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(・w・) ワッホイ
そんな感じでこんにちは、いや、こんばんは?
ベースも頑張りたい らさ です
まぁ、どうでも良いですね
エイラーニャ テーマ:声
いくつもの夜を越えて、いくつもの朝を越えて、私達は巡り会った。
音が溢れ、命がぶつかり合うこの世界で巡り会えた。
「エイラ……」
その出会いは奇跡なのかもしれない。沢山の人がいるこの世界で、巡り会えたのは奇跡なんだと思う。
だけど、その後に抱いた想いは奇跡ではなく、私達の心が惹かれあった結果。私達が傍にいることにより引き起こされた、当然の結果。
何も難しいことはなかったの。
何も、変わったことはなかったの。
巡り会いさえすれば、魅かれあうのは当然のこと。お互いに求め合うのは当然のことなの。
「だから、気にしなくて良いわ」
「えーと、その、な? 別に何かをしようとしていたわけじゃないぞ?」
夜間哨戒から帰還し、エイラのベッドに倒れこむ。ここまではいつも通り。
寝苦しさと衝撃に目を覚ましてみれば、エイラに抱きしめられてる。これは、今日が始めて。
お互いに好きな者同士だし、いつかはこんな間違いが起きてしまう可能性があった。
間違えが起きたとしても、後悔しない程度には心を決めているから大丈夫。
エイラに襲われたとしても、エイラに食べられちゃうのだとしても、私は幸せになれるだけだから。
――エイラに、そんな勇気があるわけないけどね。
多分、私に毛布をかけようとした時、バランスを崩したのでしょ?
そうでなければ、どれだけお願いしても手を出してこない、何も行動を起こせていなかったエイラが唐突に動き出すはずはないから。
こんなにも行動的であるのなら、私が心配する必要もなく、既に何度か手を出しているはずなんだし。
「も、毛布をかけようとしただけなんだよ。ほら、いつもかけているだろ?」
「うん」
説明されても、ダメよ。私はいつも眠ってしまっているから、エイラがかけてくれていることは知っているけど、見ているわけではないから。
感謝はしていても、お礼を伝えられたことはないから。
だから、こんなふうに起きれたのは嬉しいけれど、今はお礼を言える雰囲気ではない。ちょっと困ったかもしれない。
「だからさ、別に怪しいことをしようとしたわけじゃないんだ」
「大丈夫よ。分かっているから」
エイラ自身から動くような勇気があるのなら、私が心配する必要はないから。告白されるのを、待ち続ける必要はないのだから。
エイラがヘタレなのは、良く知っているよ。
そんなエイラなのに、寝ている私を襲うなんてことはないでしょ?
周りの状況も見えていなくて、自分がどんな顔をしているのかも気付いていないでしょ?
私と目が合っただけで動けなくなって、自分が今何をしているのかも気付いていないでしょ?
「エイラ、少し落ち着いて。もう少し冷静になって」
出来れば早く伝えてしまいたい。
けど、エイラ自身が気付いてくれなければ、更に混乱してしまうから。
私が伝えるのではなく、エイラが気付けなければ意味がないから。
「大丈夫だ、私は冷静だぞ。落ち着いているぞ」
「そう……」
これは、ダメね。
冷静でない人程、冷静である事を強調したがる。本当に冷静なら、それに気が付けるはずなのに。
「なら、手をどけてもらってもいいかしら? そんなに強くつかまれると痛いの」
「え? あ……ご、ごめん。すぐにどけるよ」
「そうして」
エイラの右手。私の大好きな、温かい手。今は私の胸を握りしてめいた。
バランスを崩した時に、掴むところがなかったのも、手を置くところがなかったのも理解しているけど。どうして、そこなのかな?
よりにもよって、胸を掴んでいたのは何故だろう?
「その、深い意味はないんだぞ? ただ、バランスを崩しただけなんだ」
「うん、気にしていないから。大丈夫よ」
本当であれば、慌てるのは私のはずなんだけど、エイラにそんなことを求めてはいけない。それは今までの暮らしで分かっている。
だから、ここは私が冷静になるべきで、僅かに残っている睡魔に身をゆだねてしまうのが、正しい選択なの。
「おやすみなさい」
殆ど眠っていない状態で起こされたのだから、私の意識はすぐに沈んでいく。
目の前でエイラが騒いでいても、真っ赤になっていても、気にならない。
エイラと一緒にいるベッドこそが安心できる場所で、1番暖かい場所なのだから。
――おやすみなさい