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ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。 ※ 百合思考です。 最近は、なのは以外も書き始めました。
ヽ(*´∀`)八(´∀`*)ノ
プロフィール
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らさ
年齢:
37
性別:
男性
誕生日:
1986/07/28
趣味:
SS書き・ステカつくり
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ホワイトデーですよい
お返しですよい



 礼節を持って人と接することは大切だ。それについては、どれだけ親しい仲であったとしても例外ではなく、例を欠いた対応をしていると友達を失くしてしまう。怒らせてしまった結果として、縁が切れてしまう可能性だって捨てきれないだろう。
 だから、気を付けなければいけない。許されたと勘違いしてしまうのは、とても危険なことだと。
 
 
     浅き夢見し
 
 
 バレンタインのお返しは、3倍で。そんな話を聞いたことがある。軽い気持ちでもらってしまった、バレンタインチョコ。そのお返しをしようとしたところ、どうしたら良いのか分からなくなって、私は途方にくれていた。
 手作りのチョコだった上に、私は横からさらう様な形でもらってしまった。相手の許可を待たずに食べてしまった。それは本来許されるものではなく、例え怒られていたとしても、嫌われたとしても何も言えなかったのに。ありりんは許してくれた。美味しそうだから食べてしまった私に笑ってくれた。
 ありりん自身は美味しくないですと、春香さんのチョコを薦めてきたけれど、私の心を温かい気持ちにしてくれたのは、ありりんの作ってくれたチョコだから、何を渡せばお返しになるのかな? ホワイトデーの贈り物として、正しいのかな?
 そんな疑問にプラスして、3倍返しが礼儀だなんて聞いてしまったから、どうすればいいのかと朝からずっと悩んでるよ。
「うみみちゃん、どうかしたんですか? 朝からずっと、元気がないように見えますよ」
 そして、運のないことに今日の仕事は、以前の雑誌の続き。私が無理矢理巻き込んでしまったから、ありりんも同席してもらっていて――こっそり買いに行くことも叶わず、スタッフさんへ相談することも出来ない。更には、悩んでいるのが見事なまでにバレている。
 ありりんの観察力が凄いのは知っていたけれど、こうしてバレちゃんのは困りものだね。お陰様で仕事に全く身が入らず、自分でも困っていたところ。相談が出来れば簡単なんだけど、それは反則だよね。贈ろうと思っている相手にたずねるだなんて、驚いてもらえなくなるじゃん。
「別になにもないよ。ありりん、心配のし過ぎじゃない? 私はいつだって元気なんだから」
 誤魔化せるとは思っていない。そういったことは、苦手だから隠せない。
 けれど口に出来ないのだから、ありりんから顔を背けるしかないの。素直にしゃべっても、誰も幸せにならないから。
「そうですか? なんだか、悩んでいるように見えましたけど。その、ありさお役に立てないかもしれませんが、お話くらいなら聞けますよ?」
 ありりんの優しさが、今の私には辛いよ。そんなこと言われても、話すわけにはいかないのに。相談なんて出来ないのに。
 今ありりんのことについて悩んでいるんだなんて、言えるわけないでしょ? そんな恥ずかしいこと出来ないよ。
 まぁ、悩んているなんて私らしくないと言われれば、それまでかもしれないけれど、私だってたまには悩んでもいいじゃん。ホワイトデーのお返しくらい、悩んでもいいじゃん? 楽しいことは大好きだし、大切だけど、楽しむためには考えなきゃいけないタイミングがあることくらい、私も知ってるよ。
「んー、相談してどうにかできることじゃないんだよね。ありがと、ありりん」
 1日中悩んでいるわけにもいかないのは分かっているけれど、仕事に集中しなければいけないのも分かっているけれど、目の前にありりんがいる限りそれは無理だよ。純粋に心配してくれている、私の力になりたいと声をかけてくれる、そんな相手のことを無視なんて出来ないし、誤魔化し続ける自信もない。
 うぅ、どうすればいいの? 私はただお礼をしたいだけなのに、簡単なことのはずなのに、どうしてここまで悩まなきゃいけないの? そもそも、今回の仕事内容だって、私をいじめようとしているようにしか見えないよ。
 ホワイトデー特集だなんて、プロデューサーわざとだったりしない?
「それにしても、今回の特集は時期をズラしてますね。何か意図があるんでしょうか?」
「どうなのかな? 私には難しいことは分からないけど。確かに変だよね」
 1月号の特集でバレンタインだったのは分かる。発売時期と世の中の需要ってやつを考えれば、そのタイミングで出すのが普通でしょ? だから、ホワイトデー特集なら2月号でやるべきなのに。どうして、わざわざズラしているのかな?
「女性向けの雑誌、わざとズラしている時期、海美ちゃんが選ばれている理由。ありさも呼ばれた理由については不明ですが、なるほどなんとなく分かりました」
 ちょっと、1人で納得してないでよ。私全然分からないのに、どうしてありりんは分かっているの?
「海美ちゃん、不思議そうな顔してますね。記念に1枚いいですか?」
「ありりんが分かったこと教えてくれるならいいよ」
 ダメと言っても撮られるのなら、何かを教えてもらった方が得だから。ついでに、ありりんの行動にも慣れてきたよ。写真を撮りたいだけで問題はないし、何か変なことに使われる心配もない。アイドルデータベースに登録されているというのも、仕事の上で助かるのは雑誌の仕事で分かったし、ありりんて凄いよね。
 パシャリと光る眩しさにさえ耐えられるのなら、とっても頼りになるよ。
「ふっふふ、これでまたデータベースが充実します。海美ちゃん、ありがとうございます」
「別にお礼を言われるほどのことじゃないけど。それで、分かったことってなに?」
 写真を撮られて、お礼を言われて、分かっていることを教えてもらう。その全てが私のプラスになるなんて、不思議な話だよね。ありりんも幸せになれているのが、更に凄い。こういうところがあるから、プロデューサーも私達だけで行くの、許してくれたのかな?
「海美ちゃん、恋人がいた経験ってありますか?」
「ないけど? もしかして、ありりんあるの?」
 ありりんに彼氏? 想像は出来ないけれど、女の私が見ても分かる可愛さがあるから、不思議でもないのかな? そうなるとやっぱり、2人でライブにいったりするのかな?
「ありさですか? まさか、いるわけないじゃないですか。海美ちゃんも、ジョークにしても笑えませんよ」
「先に聞いたのはありりんでしょ? まるで私が悪いみたいに言うの止めてよ。それに、アイドル的には恋人がいるのなんて、NGでしょ?」
「それはそうですが。どちらにしても、恋人と過ごす幸せな時間には憧れますよね」
 うーん、幸せな時間? それは、好きな人と一緒にいて、楽しいことをやって、笑顔でいられるってことで良いのかな?
 確かに幸せだとは思うけど、それって今とあまり変わりがないよね? 私、ありりんのこと好きだし、プロデューサーのことも好きだし、劇場のみんなのこともファンのみんなも、大好きだよ?
「うーん、どうにも海美ちゃんが想像している好きは、今の話で求めているものとは違う感じがしますけど、どちらにしても幸せな時間が長く続くの、素敵だと思いませんか?」
「それなら、分かるかな。幸せな時間はずっと続いて欲しいし、いつまでも笑顔でいたいよ」
 幸せな時間が続く、笑顔でずっといられる。それはとても素敵なことで、大きな幸せだよね。中々難しいのかもしれないけれど、目指していきたいな。
「海美ちゃん、この雑誌は女性向けです。可愛くあろうとする女性を応援する、幸せを求める女性を応援する。そういったコンセプトで作らているって聞いています」
「……そんな説明あったかな?」
「最初の撮影の時、プロデューサーさんが説明していましたよ? 海美ちゃん、衣装見るのに忙しくて聞いていませんでしたけど」
 おかしいなぁ。あの時はありりんも凄いテンションで、とても人の話を聞いているようには見えなかったのに。それに、雑誌のコンセプトなんて難しいこと、よく覚えてるね。私なら、すぐに忘れちゃいそうだよ。
「ありさとしては、可愛らしい海美ちゃんが見れたので満足でしたし、再び機会をもらえて凄く嬉しいです。だから、きっちり仕事もしますよ」
「そっか。うん、ありりんが幸せそうだし、頼りにもしてるよ」
 可愛らしいとか言われても、正直ピンとこない。ファッションのことなんて良く分からないし、あの時もありりんに言われるままに撮影されていたから。難しいことは考えてなかったんだよね。
 ビックリするくらいに頼りになって、ちょっとだけ格好良かったのは内緒。最後にはお決まりのように暴走もして、それなのにスタッフさんみんなを笑わせていた。アイドルってこういうものなんだろうなって、色々なことを教えてくれたね。
「さて、本題です。ホワイトデー特集をズラしているのは、彼氏におねだりをする為、友達だった相手からもらうお返しが、どんな意味を持っているのかを載せる為でしょう」
「おねだり? それって、別にズラす意味はないんじゃないか?」
「ふふふ、甘いですよ海美ちゃん。まるでショートケーキのようで、食べてしまいたいです」
 ありりんの言っていることが分からず、首をかしげている私にどアップで迫るのは止めて欲しい。急に近寄ってくるものだから、本当に食べられるかもしれないって、ちょっと怖かったよ? ありりんの瞳の中に映る自分。その表情がどれだけ驚いているかを、私にも教えてくれる。
「良いですか? バレンタインやホワイトデーというのは、時間を空けることにより期待度を膨らませるイベントです。お互いの期待値を上げることによって、大きな幸せにしてしまうイベントなんです。けれど、これによって得られた幸せは長続きしません。いつ起きるかが分かっているから、すぐに過去の出来事になってしまいます」
 バレンタインにチョコを渡したから、ホワイトデーにはお返しが返ってくる可能性が大きい。それを待っている間は楽しいし、例え連絡が取れない時間が続いたとしても、1人で耐えられる。ホワイトデーという次のイベントに向けて、期待を膨らませられる。
 それは風船のように膨らんで、とても大きなものになって、一瞬ではじけてしまう。お返しをもらうことによって、その日は幸せに包まれるかもしれないけれど、分かっている幸せだから長続きしない。
 ちょっと寂しいけれど、幸せを求め続けている間はそんなものかもしれないね。
「海美ちゃん、そんなふうに悲しまないで下さい。この特集はそこからつなげられるものがあるって、女の子に伝えようとしているのではないでしょうか? そこで終わりではない、続きある幸せを見て欲しいって、伝えたいはずです」
「続きある幸せ? それは、ずっと幸せでいようってことなの?」
「そうです。例えば、ホワイトデーのお返しは3倍が相場だって、お話を聞いたことはありますか?」
「うん、話くらいなら知っているかな」
 まさに、今の私の悩み事。心の中を当てられてしまったみたいで、ちょっとだけ怖かったけれど、もしかして今日の仕事で私も答えを見つけられるのかな? そうだったら、ラッキーだね。
「その3倍ってなんだと思いますか? 金額ですか? それとも気持ちでしょうか?」
 3倍が何かって、考えたこともなかったよ? 普通に考えれば金額のような気がするけれど、恋人同士なら気持ちなのかな? でも、気持ちで3倍ってなに? いっぱい、大好きだよって伝えるの?
 好きだから一緒にいて、一緒に笑って、幸せなら未来を目指して。その中で、たくさん伝えるのかな?
「ありさには恋人がいたことがありません。でも、好きになったのなら沢山の思い出と、幸せが欲しいって望むと思います。そんな相手に求める3倍が、1日だけで終わるのは勿体ないですよ」
「うーん、それは金額でも気持でもないってことかな?」
「どちらも正解で、どちらも不正解です。きっと全部、もっともっと幸せを、幸せな時間をって求めると思います」
 伝えようとしてることはなんとなく分かるのに、言っていることは分からない。言葉にして伝えられる幸せとは、また違うの? 女子力が高ければ、分かるのかな?
「難しいことではないです。ホワイトデーだけで終わったら勿体ないので、これからも幸せでいたいと相手に伝えましょうと、それを求める為に大切なことを雑誌として、恋する女の子を応援していくんじゃないでしょうか?」
「へぇ、そこまで考えているなんて凄いね。ありりん、編集者とか向いてるんじゃない?」
「それはどうでしょうか? 今のも全部、ありさが勝手に考えているだけで、本当は全然違うかもしれませんよ?」
 本当かどうかが大切なのか、それとも想像できることが大切なのか。もしかしたら、そのどちらかに辿り着けるのが求められているのかもしれない。ありりんが見ている世界は、私が見ている世界とは違う。たぶん、劇場にいるメンバーの中でもすぐに理解出来る人は少ないんじゃないかな?
 それでも、臆することなく自分を持って、それをちゃんと伝えられるのはやっぱり凄いね。私にも、少しで良いから分けて欲しい。
「想像ついでにもう1つです。さっきのは既に恋人がいる方のお話ですが、今度は片思いの人にチョコレートを贈った、恋する女の子の話をしましょう」
「そういえば、そんなことも言ってたね」
 恋人同士へのメッセージ。それを考え付いただけでも凄いことなのに、ありりんの頭の中にはまだ伝えてないことが残っている。一緒に仕事をしていて不思議に思うけど、ありりんってどこを目指しているのかな? アイドルの枠で収まるのかな?
 なんだか、ちょっと勿体ないような気もするし、このまま一緒にアイドルを続けて欲しいとも思う。ライバルだけど応援したくなるような、応援してほしくなるような、そんな不思議な存在。
「ホワイトデーのお返しは、贈り物によって意味が変わります。ちゃんと、返事の意味を持たせられるんです」
「そうなの? キャンディーとかマシュマロとか多いよね?」
「最近は色々なものが売られていますし、お菓子メーカーが売り上げの為に出している物もありますけど。例えはキャンディーなら、あなたを愛しています。クッキーなら、友達でいましょう。こんなふうにメッセージを込めることも出来る、素敵なイベントです」
 知らなかった。そんなこと考えたことなかったけど、本命チョコとか義理チョコとかあるし、お返しに意味がこもっていても不思議はないよね。うーん、ありりんは女の子してるなぁ。ちょっと、自分が恥ずかしいよ。
「もちろん、お返しですから。気持ちが大切だというのも分かりますけど、こんなふうに考えてみるのも楽しいですよ。男の子側がどんなことを考えて贈ってくれているのか、それとも何も考えていないのか。ちょっとしたことですけど、この先の春も楽しく過ごせそうでしょ?」
「うん、そういうの良いよね。嬉しくなるね」
 本命チョコに対して、クッキーが返ってきた時は悲しいけれど。返事として返ってきていない、美味しいものを選んでくれている可能性があるから。告白の予習みたいに、バレンタインで試してみるのもありだね。
 私としては気持ちはちゃんと伝えた方がすっきりするけれど、恥ずかしがりやの女の子も多いから。ちょっとした勇気を送ってあげられるかも。
「……そろそろ行きましょうか。カメラマンさん、待ってそうですね」
「あはは、休憩時間なの忘れて、話し込んじゃったね」
 会話の途中に訪れる、ちょっとだけの間。その間にありりんは、何を考えたのかな? 何かに気付いたような、そんな柔らかい笑顔を浮かべている。うーん、私の疑問が解けているの、気付かれちゃったかな?
 先にある幸せを願う。続いていく幸せのために、贈る。それがホワイトデーのお返しなら、細かく悩むことはないんだよね。思うままに、私がいいと思うものを贈ればいい。そう、教えてもらった気がするから。
 私はありりんのことが大好きで、いっぱいお世話になっているから。私に出来るやり方で、ありりんが喜んでくれそうなものにするよ。ちょっとズルいかもしれない、少し前の私ならありえないっていう方法。
 でも、それこそが1番だと思うから。今までとこれからのことを考えて、1番だと思う方法にするよ。
「ねぇ、ありりん。相談があるんだけど、撮影が終わった後に付き合ってくれない?」
「はい、もちろん。ありさで良ければお付き合いしますよ」
 私には私のやり方があって、ありりんのように上手には出来ない。でも、それだってらしさだと思うから。私に出来る方法でお返しするよ。
 ありりんが喜んでくれるように、驚いてくれるように。ちょっとだけ考えてみる。
 その為にまずは、元気にお仕事頑張ろっか。
 
――終わりがないのだから、焦る必要はないよね
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