テーマ；中心 - 雨の降る日に

私の心の真ん中にあるもの。それは、何かな？
ウィッチとしての使命？　それとも、カールスラントの奪還？
明日のおやつかな？　それとも将来の夢？
「何なんだろう？」
母様がウィッチだったから、妹であるウルスラもウィッチになったから。
だから、私もウィッチになって、空を飛ぼうと思った。
実際に悪くはない戦績をあげ、トップエースにもなっているらしいけど……私は何故、飛び続けているのだろう？
医者になるという夢を抱えたまま、軍医の真似事をするわけでもなく、ただ戦っているだけ。
救うのではなく、守る為に戦い続けている。それは、何故？
「私にも、守りたいものがあるのかな？」
私の守りたいもの。家族や仲間、それに祖国の奪還。
うん、それはそれで大事だけどね。なんか違うと思うんだ。
そんな夢や理想ではなく、私自身の守りたいものがあるから、空を飛び続けているはず。
だけど、私の守りたいものって何だろう？
今の生活？
それもあるかもしれないけど、少し違う。
部隊の仲間？
それは当然で、理由にはならない。
私だけの、私が飛ぶ理由ってなんだろう？
将来の夢には直結しない。それでも、繋がってくるはずの理由。
それは、なんだろう？
「……面倒だなぁ」
統合戦闘航空団が結成され、私とトゥルーデはミーナの要望通り、部隊に参加した。
既に祖国を失っている身であり、居場所が出来るならそれで良い。綿ｓの考えはそれだけだった――

　　　　　◇

「そういえば、あの２人とは長いよなー」
ミーナ中佐。第５０１戦闘航空団の隊長であり、私の戦友。
柔らかいところはあるが、根の方はカールスラント軍人らしい厳しさを持っている。
撃墜数が何機だったかは忘れたけど、トップエースなんだよな？
バルクホルン大尉。というか、トゥルーデ。確か私の長機で、一応戦友。
ガッチガチの軍人バカで、融通の聞かない奴。怒りっぽくて、冗談の通じない奴。
だけど、妹の為ならどんなふうにでも曲がる、妹バカ。そして、部隊のみんなのことを心配している良い奴。
時々しつこいけど、一応感謝はしているんだ。
「なんにしても、危なっかしいんだよなー。放っておいたら、その内ネウロイの勢力圏に、単機特攻とかしそうでさー」
不意をつかれて堕ちる。数の前に敗れて堕ちる。その２つくらいしかないんだろうけどね、心配は心配だ。
何かの形でフォローしないと、いつか潰れてしまいそうに見える。トルゥーデ、無理し過ぎなんだよ。
どれだけ決意を固めようと、どんなに努力をしようと、人間には限界が待っている。
ウィッチに不可能はないとか、坂本少佐は言っているけど、あれは嘘。出来ないことは、出来ないんだよ。
多少の優劣はあっても、私達にはそれぞれの限界が存在する。
「まぁ、言っても理解されないんだろうな」
特に、私が言ったことなら尚更。耳を傾けることもしないだろう。
私生活はだらしなく、トルゥーデの手を借りてまで生活している状況じゃぁねぇ？
今まで通り、こっそり支援するしかないんだよなぁ。
「まったく、頑張り過ぎは体に毒なのにね」
私のようにだらけてしまえとは言えない。けど、息抜きさえしないのはダメだ。
潰れる前に、潰されてしまう前に、なんとか助けないとな。