リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。
メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
そのままんまだぜww
(・x・)エイラ 頑張れ!
本日は2月13日。明日は2月14日バレンタイン。
本来は聖人の誕生日か何かで、ありがたい日らしいけど。知り合いでもない私には、関係のないこと。
関係があり、重要なのはただ1つ。
「バレンタインは告白をする日なんだよな」
タロットの結果も、珍しくいい方向のものばかり。さっき確認した感じだと、サーニャの機嫌も良い。
この上なく、恵まれた条件だ。
「だからこそ、もっと幸運を呼び込むんだ」
タロットはあくまで占いであり、サーニャの機嫌が明日も良いとは限らない。
だからこそ、少しでも成功率を上げる為に、私は行動しなければいけない。
◇
「それで、私のところにきたんですか?」
「なんだよ、良いだろ? そんなこと言わずに、教えてくれよ」
定番であることは、けして悪くはない。これが基本となり、応用も生まれるんだ。
そんな訳で、先人の教えに従い、手作りチョコレートに挑戦しようと思う。ただし、1人でやって上手に作れる自信はない。
「別にいやということはないんですけど。エイラさんは、既に上手に作れると思うんですけど」
「いや、恥ずかしいことなんだけど、お菓子作りに関してはまだまだだ」
サーニャに苦労をかけたくない。サーニャに美味しいものを食べて欲しい。そう考えた私は、時々宮藤に料理を習っている。
扶桑の料理と、オラーシャの料理。文化は違えど、料理としての基本は同じはずだからな。
ただし、それは料理に限った話。扶桑のお菓子だって悪くはないが、優雅さで競うならブリタニアだろ?
「そうなんですか? エイラさんは何でも出来そうなイメージあったんですけど」
「ダメだな。努力せずにやれる程、恵まれた才能は持っていないさ」
失敗して格好悪いところを見せたくないから。いつでも頼ってもらえるように、格好良くありたいから。
影でコソコソと努力するのは、私の特技なんだ。
「ところで、エイラさんはチョコレートを作ったことは?」
「全然。スポンジのコーティングに使った程度で、それ自体をお菓子として扱ったことはない」
ただし、バレていけないのはサーニャだけ。
特に、指示を仰ぐ人間には包み隠さずに、極力正直に話してしまう方が良い。そうしないと齟齬により、余計な時間がかかってしまう。
自分が教わっている立場であることを忘れずに、変なプライドは忘れていれば良い。
それが、最も効率良く教わる方法なんだから。
「けど、それなら湯銭は大丈夫ですよね?」
「そうだな。湯銭に関しては問題ないと思う。どちらかと言えば、固めるのに要する時間、配合する時間等が分かっていないはずだ」
湯銭だけなら、問題ない。散々練習して習得したんだ。忘れてはいないさ。
「では、いくつか作ってみて、気に入ったのを練習してみましょう」
「ありがとう、リーネ。助かるよ」
「私、お菓子作るの好きですから」
……凄く柔らかい反応だよな。これが大きくなる秘訣なのか?
こちらに負担をかけないような、ふんわりと受け止める会話。ついでだから、これも少し盗ませて欲しい――
◇
「エイラさん、流石です」
「いや、リーネの教え方が良かったんだろ」
私達の前に並ぶ、いくつかのチョコレート。多少歪なところはあっても、味に関しては問題ないようだ。
やはり、良く知っている人間に聞いたのは正解だったな。
「ところで、気に入ったチョコはありましたか?」
「んー、どれも悪くはないんだけど、インパクトがないよな」
「インパクトですか?」
明日はバレンタイン。それ用に作っているのに、単純なチョコレートでは意味がない。
こう、ガツンとくるような、インパクトのあるチョコレートを作りたい。
「ボンボンに入れるリキュール。強いものに変えますか?」
「いや、酔わせても仕方ないだろ? サーニャ、アルコールには弱いんだよ」
確かにインパクトという点のみでなら、今の案は採用出来る。ただし、それは別の日にしとくよ。
今私が求めているのは、見た目的なものであり味ではない。いや、美味しいに越したことはないんだけどな。
「渡す相手、サーニャさんですよね?」
「だって、バレンタインは告白する日なんだろ?」
ヘタレと言われても反論出来ない日々。告白しようにも、言葉を紡げない日々。
そんな情けない私に別れを告げ、明日こそは告白してみせる。
「えーと、もしかして、まだ告白してなかったんですか?」
「悪いかよ、まだだよ」
なんで驚いているんだよ。今は保留にさせてもらっている状態なんだ。
勢いで告白するんじゃなくて、思い出に残るようなそんな告白にしたいからな。
「てっきり、既に恋人同士なんだと思いました」
「そうだと良いんだけどなー。残念ながら、まだ告白出来てないんだよ」
これに関しては、私のサーニャの問題。リーネに余計な心配をかける必要はない。
チョコレート作りで世話になったんだし、心配をかける前にお礼をしないとな。
「あっ……それなら良い方法がありますよ♪」
「本当か? 是非、教えてくれ」
インパクトのある渡し方。思い出に残るようなチョコレート。
頭の中をぐるぐると、無駄に文字だけが回りだした頃、リーネが助け舟を出してくれた。
さっき心配はかけたくないとか、そんなこと考えていた気がするけど。そんなのは全部後回し。
今の私にとって、サーニャが最優先なんだよ。
「タイプとしては、チョコレートフォンデュですね」
「あのチョコレートをつけて食べるやつだよな?」
バナナやビスケット、時には野菜まで。鍋で溶かしたチョコレートにつけて食べる。
そんな感じのやつだよな?
「そうです。それを応用して、自分につけちゃうんですよ」
「自分につける?」
それは、私が鍋に飛び込むのか?
いや、インパクトとしては悪くはないかもしれないけど。それをサーニャにどうぞってのは、勘弁して欲しいな。
「こうやって、胸のところに垂らして」
「ふんふん、胸に垂らして……」
うわっ、こうしてみると迫力あるよな。パンパンに見えて、柔らかくて――やばっ、思わず生唾を飲みそうになったぞ。
リーネはそんな事の為にしているんじゃない。私にお手本を示しているだけなんだからな。
「このままで。はい、どうぞって差し出せばいいと思います」
「そ、そんなこと出来るわけないだろー!」
ここまで見てて気付かない私にも、問題はある。
けど、こんなことを提案してくるか? リーネなら変な事は言わないだろうって、そんな安心があったのに。
「けど、インパクトのある告白ですよね? 忘れられないような告白ですよね?」
「それは、そうなんだけどな」
「だったら、これくらいしても良いと思います。いえ、するべきなんです。サーニャさんだって、待ってるはずです!」
どうして、そんなに強気なんだよ。というか、迫ってくるな!
私だって待たせてるし、インパクトの強いものは歓迎するけど。それはダメだろ。
「エイラさん、今こそ決断するべきです!」
「わ、私をそんな目でみるなー!」
リーネの剣幕に押され、想像した時の恥ずかしさに負け、思わず走り出してしまった私。
情けないのかもしれないが、あんなこと出来るわけないだろ。
――また、明日考えよう