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(・w・) 私も学ばないなぁ
エイラーニャ テーマ;追随 です
ほら、サーニャさんが寂しければ、エイラさんだってがんばれるのですよ
「らん、らーらー♪」
綺麗で静か。そして、何よりも冷たい夜の空。
夜間哨戒に出るのはいつものことで、この暗さにも慣れてしまったけど。やっぱり、寂しさだけは消えない。
どこまでも飛んでいけそうな、どこまでも落ちてしまいそうな、そんな暗い空での寂しさは消えることがない。
私の弱い心と捕らえて、話すことなく蝕み続けている。
「今日は、ダメか」
電離層を利用しての、ナイトウィッチどうしの交信。いつもであれば送れるはずの地域にも、電波状態が悪いらしく届かない。
この暗い空で唯一の楽しみなのに、残念。今日は独りぽっちだ。
「任務に集中しなきゃ……」
他の地域と交信が出来ない。それは寂しいことだけど、任務には関係ないから。
たまにはこの空に身を委ねて、雲の中にもぐり込んでみるのも良いかな?
今の私には、帰りたいところがあるのだから。そこを守るためにも、ちゃんと任務をこなさないとね。
「エイラ」
彼女と出会うまで、人付き合いの苦手だった私は、常に孤立していた。
ナイトウィッチとして、悪くない成績を上げても、階級が上がったとしても、それは変わらなかった。
みんなとの時間のズレ。出会う機会が減れば、必然的に会話も減ってしまう。
私自身の性格の問題。賑やかな方ではないから、私といてもつまらないの。
だから、ここまで私に構ってくれたエイラは、とても大切な人。恋とか、愛とか、それ以上に大切な人。
初めは何だったかな? ストライカーの修理? 部品の取り寄せ?
そんな、些細なことから始まった気がする。
人前で喋るのが苦手で、喋るテンポもみんなより遅い。のんびりと、ゆっくりとしたもの。
みんなと会う時間には眠たくて、何を喋ったか覚えていないこともある。
それでも、エイラは怒らなかった。
私が喋るのを待ってくれて、私の伝えたいことを分かってくれた。
ずっと傍にいてくれて、私が独りにならないよう助けてくれた。
「だから、好きになったのかな?」
みんな、誤解しているところがあるけれど。エイラはとても優しいのよ?
小さなことにも気づいてくれるし、どんな時でも見捨てずに傍にいてくれる。
困った時にはいつの間にか傍にいて、支えてくれるの。
だからこそ、みんなともっと仲良くなって欲しいし、私のこと以上に自分を心配して欲しい。
ただ、そのせいでエイラの隣にいられなくなるのは、寂しいな。
「我侭はダメ」
今はこのままでも、許されるのかもしれない。今なら、このままでも良いのかもしれない。
だけど、ずっとエイラに頼り続けていてはダメ。
出会う前は独りだったのだから、あの時の感覚に戻せば良いだけなの。エイラがいなかった時の、あの寂しい自分に帰れば良いだけ。
そうすれば、私は独りでも平気だから。ただ、笑えなくなるだけ。
エイラの温もりを忘れて、寂しくて冷たい場所に帰るだけ。
そう、簡単なことよ――
◇
「これは……」
気持ちと一緒に飛行高度も沈み、雲の中を飛んでいた私。
その耳元でノイズが聞こえている。
ネウロイにしては反応が弱く、危険性を感じることもない。
基地からの通信かな?
「少し、待って下さい。今、雲から出ます」
このままでは、何を言っているのかが聞き取れない。緊急の用事はないはずだけど……何だろう?
「サーニャ、聞こえるか?」
「この声は、エイラ?」
インカムから聞こえてくるのは、1番聞きたかった声。
私を安心させてくれて、私の心の霧を払ってくれる。そんな声。
「ふっふふー、やっと繋がったな」
眠そうだけど、どこか楽しそうな声。エイラ、司令室にいるのね?
今夜は哨戒任務に同行できないからって、いじけていたはずなのに……。
「明日、早いからさ。出撃はダメだって言われたけど、通信だけならって許可をくれたんだ」
「そう。けど、どうして?」
エイラの声を聞けたのは嬉しい。
だけど、彼女は無理をしていないかな? 明日の訓練があるのに、平気なの?
私、またエイラに迷惑をかけていない?
「だってさ、夜の空寂しいだろ?」
そんな私の心を見抜いたように、エイラの温かい声が届けられる。
夜の空は寂しい。夜の空は冷たい。だから、私はエイラのベッドに温まりに行く。
今夜はそれも叶わないから。こんなふうに通信してくれるの?
「私は平気よ?」
「いつものことだから平気だなんて言うなよ」
私の声にかぶせられるエイラの声は、少しだけ怒っているみたい。
怒っていて、その上で悲しんでいる声。誰かを心配している声。
「寂しい時は、寂しいって。そう言ってくれれば良いんだ」
寂しい? 私が?
うん、エイラの言う通り。私は寂しかった。
独りで飛んで、独りで帰って。それが、とても寂しかったの。
「けど、エイラ。無理しちゃダメよ?」
言っても無駄だろう。それは分かっているけれど、言わずにはいられない。
エイラが私を想ってくれているように、私もエイラのことを思っているのだから。
「大丈夫、どうにかするさ。私とサーニャの仲だろ?」
私の悩みなんて、いつもの通り笑い飛ばしてくれる。いつも、私の味方でいてくれる。
そんなあなただから、私も力になりたいの。エイラの弱いところを、私が支えてあげたいの。
――私に、何が出来るのかな?