ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
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恥ずかしいので止めて ^^;
12月ですよ!
クリスマスですよ!
過程ぶっ飛ばして甘いの書きたい!
そして、甘いの読みたい!
(・w・) ふぅ
落ち着いたところで、お久しぶりです。ラブせつがやっと進められそうな、私です。
けど、告白シーンまでは短く見積もって3話とか、餓死しそうです。助けて・・・
クリスマスですよ!
過程ぶっ飛ばして甘いの書きたい!
そして、甘いの読みたい!
(・w・) ふぅ
落ち着いたところで、お久しぶりです。ラブせつがやっと進められそうな、私です。
けど、告白シーンまでは短く見積もって3話とか、餓死しそうです。助けて・・・
アタシの愛すべき友人。その中でも幼馴染というポジションにいて、しょっちゅう甘えてくる彼女。
頼られていることに関して、悪い気はしない。昔からそういった役回りだったし、アタシが助けてもらうことだって数多くあった。
彼女の存在自体は、アタシにとってもありがたいし。これからもずっと、友達でいて欲しい。学校が違っても続いた交流だから、簡単になくしたりはしない。そう信じさせてくれる。
ただ、相談されたとしても、全てを答えられるわけではない。アタシにだって、答えられないこと、答えにくいこともある。
あぁ、全然完璧じゃないわ。もっと頑張らないとダメね。
「それでね。美希たん、聞いてる?」
「ちゃんと聞いているわよ。せつなとのことでしょ?」
特に、恋愛絡みはダメ。
アタシ自身に経験と呼べるほどのものはないし、きちんとした形でアドバイス出来る自信なんてない。
ラブ、相談する先を間違えているかもしれないわよ? アタシなりの意見しか言えないけれど、それで良いの?
「せつなはね、凄く頑張り屋さんなの。自分の幸せよりも、みんなの幸せを優先しようとするんだよ」
「あの子には、あの子のやり方があるのよ。心配し過ぎるのも、良くないわよ?」
確かに、せつなのやり方は献身的過ぎる。自分を犠牲にしてでも、みんなの幸せの為に努力し続けるだろう。
いや、あのやり方は、身を削ると表現するのが正しいのかもしれない。いつか倒れてしまうんじゃないかって、ラブが心配しているのだって、分からない話ではない。
心配はしても、感じさせない……なんてのは、ラブには無理よね。耐え切れずに、飛び出していってしまうわ。
そこがラブの良いところなんだけれど、見守るのには向いていないわね。
「あたしは、どうすれば良いのかな? せつなの気持ちが、分からないわけじゃないんだ。だけど、今のやり方が正しいとは思えないの」
「そうね。せつなとゆっくり話し合ってみれば良いんじゃないかしら? 一緒に住んでいるとは言えども、聞けていないことや聞き辛いことってあるでしょ? 言い争う形になるかもしれないけれど、何も聞かないよりはずっとマシよ」
「たはは。美希たんて、時々厳しいこと言うよね」
アタシだって、好んで厳しいことを言いたいわけではない。厳しいことを言って、痛みを感じていないわけではない。
だけど、アタシがちょっと痛いだけで笑顔が生まれるのなら、それで良いでしょ?
最近の2人を見ていると、心配になるのよ。無理のし過ぎで、いつか壊れてしまいそうって。
「ラブが甘いだけよ。時にはシビアになることも、大切なんだから」
あー、もう。どうして、そんな顔するのよ。アタシは好きで、このポジションにいるのよ。グループの中で、この役を引き受けているの。
ラブはうちの元気印なんだから、笑ってなさいよ。アタシのことを心配するなんて、10年早いわ。
「ラブには、ラブの目指している幸せがあるんでしょ? それと同じように、せつなにも自分だけの幸せがあるはずよ。それを見つけられるように、手伝ってあげれば良いじゃない」
「美希たんは手伝ってくれないの?」
「聞かなくても分かっているんでしょ? 手伝うわよ。アタシのやり方で、完璧に補助してあげるわ」
分かりきっていることを確認するなんて、不安でも抱えているのかしら?
アタシがみんなを助けるのは当然で、時には助けてもらうこともある。アタシ達の関係では、別に珍しいことでも、変わったことでもないはず。
まったく、今度はどんな面倒を抱えているのよ。話すだけでも楽になれるはずなのに、こっちから聞かないと喋らないんだから。
せつなを心配することで、誰かを助け続けることで、自分の抱えている不安から目をそらす。いつの間にか、ラブも大人になったものね。
けど、アタシの前でまで、無理しなくても良いでしょ? 話してくれないと、相談を受けることも出来ないのわ。
「さっすが美希たん。頼りになるねー」
「頼ってくるなら、いくらでも助けてあげるわよ?」
他人の為に泣ける、優しい子。何も考えていないようで、しっかりと周りを見ている子。
時々暴走してしまうこともあるけれど、可愛いものよ。
ただ、頑固なところはちょっといただけないかな? もう少し、自分に素直になりなさい。
「それにしても、ラブ。あなた、せつなの心配ばかりしているのね」
「だって、仕方ないじゃん。せつなは、この世界にきたばかりなんだよ? 不安でいっぱいなはずなのに、中々相談もしてくれないんだもん」
ラビリンスの尖兵として、この世界に潜入していた彼女。何も知らないとまでは言わなくても、日常的なところでは抜けている部分も大きいのだろう。
もちろん、素直な上に勤勉な彼女のことだ。こっちが心配になるくらいの速度で、慣れるんでしょうけど。
ラブにとっては、悩みのタネが増えるだけなんでしょうね。難儀な子ね。
「アタシが言っているのは、そういったことじゃないの。せつなのことしか見てなくて、自分のことが全然見えてないでしょ?」
気付いていない? それとも、気付きたくないだけ?
こういった心の動きには敏感な子だから、気付いた上で隠しているだけかもしれない。
けど、いつまでも逃げ続けるわけにはいかないんでしょ? いつまでも、逃げられるものでもないんでしょ?
なら、しっかりと考えなさい。後悔しないように、嘆かなくてすむように。
「なんのことかなー。あたしには、分からないよ」
思いっきり、棒読みね。バレるにしても、もうちょっとマシな方法だってあるでしょ?
ほんと、清々しいまでに嘘のつけない子ね。
良いところだとは思うけど、自分を騙し続けたいのなら、もう少し上手になりなさい。他人すら騙せない嘘では、自分を誤魔化せないわ。
ラブが、せつなのことをどう思っているかなんて、傍にいれば分かってしまうのよ。簡単過ぎて、意識すらしないレベルよ?
ブッキーなら、分かっていても言わないのかもしれない。事実を突きつけるようなことは、しないのかもしれない。ラブとせつなを信じて、一歩引いたところで見ているのかもしれない。
だけど、アタシは容赦しないわよ。ラブなら、乗り越えられるって、自分と向かい合えるって、強さを信じているから。
「ラブ、あなた自身はせつなにどうして欲しいの? あなたは、せつなに何を求めているの?」
何をしてあげたいのかは、山のように聞いた。どうしてあげたいのかは、星の数ほど聞いた。
けれど、あなたは何を求めるの? 何を求めて、せつなに与えようとしているの?
「どうしたの、美希たん? 顔が怖いよ?」
「怖い顔にもなるわよ」
まさか、ここまできてバレていないとでも、そう思っているのかしら? 気付いていないとでも、思っているのかしら?
良いわよ。なら、こちらから踏み込んであげるわ。待っているだけで改善できないのなら、こちらから攻めてあげる。
「ラブ、私は甘くないわよ? 隠し事をしたままで、相談に乗って貰えるだなんて思わないことね。あなた自身が何を考えているのか、何に悩んでいるのか、どう感じているのか。それを教えてもらえないのであれば、相談には乗れないわ」
「美希たん、あたしはせつなのことで相談にきたんだよ? 何のことだか分からないよ」
「あなたが相談したいのは、せつなのことだけなの? 本当に、それだけなの?」
踏み込むと決めたからには、遠慮はしない。不安におびえているこの子を、このまま帰すわけにはいかない。
アタシは、ラブの親友なんだから。力にならないとね。
「せつなと、自分自身のことで悩んでいるんじゃないの? どうして良いか分からないから、アタシのところにきたんでしょ?」
もっとも、アタシ自身も経験豊富というわけではないから、即座に解決とはいかないかもしれない。
だけど、背中を押すくらいなら出来るわよ? ラブらしくいられるように、手伝うくらいは出来るわよ?
「ここまで来て、逃げようなんて考えてないわよね? 誤魔化せてもいない気持ちから、逃げられるなんて考えてないでしょうね?」
「美希たんが何を言いたいのか、あたし全然分からないよ。そろそろ帰らないと、お母さんが心配するかもしれないから」
ラブらしくないわね。自分から逃げることしか、頭に無いの?
今の関係を壊さないことにしか、目を向けられないの?
だったら、アタシが目の前に出してあげるわ。あなたの心の中に閉じこもろうとしている、その気持ちを。
この場から逃げても、心からは逃げられないのだから。
「ねぇ、ラブ。あなた、せつなのことが好きなんでしょ?」
遠慮もなく、気を使うこともなく、そのままの事実を突き付ける。自分の気持ちからも逃げてしまうような、そんな子には容赦しない。
友人として、1人の女の子として、今のラブを許すようなことは出来ない。
「認めたいけれど、怖い。認めるのを嫌がっている、そんな自分がいるのは分かるわ」
家族だから、女の子同士だから、友達だから――認められない、伝えられない理由は、私が想像出来る以上に山積みなのかもしれない。
けど、私の知っているラブは、そんなことにはめげない子のはずよ。
考えて、悩んで。それでも正しいと思えた時には、正直に言える子だったはずだ。
「それで良いの? それで本当に幸せになれるの? 気持ちを伝えないまま、心の底から笑えないままで、本当の幸せを掴むことが出来いるの?」
幸せゲットだよ。そういって、何事にも前向きに取り組もうとしていた子だ。
他人の為に泣き、他人の為に傷つく。そんな優しい子だ。
だからこそ、自分の気持ちで、自分の思いで、せつなを困らせるようなことをしたくないのでしょうね。
確認もせず、相談すらせず、思い込みで突っ走る。ラブの悪いクセよ?
◇
「もう、逃げられないのかな?」
「私にバレている以上、逃げても仕方ないんじゃない?」
ドアノブにかけていた手を離し、こちらを振り向いた彼女の顔。
そこには、今まで見たこともないような、何も読み取れない暗い色が浮かんでいた。
私はそれなりに機敏な方だし、仕事柄何となく表情を読もうとする癖がついているけれど。見たことないわよ、そんな顔。
「美希たん、あたしね、分かってはいるつもりなんだ」
泣いてはいない。怒ってもいない。笑顔でないのは当然として、元気さなんて欠片もない。
悲しんでいる様子もない。こっちへ感情が伝わってこない。どういうことなの?
「せつなのことも、自分のことも、ちゃんと分かっているつもりなの。けど、自覚したら止められないから、我慢出来ないから、気付かないようにしているだけ」
喋る言葉に抑揚もなく、リズムやトーンが変わることなんて期待出来なさそう。
こんなふうになっているだなんて、予想してなかったわね。
「目をそらしているだけだって、卑怯なことをしているってちゃんと分かってる」
ただ、この子が喋ってくれるのなら、言葉にして相談しようとしているのだから、私が逃げるわけにはいかないでしょ。
自分のことを卑怯だなんていってしまう子を放って置けるほど、私は弱くはないわよ。
「せつなはね、自分だけが幸せになることを許せないの。優しい子だから、イースだった頃にやってしまったことを、忘れられないの。なかったことにすることなんて、出来ないの」
現実を見ようとして、見たけれど受け入れられなくて、どうにかしたくてもどうしようもなくて。そう、傷だけを共有してしまったのね。
そこにある思いを汲み取ることも、その先にある思いに気付くことも出来なくなっている。
大きくなり過ぎた傷口が開いてしまって、痛みで全てを見失っているんだわ。
「それが悪いことだとは思わないよ。せつならしいし、あたしにだってイースとの思い出はあるから」
受け入れることは出来なかったけれど、同時に逃げることもしなかった。
先へと進むことは出来なかったけれど、後ろへと下がることもしなかった。
その場に留まり、せつなと悲しみを共有し、分かろうとしているのね。少しでも分かるところから、ちょっとでも良いからって、そうやって入り口を探しているんでしょ?
「だけど、少し思い詰めているところがあるの。信じられる? ごめんなさいって、謝るの。生きていてごめんなさいって、謝るの。隣に部屋で分かるほどに取り乱して、泣きながら謝っているの」
自分で自分を許すことが出来ない。自分のしてしまったこと許すことは出来ない。
せつなはこれから先、ずっと泣きながら過ごすつもりなのかしら?
傍にいるはずの、相談に乗ってくれるはずの人に頼ることもなく。たった1人で苦しみ続けるのだろうか?
「それを傍で見ていて、胸が苦しいんだ。何も出来ないことが悔しいの」
いや、苦しんでいるのは1人ではない。お互いに余裕がないから、分かっていないだけ。
せつなの苦しみはラブに届き、ラブの苦しみもせつなに届いているのでしょう。良くない流れね。
「せつなが苦しんでいる。未来に進む為に、過去の自分のやったことに苦しんでいでいる。手を伸ばせば届くところにいるのに、あたしには何も出来ないの」
自分のやってしまったことに苦しみ、断罪を願う少女。
その苦しみを理解し、自分の無力さに二重の苦しみを知ってしまった少女。
まったく、御伽噺じゃないのよ? 生きている物語が、それだけで終わっていいはずないでしょ?
「手伝おうとしたことはあるんだよ? 知っての通り、あたし単純だから。助けてあげなくちゃって、手を伸ばしたことはあるの」
勘違いしているところが、あちらこちらにあるのは既に分かっている。お互いに相談していれば、それだけ終わっていた問題も沢山ある。
けど、聞くって約束したもの。ラブの話が終わるまで、私は口を挟むわけにはいかない。
「けどね、せつな自身に断られたらどうしようもないよね。コレは私だけのものだから、私がやらなければいけないからって」
ちょっとだけ取り戻せた勇気だったのだろう。 いろいろな所からかき集めた、そんな勇気だったにい違いない。
それを折られてしまったら、ちょっときついわね。
「どう言えば手伝えなくなっちゃうのか、せつなにはもうバレてしまっているの。あたしには、見守ることしか出来ないんだ」
「そう言われて、素直に引っ込むほど可愛くはないでしょ?」
せつなのやろうとしていることは、途方もない旅のようなもの。ゴールも見えず、到達する場所もない。
それに付き合う? 傍にいてくれるかもしれないけれど、ラブなら解決しようとあがくでしょうね。大人しくしているはずないでしょ?
「美希たんは何でも知っているけど、ひどいね」
「そう言うものなのよ」
あたしだって、ラブをいじめたいわけではない。せつなのやり方を批判したいわけではない。
そんなこと、望んでいないわよ? 嫌な気持ちにしかならないのに、誰が望むものですか。
「……時々は、無理矢理にでも手伝うけど。その時、必ずせつなの表情が暗くなるの。あたしに迷惑をかけているって、謝ってくるの」
傷は大きくなっていないのかもしれないけれど、溝は深くなっているのかしら?
手伝おうにも手伝えない、そんな状態が完成されつつあるの?
まぁ、ラブにとっては大変なことよね。
「あたしは、手伝いから手伝っているのに。あたしが勝手に手伝っているだけなのに。それすら、せつなの負担になってしまうの。悲しいよ」
手伝っているはずなのに、助けたいから手を差し伸べたというのに。難しいわね。
自分の気持ちに折り合いをつけ、何が大切かをしっかり考えて。悩みを切り裂いて、行動に移す。どれだけの悲しみが降りかかってきても、無力感にひざを折りそうになっても、自分の信じたやり方を信じるしかない。
そこまでの強さはないのよね。
「そう言えばさ、せつながうちに来てくれたおかげで、幸せってなんなのか、真剣に考えるようになったの。何が幸せで、何を求めているかは人それぞれだと思うけど、幸せは当たり前のことではないんだって、理解してしまったの」
ただ、その絶望感に包まれている時にだけ気付けるような、小さな発見も同時にあったりするのよね。
それが解決の糸口になってくれるものなら良いんだけど、そこまで都合の良いものではないわよね。自分の中から出てきた考えなんだもの。
気付けても、解決の為のピースにはなれても、決定打に離れないはずだから。
「あたし達は、笑顔を知っているよ。楽しいってことを、知っているよ。だから、もっと楽しくて、嬉しいことがあるのなら、知りたいって、そこに行ってみたいって。努力することも、協力することも出来る」
相手と自分の違い。何を考え、何に悩み、何に喜び、何を知っているかを理解する。そこから生まれる物語もあるでしょう。
違いを知ったからこそ、生まれる思いだってあるはずだから。
「だけど、楽しいとか嬉しいとか、何よりも笑うってことを知らないのなら、目指すことも出来ないし、手に入れようって思うこともないんだ」
ただ、そんな理想論だけで終われないものは沢山ある。知ってしまったからこそ、負い目に感じてしまうもの。知らなかった時には遠慮しなかったもの。
何より、知ってしまったことにより、その境遇に同情してしまうことがある。
別に同情することや、感傷を得ることについて反対はしない。それだって優しさだと思うから。優しいからこそ、傷ついてしまうものだから。
ただ、ラブの場合はあまりにも引かれ過ぎてしまう。相手の心に、気持ちに近寄り過ぎてしまうから。身動きが取れなくなってしまうんでしょうね。難しい子ね。
「幸せって、そこら辺に転がっているような都合の良いものではなくて、あたし達みんなが作っていくものだったんだね」
気付けたことは良いことなのに、どうして傷として抱えようとするのかしら?
そんなこと、誰も望んでいないのに。
◇
幸せは自分で作っていくもの、自分で掴むもの。それに気付けたこと自体は、悪くないのよ?
ただ、いつもの通り、勘違いしてないでしょうね?
「で、それとあんた達がくっつけない理由が、どう結び付くのかしら? 私には、全然分からないんだけど? せつなが、ラブの気持ちを知らないとでも言うの?」
幸せを掴む大切さを知った。それなのに、幸せになろうとしていない。
それは何故? 何が障害になっているって言うの?
「ううん、せつなは知っていると思うよ。気付いていて、自分のことも分かっていて、その上で全てを否定しようとしているの。自分だけが幸せになれるのはおかしいって」
あの子の考えそうなことね。2人揃って損をしようとするんだから、似なくていいところまで似ているのね。
「笑ったこともない人達もいるし、不幸にしてしまった人達もいる。それなのに、自分だけが幸せになんてなれないって、言われちゃったんだ」
「それは、断られたってこと?」
告白はしたの? あのラブが?
告白して、断られて、この私に何も悟られなかったと言うの?
「たはは……ちょっと違うかな? 告白させてくれなかったんだよ」
どうせそんなオチだと思ったけど、告白させてくれなかったって何?
そんなの初めて聞いたわよ? 告白しようとしたけれど、逃げられたってこと?
「せつなはね、きっと分かっているんだよ。どれだけ努力しても、みんなが幸せになれる方法なんてないって。自分で幸せをつかもうとしなければ、幸せにはなれないんだって」
みんなが幸せになる方法はない。せつなだけが頑張っても、みんなが幸せになれることはない。
何も間違ってはいないけれど、恩返しの方法としてみんなの幸せを望んだ彼女にとっては辛いでしょうね。自分の夢を、自分で否定しているようで、相当な苦しみを抱え込んでいる形になっているのね。
「けど、せつなの夢はみんなの幸せだから。諦められないんだと思う」
「ラブはそれで良いの?」
せつなは自分の夢だから。逃げることも、諦めることもしないだろう。
けど、ラブはどうなのかしら? みんなの幸せは、せつなの夢であって、ラブの夢ではない。
自分の夢でない以上、納得出来ないところもあるはずだから。自分の気持ちを押さえ込む言い訳にはならないはずだ。
言い訳にならないなら、この子が止まるはずはないんだけれど。どうなのかしら?
「あたし? あたしは、みんなで幸せになるよ。あたしも、せつなも、みんな一緒に幸せになるの。あの笑顔を守る為に、1番近くで見続ける為に、ずっと傍にいるって決めたから。せつなの夢と、せつな自身の幸せの為にも、頑張るんだ」
なるほど。自分の夢を、せつなの夢の上に重ねたのね。そうすれば、我慢出来るって思い込んだんだ。
「また壮大な目標を掲げたわね。大丈夫なの?」
大きなものを夢に描き、現実に立ち向かっていくのが子のこのスタイルだと分かっている。大きな夢であれば、遠い夢であれば、どこまでも努力出来る子だと知っている。
だからこそ、心配なの。
その夢に潰されてしまわないか。諦められずに、どんどん傷ついてしまうのではないかと。
「分からない」
「分からないの?」
珍しいわね。いつものラブであれば、大丈夫と答えているはず、どうにかなるって、気軽に答えているはずなのに。
今までとは比べられないくらいに大変だということを、分かっているのね。
「だって、好きになっちゃったんだから、仕方ないよ。応援したいって思ったから、せつなが頑張れるように、してあげたいよ」
惚れた弱みというやつかしら?
好きな人の望むことを叶えてあげたい。損をすると分かっていても、茨の道だと分かっていても、付いていくしかない。
それを望んでしまう、自分の気持ちに逆らえないのね。
「ちょっとくらい悲しいことがあっても、その気持ちが支えてくれるから。せつなの夢を邪魔しちゃう、あたしの想いには暫くの間我慢してもらうんだ」
我慢してでも付いていこう、そんなふうに思っているのね。ラブとは思えない、美談だわ。
「せつなが自分のことを許せる日が来るまで。あたし達は家族のままで、恋人にはなれないんだよ」
なれない、か。
それが思い込みだと気付かないところは、ラブらしいわね。安心したわ。
「どれだけかかるかも分からないのよ? その間に心変わりしないって、今の気持ちを忘れないって、言い切れるの?」
「しないよ。心変わりなんて、この気持ちを忘れてしまうなんて。あたしには出来ない」
心変わりは、ラブだけの問題ではない。せつなが心変わりをしないと、好きな人が現れないと、誰も断言出来ないのだから。
その時になって、せつなに恋人が出来てから嘆いても、わめいたとしても遅いのよ?
「大丈夫。もし、せつなに好きな人が出来たら、ちゃんと応援するよ。頑張れって、言えるよ」
そう、自分の気持ちを諦めるって言うのね。ちゃんと伝えることもなく、我慢するだけ我慢して。それで満足だって、言えるのね?
本当に、そんな大人な対応が出来るのかしら?
「あたしは、せつなの家族だから。せつなのお姉さんなんだから。妹の恋愛を、邪魔したりしないよ。いっぱい泣くかもしれないし、落ち込むとは思うけど。せつなの邪魔だけはしたくないから。邪魔なんてしたら、あたしが自分を許せなくなっちゃうから。それだけは、出来ないよ」
せつなを言い訳にして、自分に言い聞かせているだけでしょ? 大丈夫だ、お姉さんだから我慢しなきゃいけないんだって。
全てはせつなの為で、せつなの為に頑張って、せつなが恋をしたから失恋をして、せつなが幸せになる為に我慢するって。
そんな逃げの姿勢でいるつもりなの?
「ねぇ、美希たん。その時が来たら、ごめんね。その日だけは、あたしのグチに付き合って。1日だけで、元気になってみせるから。みんなの知っている、桃園ラブに戻るから」
せつなを困らせない為に、せつなの見えないところで泣いて。せつなを悲しませない為に、せつなの知らないところで落ち込んで。
せつなが気遣う前に、いつも通りに戻るって言うの?
ラブ。あんた、おじいさんから盛大な名前を貰っているくせに、恋愛なめてない?
◇
ここら辺で我慢の限界だわ。
「で、ご高説は終わったのかしら?」
「美希たん?」
本当なら、今日は怒るつもりはなかったのよ?
泣かれたとしても、叫ばれたとしても、冷静な私でいるって誓ったの。ラブの相談を受ける、そんな役割を演じることを心に決めていたの。
けど、まさか、こんな差泣けない話につき合わされるとは思ってなかったわ。
「言いたいことを言い終わって、言い訳も出てこないのかって聞いているのよ」
イライラして、今にも怒鳴りそうなのが分かる。話を聞いている内にフラストレーションが溜まり、今にも爆発しそう。
けど、そんなのは完璧じゃないから。私の目指したい、私のすることではないから。
良いわ、大人の対応ってやつを見せてあげる。ラブの考えが、どれだけ甘いか教えてあげるわ。
「はぁ、あんまりにも情けない話だから、半分寝てたわよ」
落ち着け、私。
ラブだって、何も考えてないわけではないの。考え方を間違ってはしまったけれど、ちゃんと考えようとしたの。
それは認めてあげないと。認めた上で、指摘してあげなければ、話が前に進まない。
「それで、全部はせつなの為ねぇ。流石は、桃園さん家のラブちゃんね。優しいわね」
ただ、少しくらい嫌味を言うのは許されるだろう。
「ふざけるなって、そう怒鳴りたくなるほどに優しいわね」
静かに聴いているってのも、結構疲れるわね。
「ねぇ、ラブ。そんなやり方で、そんな言い訳で、せつなが喜ぶと思ってるの? 恋って、どんなものか分かってる?」
だからこそ、ここからは私が喋るわ。何が間違っているのかを、完璧に指摘してあげる。
あなた達の恋愛が成功するように、告白も出来ないままに終わらないように、私が導いてあげる。
「ラブ、恋というのはね、1人でするものではないのよ? 自分の気持ちだけで、自分の考えだけで決めていいものではないのよ? そこらへん、ちゃんと分かってる?」
恋愛の大前提。恋は1人では出来ない。相手がいて、好きになる相手がいてこそ成り立つもの。
実らせるにも、失恋するにも、相手の返事を聞かなければ始まりもしない。お互い好きでいることは、周りにはバレバレなのだから、口に出してしまえば決着するというのに。
どうしてそんな回りくどいことをするの? 夢を叶える為にも、大切な人が傍にいてくれた方が、心強いに決まってるでしょ?
「せつなに恋をしたのなら、せつなの気持ちに気付いていると自惚れているのなら、相談すれば良いでしょ? 一線を越えないようにして、確かめれば良いでしょ?」
気付いているから大丈夫。その思い込みが危険だから。
好きでいることと、恋をしていることは全く違う。
そして、恋していることと、愛していることも似ているようで、全く別のものだから。
ちゃんと確認しておかないと、言葉にしておかないと、後でひどいめに合うわよ?
「勇気が出なくても、今の関係が壊れるのが怖くても、そんなことで止まるほど、私の知っている桃園ラブってこは大人しくないわよ」
勇気が出ないなんて、言い訳にはならない。今の関係が壊れるのが怖いだなんて、なんの言い訳にもならない。
勇気がなくても、伝えなくても伝えなければいけない言葉があるはずだから。
家族という関係を壊し、恋人になろうとしているのに現状維持を望むだなんて、そっちの方が我侭よ。
「自分らしく、いきなさい。大丈夫よ、時期的に合わないのなら、せつなが止めてくれるわよ。好きになった人くらい、信じなさいよ」
告白するつもりがあるのなら、告白すると決めたのなら、まずは口に出しなさい。せつなに、ちゃんと伝えなさい。
ラブが困っているなら、せつなだって困っているはずよ。自分の中に生まれた想いに、戸惑っているはずよ。
それを救えるのは、解決できるのはラブだけなんだから。とっとと助けてあげなさい。
「それに、背中を押して欲しいから私のところにきたんでしょ? それなのに、逃げてどうするのよ」
まったく、怒られるのを分かっていて、こう言われるのが分かっていてきたんでしょう?
この私に損な役回りを押し付けたんだから、ちゃんと行動に移しなさいよ? これで告白出来ませんでしたなんて言ったら、許さないんだから。
「結果がどうなるかじゃないわ。まずは行動しなさい。その想いを、言葉にして伝えなさい」
まだ早いのなら、好意を伝えてくれたうえで、せつなは家族でいることを望むはずよ。今は恋人になれないと、そう言ってくれるはずだわ。
どうすれば良いのか悩むことが増えるかもしれないけれど、2人で悩めば良いでしょ?
「私が言えるのは、それだけよ。行動しない言い訳が消えたのなら、今すぐに帰りなさい。あなたにはしなければいけないことがあるはずよ」
私と話すよりも、せつなと話さなければいけないことがあるはずだから。沢山話して、沢山悩みなさい。
「好きになった人を、自らが信じなさい。大切な思いだからこそ、障害にはならないと信じなさい」
そして、お互いを信じなさいよ。それだけで、解決するでしょ?
「恥ずかしがる必要なんてないの、いつもの通りのラブでいれば良いの。独りで勝手に悩んで、独りで勝手に苦しんで、独りで勝手に結論を出して。そんなことをして、せつなが傷つかないはずないでしょ? 元気のなさに気付かないはずないでしょ?」
ラブ自身が嫌がっていることなのに、それをせつなにするなんて、好きな子をいじめたいだけかしら?
私にノロケられても、困るのよ。
「あなたは、せつなを苦しめたいの? 違うでしょ?」
ここでうなずけなかったら、エスポワールシャワー決定ね。
「なら、悩める幸せがあるって、教えてあげなさい」
「やっぱり、美希たんは厳しいね」
「ふん、完璧である為には、常にストイックであるべきなのよ。少しは見習ったら?」
「たはは、あたしにはちょっと無理かなー」
あれだけきついことを言ったのに、ソレに対しては文句すらないのね。ほんと、目的の為に一直線になれるところは、羨ましいくらいだわ。
せつなの一所懸命さも可愛いけれど、これはこれで微笑ましいのよね。
「けど、ありがとう。分かった気がするよ」
ここにきたときに比べれば、随分とすっきりとした顔になった。
これなら、いつも通りのラブだし、大丈夫ね。
「あたしはもう逃げない。自分の気持ちからも、せつなの気持ちからも、もう逃げないよ」
決めてしまえば、決めてしまったのであれば、私が手伝えることはもうない。
勢いを付け過ぎてしまった気がしないこともないけれど、これくらいなら大丈夫でしょ。せつな、後は任せたわよ?
「後押しされた後で格好悪いけど、ちゃんと伝えるよ」
「ふふ、それはせつなに言いなさい。私に告白しても仕方ないでしょ?」
伝えたい人にちゃんと伝えること。それがとても大切だから。
それをラブが理解してくれたのなら、今の時間が無駄になることもなく、有益な時間だったと思えるはずだから。
「そうだね。美希たん、ありがとう」
「感謝するなら、その分だけ幸せになりなさい。アドバイスをした私が心配にならないよう、幸せなところを見せなさい」
感謝されても困るのよ。私はお礼を言われる為に、アドバイスをしたのではないわ。
ラブが幸せになれるように、せつなが幸せになれるように、私に出来ることをしただけ。何も特別なことはしていない。
「うん。それじゃ、あたし帰るね」
「頑張りなさい」
アドバイスをして、私の役割は終わり。
これから頑張るのも、苦しむのも、幸せを手に入れるのも2人に任せましょう。
「ありがと、もう大丈夫だよ」
これで恋人になってなかったら、恨むわよ?
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