テーマ：心の壁 - 雨の降る日に

昨日の晩は寒かった！
ついでにさっき揺れました！
宮城の自然て厳しいね☆　私、強くなりそうだわｗ

（・ｗ・）　久しぶりに、書いたーって気になれました

エーリカ×バルクホルン　テーマ；心の壁
好きを伝えられない理由
好きと伝えられない理由
その全てが身の内にある時、どうすればいいのだろう？

エーリカは何も考えていなさそうで、1番難しいと思うんだ

『ハルトマン、お前は強いな』
いつか言われた台詞。過去のトルゥーデが私を責めている台詞。
いや、本人にはそんな自覚はないのかもしれない。どちらかといえば褒めている方で、悪気なんてこれっぽっちもないんだよね。
思いを託すことも、想いを込める事も苦手で。言葉の通りの意味しか含まずに、隠し事が出来ない。
自分を偽って、自分自身にまで嘘をついて、なんとか立っている私とは大違い。
だから、私は答えたんだ。
「私は、別に強くないよ？」
私は強くなんかない。弱い自分を否定したくて、弱い自分を隠したくて、何も考えないようにしているだけ。
未来を考えてしまえば、これから先に起こることを想像してしまえば、恐怖に負けてしまうから。
恐怖に負けて、何も出来なくなり、部屋の隅で震えている。自分を抱きしめるので精一杯で、周りを見ることすら出来ない。
そんな私になりたくないから、何も考えていないだけ。その時のノリだけで生きて、流されているだけなんだ。
『お前は怖いと感じたことがないのか？』
「何が怖いのか、分からないんだよ」
怖いと感じる事、恐怖に負けそうになる事。私にだってあるとは思うよ？
真面目に考えて、真面目に心配をして、真面目に計画を立てているのなら、ね。
だけどさ、私は弱いから。トゥルーデみたいに、悲劇に負けない自信がないから、不安な未来を目指しては飛べないから。
恐怖を感じないように、気付いてしまってもすぐに忘れるように。ずっとそうやって生きてきたんだ。
怖いものからは逃げれば良い。耳を塞いで、目を閉じてしまえば、ここには私しかいない。
怖いものは避けて通れば良い。道はいくらでもあるのだから、探していれば回避する方法くらいは見つけられる。
正面から向き合うことなく、かといって横から襲い掛かるわけでもない。
目隠しをして、恐怖が別のところを見ているうちに、気付かれないようにそっと通り抜ける。
私はそうやって生きてきたんだ。
『お前は、なんの為に戦っている？』
記憶の中のトルゥーデ。いつも怒ってばかりで、いつも私の心配をしてくれて、それなのに自分は無茶をする。
ほんと、どうしたいのか分からない彼女。それなのに、私には質問するんだよねー。
ちょっと、ズルくない？
『ハルトマン、お前は何の為に戦っているのだ？』
だけど、答えない限りは開放してくれなくて、しつこく付きまとわれる。
特に現実でない、過去の回想であれば尚更。私が忘れない限り、私が本当の答えを見つけられない限り、ずっと離れることがない。
「医者になる為だよ」
私の夢、だと思うもの。医者になって、誰かを助けること。
こんな私でも、自分を偽る事しか出来ない私でも、やれることがあると信じたいから。誰かを救えるんだって、実感したいから。
生きているんだって、そう思いたいから。私は医者になりたい。
『本当に、それがお前の望みなのか？』
どうなんだろう？　いや、それ以前に、私の望みってなんだろう？
ずっと眠っていたい？　美味しいご飯が食べたい？　何もしたくない？
ううん、全部違うよ。私の心に響くものは何もないから、それらは間違いだよ。
私の心にあって、私が本当に求めているもの。私の心になくて、私の心が求めているもの。
それは何だろう？
とても大切なことだと思う。忘れちゃいけない、目を背けちゃいけない。そんなことだとは、思うんだ。
だけど、分からない。分かりたくない。
私が求めているもの、私の心が求めているものを、理解したくないんだ。
『どうして分からないんだ？』
「目に見えないからじゃないかな？」
真面目な質問を、気分で誤魔化す。答えを気取られないように、全く別の回答を用意する。
そうすれば、トルゥーデが怒ってくれるから。私を睨みながら、まともに答えろって怒ってくれるから。
そうすれば、生きているって感じられるんだ。トルゥーデの声で耳が痛くなるけど、その痛みが教えてくれるんだ。
私の大切なものは目の前にあって、現在進行形で元気だよって。
『真面目に考えろ。お前にだって、守りたいものがあるだろ？』
「そりゃ、あるよ？　多分だけど……」
私の守りたいものねぇ。いや、あることはあるんだけどさ。
本当に、私は守れるのかな？　守ろうとしているのかな？
こんな我侭しか言えなくて、その我侭すら自分を誤魔化す為の手段でしかなくて、本当の自分がどこにいるのか、それを見失ったような私に何が出来るのかな？　何を守れるのかな？
それに、こんな私が大切なものを持っていても良いのかな？
何も望まず、何も叶えず、ただ戦っているだけの方が良いんじゃないのかな？
「なーんて、答えてくれるわけないよね」
私が話している相手は、過去のトルゥーデだ。
私の記憶にしか存在しなくて、会話は一方通行で、何も変わらないただの思い出。
ダメだな。私は何を期待していたんだろう？
「答えが欲しかったのかなー」
こんな私にも守りたいものがあって、それを守るだけの資格があって、それを守るための強さがあるって。
そう思い込みたかっただけなんだよね。
出来ないって分かっているのに。無理だって、理解しているのに。無駄に足掻いているだけ。無様にもがいているだけ。
「何も、変われていないんだ」
ウィッチになって、私は強くなったはずだった。誰かを守れるような、そんな力を手に入れたはずだった。
固有魔法を扱いなれて、戦場で生き抜く術を覚えて、順調にスコアを稼いでいった。
カールスラントは占領されてしまったけど、私の大切なものは残って、逃げ延びることができた。
けどさ、それは周りが変わっただけなんだよ。私の周りにある環境が、私の周りにいる人が変わっただけなんだ。
私は、私の中身は変われていない。成長していない。
トルゥーデは知っているよね？　私が着任した日のことを。
トルゥーデは知っているよね？　その頃の私が、どんなだったかを。
トルゥーデは知っているよね？　初出撃で、どんな失敗をしているのか。
それなのに、私は強いの？　トルゥーデに褒めてもらえるほどに強くなったのかな？
「まぁ、技術だけは身に着いたよね」
死にたくなかった。死ぬのが、怖かった。
死んだ後で自分がどうなるのか、どうなってしまうのか、それを考えるのが怖かった。
だから、強くなる努力だけはした。戦場に出ても死なないように、戦場に出ても死なせないように、私は努力した。
正直なところ面倒だったけど、恐怖には勝てなかったんだ。
その結果は、みんなも知っているように撃墜数として帰ってきた。重たいだけの勲章と一緒に、帰ってきた。
私はあんなものが欲しくて頑張ったんじゃないのに。本当に欲しい物が手に入らないのに、あんな形だけのものなんていらないよ。
私にとっては、なんの価値もないんだよ。
「心が成長しないんだ」
技術がついても、気持ちがついてこなかった。
身体は強くなっても、心は弱いままだった。
どうしてかな？　あんなにネウロイを倒したはずなのに、私の恐怖は変わらない。消えることなく、私を蝕んでいる。
どうしてかな？　あんなに戦っているはずなのに、未だに戦場が怖いんだ。ストライカーを履く一瞬、背筋に冷たいものが走る。
昨日までは無事でも、今日どうなってしまうかが分からないから。
「前より酷くなったよね」
以前は、もう少し余裕が持てたんだ。大切なものが失われることはないって、私の大切なものはとても強いんだって。そう思い込んでいた。
けど、それは違ったんだ。
私が大切にしているものは、もろかった。ちょっと押せば崩れてしまうほどに、弱かったんだ。
それなのに私は、大丈夫だって思い込んで、その弱さに気付けなかった。
絶対的な強さはないと、身を持って体験していたはずなのに、活かせていなかった。
あの時は、たまたま助かったけれど、次はどうなってしまうのか分からない。私が傍にいて、守れるのかさえ分からない。
どうすれば守れるのか、それが分からない――

　　　　　◇

「１番の問題は、そこじゃないんだけどねー」
口にして、声に出して再確認。自分が勘違いをしないように、流されてしまわないように確認する。
守り方が分からないのではない。守る為の手段、それを得る方法が分からないんだ。
戦力は手に入れた。私１人でも、ある程度は戦えるようになった。
だけど、心が成長していないから、受け入れられないんだ。
「私の心が狭すぎるんだ」
誰かを受け入れるには、私の心は狭すぎる。傍によることは出来ても、誰かを招き入れられるほどスペースがない。
私が座ってしまえば、私が入ってしまえば、それだけでいっぱいになる。とても狭い、檻のようで、牢獄のようなところ。
この中には自由はない。私の成長を止めて、私に嘘をつかせている檻なのだから、そんなに簡単に許してくれるはずがない。
過去の私が作り、今の私が入り、未来の私が鍵を閉める。そうしてしまえば、もう出れない。ずっとその中に、閉じこもったままになる。
誰かと触れ合うことを恐れ、誰かを受け入れることを拒み、世界と向き合うことを選択しない。
そんなおろかな私、エーリカ・ハルトマンが出来上がってしまう。
そんなふうにはなりたくない。そんな未来はイヤだ。
だけど、私には逃げる勇気がなくて、逃げる理由もない。自分自身の中に隠れて、何もかも忘れてしまいたいとすら思っているのかもしれない。
何もない、何も得られない。誰にも助けてもらえない。
そんなところで、１人寂しく泣いていたいと。そんなふうに思っているのかもね。
「良く分からないや」
それが事実であれ、一時の気の迷いであれ、実行するのが躊躇われてしまう。
だって、私がそんな道を選んだら、彼女が連れ戻しに着てしまうから。今以上の迷惑を、彼女にかけてしまうから。
傍にいる間は、一緒に戦っている間は、別の方法を考えよう。そうしなければ、私は自分を保てないほどに弱いから。
朝までに考えるのを止めて、夜に考えていたことは全部忘れてしまって。忘れられなくても、忘れたフリをして自分を騙して。
今日もちょっとだけ、寝坊をすれば日常に帰れる。騒がしくて、鬱陶しくて、何よりも大切な日常に帰れるんだ。