ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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1986/07/28
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甘いの書きたい。甘いの読みたい。
そんな感じで、はるちはです。
・w・) 本文以外は更にダメな私で御座います。許して
そんな感じで、はるちはです。
・w・) 本文以外は更にダメな私で御座います。許して
きらきらと輝く綺麗なもの、それに惹かれてしまうのは仕方の無いことなのでしょう。近づいてみたいと願い、手を伸ばすのは当然なのかもしれません。
ただ、触れてしまったから壊れるもの、願ったから消えてしまったもの。そういったものこそ、綺麗だと感じてしまいます。
壊れやすく、繊細で。私には無いもの。
求めてはいけないと理解しているはずなのに、どうして心のトゲは抜けないのでしょうか?
流れ星の落ちるところ
雲ひとつなく、晴れ渡る空。小鳥のさえずりが耳をくすぐり、ここが都会であることを忘れそうになる。
動き出す前の街は静かで、ビルの屋上で発声練習をしても、誰かに見つかることはない。だから、新曲のフレーズを試そうと思っていたし、譜面を片手に声を出していた。
油断していたのは認めるし、誰かに聞かれたとしても動揺するつもりはなかった。事務所に所属しているみんなは、心の許せるライバルだから。アドバイスを求めることも出来るし、感想を貰うのにも遠慮をしたことはない。
ただ、春香に見られるのは予想外で、見つかったことに動揺してしまったのは、想像外の出来事だった。珍しいことでもないのに、一緒に練習だってしている仲なのに、どうして今日に限って――
「千早ちゃん、大丈夫?」
「ええ、もう大丈夫よ。ごめんなさい、驚かせてしまって」
私の声が聞こえたからと、彼女は屋上に上がってきたようで、その行動には何の算段もないというのに。なぜ、動揺してしまったのかしら?
驚いて、しりもちをついて、譜面をばら撒いてしまうだなんて、今までにはありえない失態。何よりも、私が驚いたことで、春香を悲しませていないか心配。
笑って手を貸してくれたけれど、心のどこかに悲しさを与えてしまったかもしれない。彼女は感じやすいから、見た目以上にずっと考えていて、いつも人の心配ばかりしているから。
せめて、私だけでも頼れる存在でいようと、そんなふうに頑張っているのにな。どうしても、上手く行かないときがある。
それ自体は仕方の無いことと、諦めも付くのだけれど、よりもによって春香自身の前でこんな失態を犯すなんて、私まで落ち込みそうだわ。
別に、私の行動の全てが、彼女に繋がっているわけではない。どれだけ一緒にいることを願っても、いつも一緒にいられるわけではない。アイドルである以上、それぞれが仕事をもち、別の現場にいることのほうが多いのだから。
だからこそ、一緒にいられる時間を大切にしたいと、そう思っていたはずなのに。近づかれるの、苦手だったかしら?
「歌に集中し過ぎていたみたいね。階段をあがってくるのにすら、気付けなかったわ」
「私こそ、ごめんね。その、千早ちゃんの歌声が聞こえて、ちょっと嬉しくなっちゃったから」
会えない時間が増えてしまった分、相手のことを求める欲求が、以前よりも格段に強くなってしまった。
どうやら、春香もそれは同じようで、私としては嬉しいのだけれど。嬉しいからこそ、今回の失態が重い。
一緒にいられるのに、どうして。こんな、いいわけじみたことを並べる、そんな時間が欲しいわけではない。春香に笑ってもらえる、幸せになってもらえる、そんな時間にしたいのに。
望みを全て叶えるのは、難しいのかもしれない。
ただ、自分の努力でどうにかできたはずの時間を、笑顔を逃してしまったことに悔いが残る。
「最近、中々会えてないし。千早ちゃんの歌、久しぶりに聞けるんだって思ったら、じっとしてられなくて」
私が見たいのは、こんな表情ではない。春香に悲しそうな顔をさせる為、私は歌っているのではない。
だから、どうにかする。原因を作ったのは私なのだから、春香を笑顔にするのも私の役目。
綺麗な言葉は並べられない、飾った言葉なんて知らない。私の言葉には、そんな装飾はついていないから。思っていることを、そのまま伝える。
「春香、そんな顔をしないで。私も、春香に会えて嬉しいから。私の歌を聞きたいと言ってくれて、凄く嬉しいから」
失敗はした。恥ずかしいところも見せた。悲しませてしまった。
その事実がなくなることはない。
「この曲は、まだ感覚を掴めていないの。イメージの中でしか、歌えていないの。とても丁寧に作られていて、響がステキな歌なのに、私の歌は届いていない」
春香以外には、言い訳にすらならない言葉。励ましにもならず、聞くことさえ拒否されそうな、そんな言葉達。
それでも、私は知っているから。春香が聞き入れてくれると、信じているから。
「少しでもイメージに近付けたくて、集中し過ぎてしまったわ」
私の想いを伝えれば、返してくれると。ちゃんと、春香の言葉を聞かせてくれると、信じているから。
飾らず、悩まず。私の心にあるものを、ただ伝えれば良い。それだけで、彼女は応えてくれるから。
「そっか。それなら、私も悪いんだよ? 千早ちゃんが頑張っているの、伝わってきたのに。ここにいるよって、伝えてくれているのに。ちょっとだけ、焦っちゃったから。早く会いたいって、急いじゃったから」
春香の答えも、私と同じレベルなのかもしれない。そう感じずにはいられない、ただの感情の羅列。
けれど、そのままの言葉だからこそ、私の胸にも響いてくる。春香の温かさが、私の胸に溜まっていく。
「大丈夫よ。私はどこかへ消えたりはしないわ。今もこうして、目の前にいるでしょう?」
春香の目を覗き込みながら、悲しみが残っていないのを確認しながら。私は私の言葉を続ける。
「安心して。春香をおいて、どこかへ行ったりはしないわ」
少し離れることはあるけれど、戻ってくるから。あなたの隣に、手をつなげる位置に、ちゃんと帰ってくるから。
帰る場所があるからこそ、私は羽ばたける。未来を目指して、温かい気持ちのままで、大空を羽ばたける。
春香がいてくれるから、私は平気なの。
「えへへ、そうだったね。うん、それが良いな」
離れたり、くっついたり。手をつないだり、抱きついたり。その時々で表現の仕方は変わっても、私達が一緒にいることに、変わりは無い。
春香の心に寄り添い、そこにあり続けることを望むのが、私なのだから。心配しないで。
朝日に照らし出される、満面の笑顔。それこそが私の求めていたものであり、私が歌うための原動力。
もっと高く、遥か高く。力強く羽ばたくための、歌に力をくれるもの。
どこにいても届けるために、どんな時でも届けるために、私の歌を響かせるために。
――今日もここで、私は歌い続ける。
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