【艦これ】崩れた想い【ちとちよ】

1月2日は姫始め☆
初めてではなく、始めるってのが個人的には、好きなニュアンスとなります
今年も幸せを振りまいてくれることを、期待できる日なのですから

・ｗ・）　まぁ、このSSには関係ないですが

姫初めとなってしまうであろう、このSS
そして、初めてで終わってしまうであろう、お話
少々悲しくもありますが、たまにはこういった話も書いてみたいんです
巻き込まれた　ちとちよ　はたまったものではないでしょうが……

純粋な子ほど、歪みやすく、爆発しやすいものなんです

　誰にでも譲れないものがある。他の人に代わってあげられないこと、他の人には譲り渡せないこと。本人が認めなくても、心の奥底に欲望が眠っている。

　それが何なのか、幸せの形に繋がっていくのか、誰にも分からない。覗いてみるまで、誰も気づくことが出来ない。

　ただ、それこそが望んでいたことであり、幸せを壊してしまう危険性を孕んででも、願ったことであると、忘れてはいけない。

　責任を取れるのは、私だけなのだから。

　

　

　　　　　崩れた想い

　

　

　いつから壊れてしまったのかな？　いつから歪んでしまったのかな？

　私の心の中にあったもの、大切だったはずで、綺麗だった気のする感情。千歳ねぇへと向かう、私だけの想い。

　それが恋愛感情だと、気付けないほどに私は幼くなかった。同時に、許されないものであることも、理解してしまった。

　だから、隠したのに。誰にもばれないように、私ですら忘れるように、奥深くに隠したはずなのに。手の届かないところへと、光の届かないところへと、沈めたはずだったのに。

　どうして、こうなってしまうの？

　私は幸せな未来を願ったのに。私が願ったのは、明るい未来だったのに。どうして、千歳ねぇを泣かせてしまっているの？

　私が泣かせたの？　私が、千歳ねぇを泣かすことを、望んだの？　私が千歳ねぇを、傷つけたの？

　うん、そうだよ。さっきまでは感情に振り回されて、気付かなかったけれど、私が泣かせたんだよ。押し倒して、唇を無理矢理奪って、それから――酷いことをした。

　千歳ねぇの意思を確認することさえせずに、自分の欲望を押し付けただけ。謝りながら、それでも力を緩めることはなく、泣かせてしまった。

　どうして、こうなってしまうの？

　あの感情は隠したはずだったのに。ちゃんと、心の深いところへ沈めたはずなのに。どうして、千歳ねぇを傷つけてしまっているの？

　私は失敗したの？　私が失敗したから、千歳ねぇが傷ついているの？　私が千歳ねぇを、泣かせているの？

　うん、やっぱりそうなんだよ。震える手が覚えている、千歳ねぇは温かかった。濡れた唇も覚えている、千歳ねぇって柔らかいんだ。私が傷つけたから、私の身体は知っている。

「ごめんね、千歳ねぇ」

　声をかけるだけで振るえ、少しでも私から逃げようとする姉。その温もりを失うのが怖くて、上手く伝えられなかったことが悔しくて、手を伸ばしそうになる。怯えさせるだけだと分かっているのに、さっきしたことを思い出してしまうのに。

　私は、ただ心配していただけなのに、傷を重ねていく千歳ねぇが、心配なだけだったのに。戦場で私のミスをかばって、それなのに笑ってくれて、代わりに提督に怒られて。

　何も悪くないはずなのに、千歳ねぇが怒られた。何も悪くないはずの、千歳ねぇが怪我をした。それが悲しくて、庇われてばかりなのが悔しくて。何かをしてあげたかっただけなのにね。

　どう失敗すれば、こんなことになってしまうの？

　お礼を言いたかっただけなのに、どうして傷つけて、謝ってるの？　千歳ねぇが何をしたって言うのよ。いつまで、甘えているつもりだったんだろう。大人になるって、千歳ねぇの隣に並ぶって、そう決めたはずだったのに。

　どうして、失敗ばかりするのかな？

　私だって、頑張っていたはずなのに、全部台無し。千歳ねぇに笑って貰うために、喜んでもらうために、色々と頑張ってきたはずなのに。全部、意味がなくなっちゃった。

　何より、こんなことをしてしまった以上、今までの関係は終わってしまう。姉妹としての、妹としての私はもう終わってしまった。

　そして、千歳を傷つけた、どうしようもない千代田が出来上がっちゃった。何も出来ないくせに、他人を傷つけた最低なモノが出来てしまった。

　もう、どうしようもないんだね。千歳ねぇに抱きしめてもらうことも、笑ってもらうことも叶わない。私が勝手に始めて、全部壊しちゃったんだ。どうしようもないくらい、滅茶苦茶にしてしまった。

　許して欲しいなんて言えない。傷つけるつもりはなかったなんて、伝えられない。現実として、私は最低なことをしてしまったのだから。私が傍にいるだけで、千歳ねぇは壊れていくだろう。

　私の声が怖がらせて、私の音が怯えさせて、このままではいつか壊れてしまう。恩を仇で返すことになるなんて、思いもしなかったよ。

「ごめんね、千歳ねぇ。バイバイ」

　どうしようもないのなら、終わらせるしかない。傍にいられないのなら、離れるしかないでしょ？

　謝って許されないのだから、許されてはいけないのだから。どこかに消えてしまうしかないでしょ？

　私は失敗したのだから、消えればいい。それ以外の方法が、思いつかないよ。

「ありがとう、千歳ねぇ。妹でいられて、良かった」

　最低なことをして、最悪な言葉を伝えて――そんなことしか出来ないんだね。私、駄目な子だ。

　だから、失敗した。だから、傷つけた。だから、泣かせてしまった。

　もう、終わりにしよう。私の時間は、もう終わりにしよう。取り返せないのだから、終わるしかない。

　今なら、誰にも邪魔されない。汚い私を、これ以上見せずにすむ。水底でなら、私が眠ってもいいはずだから。

　

――駄目な妹でごめんなさい