リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。
メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
はい、コンバンハ
定期的な更新は難しいですね ^^;
ふしぎなSSシリーズw
今回のテーマは【渇水】
……鬼とかそんな話じゃねーよw
全く思い浮かばなかったですw
「もぅ、ダメ……はやてぇ、喉渇いた」
わかっとる、そんなことは分かってるんや。
「なぁ、良いだろ? ちょっとだけだって」
「あかん、いくらヴィータといえども、それだけはあかん」
そう、どんなに可愛くお願いされても。
そう、どんなに愛らしいポーズを取られても。
この水だけは死守してみせる。
「なぁ、ヴィータ。この水がどんだけ大切なもんか、わかっとるやろ?」
目の前で苦しんでいる彼女に分けてあげたい。彼女の喉の渇きを潤してあげたい。
心はソレを望み、手が動いてしまいそうになるけど――わたしは機動六課部隊長 八神はやてなんや。
情に流されて、部隊のみんなを危険に晒すわけにはいかなかった。
「そりゃ、分かってるけどさー。ダメだって分かってるけどさー」
この10年間で随分と大人っぽくなったはずやのに、どうしてこんなに我侭をいうんや?
お願いやから、いつものヴィータに戻ってぇな。
◇
ことの始まりは2日前。1通の通信から始まった。
その時はあまり重大なことだと受け止めもせず、誰もが軽く流してしまった。
それが、悲劇の始まりだとも知らずに……。
「シャワーの節水制限?」
わたしの目の前で口をあけたままになっているしている2人。ごめんな、辛いのは分かるけど、協力してや。
「せや。訓練後に汗を流したいのは分かるけどな……ミッドチルダは未だかつてない渇水に襲われてるんや」
近くの次元で起きてしまった事故。それが引き起こした次元震は、ここミッドチルダに多大なる影響を及ぼしていた。
水不足だ。
「次元の狭間に出来てしもうた亀裂に水が飲み込まれてるんや。地上も、海も一緒になって対策に当たってるけど……効果なしや」
海の真ん中にポッカリと開いた穴。
始めは点でしかなかったそれは成長し、水を飲み続けていた。
「でも、シャワーが使えなくなったら、どうすれば良いんですか?」
「そうですよ。海水浴でもしますか?」
スバル、甘いで。その案は却下されるんや。
わたしも始めはそう思ってた。海といえども水場は近いんやし、どうにかなるって思ってたんや。
でもな、現実はそんなに甘くはないで?
「汗を流すのに海水を使うのはOKなんよ。目の前にあるんやし、海水浴をしても構わんのんよ」
それは許可が出ている。
無理がない程度なら、海水の使用は認められている。
「せやけど、スバル。体についた塩はどうやって落とすんや?」
「えっ? そ、それは勿論、シャワーで」
堂々巡り。因果応報。
どう言ってもええんやけど、ソレやと意味がないで?
「バカスバル。シャワーが使えないから海に行くのに、海水を落とすのにシャワーを使えるわけがないでしょ!」
そう、ティアナの言う通りなんや。
海水で汗を落とすのはええ。気持ちええし、何1つ問題はない。
せやけど、塩を落とす手段がないんや。
「そ、そんなぁ……」
その場で崩れ、へたり込んでしまう彼女。
いつもと違って、しおらしいスバルがソコにはいた。
「じゃぁ、このまま汗まみれでいるんですか? そんなの絶対、嫌ぁ」
分かってる、分かってるんや。
わたしかて乙女やで?
汗臭いままでなんかいたくはない。
でも、状況がそれを許さんのや。
「八神部隊長~、どうにかしてくださいよ~」
「ごめんなスバル。泣いても、笑っても、水は出てこんのや」
昔、日本に住んでいた時にも取水制限があった。
あの時はあんまり苦しいとは思わんかったけど――汗臭いのは嫌やなぁ。
◇
あの後、スバルを説得するんが大変やった。
大変やったけど、何とか聞き入れてくれたんや。
せやから、せやから……今日だけは、ヴィータの我侭を聞いてあげることは出来ん!
「4日ぶりのシャワーは、わたしが守って見せる」
リインに頼んで冷やして貰った水。
わたしかて喉は渇いているし、飲みたいなと思う。
でも、それでも、頑張って訓練をしている彼女達にシャワーをプレゼントしたいんや。
お願いや、ヴィータ。今日だけは我慢してぇな。
「うー、そんな事言われたら、我慢するしかねーじゃんか」
渇水による取水制限は続いている。
でも、部隊長クラスに伝わってきている情報やと、もうスグ制限を外せるはずなんや。
そしたら思う存分飲んでええから……今回だけは勘弁してな。
「分かったよ。アイツラが頑張ってるのは知ってるし、今回は我慢する」
分かってくれるんか。流石はヴィータ、ええ子やなぁ。
少し歪な日常。少し狂った歯車。
生き物は少しズレるだけで、混乱する。
別にシャワーを浴びれなくても、死にはしない。
ちょっとぐらい我慢したところで、死にはしない。
全く、少しは我慢を覚えて欲しいものだ。