ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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1986/07/28
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まえがきとか、あとがきとか
そういったセンスの塊を、私に求めてはいけません。
いや、ほんと
そういったセンスの塊を、私に求めてはいけません。
いや、ほんと
叶うであろう願い事の為に、人は前進出来る。努力が報われると信じているから、前へと進むことが出来る。
では、達成するのが困難な目標の為に、どれだけの人が頑張れるのだろう?
はっきりとした形も無く、達成した時の基準も無く、達成したところで咲があると分かっている道。
それに対して、どれだけの人がたゆまぬ努力を続けられるのだろう?
そんな疑問を抱いた時、彼女の凄さに気付けた。
時間という重さ
「私が求めているのは、こんなのじゃないんだよ」
仕事が順調に終わり、レッスンにも問題は無く。アイドルとして考えるのであれば、何も問題は無いはずの日常。
けれど、私は自分自身への不満が溜まっているのを感じていた。
確かに、私はアイドルの一員として、ファンに応える必要があるのかもしれない。私の夢である、トップアイドルの為に、努力すべき。そんなことは分かっているの。
ただ、天海春香として考えた場合、こんな流されるように日常で、満足してはいけない。自分のやりたいことをちゃんと考えて、それを誰かに相談した上で、活動しなきゃいけないのに。最近の私は、ただ流されるかのよう、仕事として、アイドル活動をこなしてしまっている。
ちょっと前であれば、そんなことは出来なかったし、こんなふうに考えるような余裕も無かった。失敗しないように、みんなと一緒に走っているだけで、精一杯だった。
だから、分からなかったのかもしれない。
「千早ちゃんに会いたい」
何よりも、彼女が傍にいてくれたから。悩む必要なんて、どこにもなかったのかもしれない。
不安になった時、どうしようかと悩んだ時、千早ちゃんは必ず傍にいてくれた。私の為にと、時々は厳しいことだって言ってくれた。千早ちゃんが笑ってくれるなら、これが正しいんだって、私は頑張れたのに。
お仕事が忙しいのは良いこと、アイドルとして知名度が上がるのも、番組に出演できるのも、全部嬉しいことなのに。どうしてかな、傍にいられないこと以上に、私の心が千早ちゃんに置いていかれてしまっているような、縮めることの出来ない距離をあけられているような、寂しさを感じるの。
「寂しいよ、千早ちゃん」
独りでいる時間が、とても冷たいものに感じられる。千早ちゃんから引き離されるような、そんな怖さを感じてしまう。アイドルでいることが、私が目指しているものが、私達の間に横たわっている。超えられない、溝を作ろうとしているように感じてしまう。
電話をかければ声は届くのに、会いたいってワガママを言えば、会ってくれるのに。誤魔化しても、この冷たさだけが消えない。千早ちゃんが遠くに行ってしまう、漠然とした不安を消せずにいる。
千早ちゃんの歌を聞いている時も、テレビで姿を見かけていても、私にはアイドルの如月千早しか見えない。
私が知っているはずの、千早ちゃんを探し出せないでいる。
どうしてなのかは分からない。以前の私なら、そんなことはなかったのに、どうして急にこんなふうになってしまったの?
私はただ、夢に向かって頑張っただけなのに。千早ちゃんの隣にいて、笑われないだけの、みんなに納得してもらえるアイドルに、なりたかっただけなのに。どうして、こんなふうになっちゃうのかな?
頑張り方、間違えたのかな。トップアイドルになるって、見えていない目標の為に頑張ったから、失敗したのかな?
でも、それくらい目指せないと駄目だって、そう感じたから。誰かに輝きを届ける為には、遠くの人にも声を届けたいのなら、トップアイドルにならなきゃって、そう思ったから。
「くよくよしてちゃ、笑われちゃうね」
気持ちを切り替えよう。
うん、目指しているものは、間違ってない。溝が出来そうなら、飛び越えてしまえば良い。
悩むくらいなら、どうしたいかを伝えれば良い。私のやりたいことを、私の望むことを、そのまま伝えれば良い。
難しいことを考えているなんて、私には似合わないんだから。そこら辺、千早ちゃんは分かってくれるから。隠さなくて良いよね?
最近、千早ちゃんが悩んでいるのも感じられるし、相談したら大変なことになっちゃうかもしれないけれど、思いを押し留めたままでいるなんて、私には無理だから。千早ちゃんの悩み事も、一緒に解決するから。
ねぇ、私のわがまま、ちょっとだけ聞いて欲しいな。
「やっぱり、デートだよね」
私のしたいこと、私の望むこと。その全てにおいて、まずは千早ちゃんに会えなければ、何も進まない。離れたまま出来ることなんて、何もない。
だから、まずは会いに行くよ。一緒の時間を過ごす為に、千早ちゃんの隣で笑顔になる為に。もう、迷わない。もう、止まらない。
私は、千早ちゃんと甘い時間を過ごしたいの。今のような惰性ではなく、私達が望んで初めて手に入るような、そんな時間が欲しいの。わがままだって、分かってる。千早ちゃんが、同じことを望んでいない可能性も、ちゃんと分かってる。
それでも、私はちゃんと伝えるよ。私が考えていることをそのまま、隠すことなく千早ちゃんに伝えるよ。
どうなってしまうかなんて、行動してから考えれば良い。ダメなことなら、ちゃんと止めてくれるはずだから。私はただ、千早ちゃんを信じればいいの。もらえた元気に応えられるように、頑張るだけでいいの。
「えへへ、簡単なことだったんだね」
携帯電話の中、誰にも見せることのない写真。ゆっくりと笑い、私を安心させてくれる彼女の顔。
その隣に一緒にいられるのかと思うと、走り出したくなるような、ごろごろと転がりたくなるような、じっとしていられない気分になる。
止まれなくなってしまった、そんな私の心。
止めることを辞めてしまった、私の気持ち。
まっすぐ、あなたの元へ届けるから。ちょっとだけ、聞いて欲しいな。
――きっと素敵な時間が待ってる
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