ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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恥ずかしいので止めて ^^;
ラブの兄貴に埋められて、土に返りたい
ラブせつ 書いていたはずでした
ラブせつ 書いていたはずでした
「せつな、今日は七夕だよ。星空と一緒に、幸せをゲットする日だよ」
「唐突ね……」
7月7日、一般的に七夕と呼ばれるイベントがある日だ。
自らの願いを短冊に託し、笹の葉に飾る。叶えて貰う為ではなく、自らの目標をはっきりとさせる為のイベントなのだろう。
この世界で私が知った幸せ、この世界で私が手に入れた笑顔。
それらは日常にあるもので、特別なものではない。奇跡の連続の上に成り立っているものではない。
ただ、忘れてはいけない。日常的である幸せも自ら望まなければ、手に入らない。笑顔になる為の努力を怠れば、遠退いてしまう。
特別ではないけれど、常に与えられるものではない。幸せの為に努力し、協力し、そうやって世界は巡っている。
「せつな、あたしの話聞いてる?」
「ちゃんと聞いているわよ? 織姫と彦星の話でしょう?」
幸せを当たり前のものとし、それまでの生活を投げ出してしまった2人。魅力の1つであったはずの勤勉さも、周りへの気遣いもなくしてしまった。
仕事をすることもなくなり、ただ傍にいて幸せを甘受するだけの生活を送る。努力することを忘れ、夢を追いかけることも忘れ――そんな2人を神様は許してくれなかった。
2人の間に天の川を作り、まじめに働いていれば年に1度だけ、橋をかけてくれる約束。それだけを残して、2人の生活は急激な変化に見舞われた。
愛する人に会う為に、それを目標に1年間を乗り越え、成長した自分を見せる為に。2人は今まで以上に仕事に励むようになった。
「こういった話よね?」
だらけてしまった生活を直すにしては、少し厳しい気はする。注意し、働くように促せば直ったのではないかと思う。
ただ、2人が努力することを思い出したのであれば、こういった未来もありなのかなと感じている自分がいるのも事実。
「うーん、あたしが知っているのとはちょっと違うし、随分とお硬い感じはするけど。そんな感じの話だよ」
「こういったおとぎ話には、諸説あるのが普通なのよ。小さな発見があって、楽しいでしょ?」
私が聞いた話に、私なりのアレンジを加えてみる。私の考えを入れ、私なりのおとぎ話にしてみる。
純粋な楽しみ方とは言えないのかもしれないけれど、これはこれで楽しいものよ。
「ねぇ、ラブ。あなたは、七夕の物語をどう思っているの?」
「彦星と、織姫のことだよね?」
「もちろん。その2人の運命について、感想を聞かせて欲しいわ」
私自身が感想を抱いたように、この物語には考えさせられる部分がある。
幸せとは何か、幸せの為に出来ることは何か。
幸せの形は何か、幸せの為にしなければいけないことは何か。
幸せの中に浸り、全てを投げ出してしまった2人をどう思うのか。以前との変化について、何を感じるのか。
ラブなら、私とは違う場所に着目しているかもしれない。私の気付かないような核心に、近付いているのかもしれない。
2人の動き。2人を取り巻く環境。2人に訪れた運命。2人の選び取った道。
「あたしは、結構好きだよ。悲しいところもあるけれど、ちゃんと未来を見つめられるようになったから。悪いことばかりじゃないと思うだ」
「良ければ、もう少し詳しく教えてくれない?」
私は、私のままで変わっていくと決めた。誰かの為ではなく、私の夢の為に成長すると決めた。
ラブ、お母さん、お父さん。それに、私を応援してくれた全ての人に。胸を張れるような生き方をするって、そう決めたの。
後悔しない生き方。後悔しない為の努力。時には無茶をするかもしれないけれど、それだって必要なはずだから。
だけど、私1人では生きられない。みんなに助けてもらって、私も手伝って。そうやって生きていく。
時にはぶつかることもあるだろう、喧嘩することもあるかもしれない。傷つけ合うようなことさえ、あるかもしれない。
そのままで終わってはいけない。終わらせたくないなら、知っていくしかない。
自分以外の考え方を、自分以外の感じ方を理解するしかない。
それに、ラブが何を感じているのか知りたいから。ラブがどう考えているのかが知りたいから。
格好良いことを言っていても、結局はそれなのね。
「彦星も、織姫も幸せを手に入れたんだ。理由があったけど、無理矢理引き離されたのはひどいことだと思う」
働きものであった2人。多くを望むことなく、地道な努力を重ねてきた2人。
そんな2人だから、周りは期待したのかもしれない。幸せになったとしても、幸せになったからこそ、もっと頑張れるんじゃないかって。
だけど、2人の幸せは周りの望んだ形ではなかった。幸せに溺れ、幸せ以外の全てを放棄した。
「ただ、それをきっかけとして、2人は本当の幸せを手に入れる為の努力を知った。頑張ることも、幸せも、両方ゲットできたんだよ」
なるほど。引き離されたからこそ、幸せが恋しくなる。会えないことで、気持ちも大きく育てることが出来た。
そう考えられるのであれば、前向きに考えることが出来るのであれば。ラブの考え方は乙女チックだけど、素敵だな。
私みたいに冷たい部分もなく、ただ幸せを見ることが出来る。
「それにね、おとぎ話はそこで終わってしまったけれど、彦星と織姫の物語は終わっていないよ?」
「どういうことかしら?」
おとぎ話が終わっても、物語は終わらない。言っていることだけなら分かるけれど、ラブはそこに何を見るのだろう?
何を望み、どのような未来を描くのだろう?
「七夕は1年に1度きりだけど。2人が会える日は、増えているかもしれないよ? もしかしたら、あたし達みたいに一緒に暮らしているかもしれない。そう考えると、素敵なお話になるでしょ?」
七夕の時以外でも、織姫と彦星が出会っている?
確かに、それはおとぎ話の中では語られていない。けれど、あり得ない未来ではない。
2人が真面目に働き、周りの人が認めてくれたのなら、協力してくれるのであれば。一緒に暮らすのだって、夢だけでは終わらない。実現出来るかもしれない。
私は、そこまで考えなかった。
幸せの為に努力が必要だと、それを思い出せたから良かったねって。それだけで終わってしまった。
2人の物語が終わっていないのを知りながらも、おとぎ話の終わりと共に閉じるものだと思ってしまった。
「凄いわ、ラブ。私はそこまで考えられなかった。今だけを見て、それで終わってしまったわ」
私とラブの差。それは、未来を信じられるかどうかということ。未来に幸せがあると、信じて行動出来ること。
だから、あの時も私を迎えに来てくれたのね。
どうしようもないと、綺麗な終わりを迎えようとしていた私にでさえ、ラブは幸せを掴み取るように誘ってくれた。
終わったと諦めていたものを繋いで、これから先に続くようにと一生懸命になってくれた。
あの時、嬉しかったのよ。私にも、受け止めてくれる人がいるんだって、とても嬉しかったの。
「あたしはバカだからさ、難しいことは分からないよ? 彦星と織姫が、これから迎える困難なんて分からないよ? だけど、幸せになって欲しいって願うことは出来るから。あたしは、あたしに出来ることで応援したいの」
「仕方のない子ね」
やっぱり、大きいな。この子は、とても大きい。
誰かの為に頑張る時、この子は輝いている。眩しいほどに、輝いている。
だからこそ、この子の幸せは、私が掴んで押し付けないとね。
――短冊は、願いを叶えてくれるかしら?
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