【アイマス】私の道【ミリオン】

・ｗ・）　ワキに到達したぞぉぉぉ
　　　　　うえしゃま、ありがとうございます。

　比べても意味がないことだって、ちゃんと分かってる。けど、納得は出来ない。

　そんなに簡単に諦められるのなら、私は今ここにいないはずだから。別の場所で、諦めて辿り着く場所で、光を眺めているはずだから。

　別に、全部で勝ちたいなんて、ワガママは言わない。負けるはずがないって、根拠のない自信を持つことも出来ない。

　それでも、私に出来るのは信じることだけだから。自分の可能性と、仲間がくれる勇気を、信じることしか出来ないから。

　私は今日も、一歩を踏み出した。

　　　　　私の道

　心のどこかで、負けていないと言う気持ちがあった。それだけは否定しようがなくて、それがあるからこそ、私は頑張れるんだって信じてた。ライバルでいることが、共に頑張ろうとする姿勢が、私にとっては必要だったから。

　私が信じるべきは自分自身で、見つめるべきは行く先だけだと思っていた。考えても仕方のないことは忘れて、悩んでも仕方のないことは放り出して。そうして突っ走ることが、大切なんだと信じていたから。

　そうやって、前を見続けているのが、私の良い所だって、思う込もうとしていた。感じるままに、心が望むままに。

　そりゃ、私だって落ち込むよ？　理想に近づくことがなくて、どこにも辿り着けそうになくて、自分がイヤになることもある。

　悪いことだとは思わない。考える良いチャンスだって、前向きに捉えるようにはしているから。私は、どんな私も受け入れられるって、油断していた。

　だから、こんなにもショックなんだよね。ううん、別にショックを受ける必要はないはずなんだけど、ちょっと納得いかないかな？

「えーと、その。元気出して下さい、海美ちゃん」

　別にね、ありりんが悪いわけじゃないんだよ？　だから、そんな励まし方をされても、困るんだけど。

　ううん、そもそも私が落ち込んでいるのが悪いんだよね。前々から分かっていたはずなのに。だからこそ、触ってみたいって、そう思い続けていたのに。

　まさか、こんなにも違うだなんて、その事実が、私をへこませるほどのものだったなんて。そこまで考えたことはなかった。

　確かに、私は筋トレとかもしてるよ？　自分のウリであるスタミナを維持するために、普段から運動を心がけているよ？

　もちろん、無計画にやっているだけではないし、筋肉を付けすぎるような、アイドルとしてよくないことは禁止されている。そこに油断しちゃったのかなぁ。

　普段、こんなにも密着することはない。シアターのみんなに、マッサージして回るような機会もなかった。

　だからこそ、コール＆レスポンスとして、振り付けとしてなら動き回っている、ありりんの身体は魅力的だった。私とどれだけ違うのか、どんな感じなのか、興味があったのは否定出来ない。

「んー、どうしてなのかなぁ。ありりん、分かったりしない？」

「ありさは特別なことはしていませんら、分からな、ひゃぅ！」

　特別なことをしていないのに、こんなに柔らかいの？　こんなにも反応がカワイイの？

　それって、やっぱりズルイよ。何もしていなくてこれは、ズルイでしょ？

「海美ちゃん、人のお尻を揉みながら、考え込むのは止めて下さい。そして、出来ればそろそろ止めて下さい」

「却下。ありりんが解決できないなら、私が考えるしかないでしょ？」

　柔らかい。そんなに大きなほうでもないはずなのに、指が沈んでいくような、それでいてちゃんと押し返してくる感触。

　これが胸だったら、もっと違う感触なのかもしれないと考えると、そちらにも手を伸ばしてしまいそうになる。

　ジャージの上からなのに、その柔らかさには感動できるものがある。いつまでも触っていたい、そんな誘惑に駆られる手触り。

　これは、ありりんだからなの？　それとも、他の人が触れば、私のお尻もこんな感じなのかな？　ちょっと気になるけど、誰に聞くの、ソレ。

　アイドルに、お尻の柔らかさが必要だなんて聞いたことはないけれど、グラビアでローアングルの多い私なら、意味のあることだよね。んー、なんだかこう、上手に表現する方法ってないのかな？

「ありりんプロデューサー。お尻の柔らかさって、写真で分かるものなの？」

「お尻の柔らかさですか？　んー、分かるように取るしかないのかなーって思いますけど、中々難しいです」

　おぉ、凄い。こんなことをされていても、ちゃんと考えてくれるんだ。

　いやぁ、やっぱり頼りになるねぇ。プロデューサーは男の人だし、律子さんに聞いたら怒られそうだし、ありりんなら安心だよ。

「ショートパンツルックにして、ちょっと重さのあるものを、お尻の上に置いてみるのはどうでしょうか？　水着だと扇情的になり過ぎて、ダメって言われそうですし……あえて、ぬいぐるみを乗せて、イメージを優先させてしまうのもアリですね。直接的には分からなくても、そこに掻き立てられるものさえあれば、ありさはイけますよ」

　この状態で、そのセリフはちょっとまずいかなぁって。揉んでるのは、私なんだけどね。

　一応、マッサージの言い訳が成り立つところしか触ってないけど、これはこれで悪くない。むしろ、参考にするのならこっちのほうが大切だよね。誰かに教わるわけでもなく、自分の考えて、学ぶのも大切でしょ？

「後は、アイドルちゃん同士で抱き合ってみて、背中ではなく、お尻に手を回してみるのもいいんじゃないでしょうか？　ちょっとツッコミが入りそうですけど、却下はされないはずですよ。あ、この場合は、水着でお願いします。そして、ありさにも１枚撮らせて下さい」

「その時は一緒に写って貰うから、ダメかな？」

　私だけ、そんな恥ずかしいこと出来るわけないでしょ？　発案者として、ありりんにも巻き込まれてもらうからね？

　何より、ジャージ越しでこの手触りだよ？　水着だったり、素肌だったらどれだけ柔らかいのか、知りたいし。

「それはダメですよぉ。この前の写真はシチュエーション的に、ギリギリＯＫだったかもしれませんが、水着はダメです。ありさでは、海美ちゃんの隣には立てませんよ」

「どうして？　身長も、スリーサイズも近いから、アンバランスにはならないと思うけど？」」

　慎重さが大きく開くなら話は別だけど、１ｃｍくらいでしょ？　細かいところまでは覚えていないけど、スリーサイズだって近かったはず。アンバランスになる心配はないよ？

「そうじゃなくて、イメージの問題です。海美ちゃんのイメージが崩れたらどうするんですか？」

　私のイメージ？　崩れるほどのイメージなんて、私にあるの？

　得意分野での方向性の違いなら分かるけど、一緒の事務所にいるのに、そんなことまで考えなきゃいけないのかな？

　うーん、あんまり難しいことを言われても、困るよ。私は楽しくやりたいだけなんだから。

「前にも言いましたけど、海美ちゃんは元気娘としてのイメージが、非常に強いです。そこに色物のありさを混ぜると言うのは、正統派路線が崩れる形ですよ？　ありさとしては、お勧めできる要素がありません」

「色物って、自分のことそんなに言わなくても良いんじゃない？」

「ひゃっ！　そんなに強く掴んだら、痛いですよ。そろそろ開放してくださいよ～」

　言い方が気に入らなくて、力を込めてお尻を揉み込んでしまった。ぐにゅっと変形するのに、戻ろうとする。柔らかいけれど、元の形に戻ろうとする。

　うーん、これはちょっと面白いかも？　横に広げたり、押し込んでみたり、遊べるね。

「……海美ちゃん？　もしかして、ありさのお尻で遊んでませんか？　これ、マッサージですよね？」

「うん、マッサージだよ？　お尻が筋肉痛になると、辛いからね」

　本当であり、嘘。筋肉痛になると、他のところに影響が出てくるから、マッサージはしておいた方が良い。

　ただ、マッサージだけではなくて、私も楽しんでいるから。お相子なんじゃないの？

「どちらにしても、海美ちゃんのイメージを崩すようなこと、ありさはやりたくありません」

「私がお願いしてもダメ？　ありりんと一緒にお仕事したいなって」

「魅力的な提案ではありますが、将来的なことを考えると、プラスになるとは思えませんよ。美奈子ちゃんと組んだり、奈緒ちゃんと組んで、ダンスを披露してくれる方が、ありさは嬉しいです」

　むぅ、そこまでイヤなの？　イメージ的によくないからって、やる前にありりんは逃げ出そうとするんだね。

　ふっふふ。いつまでも、私がやられてばかりだと思っちゃダメだよ？　こうゆう時の為に、みんなから色々と教えてもらっているんだから。ありりんが良い子だってこと、劇場のみんなは知ってるよ。

「ありりんってさ、私以上に正統派なんじゃないの？」

　情報は小出しに、相手が食いついてくるまで、待つこと。一度にしゃべってしまうと、反応を見逃してしまう。攻め込むポイントが分からなくなる。

　出来ることなら、一言だけしゃべるようにする。そうすれば、私でも駆け引きが出来るはずだから。

　そう、教えてもらったから。私はここで実践してみよう。上を目指す為には、したたかな私も必要なの。

「ありさのドコを見れば、そうなるんですか？　正統派というのは、春香さんみたいなアイドルちゃんを言うんですよ？」

「アイドルに憧れて、アイドルが大好きで。もっと近づきたくて、もっと側にいたくて。だから、ありりんはアイドルになったんでしょ？」

　アイドルのことが大好きだからこそ、ありりんはこちらの世界まできてしまった。

　アイドルのことが大好きだからこそ、ファンである自分も辞められなかった。

　データベースを更新し続けているのは、憧れのアイドルに近づくため。足りないと、そう思っているありりんの、努力の結晶でしょ？

「凄いよね。普通、憧れているだけで終わっちゃうよ？　自分には無理だって、どこかで諦めちゃうよ？　それを叶えたんでしょ？　震えそうになる心で、走り抜けたんでしょ？　凄いことじゃん」

　ありりんは、まだ信じていないんだと思う。ステージに立っている自分を、夢の中にいるんじゃないかって、そんなこと言ってる。

　一緒に歌っているのに、レッスンをしているのに。こうして、マッサージされているのに。自分はアイドルじゃないんだって、そう思い込んでいる。

　努力するために、そう考えるのは悪いことじゃないよ？　油断しないために、上を目指すために、言ってもいいのかもしれないよ？

　でも、ファンがいるんだ。ありりんだけの、ありりんが大好きな、アイドルの松田亜利沙が大好きな、そんな人達がいるんだよ？

　それを１番知っているのも、アイドルへの憧れを知っているのも、ありりんでしょ？　そこは、否定しちゃダメなとこでしょ？

「こんなにカワイイ声で鳴くのに、自分のことダメだっていうの？」

「これは、海美ちゃんがお尻を触るからです。というか、撫でないで下さい。ありさの中にある、海美ちゃんのイメージが壊れちゃいそうです」

　そっか、壊れちゃいそうなんだ。なるほどねー。

「壊しちゃえば良いんじゃない？　どんどん成長していくのに、上を目指していくのに、ずっと同じイメージで行けるわけないんだから」

　ありりんの中にいる、私のイメージ。それがどんなものだとしても、大切にする理由がなくなったよ。変わり続けていくのに、いつまでも同じイメージを持たれても、困っちゃうよ。

　過去の私や、イメージを見る前に、目の前にいる私を見て欲しいな。

「あんまりワガママ言ってると、他のところ揉んじゃうよ？　いいじゃん、減るもんじゃないんだし。新しい自分が見つかるかもしれないよ？」

「前のセリフがなくて、今お尻を触られていなければ、とてもいい言葉のはずなのに。その新しい自分は、見つけていいんでしょうか？」

「気にしない、気にしない。ありりんは、私と一緒に写真撮影をされる。これで決定だよ」

　前の撮影、楽しかったから。一緒にいることで、新しいものが見えた気がするから。私にもっと、教えて欲しい。

　トップアイドルを目指すために、走り続ける私でいるために、どんどんと活動の幅を広げていきたい。

「それにしても、水着となると色々チェックしないといけないよね。面白そうな撮影方法とかないかな？」

「んー、ありさどちらかと言えば撮っている方が、良いんですけど。それに、面白い撮影方法を模索するのは、ちょっと違いませんか？」

　面白いのって、大切でしょ？　それなのに、考えないの？

　ジェットスキーとか、スキューバダイビングとか、マリンスポーツも色々あるのに。ありりんは、乗り気じゃないのかな？

「あ、そうだ。水着といえば、私気になってたことあるんだ」

「ありさの考える、２５通りの撮影プランがあれば、大体のことは対応できますよ？　律子さんに却下されそうなものもありますが、参考にはなると思います」

「それはまた今度でいいんだけどさ。私、ありりんにお願いがあるんだ」

　２５通りって多いよ。乗り気じゃなかったはずなのに、どうしてそんなに準備してあるの？　今は必要ないけど、後で聞かせてね。

「ねぇ、ワキ見せて」

「……ワキ？」

「そう、ワキ。ありりんのワキ。ありりんの、キレイなワキ」

　どうして、そんな不思議そうな顔してるの？　多分、鳩が豆鉄砲をくらっても、そこまで驚いたりはしないよ？

　私、別におかしいことはいってないよね？　キレイなものを見たい。自分の心が望むことを、そのまま伝える。

　うん、いつも通りの私だよ？

「海美ちゃん、熱でもあるんですか？」

「やだなぁ。健康に決まってるじゃん？　だから、ほら、ワキ見せて」

　元気は私の取り柄だよ？　ちょっと練習したくらいで、体調崩したりするわけないじゃん。ありりんは、心配性だなぁ。

「前から思ってたんだけど、ありりんのワキってキレイなんだよ？　こう、普段見えないところだから、レアだし？　今日はＴシャツだから見れてないし……いっそ、脱ぐ？」

　減るもんじゃないんだし、見せてくれてもいいでしょ？　それとも今は、見せられない事情でもあるのかな？

　んー、それはそれで知りたいし、どうすればキレイって言われるような、ワキになるのかな？　ちょっとくらい、アドバイスくれてもいいでしょ？

「イヤですよ。それに、叫ばないで下さい。アイドルちゃんが、ワキなんて言葉、叫んじゃダメです」

「ほら、私はアイドルちゃんじゃなくて、高坂海美だから。叫んでも大丈夫だよ」

「全然ダメです！　海美ちゃんはアイドルで、女の子でしょ？　どうして、そうなるんですか」

　もう、ありりんは頭が固いなぁ。そんな、女の子だからいけませんみたいなこと言ってちゃ、時代に乗り遅れちゃうよ？

　時には、変化を受け入れることは大切だし、ワガママばかり言ってちゃダメ。やってみれば楽しいことだってあるんだから、後ろ向きな姿勢は、良くないよ。

「キレイだから仕方ないし、カワイイって思う気持ちは止められないよ。つまり、ありりんが悪い？」

「あのー、突っ込みはありさのキャラじゃないんですが――海美ちゃん、疲れていたりしませんか。今日は、レッスンに付き合ってもらいましたし」

　この状態で、私を心配してくれるの？　いやぁ、ありりんは良い子だね。

　それが謙遜からくるものなのか、アイドルへの憧れからくるものなのか、私には分からないけど。これが、年少組みに好かれる理由なんだろうね。

　まぁ、カメラ片手に走り回っている姿は、誰に求められないし、時々飛んでいくんじゃないかって、心配になるぐらいハイテンションな時があるから、全部が良いとは言えないけど。

　何にしても、今はそんな場合じゃないと思うんだ。少しは、自分のこと心配しようよ？　ありりんだって、カワイイ女のなんだから。この状況に、少しは危機感を持とうよ。

「そういえば、この体勢なら触れるよねぇ。ほら、なんだっけ。マウントポジション？」

　私としては、そこら辺がちょっと心配だし、この先を考えるなら、早めに知っておくほうが良いよね？

　その為にはちょっとくらいイタズラしたって、触ったり、揉んだりしたって、問題ないよね。うん、言い訳としては、上等でしょ？

「そこにトキメキを感じられるのは、のり子ちゃんだけです。ありさ的には、そろそろ帰りたいかなーって」

「私が満足していないから、まだダメだよ」

　言い訳は用意したし、ここからは遠慮しなくて良いよね。気になっているところを、気になっている分だけ、触ったり、揉んだりしていいよね？

　誰も止めに来ないのは、やっちゃって良いってことでしょ？

「ありさ、なんだかピンチな気がします」

「大正解だけど、もう遅いよ。私が満足するまで、帰さないからね」

　あれー？　どうして、笑顔が引きつってるのかな？

　アイドルの基本は笑顔ですって、ありりんが教えてくれているでしょ？　なら、ちゃんと笑顔でいてくれなきゃダメだよね？

　それとも、私が笑顔にしないといけないのかな？

　よし、そういうことなら任せておいてよ。ありりんが笑顔になってくれるまで、私頑張るからね。

　ありりんの笑顔の為、私の笑顔の為、全力でいくよ。

　

――さぁ、始めよう