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なんか、ぐだぐだしましたが、エイラ告白回ですぉ
「サーニャ、ちょっと良いか?」
「どうしたの、エイラ?」
2月14日、バレンタイン当日。起きたサーニャに声をかけ、部屋へと入る。
落ち着け、私。大丈夫だから、もう少しだけ落ち着け。
「その、今日はバレンタインだからさ。チョコレートを作ってみたんだ」
「そうなの? ありがとう、エイラ」
リーネに教わり、調理場に篭ること半日。サーニャが目を覚ますまでには、完成した。
気持ちが伝わるように、想いを込めて作ったチョコレート。シンプルだけど、結構頑張ったんだぞ?
「あ……ごめんね。私はチョコレート準備できてないの」
「良いさ、私が贈りたくて贈るんだ。受け取ってもらえると嬉しい」
サーニャからも貰えれば、当然嬉しい。だけど、なかったからといって残念がったりはしないさ。
特に、今はそんなことを考えている余裕なんてない。頭の中は真っ白で、胸の中がいっぱいだからな。
「ハートのチョコレート?」
「そう、私からサーニャに贈る気持ちだよ」
大きく、綺麗に、欠けるところがないように。そう思って作っていたら、意外なほどに時間がかかってしまった。
まぁ、ちゃんと間に合ったし、問題はないけどな。
「本当なら、もっと豪華になる予定だったんだ」
ごてごてと無駄な装飾をつけるつもりはない。
それでもラッピングで頑張るとか、トリュフにして趣向を凝らしてみるとか。何らかの形で、アピールをするつもりだったんだ。
「このままでも、可愛いよ」
「ありがとう。そう言ってもらえると助かるよ」
それでも、サーニャが気に入ってくれる事が1番大切。
サーニャが笑ってくれるような、そんなチョコレートを贈ることが1番大切だから。
「基地のみんなから情報収集をして、色々勉強もした。相談にも乗ってもらって、笑われたこともあった」
幸いにして、ウィッチは女性ばかりだから、この手の話題が大好きだ。ミーナまで夜通しで、相談に乗ってくれた。
どうすれば上手に渡せるのか? どうすれば貰った時に嬉しいのか?
送る側から、受け取る側から。色んな視点を想像し、話し合った。
まぁ、中には笑われたこともあったけど、それだって悪い意味じゃない。
既に恋人みたいなもんだと、エールを送ってくれた。
まだ告白してなかったのかって、驚かれた。
最後には、成功するから大丈夫って、笑顔で送り出してくれた。
「どんなチョコレートを、どんなシーンで、どんな台詞と共に贈るか。それをずっと考えていたんだ」
私は、そんなみんなの期待に応えたかった。
完璧と言える告白シーンを考え、その通りに実践する。語り継がれるような、素晴らしいシーンにするんだって、ずっと考えた。
ミーティング中も、戦闘中も、お風呂でも。ずっとサーニャとのことばかりを考えていた。
「サーニャが喜んでくれるように、笑ってくれるようにって、考え抜いたんだよ」
サーニャが喜んでくれるところを。サーニャが笑ってくれるところを。ずっと想像していたんだ。
どんな台詞がその未来を引き寄せるのか、ずっとシミュレーションを繰り返した。
「そしたらさ、なんて言うか。全部いらないんじゃないかって、そう思ったんだよ」
そして、その中で気付いてしまったんだ。
私が告白出来なかった理由に。私が、今まで言い出せていなかった理由に。
「別にサーニャの事を大切に思っていないとか、そんなんじゃないぞ?」
どうして逃げ回っていたのか。どうして、口に出せなかったのか。
何故、伝えられなかったのか。何故、逃げるしかなかったのか。
それに気付いてしまったんだ。
「ただ、そんなふうに飾るんじゃなくて、私の心を、私の気持ちを真直ぐぶつける方が、サーニャが喜んでくれる気がしたんだ」
私は、格好良い台詞を探し続けた。素敵な台詞を探し続けた。
自分の言葉で考えるのではなく、別の人の言葉で告白しようとしていたんだ。
飾った言葉で、教科書に載っているような言葉で、サーニャに好意を伝えようとした。
「情けなくてもいいから、私だけの言葉で津たるべきだって。それに気付けたんだ」
ただ、私の心は気付いていた。私の心だけは、知っていたんだ。
だから、告白しようとした時にストップがかかっていたんだよ。自分の言葉じゃないから、伝えたくなかったんだよ。
「サーニャ。私は、サーニャのことが大好きだ。何度も言っているから信じてもらえないかもしれないけど、愛しているんだ」
「エイラ……」
「だから、その。わ、私と付き合って欲しい。私の恋人になって欲しい」
結果を恐れずに、未来を恐れずに。
自分の言葉で、サーニャに想いを伝えるんだ――
◇
「ありがとう、エイラ。嬉しいよ」
私の想いが届くか、届かないか。決まるのはこの一瞬。
散々遠回りをして分かっていたはずなのに、やっぱり怖いな。
「だけど、ごめんね。私、どうすれば良いか分からないの」
謝罪。そして、困惑。
どうすれば良いか分からないって、その返事では受け入れられたわけではないよな。
でも、拒否されたわけでもない。
サーニャ、迷っているのか?
「エイラに好きだって伝えてもらった時、とても嬉しかった。胸が締め付けられるみたいに、何だか甘い気持ちになれたの」
私が過去に伝えた時、サーニャは嬉しそうにしてくれた。
はにかんだり、笑顔を見せてくれたり、照れてクッションを投げたり。どれにしても、好意的な反応をくれた。
「嬉しくて、暖かくて。多分、あれが幸せなのかな?」
それにすがって、ここまで告白を延ばしたのは私だ。
気持ちが冷めたり、離れたりすることはなかったけれど、随分と待たせてしまった。
それが、サーニャの心にスキマを作ってしまったのかもしれない。
「けど、どうすれば良いか、分からないの」
そのスキマは、サーニャにどんな影響を与えたのだろう?
私の言葉を疑うような、サーニャの気持ちを曇らせてしまうような。そんなことをしたのかもしれない。
「ごめんね、エイラは勇気を出してくれたのに」
確かに、私は勇気を出した。サーニャに告白するんだって、頑張った。
けど、サーニャの心を曇らせたのも、私なんだろう?
「けど、これは私達2人のことだから。エイラだけが頑張って、それで恋人になるのは、おかしいと思うの」
それでも、サーニャは諦めないんだな。私のせいで、わからなくなっているのに。答えを探そうと、そんなふうに頑張ってくれるんだな。
それは、凄い事なんだぞ?
「だから、少し時間が欲しい。エイラにきちんと返事が出来るように、少しだけ時間を頂戴」
少し前に、私がしたお願い。
それが、今度はサーニャから告げられる。私に対するお願いに、入れ替わっている。
「エイラ、ダメ?」
「ダメなわけ、ないだろ。私は散々待たせたんだからさ」
そのお願い、私が断れるわけがない。
「返事をもらえなかったのは悲しいけど。それでも、サーニャがしっかりと考えてくれるのは嬉しいよ」
考えている間、返答がない間。サーニャがどれだけ苦しむのか、容易に想像出来てしまう。
それなのに、断れるはずないだろ。
「良いよ、私は待ってるさ。サーニャが自分の心と向き合い、答えを出すのを待っているよ」
伝えるだけ伝えたから、後は待つしかない。
サーニャが苦しんで、出した答えを受け止めるしかないんだ。
「ありがとう、エイラ」
「気にすんなって」
傍にいても、何も手伝えない。守ってやることが出来ない。
それが悔しいけど、きちんと待っているからな。
――気持ちって、難しいんだ