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キスは書けなくても、エイラーニャは書きたい!
そんな感じで、足掻いてみたぉ
テーマ;歩み です
本日の待機時間が終わり、息をつける時間がやってきた。
いつもであれば、サーニャと笑いあっている時間なんだけど……この状態では、そうもいかないか。
「ねぇ、エイラ。教えて」
「いや、教えてって言われてもなー」
少しだけ怒ったような表情をしたサーニャに詰め寄られ、質問を受けている真っ最中。
その迫力に圧倒されてしまい、いつものようにはぐらかすことが出来ない。
んー、サーニャが元気なのは嬉しいけれど、こういうのは困るなぁ。
「別に、大きな理由はないんだよ。ただ、その、なんとなくなんだ」
「本当? 本当にそれだけなの?」
「いや、それだけってことはないんだけどさ」
確かに、理由はそれだけではない。少しだけ複雑で、私の胸を締め付けている想いが存在する。
だけど、素直に言えるかと問われれば、無理。それだけは、無理だな。
「ねぇ、エイラ。それは私には教えられない理由なの?」
「そ、そんなことはないぞ。そんなことは、ないんだけどさ」
頼むから、そんな悲しそうな顔をしないでおくれ。思わず、抱きしめたくなってしまう。
私はサーニャに笑っていて欲しいだけなのに、悲しませたくなんてないのに。どうしてこうなってしまうんだよ。
「私は知りたいの。どうしてエイラが守ってくれるのか。ここまで親身になって、私の傍にいてくれるのか」
「えーと、それは、その……」
素直に答えたら、サーニャは納得してくれるのか?
好きだから、恋をしているからとは伝えれば、それで良いのか?
それだけを伝えれれば、私の心は納得出来るのか?
「上手く伝えられるか分からないしさ、もう少しまとまってからにしたかったんだけどな」
まさか、そんなに簡単なものではない。私のこの想いは、サーニャへ向かう気持ちは、そんなに簡単なものではない。
それに、サーニャを守りたいと感じているのは、恋をしているからだけではないからな。
自分の気持ちに気付く以前から、守りたいと感じていたんだ。
「サーニャは私の心を守ってくれるからさ、私はサーニャ自身を守りたいんだよ」
守ってもらっている分、私も同じように守りたかったんだ。
救ってもらった分だけ、私もサーニャの力になりたかったんだ。
その上で恋をしてしまったから、こんなにもややこしくなってしまっている。
「ほら、私ってちょっときついところあるだろ?」
始めは単純な理由だったのに、どんどんと複雑にしてしまった。
「エイラ、優しいよ?」
私が優しい? いや、サーニャがそう感じてくれているのなら、あえて否定はしないけどな。
そう思ってくれているなら嬉しいし、その通りでいたいから。
「どっちにしても、人付き合いが上手いとは言えないさ」
ただ、いくらサーニャに擁護されたとはいえ、事実は変わることがない。変わるはずがないんだ。
私は気遣いが出来ない。優しさなんて、持っていないんだよ。
「戦闘だって、攻撃に当たらないって言えば聞こえが良いけどな。実質的には、味方を守るのには向いてないんだよ」
シールドを張ったことがない私。攻撃を受ける恐怖を知らない私。
それは、他のウィッチ達からすれば、異端だ。
「人付き合いが下手で、戦場で頼るには不安が残る」
他人と違うこと。他人の痛みを理解出来ないこと。
それがプラスになることはない。不安を積み重ねれば、不信になるだけなんだ。
「確かに、ある程度の戦線でなら活躍出来たぞ? スオムスでは問題なかったんだ」
ネウロイがあう程度出現し、ある程度の撃墜数は稼いでいた。
まぁ、戦績には大した興味もなかったし、仕官になりたくないってゴネたから、今みたいになっているんだろうけど。
「だけどな、ここは最前線。特に防衛を主任務としている以上、攻撃よりも防御に、個人よりも集団戦に向いているウィッチが望まれる」
連日連夜のように被害報告が届けられ、一緒に戦っているメンバーの顔ぶれだっていつ変わるかも分からない。
そんな中で、固有魔法だけに頼るような戦い方は出来ない。互いの欠点を補い、フォローできる人材が好まれる。
「それを考えればな、私は孤立するはずだったんだよ」
そんな部隊で、私の居場所なんてあるはずなかった。他人に合わせようとしない私に、居場所なんてあるはずなかった。
「独りで出撃して、独りで帰ってきて、独りで食事を取って……そんな寂しい未来だってあったはずなんだ」
配属命令を聞いた時、私は寂しい未来しか想像出来なかった。
表面上の付き合いしか出来ない、そんな部隊に送られるんだって。落胆したこともある。
「だけど、現実は違った。私の予想と違って、楽しいと思える日々が待っていてくれた」
始めはただ、頼りなかったから。ふらふらしていて、消えてしまいそうだから。サーニャを守ろうって思ったんだ。
私でも誰かを守れるのを証明する為に。未来の私に胸を晴れるようにって。それだけだったんだ。
だけど、それは間違いだったんだよ。
守っている。守ってやっている。
そんなふうに思い込んでいたのは、私の勘違い。
「サーニャが傍にいてくれて、私を受け入れてくれて――笑顔を見せてくれたからな」
本当は、サーニャが守ってくれていたんだ。
私が挫折しないように、私が逃げ出さなくて良いように。サーニャが守ってくれた。
「おかげで私の心は折れることなく、みんなから弾かれることもなく、こうしてやっていけている」
だから、サーニャを守ることは、私自身の心を守ることに繋がる。
勝手な理由かもしれないけど、私にとっては大切なことなんだ。
「ありがとうな。私が笑っていられるのは、サーニャのおかげだ」
サーニャが守ってくれた心が、私に教えてくれる。私に告げるんだ。
私は、サーニャが好きなんだって――
◇
「エイラ。それは、私も同じよ」
告白でなくても、随分と恥ずかしいことを告げてしまったものだ。
そんなふうに後悔していた私。その耳に、意外な言葉が飛び込んできた。
「サーニャも同じ?」
何が同じだと言うのだろう?
まさか、私に恋をしているなんて――そんな都合の良い展開、あるわけないか。現実ってのは、厳しいんだ。
「私もエイラに。私の心だって、エイラに助けてもらったの」
「そうなのか?」
私がサーニャの心を助けた? それは、本当だろうか。
本当なら嬉しいけど、別に慰めてくれなくても大丈夫だぞ?
私は、現状でも満足しているんだ。
「私もずっと、独りぽっちだったから」
「そんなことはないと思うけどな。みんな、サーニャのこと好きだぞ」
勿論、1番好きなのは私なんだけどな。
どっちにしても、私とは違ってサーニャはみんなに好かれているはずだ。
「エイラが手伝ってくれたから。エイラが一緒にいてくれるから、そんなふうに感じるだけよ」
そうなのだろうか? 私がサーニャの全てを知らないから、そう感じているのだろうか?
本当のサーニャは、心の中では悲しみを抱えているのだろうか?
「私、ナイトウィッチだから」
そんな彼女が告げる、悲しくて、寂しい一言。
暗く沈んでいて、私が知っているサーニャのどの声とも違う。とても重たい言葉。
「みんなと、生活リズムが合わないでしょ? 顔も合わせることも少ないし、お喋りをする機会も少ない」
その重みは、私の口を閉じさせるには十分過ぎて、サーニャの辛さが伝わってくる。
暗くて、重くて。星の出てない夜のように、孤独を突きつけてくる。
「それに、いつもぼーっとしているから」
違う、そんなことはないと。サーニャの言葉を否定したい。
それなのに、私自身が圧倒されてしまい、言葉を紡ぐことが出来ない。
サーニャが辛そうなのに、サーニャの心が涙しているのに。どうして、私は何も出来ないんだよ。
「だけど、エイラはそんな私に話しかけてくれたでしょ?」
そんな沈んだ心が思い出させるのは、サーニャと出会った時のこと。
寂しそうに、ぽつんと独りで立っていた。輪に加わっていても、一歩引いたところで寂しそうにしていた。
そっか……だから、私は気になったんだ。私とは違う理由で、同じように孤独に囚われているサーニャが。
そんな彼女を助けたいと、どうにかしたいと感じたんだ。
「エイラにとっては大したことなかったのかもしれないけど、私は嬉しかったの」
いや、今でもはっきりと思い出せるけど、そんなことはない。
手に汗を握り、逃げ出したい衝動と戦いながら、私は必死に声をかけたんだ。
――なんだよ。過去の私の方が、勇気があるじゃないか。
「みんなとお喋りする機会も少なくて、何も知らなかったから。エイラが教えてくれるまで、みんなの優しさに気付けなかったから」
会話は、あまり多くなかったと思う。ただ、消えそうな彼女を捕まえておきたかったんだ。
ふらりと消えてしまいそうな、独りで頑張っているサーニャを。
「エイラが、私とみんなを繋いでくれたの。私も仲間なんだって、そう思わせてくれたの」
最初、なんの話をしたんだろうな?
出身地だろうか? オラーシャの寒さだろうか?
それとも、家族のことだったか?
ダメだ、思い出せないや。
「だから、ね。私もエイラの傍にいたいの。お互いに支えあえる。そんな関係になりたいの」
過ぎ去りし時のことは、ただの思い出として。私は今を生き抜かないといけない。
どんな未来が待っていたとしても、生きていないと手に入れることも出来ないから。
「サーニャ……」
まぁ、サーニャには幸せな未来をあげたいけどな。
笑顔でいられる、辛いことなんてひとつもない。そんな、平和な空をプレゼントしたい。
「なら、一緒に飛ぼう。どこへでも一緒に行こう」
だから、それまで傍にいて欲しい。ずっと、一緒にいたい。
そして、この胸に宿った想いを聞いて欲しい。
「これで良いかな?」
「うん。ありがとう、エイラ」
胸の中に広がる温かい気持ち。
好きって気持ちみたいに燃え上がることはないけど、私を満たしてくれている気持ち。
サーニャの笑顔みたいに、温かい気持ち。
サーニャが愛しくて、それでいて恋愛とも違って。
これが、優しさなのかな?
――サーニャと一緒なら、どこへでも行けるさ