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うーん、まみさんはちょいっとスローペースかもしれないですね
(・w・) まぁ、それはそれで可愛いのでOK
世の中、可愛いことが正義なんですよ
シャルロッテ×まみさん
うん、やっぱ異色なんだろうなぁ
魔法少女と呼ばれる存在がある。
消費され続ける宇宙のエネルギーを補うべく、地球という星で構築されたシステム。
二次性徴期の女の子が、インキュベータと契約し、成り替わる存在。
彼女達の結末には悲劇が付きまとい、けして逃れることの出来ない運命に翻弄された。
自らの願いにより、家族を失った者。
自らの願いにより、終われない運命に囚われた者。
自らの願いにより、人類の敵となってしまった者。
彼女達はただ、幸せを願っていただけなのに。願いが純粋であれば、穢れもまた進行しやすかった。
それを食い止めつつ、戦い続けていた彼女だって、心の隙間を埋めることを叶わず、友達を得た瞬間に命を落としてしまった。
まぁ、もっとも、彼女に至ってみれば、今現在も翻弄されている訳だが――
◇
「ねぇ、まみ。どうしてもダメなの?」
「えーと、その、ダメということはないのよ?」
どうすれば傷つけずにすむのか。
どうすれば、彼女の涙を見ずにすむのか。
ちょっと前に知り合っただけの私には、まだ把握が出来ていなかった。
「ねぇ、ねぇ、どうしてなの?」
間の前で首をかしげている彼女。魔女であった頃の名前はシャルロッテ。
人間だった時の名前は忘れてしまったらしい。
私と戦い、直接的に私の命を奪った者。
「ねぇってば、まみ聞いてるの?」
「ちゃんと聞いているわよ。私はシャルロッテちゃんのいうことを聞いています」
「なら、どうしてダメなの?」
奪った者のはずなんだけど、私にとっては憎んでも許されるはずなんだけど。うぅ、なんだかやりきれないわ。
魔法少女というシステムを理解した今の私にとって、恨むべきものは何もない。
きゅうべぇを恨めば良いと言われるかもしれないけど、彼等にだって感謝している。
だって、そうでしょう?
あの事故で命を落としていたら、私は学校に通うこともなかった。鹿目さん達に会うこともなかったし、苦しみや悲しみを知ることもなかった。
中には知りたくないことだってあったけれど、それだって悪くはない思い出の1つよ?
恨んだりするのは、おかしいわ。
「ねぇ、なんでキスしちゃダメなの?」
ただ、今考えるべきはそんなことではない。
私の腕の中で可愛らしくもがいていて――実際、このまま抱き締めたら気持ち良いだろうなって、そんなふうに思わせる彼女のことを考えなければいけない。
我儘で、こちらの話を聞いていなくて、それでも隠すことなく素直に伝えてくれている彼女に、伝えなければいけない。
「そういうことは、好きな人とするものよ?」
「私はまみのこと好きだよ? なら、問題ないよね」
「えーと……」
どうやって説明したら、伝わるのかしら?
このままやり取りを続けていたら、我慢できなくなったシャルロッテちゃんにいつか襲われてしまいそう。
それも良いかなーなんて、心のどこかで思っていたりしなくもないけれど、ここは毅然とした態度で臨まないといけない。
「教えてあげるから、ちょっとだけ待ってくれる?」
考える時間が欲しい。自分の中に沈んで、考える時間が1日程欲しい。ここには時間という概念はないようだけれど、それでも私は考える時間が欲しかった。
「うん、まみのおっぱいふかふかで気持ちいから。ずっと待ってるよ」
そんなふうに頬ずりするのは、止めて欲しいのだけど。何にしても、少ないながらも考えことをする時間を得られた。
この世界、命を落とした後の魔法少女達がとどまっている世界について。
地球のことを知ろうと思えば知ることが出来、またのんびりとしようと思えば、いつまでだっていられる世界。
この世界ではルールらしくものは何もなく、飽きたら魂が消滅するだけらしい。システム的には心躍るところもあるけれど、1つだけ忘れてはいけないことがある。
私達は既に死んでいて、魂だけの存在であること。
この世界での出来事は、どこにも鑑賞することなく、ただ消滅するだけということ。
つまり、この世界でシャルロッテちゃんの想いを受け入れたとしても、それは私達2人しか知り得ない、魂が消滅すれば覚えているものがいなくなる出来事に過ぎない。
そんな悲しいものを恋と呼んで、受け入れてしまっても良いのかしら?
彼女が覚えている範囲で聞いた話だと、まだ恋というもの自体を理解していないみたいで。
それを私が染めてしまっても良いのかしら?
触れ合っているだけでも伝わってきそうな好意に惹かれそうで、私を見つめている瞳に吸い込まれそうで、その小さな唇に触れてしまいそうになる。
ダメなのは、分かっているのに。こんな方法、だましているようなものなのに。
あなたが感じているのは、罪悪感だって教えてあげなければいけないのに。
どうして、私は伝えないのだろう?
ここにきても、1人ではないことに喜びを抱いてしまっているの?
「シャルロッテちゃんは、好きな物はある?」
「うん、あるよー」
私に話しかけられたのが、そんなにも嬉しいことなのかしら?
キラキラとした笑顔が眩しすぎて、思わず目をそらしてしまいそうになる。
どうして、ここまでの笑顔でいられるのだろう?
彼女だって、シャルロッテにだって辛い過去があったはずなのに。何かを変えたいと願っていたからこそ、魔女になってしまったはずなのに。
なぜ、その笑顔には影がないの?
「お菓子でしょ、チーズでしょ? それに、まみだよ」
お菓子やチーズと同列に並べられるのは、どうかと思うけど。彼女が嘘をついたり、誤魔化したりしていないのが分かる。
好きなものは好き。ただ、それだけの単純な話。彼女にとっては、隠す必要さえないこと。
私みたいに誤魔化したり、強がったりすることなく、そのままの自分でいる。
それは、素敵なことかもしれないわね。
「ありがとう、シャルロッテ」
だけど、今の私はその気持に応えられない。
自分自身の心が揺れているのもよくわかるし、この後どうするのかさえ決めていない。
仕方ないじゃない。こんなにも真っ直ぐな好意、向けられたことないの。初めてなのよ。
それなのに、すぐに応えてって言われても、私には難しいわ。
嫌ではないけれど、はいとは答えられない。
どんなふうに応えればいいのか、まだ分からない。
◇
見つめていれば胸が高鳴ってくるのは感じる。
傍にいて安心できる、抱き締めていたい存在だというのは分かる。
だけど、それは本当に恋なのかしら?
知らない世界にきて、傍にいてくれるものを手に入れた安心感ではないの?
胸の奥が温かく疼くような感じは、何なのかしら?
魔法少女という存在になり、周りの人達からも距離をとった。
小学生、中学生である私には、学校に行かないという選択肢は取れない。
その状態で、親しい人達を巻きこまないように、守っていくには友達を作るわけにはいかなかった。
ついでに言えば、いつ命を落としてしまうのかも分からない状態で、友達になってくれた人に心配をかけたくなかった。
今回、私が命を落としたことにより、鹿目さん達は相当なショックを受けているみたいだし、今までの私の判断は間違っていなかったのだと、そう信じている。
けど、この死なない世界では、そういった言い訳は通用しない。
――分かってるもの。友達を作らなかったのは、ただの良いわけだったって。
だからこそ、鹿目さん達の言葉が嬉しくて、1人でなくなるのが嬉しくて、こうなってしまったのだから。
この世界にいる限り、私は1人になることはないみたい。望めば、シャルロッテが傍にいてくれるみたい。
けど、どの言葉に甘えてしまっても良いのかしら? 彼女の優しさを利用して、寂しさを誤魔化していいの?
ダメ、やっぱりこの場では答えが出そうにないわ。
――もう少し、整理する時間をちょうだい