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ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。 ※ 百合思考です。 最近は、なのは以外も書き始めました。
ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノ
プロフィール
HN:
らさ
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1986/07/28
趣味:
SS書き・ステカつくり
自己紹介:
コメントを頂けると泣いて喜びます。
リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。


メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
当ブログ内のSSは無断転載禁止です。 恥ずかしいので止めて ^^;
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海美&亜利沙。
こうなったのは、中野BD2日目、オーディオコメンタリーが原因です。

うえしゃま、ワキとか言っちゃダメです(イイゾモットヤレー
空ちゃんも、アシとか言っちゃダメです(イイゾモットヤレー
もちょはもちょなので、そのままでOK

不思議なペアではありますが、結構楽しかった。




 鏡に映る自分の顔は不安そうで、この先の未来を暗示しているようにも見える。
 らしくないのは、分かっている。結果を求めるのなら、落ち込む前に努力すべきだと、分かっている。考える前に動いているほうが、らしいよね。
 けれど、不安は消えてくれないから。大丈夫だと思っても、どこかに残ってしまうから。
 安心する為の、一言が欲しい。
 
 
     私の魅力
 
 
 アイドルに憧れを抱いているのは、別におかしいことじゃないと思う。かわいくて、キレイで、輝く存在。
 だけど、自分がアイドルになれると考えている子は少ないみたいで、私みたいなのでもアイドルになれた。飛び込むところまでのライバルは、意外葉ほど少ない。
 正直なところ、どうしてアイドルになれたのか、今考えても不思議で仕方ない。身体を動かすことは得意だけれど、それだけで合格するほど甘くはないはずで、ただソレしかアピールできることはなくて――まぁ、考えても仕方ないんだけどね。
 私はアイドルに、このシアターの一員となれたのは事実で、既に何度かのライブも経験済み。今だって、活動の場を広げる為に、プロデューサーの取ってきた仕事について、悩んでいる最中。
 アイドルとしての仕事である以上、人に見られることは必要だと思うし、無名でいるくらいなら有名になりたい。色々なことにも挑戦したいとは思う。そういった意味ではピッタリなんだろうけど、どうすればいいのかなぁ?
「モデル、ねぇ」
 スポーツウェアだったり、カジュアル系なら、ある程度は問題なかったと思う。動き回るのは得意だし、体力でなら他の子に負けたりすることもないはず。脚には自信があるから、そういった撮影の話なら喜べるんだけどね。
 逆にじっとしていることを強いられるような撮影は、苦手だし、プロデューサーも分かってくれてると思ったんだけどな。
 メイクだって良く分からないし、どうしよ?
「うーん、悩んでいても解決しないよ。誰かに相談してみよ」
 今回の仕事、面白そうではある。今まで挑戦したことがない方面だし、何かつかめるものがあるかもしれないし、断ったり、失敗したりはしたくない。
 ただ、どうしていいのか分からないし、誰かに相談して、イメージだけでも作らないとね。まずは、行動あるのみだよ。
 シアターには沢山のアイドルが所属しているし、こういったことを得意としている子も、何人かいる。その内の誰かを見つけられたら、良いんだけどなぁ。
「お、ラッキー。ありりん、見っけ」
「これは、これは海美ちゃん。今日も笑顔が弾けてますねー。1枚、良いですか?」
 フラッシュが光り、撮られたことを告げている。
 聞いてもらえば、大体OKをだすけど、勝手に取られるのはどうなのかな? 嫌ってほどでもないんだけど、心の準備とかあるでしょ?
 まぁ、モデル代として、話を聞いてもらう分にはありかな?
「ありりん、時間あったりする? ちょっと相談に乗って欲しいんだけど」
 アイドル情報の収集、分析。そこに加えて、最近は企画してみたりと、活動の幅を広げている彼女なら、相談するには適任。
 私の知らない、私の魅力も、彼女なら見つけてくれるはず。というか、既に知っているんだろうなぁ。
「んー、この後は律子さんとの打ち合わせだけですから、大丈夫ですよ? 海美ちゃんからの相談というのも、珍しいですね」
 カメラを右手に、ありさノートを左手に、取材でも始めそうな雰囲気で近寄ってくる。これくらいのテンションでいてくれるのなら、落ち着いて話すことも出来るかな?
 好きなことになると、色んなものを忘れちゃう子だから、気をつけないと相談どころじゃないもんね。年少組みは随分と懐いているみたいだけど、やっぱり相手によって対応を変えているのかな?
 私としては、そんな面倒なことしたくはないけど、アイドルとしては必要なことなんだよね、多分。
「実はさ、今度モデルすることになったんだけど、どうしていいか分からなくて。相談出来そうな相手を探してたんだ」
「ほほう、モデルですか。海美ちゃんに来るなら、アクティブな撮影なんでしょうねぇ。ありさでお役に立てますか?」
 アイドルを良く見ているだけあって、首をかしげる動作が様になっている。自分なんてまだまだと本人は言っているけれど、モデルとしてなら私よりも、ありりんの方が向いているんじゃないかな?
 それにしても、やっぱりそういうイメージあるよね。自分でもアクティブなほうだと思うし、今回の話がどうして私に来るのか、ちょっと分からないんだよね。
「それがね、アクティブどころか動けない感じなの。えーと、ロリータって言うんだっけ? そう言う衣装を着て、お人形さんみたいなイメージで撮りたいらしいよ?」
 渡されている資料は、多くはない。着る予定になっている衣装の案と、当日のスケジュール、集合場所程度。ポーズに関しては、私が考えるみたいだし、座っていれば良いなんていわれたけど、そうもいかないよね?
 だからといって、どうにか出来る気もしないし。じっとしていると落ち着かないから、そっちの対策も考えないといけないし。
「ロリータですか……んー、方向性としては甘ロリですかねぇ。もう少し、赤に寄せても良いような気もしますが、そこはイメージカラー的にダメなんでしょうか。それにしても、普段は元気っ娘である海美ちゃんを、そういうふうにしてしまうとは、流石はプロデューサーさんですね。新しい魅力を徐々に見つけるのではなく、放り込んでみる感じなのは、信頼でしょうか? アイドル道、奥が深いです」
 机の上に広げた、衣装案。それを片手にうなり出す彼女は、アイドルというよりはプロデューサーのようで、持っている知識の広さが垣間見えたような気もする。
 そういえば、律子さんが言ってたっけ? ありりんには、プロデューサーとしての素質もあるって。
 確かに、暴走さえしていなければ、頼もしい感じもするし、こんなふうに相談に乗ってくれるところは、良い感じだよね。
「パステルカラーが基準になる分、可愛いを前面に押し出すことになりますよね? そうなると、脚線美を活かす様な構図は取れません。逆に言えば、普段とは全く逆の、弱さを見せるような影のある演出、儚さを出せるライディングもありですね。細部は専門の方に任せるとしても、イメージ案くらいは出しておきたいですね。海美ちゃん、この撮影はスタジオですか? 小道具の指定は可能ですか?」
「え? 確か、欲しいものがあれば、用意してくれるって言っていたけど、なんで?」
 頼もしいを通り越して、完全に仕事モードに入っているありりん。ノートへの書き込みが凄い速度で増えて、なんだか良く分からないグラフや、撮影イメージみたいなのが増えて。普段の彼女を知っているからこそ、そのギャップに置いていかれてしまう。
 それとも、家ではこんな感じなのかな? 知らない顔って、まだまだあるんだね。
「それなら、いけるかもしれませんね。これは、雑誌に載るモデルですか? それとも、このシアターにて販売するスナップ用ですか?」
 なんと言えばいいのか、律子さんが目を付けた理由を、身を持って体験している気がする。
 そういえば、最近は企画の立案にも混ざったりしているんだっけ? 以前のライブで、演出家さんと話しこんでいたとこも見てるし。
 アイドルだけで舞台を作るわけではないって、知ってはいるけれど、私はまだまだだね。ありりんほど、具体的な話をスタッフのみんなとしたことないもん。もっと自分から、近寄っていかないと。
「女性誌の特集に載る分と、スナップ用、両方だよ。特集のほうは6ページくらいで、見開きも貰ってるみたい。スナップのほうは、期間限定で販売するみたいだね」
「なんと、見開きですか!? それは気合を入れて考えないとダメですね。スナップの方は、小鳥さんに頼んで予約しとかないと。買い逃したら、ありさ後悔します!」
 見開きをもらえるなんて凄いなーって、その程度しか私は考えてなかったんだけど、マズかったかな?
 認知度を広げるのが目的だって言われたし、いつでも可愛くなれるってのがコンセプトの、どこかのブランドとのコラボというくらいにしか、思ってなかったよ。
 なんだか、私とのテンションの差が凄いよね。ありりんだって忙しいはずなのに、ここまで本気になってもらえると、ちょっと申し訳ない気がするなぁ。
「ありりんになら、別にあげるよ? わざわざ買わなくても良いんじゃないかな?」
 御礼といえるほどではないと思う。ただ、私に言えることはこれくらいしかないから。
 後は、撮影の時に頑張るだけだから。
「本当ですか!? あ、でも、やっぱりダメですよぉ。ありさは、ファンとして海美ちゃんの写真が欲しいんです。ちゃんと買わせて頂きます」
 そこの線引きは譲れないんだね。私には良くわからないけど、ありりんにとっては大切なんだろうなぁ。
「ファンとしての振る舞いを忘れるわけには――おっと、そんなことを話している時間はありませんね。海美ちゃん、今回の撮影なんですけど、ありさのアイディアを聞いてもらってもいいですか?」
「うん、勿論。その為に相談したんだから、いっぱい教えて」
 相談というよりは、指示を仰いだ形になっちゃってるけど、良いのかな?
「ありがとうございます。ただ、これはありさのアイディアでしかありません。海美ちゃんのやりたいことは、これから混ぜるので、どんどん変えて行きましょう」
 ありりんってアイドルだよね? 私と同じアイドルだよね?
 ノートに書き込まれている内容。ところどころにハートが飛んでいたり、星が描かれていたりはするけれど、企画書といっても通るんじゃないかな? これは、得意とか、そんなレベルじゃないよね?
 凄く嬉しいんだけど、この短時間でここまで出来るものなの?
「今回、プロデューサーさんの狙いは、可愛くなれるというイメージを形にしてしまう、完全に女性誌向けのモデルをやってもらうことにあると、ありさは読みました。既存のイメージを塗り替えられるほどに、方向性の違う依頼を取ってきたのも、その狙いを強固にするためだと考えます」
 可愛いってイメージを形にする?
 うーん、それって、私がさっき悩んでいたことだよね?
 だから、私が悩んでいたのは正解ってこと?
「海美ちゃんは今まで、元気っ娘として、健康的な美しさを振りまいてもらっていました。その為、スポーツを始めとした、アクティブな方面での活動が多かったと思います」
 スタミナがあるのが、私の長所。結構鍛えているつもりだから、簡単にへばったりはしない。
「ファンの期待に応えてもらい、アイドル活動の場を固めていくために有用な采配です。この役なら海美ちゃんが来るはずだと、ファンのみんなも期待出来ました。そのスタミナと身長、なによりも脚線美を活かす為には、ベストチョイスと言えるでしょう!」
「まぁ、脚には自信があるし。露出が多かったのは、そういう理由なのかな?」
 スカートが短かったり、ショートパンツみたいな衣装だったり。結構大胆な衣装もあったよね。
「海美ちゃん、じっとしているの、苦手ですよね? 今回の撮影は、お人形さんのように着飾り、可愛らしく微笑むのが大切ですが。難しいって感じてませんか?」
「うん、正直なところ、私が選ばれてる理由が分からないんだ。ありりんに詳しく教えてもらったから、そうかもしれないって思えるけど。本当のところ、プロデューサーが何を考えているかは、教えてもらえなかったし」
 私なら大丈夫だって言われたけど、ありりんの言ってる半分も分かってなかったよ?
 ううん、そんな話じゃないね。私は、不安だったんだ。今までと全然違うことに挑戦するのに教えてもらえない。今までやってきたことが、間違っているかもしれない。
 難しいことを考えなくていいって、そう言われても、不安は消えたりしないから。誤魔化しているだけでは、消えてくれないから。
「んー、知らないからこそ、出来ることもあると思うんです。プロデューサーさんは、そこにも期待しているのかもしれませんね。それだと、ありさのは余計なお節介かもしれないですね」
「そんなことないよ。ありりんに相談に乗ってもらって、私助かってるもん。お節介だなんて、絶対ないよ?」
 励ましてもらうだけでは、ダメだったと思う。応援してもらうだけでは、分からなかったと思う。
 綺麗な言葉を貰うだけでは、不安になったと思う。ありりんの言葉で伝えてくれたから、私の心に落ちてくるものがあった。
「そうですか? なら、良かったです」
 出たよ、コレ。アイドルとしての基本は笑顔ですとか言いながら、見せてくれる笑顔。年少組みの中には、ありりんの笑顔をお手本にしている子もいるみたい。
 本人に自覚はないのかもしれないけれど、結構頼りにされてるんだよね。
「とにかく、ありさとしては、海美ちゃんに可愛いを押し付けるような、アイディアを出そうと思います。だから、違うなって思った部分は無視して下さい。そう感じる、海美ちゃんの感性が大切です」
「なるほど。あくまで、私らしくってことね」
「そうです。今回のモデルは海美ちゃんですから。海美ちゃんにしか出来ない、モデルさんになって下さい」
 目を輝かせて応援してくれる。元気いっぱいに応援してくれる。
 あはは、おかしいよね。ありりんだってアイドルで、私達はライバルでもあるのに、ありがとうって言えるんだ。
 私、頑張るよ。ありりんに教えてもらうことだけじゃ終らない。ちゃんと考えて、私なりのカワイイを探すよ。それが期待に応えるってことでしょ?
「まず、大き目のぬいぐるみや、キューブ状のぬいぐるみを手配してもらえるよう、お願いすることはできますか?」
 だから、今は教えて。私の知らない私を、ありりんが教えて。もっと、ありりんのカワイイを押し付けて欲しい。
 1人で出来ないことを、恥ずかしいだなんて思わない。私達は友達だから、頼りあえる関係なんだ。
「可愛らしさを押し出そうとしたら、小さく見せるほうがお得なことが多いです。だから、背景の中にある程度溶け込んで、小さくなってしまおうという作戦です」
 頭の中に既にイメージがあるかのよう。ノートに書き込まれていく案は、私にも分かりやすく、どうしてそうするべきなのかが伝わってくる。小さく見せることによって、どんなふうになるのか、私にもイメージできるようになる。
 私だけを見てもらうんじゃない。全部を見てもらって、そこに私がいることに気づいてもらう。私がその世界にいることに、違和感を持たせない。
「本来であれば、海美ちゃんにとっては活かすべきものを、あえて逆方向に向けてみましょう。そうすることで、守ってあげたくなるような、儚い雰囲気を出すんです」
 守ってあげたくなる存在。
 最初にも聞いたはずの言葉が、全然違うものに感じられる。今の私になら、未来の私になら出来るかもしれないって、そう思えてしまう。こんなふうにしてみたいってアイディアも、私の中に生まれていく。
「そうですね。百合子ちゃんのこちらの写真とか、志保ちゃんのこちらの表情とか、参考になると思うんです。どうですか? なんとなく分かりませんか?」
 身を乗り出して、おでこがくっつきそうな距離で、彼女が次々と写真を見せてくれる。
 1つの絵のように、世界に溶け込んでいる写真。抱きしめてあげたくなる、守ってあげたくなる表情。他にも、今の私が求めている物が目の前に用意されていく。
「ありりん、これいつも持ち歩いているの?」
 好きなものを、肌身離さず持っていたい。その気持は分かるけど、結構な量だよね、これ。重たくないのかな?
「だって、可愛いじゃないですか! アイドルちゃんの笑顔は、元気になる為に必要なものです。このサイズのアルバムなら、いつも持ち歩いてますよ?」
 カワイイ、か。そうだね、ありりんにとって1番大切なのは、そこなんだよね。
 良かった。このまま話を進められたら、ありりんの印象が大きく変わっちゃって、どう接していいか分からなくなりそうだったけど、好きなものを語ってるんだから当然だったんだ。力が入って、テンションが上がってきて、いつも通りだね。
 ただ、ここまでくると気になることもある。見せてもらっているアルバムには、私がいない。流石に、全員の写真を持ち歩いてたりはしないのかな? そうなると、私の写真はまだまだダメってことなのかな?
「その、私の写真もあったりするの?」
「勿論ですよ。こっちのアルバムの、このページからは海美ちゃんです」
 新しく取り出したアルバムは、私が跳ね回っている写真から始まっている。
 これ、いつの時だったかなぁ。売店に並んでいる写真以外にも、練習の風景だったり、みんなと笑っている写真だったり、楽しそうにしている私が写っている。
「……なんだか、恥ずかしいね」
 アイドルになったんだって自覚はあった。ファンのみんなが応援してくれて、活動する場所を用意してもらって、雑誌に載ったりもして。
 でも、こんなふうにアルバムで見たことはないから、ちょっと嬉しいな。アイドルである私を、好きでいてくれる子が目の前にいる。応援してくれて、笑顔になってくれる子がいる。私はアイドルなんだって、実感させてくれる子がいる。
「自信を持って下さい。海美ちゃん自身の可愛らしさを語るには、3時間は必要です。非常に惜しいところですが、今回は我慢します」
 3時間。うん、好きなことについて話し出すと止まらないって、それなりには知っていたはずだけど凄いね。その3時間、私が正気でいられるとは思えないけど、ちょっとだけ興味はあるかな?
 遠慮されちゃうこともあるから、素直な感想って嬉しいよ。特に、同性の子からもらえる意見って、貴重なんだ。
「この写真、全部をマネしてしまうと、海美ちゃんのいいところがなくなってしまいます。でも、参考にするには良い感じかなって思いますよ」
 並べてもらったおかげで、違いがよく分かるね。表情やポージングだけじゃない、全体的な雰囲気の差が感じ取れる。
 うん、これらなどうにかなりそう。どうしたら良いのか、どうしてみたいのか。ちょっとずつではあるけれど、形になってきたよ。
 やっぱり。ありりんに相談して正解だったね。
     ◇
「ありがとう。凄く助かったよ」
 ポーズ案から、衣装の案、他にも色々とアドバイスを貰えて、随分とイメージ出来るようになってきた。
 難しいと感じるところも多いけど、最初みたいな不安はない。後は私が頑張るだけだから、どうにかしてみせる。楽しみにしているって応援に、応えてみせるよ。
「ところでさ、ありりんにはこういう話ないの? 私より、カワイイ向きでしょ?」
「ないですよ? ありさには、似合いませんから」
 どうしてそこで、当たり前のように言うのかな? 絶対似合うのに。
「そんなことないでしょ? 手だって小さいし、腕は細いし、足も細いし。私よりよっぽど向いてると思うけどなぁ」
 きっと、私より可愛くなる。他にも色々と似合うものがあるはずなのに、どうして望まないの?
「おだてても何も出ませんよぉ。ありさはこうして、シアターの一員でいられることが嬉しいんです。これ以上のことを望んだりしたら、幸せがどこかに行っちゃいます」
 幸せがどこかに言っちゃう? そんなことはないと思うし、逃げちゃいそうなら、私が一緒に捕まえに行くよ?
 遠慮ばかりしていても、良いことなんてないんだから。私が、ありりんにしてあげられること、何かないかな?
「勿体無いなぁ……そうだ、この撮影一緒に行かない? ページの調整もある程度はしてくれるみたいだし、ありりんが一緒なら、心強いし、一緒に行ってくれると嬉しいな」
「ありさ、自分でも写真うつりがイマイチかなって思うんです。他にも色々ありますから、撮影関係のお仕事は、ちょっとどうかなーって」
 むー、どうしてそこまで遠慮するの。私は一緒に行ったほうが、楽しいって思うのに。
 ここは、ありりんがしてくれたみたいに、色々見せれば良いのかな? 写真うつりが悪いからイヤなんでしょ? なら、そんな心配ないって、私が教えてあげるよ。
「そこまで言うのなら、ありりんに良いもの見せてあげるよー。えーと、どこら辺に写ってたかなぁ」
 機械類に強いほうではないし、アルバムに収めているわけでもない。
 でも、私だって写真くらい撮るんだよ? スマフォの中には、結構あるんだから。
「あったあった。ほら、この写真。良い感じに取れてると思わない?」
 ダンスレッスンをしている、ありりん。アップテンポな曲だから、ダンスだって激しいのに、笑顔が曇ったりはしてない。
 練習を始めてすぐだったはずだから、間違えることも多かったのに、嬉しそうに、楽しそうに踊っている。見ているこっちが元気になるような、素敵な表情。
「えっ? 海美ちゃん、こんな写真、いつの間に撮ったんですか! すぐに消してくださいよぉ」
「えー、いいじゃん。ほら、こっちのありりんも良い感じだよー? 凄く可愛くて、アイドルって感じでしょ?」
 奪おうとする手を抜け、次の写真を表示させる。ふふふ、この私からモノを奪おうだなんて、10年早いよ。
 途中で別の子が乗った写真もあったけど、このありりんは私の一押し。衣装合わせの途中だから、サイズが合ってなかったり、ポーズの練習をしていたり、一生懸命だったから、すぐ傍で撮ってたのに気付いてなかったんだね。
 他にもいくつかの写真を表示させてみる。
「まさか、ここにきて自分の写真を見せられる日がこようとは……うーん、でもやっぱり、みんなの方が可愛いですよぉ。後で、このデータ下さい」
「ありりんが一緒に来てくれるなら、考えるよ?」
 一緒に来てくれるのなら、写真も思い出も増えていくから。このデータを渡したのだって、楽しかった話に早変わり。
「でも、こうしてみると綺麗な体してるよねぇ。このフトモモとかワキとか、いいねぇ」
 ノースリーブの衣装から覗くワキ。細い腕と身体をつなぐそのラインには、なんともいえない魅力が感じられてしまう。中々見えないところだからこそ、こう、ぐっとくるものがあるのかな?
 フトモモは結構見てるけど、絶対領域だっけ? なんだか、見ちゃいけないものを見ている気がして、ドキドキする。
 バランスだって良いし、適度に引き締まってるのに柔らかそう。ありりんの抱き心地、絶対良いよね。私が保証してあげる。
「海美ちゃん、どこ見てるんですか!?」
「だって、ほら、綺麗だし? 仕方ないじゃん?」
 綺麗なものを見ちゃいけないとか、意味が分からないよ。こういったちょっとしたことに気付けるようになれば、アイドルとして成長できるかもしれないし、次からは気をつけてみようかな?
「あぅぅ」
「どんな手入れしたら、こんなふうになるのかなぁ。ねぇ、何かやってるの?」
「分かりませんよぉ。ありさ、特別なことなんて、何もしてませんから」
 特別なことはしていない。うん、綺麗な子とか、カワイイ子って、みんなそう言うんだよ。
 それが本当の子もいるけど、隠しているだけってこともあるよね。ちょっとズルいなぁ。
「ありりんって、スポーツとかしないんだっけ?」
「してませんよ? 休日は、ライブ映像見てることが多いですから」
 確かに、外で走り回っているよりも、そうしている方が似合ってるかも。嬉しそうにノートに書き込みをしたり、サイリュームを振っていたり、忙しそうだもんね。
「その割には体力あるよね。ダンスのキレも良い方だし」
「それは、みんなの真似をしてるだけですよ? ライブ映像見ながら、歌って踊るんです」
 アイドルが大好きなアイドル。その売り文句に偽りはないか。
 確かに、練習の時、自分の曲以外も結構簡単に踊っていた気がする。細かいところは指導が入っていたけど、先生も楽しそうだった。
 筋トレをしてるわけじゃないから、無駄なところに筋肉が付いたりはしないんだね。
「……そっかぁ、スポーツじゃなくて、ダンスとしての動きなら、こんな感じになれるのかなぁ」
「だから、そんなに凝視しないで下さいよぉ。恥ずかしいです」
 見れば見るほど柔らかそう。横から見ても、上から見ても、それしか思いつかない。
 触ってみても良いよね? 女の子同士なんだし、何も問題は無いよね?
 柔らかそうじゃなくて、柔らかいって感じても、良いよね? 友達だもん、問題なんてないはず。
「んー、思ったとおり、柔らかいよねぇ。女の子って感じがして良いなぁ」
「海美ちゃんも女の子ですよね? というか、何で抱きつかれてるんですか!? ありさの理性がピンチです!」
 服の上からしか触っていないのに、この柔らかさ。鍛えている身体とはまた違う、筋肉のつきかたしてて、私とは全然違う。
 こんなことなら、水着の時にしっかりと見とくべきだったね。そうすれば、もう少し可愛らしさとか、分かったかもしれないのに。
 甘い匂いもするし、抱いたまま眠ったりしたら、気持ち良いんだろうなぁ。
「ちょっとくらい触ってもいいでしょ? 筋肉のつき方とか、さわり心地が違うもんだね。ここのラインとか、いいなぁ」
 普段は注意することも無い、背中から腰にかけてのライン。そのままお尻に落ちていって、フトモモに到着する。
 見てるだけとは違う、触れることによって分かること。そこにある柔らかさと、温かさ。
 首筋からは肩、ヒジを通って二の腕へ。手も小さくて可愛いね。へぇ、ここまで違うものなんだ。
「ひゃぁ、海美ちゃん、そんなとこ触ってちゃダメです。くすぐったいですよぉ」
 触る度に震えて、いつもとは違う様子のありりん。声も甲高く、頭に響いてくるけれど、何か引き込まれそうになる。
「減るもんじゃないし、良いでしょ? あー、柔らかくて気持良い。本番も、ありりんを抱っこして写ろうかなぁ」
「ダメです。そんなの絶対ダメですよ?」
「えー、いいじゃん? ありりんを抱っこしてていいなら、私もじっとしてるよぉ? 髪も甘くて良い匂い。カワイイー」
 小さく見せようとすることには、失敗するかもしれないけれど。いつもとは違う私がそこにはいるはずだから。そこから見つけられる、新しい私に繋がるかもしれない。
 そうすればもっと、ありりんの教えてくれたことが分かるようになるかもしれないし。良いアイディアだと思うんだけどなぁ。
「プロデューサーさん、律子さん助けて下さい。ありさ、新しい扉が開いちゃいそうです!」
「大丈夫、その時は私も一緒だから。2人で頑張ろう」
 可愛いものを可愛いと言える。綺麗なものは、綺麗と言える。それは私の凄い所だって言われたから。素直でいることも、私の魅力なんだよね?
 なら、その魅力をもっと引き出すためにも、ありりんには協力してもらわなきゃ。
 それに、他にもアイディアが出てきそうだから、暫くこのままでいたいなぁ。
 
――やってみたら、楽しいよ
PR
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