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予想通り、仕事が最後にずっこけた
上司はざまぁ、先輩は可愛そう
(・w・) あ、金曜日に仙台へ行きます(帰宅)
そして、尼崎へ向かいます(運転時間は合計で12時間くらい?)
変則エイラーニャ テーマ;エプロン です
いや、エプロンであった必要性はわからなくなったけど
前2日よりはマシになった、気のせいがする
明日は、もう少し頑張らないと死ねる気がする(仕事)
「おはようございます、エイラさん」
「ん? あぁ、宮藤か。おはよう、何か用か?」
サーニャが安らかな眠りについた頃、私の1日が始まる。まぁ、徹夜だから2日目なんだけどな。
そんな感じで、テンション低めの朝を迎えていたわけなんだけど、どういう訳か宮藤に捕まってしまった。
いや、今は挨拶をされただけなんだけど、これだけでは終わりそうにない雰囲気がある。正直、眠たいし、別の機会にまわして欲しいんだが……。
「そーいえば、昨日。宮藤が私を探していたんだっけ?」
「はい、実は相談があって探していたんです」
夜間哨戒から戻った時、ミーナ中佐から聞いた覚えがある。何の用事かまでは聞いていないけど、結構慌ててたみたいだな。
「それにしても、私に相談なんて珍しいな」
宮藤の相談先は、坂本少佐やリーネだと思ってたんだけど。いや、そもそも私自身、あんまり相談を受けるような立場じゃないぞ?
そうなれば、思い当たるのは占いくらいか?
「あー、悪いけど占いは無理だぞ? 眠気がひどいから、せめて昼過ぎにしてくれ」
頼られる分には応えたい。そうは思うものの、この眠気ではとても占いなんて出来ない。
正確に言えば、眠気に負けて適当なことを言ってしまいそうだ。
「そうですか……けど、占いじゃなかったら良いですか?」
「んー? 私に占い意外で用事なんかあるのか?」
そう言えば、前に人生相談を開いた時も、宮藤だけはまともに頼ってくれたもんな。
まぁ、それどころではなかったし、逆に私が相談しているみたいになってしまったけど――
「私で良ければ力になってやるよ」
世話になった分くらいは返さないと。サーニャに怒られそうだし、宮藤に悲しい顔をされるのも嫌だから。
騒がしいヤツだけど、悪いヤツじゃないんだし。これくらいなら、な。
「わぁ、ありがとうございます」
「ただ、あんまり期待すんなよ」
宮藤程モテモテのやつが抱えている悩み。果たして、私だけで解決出来るのだろうか?
話を聞くだけなら容易いけど、解決となれば話は別だぞ?
「大丈夫です。エイラさんなら、きっと解決してくれるって信じてます」
「いや、だから無条件に信じるなってば」
どうにも、こいつの目は苦手だ。辛いことがあっても、難しいことがあっても、前だけを見ているような。そんな力強さ。
他にも私が持っていないものを沢山持っていそうで、正面から見るのは結構きつかったりする。
ついでに言えば、餌がもらえる子犬みたいにじゃれ付くのも、勘弁して欲しいんだけどな。
「えーと、ここじゃなんなんで。場所を変えませんか?」
「なら、宮藤の部屋で良いだろ? サーニャがさっき寝たばかりだから、あんまり騒ぎたくないんだよ」
これくらいの会話で目覚めはしないだろうけど、邪魔になるのは嫌だからな。
疲れていたみたいだし、休める時にはしっかり休んで欲しい。
「はい。では、すみませんが一緒にお願いします」
「気にすんなって。どうせ、大したことは出来ないんだからさ」
自分を過大評価するつもりはない。そして、過小評価するつもりはない。
その上で、私は相談を受けるのには、あまり向いていないと思う。
それ以前に、宮藤の悩みって何なんだよ。
◇
「で、宮藤の悩みって何だ?」
部屋に招かれ、お茶とお菓子をだしてもらい、座布団の上に座る。
別に不満はないけれど、私は雑談をしにきたわけじゃないぞ?
いや、それで宮藤の悩みが解決するんなら、それでも良いけど。そんな単純なものなのか?
「実はコレなんですけどね」
「カタログか?」
差し出されたのは、写真と説明、そして価格が載っているもの。大方、通販のカタログだろう。
ただ、買い物の相談であれば、私よりもリーネが適任だと思うんだけどなぁ。どうして、私にそれを見せるんだ?
「実は、リーネちゃんにプレゼントを贈りたいんです」
「へぇ。あいつの誕生日って、もうすぐだったっけ?」
誕生日プレゼントって訳か。なるほど、それならリーネには相談出来ないな。
「いえ、全然違いますよ」
「だったら、何で贈るんだよ? 贈る側は良いかもしれないけど、贈られる側は理由がないと受け取り辛いぞ?」
戸惑いながら受け取ることは出来ても、素直に受け取るのは難しい。
理由がないプレゼントなんてのは、そんな扱いだ。嬉しくても、喜び辛いんだよ。
「一緒に料理しているときに気づいたんですけど。リーネちゃんのエプロン、痛んできているんですよ」
宮藤って、変なところに鋭いよな。そんなの、誰も気づいてないと思うぞ?
悪いことじゃないけど、どうせなら別のところに気を回しても良いんじゃないのか?
「まだ使えるとは思いますけど、どうせならプレゼントしちゃおうかなって」
「ふーん、別に良いんじゃないか?」
リーネも宮藤から貰った物なら喜んでつけるだろうし、そこまで悩まなくても良いと思うけどな。
似合いそうなヤツをピックアップして、それから悩めば良いんじゃないのか?
「ただ、私がエプロンを使ったことがないんで、どんなのが良いか分からないんです」
「エプロンなんだから、そこまで機能を求めなくても良いだろ? なら、似合いそうなヤツで良いんじゃないのか?」
何を悩んでいるのか、私にはいまいち分からない。
「それに、私だってエプロンに詳しいわけじゃないんだ。そんなに期待されても、困るぞ?」
専門家だったり、コックだったりするわけじゃない。私も宮藤もウィッチなんだ。
料理や服飾の知識がないわけじゃないけど、エプロン自体には詳しくないぞ。
「大丈夫です。エイラさんなら、数あるエプロンの中から最高の物を選べるはずなんです」
「その自信はどこからくるんだよ。私には理解できない」
そりゃ、時間と根気さえあれば、自分の納得いくものを選べるだろう。
けど、そのつもりでいるのなら、私を呼んだ意味は何もないよな? ただ、人手が欲しかっただけなのか?
「エイラさん。サーニャちゃんに贈るとしたら、どのエプロンを贈りますか?」
「くっ……卑怯だぞ、宮藤」
「ほら、想像してみてください。サーニャちゃんがエプロンをつけて、料理している姿を」
成る程、そうくるか。確かに、この方法なら私が1番早く、そして可愛らしいエプロンを探せるだろう。
宮藤も考えたなぁ。
「そして、カタログと比べて下さい。1番似合いそうなものはどれですか?」
サーニャに1番似合いそうなエプロン。サーニャ自身の可愛らしさを引き立てる、エプロン。
「そんな手には乗らないぞー。私が贈るとしたら、その、て、手作りで良いだろ?」
エプロン姿で料理してくれるサーニャ。思わず、そんな光景を思い浮かべ、ずるずると応えてしまう。
うぅ……ごめんよ、サーニャ。料理しなきゃいけない状況になったら、私が作るから許してくれ。
「手作りですか?」
「別に市販品が悪いって訳じゃないぞ? だけど、細部まで拘るなら、作るほうが早いだろ?」
あれでもない、これでもないと悩むくらいなら、思い通りの物を作ってしまえば良い。技術的な問題はあっても、どこは努力でカバーする。
そうすれば、この世界でただ1つ。サーニャの為だけのエプロンが完成するわけだ。
勿論、私が作っているんだから、サイズ・デザイン共に最高の物になる。
「エプロンなんて、そこまで難しいものじゃないんだ。それに、プレゼントなら、尚更手作りだな」
一生懸命選んだ物だって悪くはないけどな、手作りには敵わない。
作るときから始まって、渡すまで。ずっと気持ちが注がれているのだから。
溢れるぎりぎりまで、注いであるのだから、負けるはずがない。
「成る程。流石はエイラさんですね」
「なんだよ。褒めても何も出ないぞ」
私は、サーニャに甘いのかもしれない。望むことは全て叶えてあげたいし、全ての嫌なことから守ってあげたい。
好きだからこそ、笑顔を守りたい。その笑顔を見つめていたら、いつの間にか好きになっていた。
ただ、それだけのことで、いつ好きになったかも覚えてないんだよなー。
「いえ、ただ凄いなーって。そう思っただけですから」
私が凄い? いや、折角褒めてくれているところ悪いけど、私は全然凄くないぞ?
それに、会話の流れを無視してないか? 私、そんな話してないぞ。
「私、初めて見た時思ったんです。エイラさんは、サーニャちゃんのお姉さんみたいだなって」
初めて会った時って、サーニャは半分寝てたようなもんだぞ?
まぁ、昼間眠そうなのはいつものことだけど、あの日は格段に眠そうだったなー。
「気づいてますか? サーニャちゃんの物を探している時とか、エイラさん凄く優しい顔をしているんですよ?」
「そうなのか?」
確かに、サーニャのことを考えるだけで幸せな気持ちになれるし、それが顔に出ているのかもしれない。
ただ、宮藤に指摘されるなんて思ってもなかったな。
「けど、優しいだけじゃダメなんだよ。それだけじゃ、サーニャを守れない」
優しさだけで出来ることなんて、しれている。優しいだけじゃ、足りないんだよ。
強さと勇気。それが私には足りないんだ。
「知ってるだろ? 私はサーニャが好きなんだ」
ラジオの時、教えたもんな。宮藤なら、知っているだろ?
「だけど、直接伝えることが出来てない」
「……まだ、出来てなかったんですね」
「お前や少佐とは違うんだ。簡単に言うなよ」
練習はしたさ。何度もチャレンジしようとしたさ。
ただ、直接伝える機会を逃しているだけなんだ。
「だから、いつかサーニャも離れてしまうんじゃないかって。最近、そんなことばかり考えているんだ」
告白する勇気さえない。そんな私に、サーニャを守れるのだろうか?
自分の気持ちさえ伝えられない。そんな私を、サーニャは信頼してくれるだろうか?
いつか愛想を尽かされて、1人になるんじゃないかな?
「大丈夫ですよ。サーニャさんはエイラさんのことが好きで、そして信頼しているんですから」
「そうかな。私って、サーニャに好いて貰えているのかな?」
それにも、自信がなくなってきたんだよ。前までは、悩むこともなかったのにな。
サーニャが私を好きでいてくれる。それだけで、満足できたのに。
「何か困ったら、いざとなったら、エイラさんが助けてくれる。そんなふうに感じているはずです」
本当にそうだろうか? サーニャは私を頼ってくれるのかな?
私よりも、頼りになる人に守って欲しいんじゃないのか? そもそも、私がサーニャを守れるのか?
逃げ出すつもりはないし、見捨てるなんてありえない。
だけど、頼ってもらえなければ、助けることも出来ない。
「私、不思議なんですよ。2人共、とっても嬉しそうなのに、お互いに優しくしているのに。どうして、そんなに不安になるんですか?」
「私は、サーニャじゃないからな。心の中までは分からない」
その優しさが示すものが何か、私には分からない。その優しさを受け取っても良いのか、私には分からない。
ほんと、どうすれば良いんだろうな。宮藤、教えてくれよ。
「それに勇気もないから、難しいんだよ」
私は勇気がなくて、強さが足りなくて、サーニャを守れないほど弱いんだ。
守りたくても、私じゃ足りないんだよ。私には、サーニャの笑顔を守る資格はないんだ。
「勇気なんていりませんよ? ただ、信じれば良いんです。エイラさんが好きな分だけ、サーニャちゃんも好きでいてくれるって」
ただ、こんなにも弱気になっている私でも、助けようとしてくれるやつがいる。私の為に、言葉を投げかけてくれるやつがいるんだ。
それは、決定打にはならないかもしれない。
だけど、確かに私の心を軽くしてくれるんだ。
「そう信じれば、何も怖くないはずです」
「それも、ありかもなー」
信じるか……そうだな、サーニャを信じれば良いんだ。
弱気になる前に、弱音を吐く前に、絶望する前に。信じ抜いてみれば良いんだよな。
「ありがとな、宮藤」
「気にしないでください。その分、最高のエプロンを選んでもらいますから」
「まぁ、それくらいなら付き合うさ」
いつも元気で騒がしい。困っている人を放っておけない。
そんな宮藤だからこそ、私もサーニャも仲良くなれるのかもな。
――よし、明日からまた頑張ろう