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おめでとうございます o(≧∇≦o)(o≧∇≦)o
稚拙ながらも誕生日SSということで書かせてもらいましたw
以下拍手レス
>すずかさん、アリサさん誘うの上手いですね・・・ww
王子様は野暮なやり方を好まないのでw
>好きです!すずアリ!最近このCPが増えてきて嬉しい限りですw頑張って下さいw
増えてきたのは浅木原さんのおかげのような気がww頑張りますよ~♪
誕生日。それは1年に一度行われる祝福の儀式。特別な事が無くとも訪れ、ごくありきたりに存在するもの。家族に祝われ、友達に祝われ、幸せを満喫できる日。
だけど、はやてはソレを知らない。アタシ達が闇の書・・・リインホースの一部として来るまでずっと1人で暮らしてきたから。お父さんもお母さんもいない。家族のいない寂しい家で、1人ぽっちだったんだ。
寂しくなかったのだろうか?
温かさを分けてくれる人がいない家は、あまりにも冷たい。
悔しくはなかったのだろうか?
他人には恵まれたものが、自分には無い事が。
はやてはよく笑っている。アタシの事を怒る事だってある、まいったなぁと照れる事だってある。一緒に遊んでくれる、料理を作ってくれる。
でも、痛いとか悲しいとかそういった感情は見せてくれない。何があっても教えてくれない、何かに苦しんでいても言ってくれない。アタシ達ヴォルケンリッターを頼っていない訳ではないと思いたいけど、はやては何も語ってくれない。1人で暮らしていた時、何を考えていたか教えてくれない。
アタシは騎士だ。はやての騎士なんだ。何があろうと、何が起きようとはやてを守ってみせる。その笑顔の為なら何でもしてみせる。アタシがこの手ではやてを守るんだ・・・。
アタシ達の事を家族と呼んで守ってくれて、一緒にお風呂に入ってくれて、一緒に寝てくれた。温かかった。プログラムでしかないアタシ達を受け入れてくれて、美味しいご飯も作ってくれた。
初めてだった。破壊と蹂躙しかできなかったアタシ達に優しくしてくれた人間は、笑ってくれる主は・・・。
道具として使われて、ページを増やす為だけに存在していた。別にその事に疑問は抱かなかったし、そういうもんだって思ってた。
柔らかな手で撫でてくれて、小さな体で包み込み、おかえりって言ってくれるような主が現れるなんて思ってなかった。
これからもずっとはやてと暮らしていきたい。ずっとずっとはやての傍にいたい。だって、はやてが幸せで笑っていてくれれば、アタシも幸せだからな。
◇
昼下がりの八神家。家主であるはやてが小学校に行っているこの時しか、チャンスは無かった。
「主はやてがもうすぐ誕生日を迎えられる。そこで我らヴォルケンリッターも日頃の感謝を込め、祝おうと思うのだが、どうだろうか?」
リビングに集まり何やら難しい顔をしているのは守護騎士『ヴォルケンリッター』の面々だった。各々が管理局での仕事に従事している為、平日の昼間に顔を突き合わせていることは珍しい。
「はやてちゃんのお誕生日をお祝いするのは大賛成だけけど、どうお祝いすれば良いのかしら?今まで誕生日を祝うという事がなかったから、私達には分からないわ」
どうやら、騎士達は主である八神はやての誕生日の計画を練っているらしい。
ただ、シャマルが述べた通り戦いだけを繰り返す悲しい輪廻に囚われていた為、誕生日を祝うという習慣が無い。また、習慣があったとしても現代の日本で行われるやり方とは齟齬が生じてしまうだろう。しかし、主の誕生祝いで悩むとは騎士達も人間としての成長を遂げ、随分と日常生活に馴染んできたものだ。
「その点は抜かりない。ヴィータ、ザフィーラ頼んだ事は出来ているな?」
その結果を示し、主に喜んでもらう為にも準備を怠るわけにはいかなかった。
「当たり前だろ?誕生日が何をする儀式なのか、バッチリ調べてあるぜ」
「前に一度いんたーねっとの使い方を主に教えて頂いているからな。問題無く調べる事ができた」
シグナムと問いかけに頼もしく応える2人。ヴィータは近所のおじいさんやおばあさん、なのはやフェイトなど身近な人に何をすれば良いかを聞いて回った。ザフィーラはインターネットで誕生日自体が何かを調べてある。
「2人が調べた事を統合すればおのずと分かってくるだろう。我等ヴォルケンリッター、主はやての誕生日の為に尽力を尽くすぞ」
誕生日の準備とは思えないほどの熱意を燃やす将を中心に、騎士達は打合せを開始した。
「ばあさん達が言うにはさ、ケーキを買って食べたり、プレゼントを渡したりすると喜ばれるんだってよ」
「元々の意味とは変化しているらしいが、今の日本では誕生日とは1つの祝い事として認知されている。日頃よりも豪華な食事を作ったり、贈り物をしたりするそうだ。この情報はヴィータの調べた内容とも一致する。間違いは無いだろう」
2人の話の要点をまとめ情報を整理するシャマルの表情も真剣そのもの。祝い事の準備というよりは、戦の準備をしているような雰囲気さえ漂っている。騎士達が送ってきたこれまでの生き方からすれば当然かもしれないが、主の少女が見たら何と言うだろうか?
「ふむ・・・しかし、それだけでは儀式と呼ぶには物足りない感じがするな。何か見落としている点があるのだろうか?」
腕組みをして唸っているシグナムにいたってはバリアジャケットまで装着している。誕生日を何と勘違いしているのだろう?
昔とは違い現在の誕生日に儀式的な意味合いは殆ど無い。とちらかといえば浮ついたイベントみたいなものだろう。
「でも、困ったわね。どちらにしてもうちの家計ははやてちゃんが仕切っているから、内緒でケーキを買う事も出来ないわよ?」
幼いながらも長い間1人暮らしをしていた事もあり騎士達の主はしっかり者だ。
また、仮に管理されていなかったとしても騎士達が浪費をする事はないだろうが・・・。
「管理局からも給料自体は出ているが、殆どが闇の書の被害者や遺族に支払われているからな。俺等の手元にはわずかしか残っていない」
過去の償いの為に働いている騎士達はその給料を慰謝料という形で支払っている。その為、豪華な食事やケーキを買うだけの余裕は無い。
「困ったものだ。我等では主はやてを祝う事すら出来ないのか?くっ・・・」
悔しそうにするシグナムの口からは血がつたっている。主の誕生日を祝おうとするだけなのに、上手く行かない事への苛立ちもあるのだろう。
全員が俯き、場が沈みかけた時、ヴィータが1つの事を思い出した。
「あっ、あのさ、なのはやフェイトが言うには特別に豪華な食事じゃなくてもいいらしんだけど・・・?」
自信なさげに言っているが正しい。何も誕生日だからといって派手にやらなくてはいけないという決まりは無い。
「何!?それは本当か、ヴィータ?」
先程までの表情とは一転し、一筋の光にすがるようにシグナムはヴィータに迫っていた。
「ちょ、ちょっと落ち着けよ。今説明するから。・・・なのは達が言うには一番大切なのは気持ちなんだってさ。相手の事を大切に思って祝えば気持ちが伝わるんだとよ」
豪華な食事、素敵なプレゼント。光輝くそれらに埋もれてしまい忘れてしまいそうになるが、大切なのは気持ちだ。彼女の友人達はソレを伝えたかったのだろう。
お祝いに一番大切な事は何かを・・・
◇
気持ちを伝える、具体的にどうすれば良いかわかんなかったけど・・・打ち合わせは上手くいった。それに、はやてが大好きだって気持ちはホントだし、誰にも負けねえ。シグナム達も嫌いじゃねえけど、はやてのは何か違う気がする。
「早く出来ねえかな・・・」
今日は6月4日はやての誕生日だ。
あの後、シャマルの提案で誕生日の食事をアタシ達で作る事になった。アタシがシチュー、シグナムが炒め物、シャマルがサラダ、ザフィーラが米を炊いた。アタシ達じゃ頑張っても、はやての作るご飯には敵わない。それでも、相手に気持ちを伝えようとする事が大切だと教わったからな・・・
「これで完成だ」
本に書いてある通り作ったからまずくは無いだろう。・・・アタシが一番難しいの作ってねえか?
「ヴィータ早くしろ!じきに主はやてが戻られるぞ!」
さっき連絡があったら、もうすぐはやてが帰ってくる。
「るせーな、わーってるよ」
コンロの火を消し、鍋のふたを閉める。
シャマルからクラッカーを貰い、玄関に並ぶ。豪華な食事は準備できないし、お金が無いからプレゼントだって買えなかった。
それでも、一生面名お祝いするからさ・・・
はやて、喜んでくれるかな?
はやて、笑ってくれるかな?
あー、何だかドキドキしてきた。
暫くしてすりガラスの向こうに人影が見え、はやてが帰ってきたのが分かる。ガチャリとドアが開いた瞬間、クラッカーが一斉に鳴った。
はやて、誕生日おめでとう―――