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そして、次の山がやってきました
(・w・) あるぇ?
変則エイラーニャ テーマ;いたずら です
うん、テーマがどこかへ逃げましたなw
「ね、ね、さーにゃん。聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょうか?」
麗らかな昼下がりと言うには少し遅く、夕食の時間までには随分とある。そんな中途半端な時間帯。
さーにゃんの目がさえている頃だろうと予測して、私は部屋を訪れた。
むふふ、今はエイラは出撃中だし、邪魔される心配はないもんね。
「さーにゃんて、よくエイラのベッドに潜り込んでいるんだよね?」
特に、この手の話題となるとねー。エイラ、絶対に邪魔しようとするんだから。
まぁ、この私にかかれば調査するのなんて他愛のない話なんだけどさ。やっぱり、本人から聞くのが1番でしょ。
「潜り込んでいると言うか、エイラのベッドで寝てます」
「それは、夜這いでもかけようと思ったの?」
さーにゃんに限ってそんなことはないと思うし、そもそもヘタレであるエイラがそこまでの関係には持っていけていないはずだ。
ただ、一応保険としては聞いておかないとね。恋人の情事だった場合、流石の私でも邪魔しちゃ悪いし。
「……夜這い?」
「あー、意味が分からない?」
「すみません。どこかで聞いたような覚えはあるんですけど、分かりません」
それ以前の問題か。
そもそもソッチの心配は要らないだろうし、追求しなくてもいっか。
「分からないなら良いや。多分、違うってことだろうし」
仮に、その通りだと答えられていた場合、私自身が冷静でいられたかどうかも疑問だったしね。
違うなら違うで、何も問題はない。
「それにしても、夜這いじゃないなら何で?」
いくつか、理由としての候補は挙がっている。
だけど、決定的なものは1つとしてなく、どれも不完全な状態だ。当然、このまま放置することも出来たんだけど、どうせなら全部知っておきたい。
私にとって、何かの役に立つ可能性はあるし。応用さえすれば、私達の間を進展させるのにも使えるからね。
「部屋を間違えているだけです」
「……それだけなの?」
「はい」
いや、確かに候補の1つとしては挙がっているよ?
だけど、そんなつまらない理由じゃ面白くないよ。もっとこう、聞いて手納得できるような、そんなのが聞きたいんだけど。
「安心できる場所、温かい場所に帰っているだけです」
「温かい場所?」
確かに、誰もいないベッドに帰るよりは温かいだろうし、納得できないこともない。
ただ、それだと常にエイラの部屋である理由は、説明できないよ?
エイラ以外の部屋に入ったことはないんだから、もっと大きな理由があるはずだよね?
「エイラの傍は、安心できます」
「まぁ、さーにゃんなら何があっても守ってくれるだろうし、安心はできるかもしれないけど。もうちょっと、詳しく教えて欲しいな」
今のエイラとさーにゃんは、友達以上恋人未満な関係だと思う。
だからこそのエピソードや、理由があるはずなんだよねー。私としては、そこを聞きたいわけ。
「えーと、その……恥ずかしいです」
「恥ずかしい理由なの?」
さーにゃんとは仲良くさせてもらっているつもりだし、それなりの相談も受けてきた。
そんな私にさえ話すことを躊躇うなんて、一体どんな理由なんだろう?
――これは、なんとしても教えてもらわないと。
「エイラの傍は安心できるんです。エイラの傍でなら、何も考えなくて良いから」
「それは、守って貰えるから?」
守ってくれる存在、例えば親の傍にいれば子供は安心する。守られていると、そう感じるらしい。
寝ている時は無防備なわけだし、納得は出来るけど。それって、恥ずかしいことなの?
「違う、と思います」
「あら、違うんだ」
守ってくれる者の傍にいるから安心してるんじゃないの?
エイラなら、身を挺してでもさーにゃんを庇いそうで怖いんだけど。
「エイラの傍にいるから、離れ離れにならないから、安心できるんです」
「んー、んー? ごめん、ちょっと分からないんだけど」
傍にいるから安心できる? 離れ離れにならないから、安心できる?
言っていること自体は分かるんだけど、それが潜り込むことにどう繋がるの?
これだけで理解しろって言うのは、厳しいよ。
「離れている時、夜の空はとても冷たいです。どこかに浚われてしまいそうな、そのままエイラと離れ離れになってしまいそうな、そんな不安があります」
「まぁ、暗いしねー。孤独を感じるのは分かるよ」
私も1人で飛ぶのは結構怖いからね。
どこへ向かって飛んでいるのか、堕ちているのか昇っているのか。それさえ分からなくなることがある。
初陣のようなミスはしないにしても、どうしてもひっかかるものはあるからね。
「違います。離れていると、エイラが心配なんです」
「えーと、さーにゃんが心配するの?」
夜間哨戒に出ている人間が、基地にいるだけの人間を心配するの?
いや、確かにネウロイに襲撃される可能性が全くないわけじゃないよ? それくらいは、私にも分かっているよ?
だけど、これだけの数ウィッチがいて、1人1人がそれなりの実力を持っている。
そんな状況では、心配しても意味がないと思うけど?
「大丈夫だって分かっていても、心配なんです」
感情の部分だけで話をするなら、理解できないこともない。大丈夫だ、安全だって分かっていても、傍にいなければ心配になってしまう。
姿が見えなければ、声が聞こえていなければ、ちょっとしたことでも心配になってしまう。
「エイラを信頼しています。でも、信頼しているから心配なんです」
「あー、なんとなく言いたいことは分かったよ」
信頼していても、信頼しているからこそ心配。
簡単に言えば、自分の大切な人だから心配なんでしょ?
「なら、さーにゃんはエイラの無事を確かめる為に、潜り込んでいるの?」
「……それも、違うと思います」
「じゃぁ、一体なんなのさ?」
心配しているだけなら、寝顔を見るだけで済む。ベッドに潜り込む必要は、どこにもない。
だけど、それだけで終われていないのなら、別の理由があるの?
「私がエイラの心配をしているのは、離れている時だけです。傍にいれば、あまり心配していません」
「信頼、してるんだね」
傍にいても、心の中までは分からない。どんな悩みを抱えているのか、どんな問題を背負っているのか、外からでは分かってあげられない。
だけど、さーにゃんは信頼しているから、エイラなら大丈夫だって信じているからこそ、心配しないんだね。
それはとても素敵なことだし、凄く強いことだ。私には、まだ真似できそうにないな。
「はい……」
あー、だからさ、そういうところで真っ赤になられると、こっちが困るんだって。
抗えないほどの保護欲を誘発されるし、思わず抱きしめたくなってしまう。
何よりも、その可愛らしさに心がぐらついてしまいそうになる。
いくら仲が良いって言っても、そこは我慢しないとね。あのエイラが許してくれるはずない。
ついでに、トルゥーデに怒られるだろうし……それは嫌だな。
「まぁ、なんとなく分かったよ」
「そう、ですか?」
ここまでの話で大体の予測はついたし、これ以上の深入りは危険だ。
というか、どう考えても聞いているこっちが恥ずかしくなるような、そんな台詞を聞かされるような気がする。
「まだ、私は話してないですよ」
「いや、だから大体分かったから、もういいかなーって。ほら、さーにゃんも眠いだろうし」
あー、そんなにアップで迫らないで。さーにゃんの目が怖いよ。
なんか、こう、全力で逃げたいのに、逃げたらより酷い目にあう気がする。
「私はまだ、エイラの魅力を伝えていません」
「えーと、その、もう十分伝わったからさ。だから、そんなに迫らないで欲しいな」
うぅ、どうしてさーにゃんに追い詰められているの?
背後のドアから出ればいいだけなのに、目を逸らせない。そんな危険なことはするなって、本能が訴えている。
「ハルトマン中尉、私の話を最後まで聞いてください」
「み、宮藤みたいなことを言うなよ。また、今度聞くからさ、今日は勘弁して欲しいなーなんて……」
ダメ。どれだけ考えても、逃げられそうにない。
いや、それ以前に恐怖が勝って、考えることを脳が拒否し始めてるよ。
「ダメです。エイラの魅力を伝えるまで、帰せません」
「わ、分かった。聞きます。存分に聞かせてもらいます。だから、お願い。そんなに睨まないで」
さーにゃんは怒ると怖い。トルゥーデよりも、ネウロイよりもずっと怖い。
こんな圧力をかけられたのは、初めてだよ。
――やっぱ、似たもの同士なのかな?