【艦これ】大井さんの事情

大井さんはクレイジーサイコレズって、イメージがあるんですよね。
北上さんを押し倒しそうで、セクハラしてそうで、なんとも「コイツどうしよ」感があります。

しかし、それは本心ではなかったら？　実は気弱な乙女だったら？
凄く可愛いと思いませんか？　自分を偽ってまで想いを告げようとしていると思えば、凄く可愛いですよね？　ね？

・ｗ・）　そんな感じで書いてみたいっ！
　　　　　誰も書いてくれそうにないから、書いてみたい。

と、そんな理由で書いて見ました。
多分、続きますが……いつになるかは不明ですな

　誰かを好きになるというのは、とても素晴らしいことです。それを口に出し、相手に想いを伝えられるのなら、幸せを掴むこともできるかもしれません。

　時には胸に秘めてしまうこともあるでしょう。口に出すことを躊躇い、萎縮してしまうときもあるかもしれません。

　しかし、幸せが目の前にある状態で、我慢できる人は多くありません。どうにかして、手を伸ばそうとします。

　ただ、その幸せの為に選んだ手段。私の場合は、本当に正しかったのでしょうか？

　

　

　　　　　大井さんの事情　～恥ずかしくて、死んでしまいそうです～

　

　

「大井っち、お疲れさまー。今日も大活躍だったね」

「うふふ、北上さんの肌を傷つけさせはしないわ。この感触は私だけのものなんだから」

　鎮守府内で、公認ともなっている私達の仲。他の誰にも譲れない、私だけの位置。

　北上さんの隣に立ち、彼女を守る為に全力を尽くす。そうすることを、彼女も許してくれるから。私はここにいられる。その先にあるものだって、北上さんを守り続けてきた結果でしかない。

　彼女の笑顔が見たいから、彼女の声を聞きたいから、私の為に私は行動してきた。自分の心に素直になって、北上さんに喜んで欲しい。彼女の笑顔が元気にしてくれるから、北上さんに笑って欲しい。

　そんなワガママだけで行動してきたはずなのに、どうしてこうなれたのかしら？

「えへへー、そんなこと言われると照れるよー」

「照れてる北上さんも可愛いわ」

　口から出てきている言葉。その全てが北上さんに絡み、私を惹き付ける役目をしているのは理解している。どれだけテンションをあげても、どんなに熱の篭った言葉を伝えていても、私の心はどこかで冷めている。

　一歩後ろのところから、道化のように笑う自分を見つめている。

　そう、北上さんには何も責任はない。彼女が私にとって魅力的過ぎて、輝かしかっただけ。そして、私は彼女と釣り合わない、そんな存在であっただけ。暗くて、喋ることもできなかったはずで、目も合わせられなかった。

　最初の頃からで考えるのなら、ありえないほどに充実した日々。彼女の隣で笑っていられる、肩を並べて戦うことの出来る日々。

　時々抜けたことを言う提督も、今では応援してくれているし。日々の努力の大切さというものを、私は知っている。

　だからこそ、偽っている自分への冷めた感情を、北上さんへの罪悪感を、いつまでも消すことが出来ない。本当の自分を見せられていないことを、自分が一番知ってしまっている。

「大井っち、この後どうするの？　間宮さんのところでも寄っていく」

「ご一緒したいのは山々なんですけど、ちょっと出さなければいけない報告書があるの。あんなのでも提督ですから、フォローしてあげないとね」

　北上さんと一緒にいられる時間は、私にとってとても大切なもの。何物にも代えられない、幸せな時間。

　ただ、その時間こそが私の心を締め付け、彼女への嘘を積み重ねていることも、ちゃんと理解してしまっている。何もかもを捨てて、幸せの中にだけ生きられるのなら、幸せなのかもしれないけれど、私は器用ではないから。

　こうして、北上さんに甘え、提督に甘えてしまっている。

「大井っちは働き者だなー。私も鼻が高いよ」

「あら、北上さんにそういってもらえるのなら、もう少し頑張ってみるわ」

　提督に頼まれている書類は、急ぎのものではない。別に明日でも構わないし、来週になったところで、彼は怒ったりもしないのでしょう。

　私がこれ以上一緒にいられないから、自分の心に押しつぶされて、本当の私を伝えてしまいそうだから、離れたいだけ。彼の依頼を、都合よく利用しているに過ぎない。

　悪口を言うほど、嫌っているわけでもないし。すべてのものが、北上さんより下にあるだけ。

　本来、気弱である私には、誰かを嫌うことなんて出来ないのだから。悪意を向けられるのが怖いから、誰かに悪意を向けることは出来ない。臆病で、何も出来ない私。

　それを分かっているのか、北上さんを心配してくれているのか、私達は相部屋になることはなく、それぞれ個室が与えられている。

　まぁ、表向きの性格だけ見ているのであれば、北上さんの貞操を心配してくれていると、そう信じましょう。

　私以外の誰かを許すつもりはないけれど、私自身がどうにかできるほど、心を保っていられるとは思えないから。北上さんとそのような関係になってまで、今の私を保っていることは出来ないから。本当の自分を隠しとおせる自信なんてないから。手を出す勇気なんてありません。

　自分の弱いところなんて、ちゃんと分かってる。

　こうして北上さんの姿が見えなくなっただけで、世界に取り残されるような、孤独感に押しつぶされている。早く部屋に帰られなければ、立っていることさえ、難しくなるでしょう。

　それに、心が一気に冷えてしまい、ちょっと泣いてしまいそう。北上さんに焦がれているのに、思いすら告げられず、目を合わせることも出来ず、酷くなってくると声をかけることも出来なくなってしまう。そんな、昔の私に戻ってしまいそう。

「誰かに気付いて欲しいわけではないの」

　本当の自分を認めたくないから、北上さんには知って欲しくないから、偽りの自分のまま接している。罪悪感を抱えながらも、自らの幸福を満たす為に、北上さんへと取り入っている。

　いつか捨てられてしまうその日まで、幸せでいたいと願うから。少しでも北上さんの心に残っていたいから、私は自分を変えてしまった。

　ほんと、どうしようもないわね、私。気持ちを伝えるためだけに、生きているんだから。

　

――面倒な女は嫌われるって、知ってるのになぁ