明けの空に託して - 雨の降る日に

時間が欲しい。少しだけ待って欲しい。
そう言って、私は彼女の勇気を砕いてしまった。
何度も失敗して、何度もやり直して。苦しみながらの告白だったはずなのに、ね。
「私は、どうしたかったのかな？」
エイラの告白に対し、返事を出来なかった。あの場で、あの時に返答をしなかった。
どうして？
エイラの告白に対して、応える準備はしていたはずなのに。
どうして？
エイラの告白はとても嬉しかったのに。
それでも、あの時に返事をすべきではないと、私の心が判断した。
「あのままだと、エイラだけが頑張っているから」
エイラだけが頑張って、エイラだけが苦しんで。そんなのは間違っている。
私達は恋人になりたいの。ずっと一緒にいたいの。
それなら、嬉しいことも、苦しいことも、２人で経験するべきだよね。
エイラがどれだけ悩んで、どれだけ切なかったか。それを理解しないといけない。
「これは、言い訳なのかな？」
けど、それは本心かしら？　本当は別の理由で、保留してない？
感じている気持ちの中には恐怖がある。
今の関係が壊れ、新しい関係が始まることへの、大きな恐怖がある。
私達は恋人として、きちんとやっていけるのかな？
今までみたいに一方的に頼るのではなく、ちゃんとエイラを支えてあげられるかな？
「エイラ、我侭言ってくれないから」
それはきっと、私が悪いの。
エイラの我侭を受け入れられるだけの強さがないから。
エイラの全てを愛せるだけの強さがないから。
エイラが、私では頼りないと、そう思っているから。
いつもぼうっとして、守られてばかりの私。
みんなに頼りにされ、誰とでも仲良く出来るエイラ。
余りにも対照的で、私にとってエイラは眩しい存在。私を照らして温めてくれる、太陽のような存在。
「だから、怖いの？」
エイラへの憧れがあるから、エイラに対する理想があるから。隣に並ぶことを恐れているの？
恋人になれば、もっと近しい存在になれば、彼女の弱さが見えてしまうことを、恐れている？
「けど、私はエイラを愛しているから」
それを恐れるのではなく、抱きとめてあげたいから。
エイラが困った時に、震えている時に、その手をとってあげたいから――

　　　　　◇

私は、私自身に何を求めているのだろう？
私は、エイラに何を求めているのだろう？
私は、この恋の先に何を求めているの？
「エイラを守ってあげたい。エイラに幸せになって欲しい」
本当にそれだけ？　そんな、綺麗な気持ちだけなの？
その綺麗な気持ちだけで、ずっと一緒にいられるの？
今までだって、喧嘩をしたことがある。
恋人になれば、喧嘩をしないって断言出来る？
今までだって、エイラと意見を違えたことがある。
恋人になれば、ずっと同じ考え方でいられるの？
「そんなの、無理だよ」
恋人になると言うことは、傍にいるということは、そんな綺麗な気持ちだけで片付けられない。
私自身が見たくない、エイラには見せたくない。そんな気持ちだって、出てきてしまうはずだから。
それをきちんと理解して、エイラの気持ちに応えないと言えない。
その気持ちも含めて、エイラに返事をしないとダメ。
「逃げちゃダメ。私はエイラが好きだから」
エイラが好きだから、この気持ちを壊したくないから。
だから、今悩んでいるの。苦しんででも、答えを見つけたいの。
私が、私自身に求めていることを知りたい。
私が、エイラに求めていることを知りたい。
そして、この恋の行く先を、エイラと一緒に悩みたい。
「エイラの傍にいたいから、悩んでも平気」
私の願いと、エイラの願いを叶えたいから。今、こうして悩んでいる。
切なさに向き合い、自分の心に問いかけているの。
エイラは、私に沢山のものをくれたよ。エイラは、いつも私を守ってくれる。
私は、何を返してあげられるのかな？
彼女の気持ちに対して、何を贈ってあげられるのかな？
エイラは、真直ぐに伝えてくれたよ。エイラは、逃げることなく私に告白した。
私は、きちんと告白出来るの？
彼女の隣にいる存在として、相応しい人間になれるのかな？
「憧れるだけではなく、隣にいたい」
それが難しいことだとしても、諦めたくない。
エイラの傍にいるために、絶対に諦められない。
私は、エイラと一緒にいたいから。
この気持ちを忘れずに、大切に。もう少しだけ、悩んでみよう。