伝わって欲しいのは、そんな気持ちじゃないわ。
ねぇ、静香なら伝わるって、分かってくれるはずだって、頼っちゃダメなの? 私の気持ちを分かってくれるって、信じちゃダメなの?
隣を歩いているだけなの? 心は寄り添っていないの?
それとも、分かってはいても、やっぱりみんなといることの方が大切なの?
「えーと、もしかして怒ってる?」
それ、怒ってる相手に、1番聞いちゃいけない言葉よ? 分かってて聞いてない?
確かに、いつもの私であれば、不機嫌でも怒っていないと返すけど、今は無理ね。
「怒ってるわ」
体の中に熱がこもり過ぎて、頭が熱くなり過ぎて、いつも通りでなんていられない。静香と2人でいるのに、心が穏やかにならない。
静香と一緒にいて、恋人になって、こんな気持ちになったのは初めてかもしれない。自分を制御出来ないほど、熱がこもったことなんてないわ。
ダメだと分かっているのに、良くない言葉が口から飛び出しそう。伝えてはいけない、そんな言葉が出てしまいそう。
「ごめんなさい、志保。私が怒らせてるのね」
悲しませてしまった。謝らせてしまった。
その事実は、私の頭の中に、理性という冷水を注ぎこむ。今にも燃え上がりそうだった言葉が、熱を失っていく。
そうね、分かっていたのよ。静香はこういう子だって。どんな時でも、仲間を大切にするんだって。分かってたのよ。
だからこそ、私との関係もあるんだし、ここに怒るのは、良くなかったわ。分かって欲しいなら、伝えないと。
「ねぇ、静香。私といるのはつまらない?」
怒る前にするべきことがあって、怒る必要もなかった。周りが見えなくなってしまうのは、私の悪いところで、直そうとしているのにね。ここらへん、みんなに言わせれば、静香と似ているところなんでしょうけど。こんなところ、似てなくて良いわ。
口に出して伝えなければ、それはただの思いで終わる。口に出して伝えて、初めて想いになれる。
簡単なこと、恋人であるはずの、私達にとっては簡単なこと。それを、私が省いてしまった。それだけのことなのよ。
「私といるのは退屈?」
反省しましょう。私が伝えないことで、静香を混乱させてしまった。
反省してもらうわ。静香が私を通り越して、みんなばかりを見ていたことを。
「どうして、そんなにみんなを探そうとするの? せっかく2人になったのに、どうしてみんなを探すの?」
私は静香といたいの。その想いを、みんなが汲んでくれた。変われなかった私なら、来るはずもない夏祭り。レッスンが終わったのなら、帰宅することしか考えていなかった私。
けれど、変われたからここにいる。みんなが助けてくれたから、ここにいる。
その事実に感謝して、感謝するからこそ、静香との関係を進めていかなければいけない。私には、彼女を幸せにしていく、そんな大切な義務を貰ったの。
「可奈たちが、2人にしてくれたのよ? みんな知ってるから、2人にしてくれたのに、どうして、探そうとするの?」
静香にとって、未来は手のかかる子かもしれない。星梨花はどこかへ行ってしまいそうで、可奈は心配ばかりかける子。そこで止まったりしていない?
私達が成長しているように、いえ、それ以上かもしれない速度で成長しているのよ?
それなのに、いつまでも保護者気分でいるのは、失礼だわ。
「だって、心配じゃないの?」
「あのね、未来や星梨花も中学生なのよ? 迷子になったら、連絡してくるわよ」
彼女達は、幸せを願ってくれた。私達が恋人として過ごせる時間を、作ってくれた。そのままを静香に伝えると、絶対に遠慮するから、夏祭りに来なくなるからと、何故か私にだけ教えられて――結果的に正しかった。それは、見抜けるだけの力を、彼女達が持っていることを証明するもの。成長を私に伝えてくれたもの。
それに応えるには、私は今の時間を幸せにするしかない。彼女達のくれた時間を、静香と使うことに集中しなければいけない。
出来ないなんて、恥ずかしいなんて、臆病なこといってられないわ。
「はぁ。ダメね。こんな時、志保の冷静さがうらやましいわ」
「別に、私だって冷静なわけじゃないわ。星梨花に教えてもらったのよ、この夏祭りは2人で楽しんで下さいって」
「何、それ。ズルいわ。志保は知ってて、探さなかったの?」
ズルい。確かにその通りだと思う。
けど、静香が悪いのよ? みんなとの時間を1番に考えてしまうから、私から説明するタイミングがなかった。落ち着いてみていれば、はぐれたわけではないと、気付けたはずなのに。損な性格よね。
ま、こうやってしゃべってる時間だって、私は嫌いじゃない。だから、このままでも良いけれど、後から来るはずの質問攻めに答えられる程度には、何か特別な思い出を作っとかないと。
あの子達が、大人しく見てるだけのはずない。
「当然でしょ? それに、こうやって2人になるのは、意図的にやらないと無理よ」
みんなで夏祭りに行きましょう。そうやって誘われた時点で、気付くべきでしょ?
普通に考えれば、2人になれる時間なんて、ないわ。みんなで夜店を回って、みんなで花火を見て、みんなで騒がしく楽しむ。そんな時間になったはずよ。
もちろん、私だって全てにおいて反対したりはしないけれど、みんなで遊びに行く為に家を空けてしまうのは、ちょっと心苦しいものがある。ただでさえ、アイドル活動によるしわ寄せがあるのだから、手伝える時くらい、家にいたい。
ただ、そう考えているそばから、静香と一緒にいる時間を捻出しようとしているのだから、私も諦めが良いほうではないわ。
「私や静香の周りにいる子は、劇場のメンバーの中でも、賑やかな子が多いから」
こっちまで楽しくなるような笑顔。弾むような声につられて、つい目で追ってしまう。
アイドルなんだなって、あの子達のことを感じる瞬間。自分には出来ない形で、誰かに幸せを運んでいるその姿は、羨ましいとさえ感じてしまう。
「でも、志保だって嫌いじゃないでしょ?」
「ええ、みんなでいるのも楽しいわ。でも、私は静香との時間がもっと欲しい」
そんなみんなが、くれた時間。静香と2人でいられる、私達が自由に出来る時間。
それはとても貴重なもの。努力したものではなく、贈られたものだからこそ、いつも以上に大切にしていきたいの。
今日、この時間を直接的にくれたのは、あの3人だけど。きっと、もっと多くの人が関わっている。それを感じて、今があるからこそ、静香にも楽しんで欲しい。
「……努力します」
「静香が優しいのは分かってるつもり。ただ、不安になるのは隠せないから」
なぜ、教えてもらえなかったのか。なぜ、伝えられたのが私だったのか。
苦笑しているところを見ると、彼女も見当がついたのかもしれない。成長しないと、私達が置いていかれるわよ?
その成長が、アイドルとしてだけではなく、人間としてだけでもなく、2人一緒に、恋人として成長しなければいけないって、伝わったかしら?
「ごめんなさい、気付いてからフォローしてるようじゃダメよね」
「分かってるなら、改善して欲しいわ」
静香がため息をつく姿は、さまになっている。けど、私も同じようなもの。
ケンカが絶えたことはない。意見がぶつからない日もない。それでも、似たもの同士だからこそ、こうして一緒にいることになった。
敵わない。そう感じているところも、きっと一緒なんでしょうね。
「どちらにしても、こんな場所でケンカしてたくないし、花火が見えるところまで行きましょ?」
彼女のどこを好きになったのか、後付でならいくらでも言える。羅列していけば、いつまでも続き、細かく見ていけば、どこまでも広がる。
けれど、どうして好きになったのかは分からない。きっかけはなんだったのか、今日に至るまで分からない。
きっと些細なことだと思う。今も変わらない、きっとそんなことが、私を惹きつけたんでしょう。
「そうね……えーと、その、先に行っててくれない?」
後の予定を考えながら、足を踏み出した私の後ろで、彼女が無理な笑顔を作っている。
こんな状態で置いていけるほど、私は薄情ではないし。ここで置いていってしまったら、さっきまでの言葉が無駄になってしまう。
「どうかしたの? 食べたい物でもあった?」
静香は、こんなことで立ち止まったりはしない。どちらかといえば、私の手を引いて屋台に行こうとするはず。
何より、今の流れから食べ物を求めるほど、静香は食いしん坊ではないし。こうなると、すぐに歩き出せない理由があるということで。そうね、夏祭り、浴衣とくれば、ゲタでしょ?
「言いにくいんだけど、ちょっと足が痛いのよ。擦りむいちゃったみたい」
彼女の口からこぼれる言葉は、私の予想通り。こんなことで喜んだりはしないけれど、ちょっと考えれば分かったことだ。
どうやって甘えようかとか、花火を見る為のスポットとか、そういったことの前に、私は考えるべきだったの。静香がゲタを履いている可能性を。何より、その状態で走り回るということを。
「ゲタなのに、走り回ったりするから――見せて。バンドエイトをはれば、少しはマシなはずよ」
みんなの心配をするあまり、加減を忘れたんでしょうね。まったく、静香らしい理由ね。褒められるところはないけど、嫌いじゃないわ。
「へぇ、流石はお姉ちゃんってとこかしら?」
「からかわないで。転びそうで、心配になる子に心当たりあるでしょ? ただ、それだけよ」
誰が、とまでは言わない。言わなくても、彼女の頭には浮かんだはずだから。元気に走り回って、そのまま転んでしまう。そんな誰かさん達の絵が。
「志保は、擦りむいてないの?」
「私はスニーカーだから」
手近な柵に座る彼女。その足元にしゃがんだままだから、声が上から降ってくる。
ちょっとだけ新鮮だけど、見下ろされているのは良い気分じゃないわね。私がいたいのは、彼女の隣。このまま、顔も見えない状態でおしゃべりを続けても面白くはないわ。
「せっかくの浴衣なのに、風情がないわね」
「夏祭りなんだから。楽しむ為にも、怪我なんてしてられないでしょ」
「なんだか、納得がいかないわ」
本当であれば、消毒した方がいいけど、あいにくと消毒液までは持っていない。赤くなっている箇所に負担がかからないよう、鼻緒にこすれてもいいよう、少し大きめのを張っておくわね。いくつかのサイズを用意させてくれた、あの子達に感謝しなきゃ。
「別に良いじゃない。私は静香の浴衣姿を見れたし、満足よ?」
2人して擦りむいて、痛い思いをする。小学生なら、夏の1ページとしてはありかもしれないけれど、中学生にまでなってそんなのはイヤよ。何より、静香といる時間を、そんなコメディじみたものにしてくないわ。
「不公平よ。私はちゃんと、ゲタまではいたのに……」
「別にお願いしてないし。そういうのは、2人で来た時まで楽しみにしてて――はい、これで良いと思うけど、他にも痛いところとかない?」
星梨花に言われたからといって、ここまで上手くいくとは思っていなかったから。探しに行かなければいけなくなった時の事を考えるのは、当然でしょ?
走り回る可奈なんて、ゲタで追いかけられるわけないし。はしゃぐ未来を相手に、どうしろっていうのよ?
「大丈夫よ。たぶん、指の付け根だけだから」
本当かしら? 私に心配をかけないようにって、痛いの我慢してない?
下から見上げている今、静香の顔は影になってしまって、よく見えない。誤魔化そうとしていないか、判断が出来ない。
ここで素直に言葉だけを信用するほど、私達の付き合いは浅くない。嘘をついていたとしても、それは優しさからくるもの。
だから、私は信用しない。どうせ目の前にあるんだもの、調べればすぐに分かるわ。
「誤魔化そうとしてもダメよ?」
もっとも、影になっているのはこちらも同じこと。浴衣のすそをめくったところで、見えるものはほとんどない。ええ、好奇心にかられて、ちょっと上のほうまで見てみたけど、見事に見えなかったわ。着替える時に見たことがないわけではないけど、こういうシチュエーションでは見たことがないから、興味があったのに。
それにしても、全体的に硬く感じられるわ。すべすべしていて触り心地は良いし、私よりも少し細い気がする。ちょっとだけ汗ばんでいるから、吸い付くような手触りもプラスされて。これ、ずっと触っていても、飽きないんじゃないかしら?
きゅっと締まっている足首は、包み込んでみたくなるような感じ。そこから少し上って、ふくらはぎに触ると、ちょっとだけ硬くて、私の指を押し返してくる。何より、私が触っているところが硬くなったり、柔らかくなったりと、反応を返してくれるのは、面白いわね。
さらに上って、ひざ。少し曲げてもらっているから、形がはっきりと分かる。静香のひざは、綺麗な丸を描いているのね。それに、ちょっとだけ前に出てきている。ふふ、まるで静香みたいね。普段は大人しいのに、何かがあれば前に出てくる。頼りになるし、意見もぶつけ合える。
そして、ここから奥に進めば――
「ねぇ、志保。私、そっちはけがしてないわよ」
流石に止められるか。仕方ないわね、ふとももはお預けといきましょう。
「そうみたいね。でも、かばって歩いてたでしょ? 筋肉が硬くなってるわよ? 肉離れを起こさないか心配だわ」
遊びに行って、怪我をしたから仕事を休みます。
そんな甘い考えが通じるわけないし、誰よりも、静香自身が認めないでしょ?
夏祭りが原因になって、静香が倒れたりしたら、みんなも大変なことになるんだから。
「大丈夫よ。だてに、レッスンを受けてるわけではないわ」
「この為に受けてるわけじゃないでしょ? まったく、準備運動もせずに動いたんだから、レッスンよりひどい状態よ?」
普段の運動量から比べれば、今日は全然動いてないといえるかもしれない。
ただ、それは準備運動を前提としているものであり、ゲタで走り回るような行動は想定されていない。
だから、こうして私に揉まれているのは、我慢しなさい。
「そんなに嫌がらなくても良いじゃない……」
触るたびにピクピクと、反応があるんは可愛い。
でも、私の指から逃げるように動くのは、どういうことなの? このマッサージ、一応静香の為なのよ?
気持ちが良いから続けてるのも事実だけど、静香の為なのよ?
「だって、その。なんだか、熱がこもってて少し怖いわ」
「別に、食べたりしないわ」
多分ね。
「なら、そんなに熱心に見つめなくても良いでしょ?」
「ただ……」
「ただ、何?」
どう言えば、伝わるのかしら? 私の胸にある、この思いは、どんな言葉で伝えられるのかしら?
下手なことを言えば、引かれてしまう。そのままを伝えれば、軽蔑されるのかもしれない。
ただ、他に言葉が見つからないし、沈黙し続けているのもおかしいから。
「美味しそうだなって」
どうして、そう感じるのかしら? 触り心地が良いのは事実だけど、美味しそうだと感じてしまうのは、どうしてなの?
正直なことを言ってしまえば、味見したい。どんな味がするのか、本当に美味しいのか、知りたい。
別にかじったりはしないし、舐めるくらいなら、良いんじゃないかしら? それくらいなら、許してくれないかしら?
「美味しいわけないでしょ? 私の足よ?」
当然の反応よね。ただ、今の言葉で閃いたわ。
「そう、静香の脚よ。だから、美味しそうに見えるのね」
「別に、誰の足でも一緒でしょ?」
他の誰かの脚であれば、美味しそうに感じたりはしない。スタイルが良かったとしても、憧れを抱いてとしても、美味しそうに見えることはないわ。
私が美味しそうと感じるのは、静香の脚だけなの。私にとって、静香は特別だから、きっとそう感じるのよ。疑問に思うべきところは、何もないわ。
「一緒じゃないわ。静香の脚だから、美味しそうに見えるのよ。ねぇ、舐めてみても良い?」
言っちゃった。
「良いわけないじゃない! 何を考えてるの?」
「さっきから、言ってるじゃない。美味しそうだからよ」
どうして、怒ってるの? 美味しそうだから食べてみたい。食べると痛そうだから、舐めたみたい。
別におかしなところはないでしょ? それに、私達恋人なんだから、問題はないはずよ?
「それで納得出来るわけないでしょ? ほら、おかしなこと考えなてないで。花火、見るんでしょ?」
「そうね。でも、静香の脚をこのままにしておくことは、出来ないわ」
確かに、花火も見ずに帰ったりしたら、夏祭りに来た意味がないわね。後でいじられるネタを増やすことにもなる。
だからといって、静香に無理をさせるようなことはしたくない。彼女に我慢を強いるくらいであれば、花火を諦めれば良い。
まだ夏は始まったばかりだもの、花火なら他の場所でも見られるわ。
「たいした怪我ではないし、別に平気よ?」
「ううん、そっちじゃないわ。それに、怪我だって、舐めれば治るかもしれないし」
私が平気ではいられないの。手を伸ばせば届くこの状況で、諦めろと言うの? 静香は、私に我慢しろというの?
無理よ。そんな選択肢、残酷過ぎて受け入れられないわ。私は、静香の脚を舐めたいの。
「治るわけないでしょ? ちょっと、志保どうしたの? さっきのもおかしかったけど、今はもっとおかしいわ」
「静香こそ、何を不思議なこと言ってるの?」
さっきがおかしかった? どこが、おかしいの?
今は、もっとおかしい? どこが、おかしいの?
私はただ、自分の望みを伝えているだけ。後ろ暗いところも、やましいところも無いわ。
「恋をして、かつての私はいなくなったわ。そして、告白までして、今の私に変わったの」
1人で良いと思っていた。1人でいるべきだと、信じていた。
みんなライバルなんだから、馴れ合う必要は無い。かならずぶつかるのだから、仲良くならない方が良い。
私は友達を求めて、事務所に来たわけではない。アイドルになる為に、今の私に出来ることに挑戦する為に、ここに着たわ。
だから、最初は拒んだ。みんなの輪の中に入れようとする、静香のことを私は拒んだ。放っておいてと、突き放したのよ。
「そんな私が更に変わったとしても、全ては静香のせいだもの。おかしいところなんてないわ」
一匹狼を気取っていた私は、静香とぶつかることで、変わっていった。
それは、かつての私が望まなかったこと。ありえないと、考えもしなかったこと。
けれど、今ここにいる私は知っている。変わった私は知っている。1人ではここに来られなかったことを、彼女と出会わなければ、変われなかったことを、
「え? 私が悪いの?」
「悪いだなんて、言ってないでしょ? ただ、私を変えたのは静香だって、それだけよ」
「なんだか、凄く恥ずかしいこと、言われてる気がするんだけど?」
「そうかしら? ただの事実よ。だから、ここで私が静香の脚を舐めたとしても、おかしいところなんてないわ」
面倒ね。このまま問答を繰り返していたところで、前には進めない。無駄に時間を消費するだけで、結果的には花火を見逃してしまうわ。
いつか雑誌で読んだ通り、恋愛は少し強引にいくくらいが良いのね。大丈夫、静香なら許してくれるし、受け入れてくれるでしょう。
恋人である私が、彼女を信じなくてどうするの?
「十分おかしいわよ! ダメに決まってるで、ひゃんっ」
歩き回ったせいか、少し塩辛いのね。でも、それだけじゃない甘さと、良い匂いがする。
舌を押し付けた分だけ、押し返されて、まるで遊んでいるかのよう。すべすべしているというよりは、ツルツルしているというのが正しいのかしら?
経験したことのない、素敵な舌触りね。舐めるだけって言ったけど、ちょっとくらい歯を立てても、許してくれるかしら?
「ん、悪くないわ。柔らかくて、舌触りも良いわね」
「誰も感想なんて求めてないわ。ダメだって言ったでしょ?」
「ダメとは言われてないわ。それに、美味しそうなんだから、仕方ないでしょ?」
このやりとり、さっきもしたでしょ? それなのに、繰り返すの?
「仕方がないって、私が悪いの?」
「別に……うん、悪くはないわね。もっと明るいところなら、静香の顔がはっきり見えるのに」
真っ赤になっているだけは、この暗がりでも分かる。出来ることなら、写真に収めてしまいたいところだけど、流石に拒否されるでしょう。
貴重な瞬間を、逃してしまったわ。こういうところ、亜利沙さんから見習うべきなのね。
「見なくて良いわよ、ほんと、何考えてるの? ねぇ、志保。どうしちゃったの? 何か悪いものでも食べた?」
「人を可奈みたいに言うのは止めて。ここ、あんまり人目がないけれど、騒いだら見つかるわよ?」
まったく、世話が焼けるわね。こんな静香を誰かに見せてあげるなんて、勿体無いことしたくないんだから。
騒げないようにするしか、方法がないのかしら?
「誰が騒がせてるのよ! んー、っん。もう、止めてって言ってるでしょ?」
「もう少し大人しくしてくれないかしら? 加減を間違えて、噛み付いてしまいそうよ」
大人しくしてくれなかったから、静香が暴れたから。これを理由にすれば、甘噛みくらい出来ないかしら?
ただ、その為に静香に騒いでもらうのは、ちょっと違うわね。はぁ、残念。ここらへんで止めときましょうか。
「ねぇ、志保。せめて、そういうのは2人きりの時にしない? こんなところ、誰かに見つかったら大変でしょ? ね? ほら、私達アイドルなんだし」
「こうやって夏祭りに普通に着てるのに、騒がれていない時点でどうかと思うけど。まぁ、何かあったら大変なのも事実ね」
変装しているわけでもないのに、騒がれない。それは、私達の知名度が低いことを表す、目に見えた反応。
中には気付いてくれている人もいるかもしれないけれど、何も言われないのであれば、同じこと。私達は、アイドルとして、まだまだのラインにいるってこと。
だからこそ、昇らなければいけない。彼女と一緒に上を目指して、努力していかなければいけない。
こんなところで、スキャンダルのネタを作ってる場合じゃないわね。
「ごめんなさい。困らせるつもりはなかったの。ただ、美味しそうで、我慢出来なかったから」
「別にもう良いわ。志保が正気に戻ってくれたのなら、それで」
「私はいつだって正気で、本気よ。ただ、静香があんまりにも待たせるから、我慢が出来なくなるの」
私は不器用だから。中途半端なところでと待ていることが、途中の状態で止めていることが、出来ないの。
やれることは全部やりたいし、やべるきことは全部終わらせたい。自分の気持ちについても、表にだしてしまった以上、ちゃんと形にしていきたいの。
だから、こんなふうにお預け状態なのは、限界。2人しかいないのに、みんなのことを心配してるとか、私に相談してくるとか、正直なところ悲しくなってくるわ。
「志保、どうしたの?」
「さっきから言ってるけど、どうもしてないわ。ただ、気付いただけよ」
私は、心から静香を求めている。静香に触れたくて、静香に触れて欲しくて、暴れる心を治めるには、それしかないって信じてる。
だから、踏み込んでみた。
「待ってても、私たちの仲は進展しないって。望んでいるだけでは、ダメなんだって」
望むだけで実現するのなら、誰も苦労しない。待っているだけで願いが叶うなら、誰も努力なんてしない。
変わっていく為に、進んでいく為に、自分から動くのが大切なんだって、気付けた。誰かに頼ってれば、いつまでも変われないんだって。
「静香を誰かに取られる前に、ちゃんと私が隣にいるって。そう気付いてもらわないと、意味がないわ」
静香自身が意識しているかどうかは、問題にならない。誰かが静香に擦り寄るだけの、スキを与えてしまったら私の負け。
ちゃんと隣にいると、既に恋人がいるんだって、雰囲気で気付いてもらわなければ、何かの拍子でさらわれてしまったりしたら、困るわ。
「私、後悔したくないの。これだけは、失敗出来ないの」
失敗しても、やり直せることは沢山ある。オーディションに落ちても、力をつけて再挑戦すれば良い。ライブで失敗したのなら、次はないようにレッスンに励めば良い。
けれど、静香の恋人でいられるのは、世界で1人だけなの。そこに存在しているのは、イチかゼロ。今の状態を逃してしまった場合、絶望的な未来しか待っていない。
「だから、自分に出来ることを全部するわ。静香に気持ちを伝えるのに、これ以上は待てないわ」
私の本気を知ってもらわなければいない。言葉だけではないことを、行動で示していかないと意味がない。私の中にある想いを、感じ取ってもらえるくらいにならないと。
「別に、これくらい良いでしょ? 私達、恋人なんだから」
静香は、恋人って言葉に弱い。それを知っていて口に出すあたり、策士であることにため息が出そうになる。
けど、仕方ないでしょ? いつまでも態度を決めてもらえないのであれ、多少強引な手段にも出るわ。静香には、分かっていたでしょ?
「それはそうかもしれないけど、こういうことは、大事だから。もうちょっと、時間をかけた方が良いと思うの」
「時間をかけて、静香の心をさらわれたりしたら、意味がないわ。真剣に取り組むのに、時間だけをかけようとするのは、無意味よ」
大切だから、傷つけたくないから、臆病になってしまう。
その結果、恋人をさらわれてしまうなんて、よくある話じゃない。ドラマの脚本に目を通せば溢れ返っているし、現実の世界にだっていくらでもある。私はそんなことを望まない。どうせリスクが発生するのなら、踏み込むわ。
「でも、志保だって、いきなりやられたらびっくりするでしょ?」
「それも、そうね。ごめんなさい。関係が進まないことに、ちょっといらいらしていただけなの」
「ううん、志保の言いたいことも分かるから。ただ、ちょっとだけ待って。今この場で、志保の全てを受け入れることは出来ないわ」
今この場では無理。ええ、それで良いのよ。実際のところ、自分の欲望に駆られてしまいやり過ぎたのも、関係を急ぎ過ぎたのも、自覚しているから。
嫌われるリスクは承知していたし、そうならなかったのだから、前進よ。静香に思いが伝われば、成功なの。
「心の準備をする時間を、ちょっとだけ頂戴」
急ぐのは私のやり方で、準備をしようとするのは静香のやり方。どちらかが間違っているのではなく、両方正しい。
私は伝えたのだから、後は静香が動き出すのを待てば良い。彼女の心が決まるのを、待っていれば良い。
「大丈夫よ、心配しないで。私だって、志保を求めたいから。こういった、一方的なやられ方は好きじゃないの」
今日見た、最高の笑顔。満面ではないけれど、私を安心させてくれる。私のことを見ていると、伝えてくれる笑顔。
ズルいわ。そんなふうに言われたら、何も出来なくなってしまう。知っているからこそ、何も出来なくなる。
「負けず嫌いね」
「よく知ってるでしょ?」
大人しい性格なのに、静香は負けることを極端に嫌がる。意見をぶつけあってきた、私達だからこそ信頼。こうなった静香は、強いわ。
自分の答えを、私に伝える言葉を、必ず見つけてくるのよね。
「ええ、イヤになるほど知ってるわ」
「なら、安心して待ってて。そんなに、時間はかけられないから」
甘い恋に、憧れがないと言えば嘘になってしまう。溺れていくような、身をゆだねてしまえる恋も、素敵だと思うの。
ただ、合わないわ。私達には、絶対的に合わないの。
それに、恋愛だからと、競い合ってはいけないなんて、ルールはない。私たちには、私達のやり方がある。
これは、私と静香の物語だから。私達自身でつづりましょう。
――前を向く彼女の瞳には、花火の明りが映りこむ
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