ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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ちとちよでの9本目くらい?
そういえば、このシリーズは「千代田(病)」ってフォルダにあることが、先日発見されました
いやはや、どう見ても喰われる側なのに、どうしてこんなフォルダにあるんでしょうねぇ
そういえば、このシリーズは「千代田(病)」ってフォルダにあることが、先日発見されました
いやはや、どう見ても喰われる側なのに、どうしてこんなフォルダにあるんでしょうねぇ
夢が叶った世界というのは、何を目標に生きればいいのでしょうか? 何のために、努力をすればいいのでしょうか?
夢をかなえてしまった世界では、頑張らなくても良いのでしょうか? 叶えた夢を維持する為に、今のままでいる為に、何をすればいいのでしょうか?
叶うと思っていなかったから、検討も出来ません。叶った後のことなんて、想像もしませんでしたから。
この先は、全てが未知の世界。恐怖と自由に満ちた、不思議な世界。
黒い温もり
純愛とは程遠い、そんな恋愛をしてしまった私達。どちらも、叶うことなんて夢にも見なかった。叶った後のことなんて、何も考えていなかった。
だからでしょうか? 幸せであるはずの日々にも、少しだけ影が落ちています。幸せなはずなのに、そこには光があるはずなのに、闇の中にいるような、見えないからこそ安心しているような、変な感覚があります。
私は何も後悔していない。千代田と恋人になれたことも、気持ちを伝えてもらったことも、怪我をした事だって、そんなに怒るつもりもない。
けれど、千代田は今のままでいいのかしら? 確かに、きっかけを作ったのはあの子だけれど、だからといって今の状況を押し付けるのは間違っている。純愛に、綺麗な恋愛に憧れたからこそ、自沈しようとしたんじゃないの?
私を傷つけてしまったと勘違いして、私を泣かしてしまったと勘違いして――いえ、見た目だけで言えば事実かしら? そこに関わっている感情が真逆なだけで、私が襲われたのは事実だから。
抵抗できないようにされて、声が出ないように抑えられて、激しく求められた。
正直なところ、あの晩のことを思い出すたびに、体がうずいてしまう。私の中に根付いてしまっている、黒い感情が動き出そうとする。千代田を求めて、温もりを貪ろうと、私の理性を壊しにかかる。
姉というポジションでなければ、気にしなくても良かったのかもしれない。ちょっとくらい暴走しても、許してくれるとは思う。
ただ、その優しさに甘え続けるのは、姉としてどうなの? 千代田の、ただ1人の姉として、あの子の模範になるべき人物としてみた場合、その感情は正しいと言えるの?
言えるわけないわよね? 私は、姉のままで千代田を求めたいのだから、失望されるようなことがあってはいけないわ。全てにおいてリードできる、その上で全てを受け入れられる。そんな、理想の姉である必要があるの。
道のりは長くとも、厳しくとも、そんなことは知らない。やるしかないのだから、姉としての私を確立させる。
「千歳ねぇ、本当にいいの? その、私大変なことをしちゃったのに。なんだか、行き辛いよ」
傷が癒え、戦闘行為への問題はないと診断された今、千代田をベッドに縛り付けておくことは出来なくなってしまった。
出来ることなら、このまま静かに暮らしていて欲しかったけれど、軍属である以上、軍艦そのものである以上、その願いが叶えられることはない。
ここで生きる以外の術を知らない以上、ルールには従う必要がある。
「大丈夫よ。みんな、ちゃんと理解してくれているから」
提督は随分と上とやり取りをしてくれたみたいで、暫くの間は危険の少ない、正面海域だけでの任務。軽空母への改造が完了している今、錬度的な話しをするのであれば、もっと激戦区へと投入されるべきなのに。
お礼を言おうとしても拒否されるし、幸せそうにしてくれれば言いなんて、本当あの人はなにを考えているの? それと一緒になっていることに、違和感を抱かせない程度には、不知火さんも変わってしまっているし。楽園、本当に作るつもりなのかしら?
恩がある以上、協力するのも悪くはないかもしれないわね。私と千代田の為にも、私の守りたい者の為にも、彼女の語る楽園は魅力的なのだから。
「ちゃんと理解って。どう考えても、おかしいでしょ? 私、千歳ねぇを襲ったんだよ?」
「ええ、恋人関係になる前の仲良し姉妹が、ちょっと早めの一線を越えてしまっただけよ? 私がそれで良いって伝えたら、納得してくれたわ」
夜這いだなんて、情熱的なこと、どこで覚えてきたのかしら? 今後の為には、あんな不意打ちは禁止しないとね。私が我慢できなくなっちゃう。
なんでもありになってしまえば、有利なのは私だから。制限があるほうが燃えるというのに、そんな言い訳では、本能は誤魔化せない。
「好いている者同士がやっていることよ? 別に、批難される覚えはないわ」
実際のところ、調書のような形や、事情聴取をされたわけではない。わいわいと、ガールズトークの一環として、恋人との情事を語っただけ。騒がれて、冷やかされて、祝福されて。綺麗にまとめることさえ出来るのであれば、この鎮守府ではその手会話は、禁止すらされていない。都合がいいような感じもするけれど、ただ面倒だっただけに感じるのは、疑い過ぎなのかしら?
戦場という異常環境下にいるのだから、少々のことは問題にならない。それは、人間であっても艦娘であっても、何も変わらないようね。結束が強くなるのならそれでいいと、そう言ってくれているのかしら?
「そっちは良いとして、その、提督に怒られたんじゃない? 私が寝てる間にも、何回か呼び出されていたし」
「呼び出されたのは、改造を受けた関係よ? 千代田も報告書を出したり、要望を伝えたりしたことあるでしょ?」
水上機ではなく、艦載機を搭載するようになって、随分と勝手が違うことに気付かされた。きちんと迎える準備をしておかなければ、残燃料によっては墜落してしまう。着水してしまったら、機体はほぼ使い物にならない。同様の心構えでいたのでは、意味がない。
航海に関しては、揺らさないようにすること、ちゃんと固縛すること。その上で、スクランブルに応えられるような体制が必要。
覚えることも多ければ、切り替えていくべきことも多い。艦種が変わったのだから、当然の話よね。
今回の出撃だって、同型艦である千代田から、技術を学ぶための期間として設定されたもの。千代田は既に軽空母としての実績があるから、姉妹艦である私の指導に丁度良いと、そういった内容で説明がされているらしい。
……間違ってはいないけれど、嘘は1つもないのだけれど、今の情勢で、この計画を通してしまった提督って何者なの? 発着艦訓練が必要なのは事実かもしれないけれど、それは千代田が寝ている間に習得できるように、飛鷹さん達が協力してくれたし、艦載機についての理論は、提督自身によって教えられた。
おかげで、今日の時点で私は戦力として数えられる程度にはなっている。
千代田をフォローするにはこれくらいで良いと思うけれど、1ヶ月ももらってよかったのかしら?
「私、自沈しようとしたのよ? 艤装の持ち出しだってあるし、あの提督が許してくれるとは思わないわ」
「それについては、謹慎処分で片付けたという形らしいわ」
「おかしいでしょ? 解体されても、営倉へ放り込まれても、文句は言えない立場なのに」
千代田の言うことはもっともで、軍隊として見た場合、提督の処置は甘過ぎる。理由を聞かされ、報告書を見せてもらった私ですら、最初は信じられなかったのだから。この説明だけで理解しなさいというには、酷かもしれない。
「千代田の怪我は、夜間飛行の演習扱い。艤装の持ち出しがなく、最小限に留めていたのは、低速艦での回避性能を確かめる為。私の艤装持ち出し、出撃に関しては、正式に護衛としての命令が下っているだけ。怪我に関しては、想定内であり、轟沈させる予定はそもそもなかった」
千代田の受けた魚雷が1発であり、事実として沈まなかったから通じる言い訳。
救出を遅らせたのも、沈没までの想定時間の割り出しを行うためと、非常に軍隊らしく、冷酷な命令内容になっている。
これによる療養と、心のケアを言い訳に、私達2人の出撃は停止扱いになっていた。勿論、同時期に合わせる形で、私を改造したのも報告書に加えられた。
報告の内容と、作戦の立案としては、間違ってはいない。これにより、敵潜水艦への警戒はいっそう高まったし、浸水状況や、緊急回避に関する報告書まで出回る形となった。
事務職寄りだから、書類の重要性は分かっているなんて言っていたけれど、あんな教科書みたいな報告書見たことないわ。
「なんとなくで分かっていたつもりだけれど、あの提督がやり手なのは、事実じゃない?」
「助けられた立場で言うのはなんだけど、何者なの? 不知火さんを手懐けた時点で、変だとは思ったけれど、ここまでくるとおかしいでしょ?」
千代田の不安はもっともなもの。有能なのは助かるけれど、力量が全く読めないものが司令系統にいると考えれば、これほど怖いものはない。
現場にいる私達が気付かない内に、どれだけの出来事が進んでしまうのか、想像すら出来ないのだから。
「千代田の言い分も、不安も分かるわ。私だって、怖いとは思う」
心に芽生えてしまったものを、無理矢理否定することなんて出来ない浮かんでしまったものを、なかったことには出来ない。
「でも、味方であるのなら、頼もしくて良いでしょ? 何かあっても、私が守ってあげるから。安心しなさい」
「むっ、私より錬度の低い、千歳ねぇに守れるわけないでしょ? 感さえ戻れば、負けないんだから。主導権は渡さないわ」
一方的に守られることを良しと出来る子ではない。互いに支えあえる関係を、対等な立場を望んでいるのでしょう。
ふふ、でもまだ甘いわよ? 姉としての一日の長は、私にあるのだから。簡単に主導権は譲ってあげないわ。
「あら、またお姉ちゃんを襲いたいだなんて、千代田も大胆ねぇ」
「そ、そんなこと、言ってないでしょ! ……千歳ねぇがいいなら、頑張るけど」
「なら、今夜を楽しみにして、出撃しましょう?」
何にしても、千代田に深く考えさせてはいけない。この子は、死ぬ覚悟を決めてしまっているのだから。私よりも、死に近いところへいってしまったのだから。
恐怖してくれるなら良い。近いからこそ怖いと、怯えてくれるなら良い。
もし、怖がらないようであれば、敵への恐怖心が薄れてしまっているのであれば、危ないわ。一緒にいられない時、どんな行動に出てしまうのか、予想できなくなってしまう。
折角始まった幸せなのに、こんな形で終わらせたくはないから。千代田、恐怖を忘れちゃダメよ?
――幸せが、常に光にあるとは限らないの
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