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それはカオスへの道
(・w・) おりま、おきようぜ!
はい、仙台にて仕上げました
仙台は寒いです。千葉よりは寒いです。
というか、雪ががが
今回もエイラーニャですよ、奥さん
よろしければどうぞ~
ある日の昼下がり。本来であれば基地に漂っているのんびりとした雰囲気に流され、昼寝でもしたいところなんだけど。
今の私にはそれが許されない。というか、そんな余裕はない。
それは、いつもであれば夢の中にいるはずの彼女が起きている為。
更に私に対して怒っているとなれば、昼寝なんて出来る筈ない。
「エイラのばか!」
「どうしたんだよサーニャ。突然そんなことをいわれても、全然分かんないよ」
眠っているサーニャの髪をなで、優雅な一時を過ごしていたのも束の間。突然飛び起きたサーニャは、噛み付かんばかりの剣幕だ。
「どうして分かってくれないの?」
「いや、その。何を分かれば良いんだ?」
何かを必死に訴えようとしているだけは分かる。サーニャが何かを伝えようとしているのは、ひしひしと感じられる。
だけど、何を伝えようとしているのかは全く分からない。
「もう、それくらい察して欲しいのに」
「ごめん、サーニャ。私には何のことか、全然分からないや」
いつもは大人しい彼女が声を荒げている。我侭を言っている。
その時点でただごとではないのは察することが出来るけど、内容までは無理。何も話してくれないなら、私には伝わらない。
それにしても、こんなときに場違いだって分かっているのに、ちょっとだけ嬉しいな。
サーニャが我侭を言ってくれるのは、私だけだから。私にしか、我侭を言わないもんな。
「ベッド買うんでしょ?」
「ん? ベッドがどうかしたのか?」
「エイラ、新しいベッド注文したんだよね?」
確か1週間前くらいかな。確かに、私はベッドを注文した。
手触り、材質、寝やすさ。全てにこだわった、ベッドの中のベッド。
出費としては痛いけど、これでぐっすり眠れるなら安いものだろ?
「任せろ。これでサーニャの睡眠は快適になるぞ」
いつも私に幸せをくれる彼女に、ささやかなプレゼント。きっと、喜んでくれるよな。
「どうして、そんなことするの?」
「サーニャ、どうかしたのか?」
なんで、喜んでくれないんだ? どうして、泣きそうな顔してるんだ?
「エイラ、やっぱり迷惑だったの?」
「何の話だよ。私はそんなこと、言ってないぞ?」
迷惑? いったい何が迷惑なんだ?
「私がベッドにもぐりこむから、迷惑だから新しいベッド注文したんでしょ?」
「違うぞ。そんなんじゃないぞ」
「良いんだよ? 迷惑なら、そう言ってくれれば」
迷惑だなんて、そんなこと思うはずがない。
サーニャにはずっと言っているのに、まだ通じていないのか?
「迷惑じゃないけどさ、私と一緒のベッドじゃ狭いだろ? サーニャ時々小さくなってるしさ」
私の上に乗らないように、私の邪魔にならないように。絶妙な位置を狙って、サーニャは侵入してくる。
ただ、スペースが狭い時は背中を丸めて、小さくなっているから。それで新しいのを頼んだんだけどさ。
「狭くても良い。私はエイラの隣で寝たいの。エイラと一緒に寝たいの」
「そうは言ってもな、サーニャ苦しくないのか?」
狭いところで小さくなって寝るよりも、大きなベッドで寝る方が良さそうなんだけどな。
「……エイラは私のこと嫌い?」
「そ、そんなわけないだろ」
「だったら、一緒に寝よ」
くぅ、どうしてそんな魅力的な誘い方を。どこで覚えてきたんだよ。
すごく可愛くて、卑怯だ。
「だ、だめだ。サーニャと一緒に寝てたら、私がもたない」
一緒にベッドに入ったりしたら、私の身がもたないよ。
一晩中ドキドキしっぱなしで、寝るなんて無理だ。
「エイラは、私と一緒にいたくないの?」
いや、一緒にいたくてもいられないんだよ。
ずっと我慢出来てるけど、いつ崩壊してしまうか分からない。いつサーニャに手を出してしまうか、私にも分からないんだ。
だからこそ、その内離れたほうが良いんじゃないかって、そんなふうに思うこともある。
「私だって、傍にいたいさ。ずっと、ずっとサーニャの傍にいたい」
「だったら、どうして離れようとするの?」
私は一緒にいたけど、サーニャの為には離れるのが懸命。
それに、サーニャを傷つけるくらいなら、我慢するほうがマシさ。
「そ、それはサーニャに幸せになって欲しいから、私が傍にいないほうが幸せになれるはずだから」
「どうして? 私はエイラが傍にいてくれれば、それだけで幸せなんだよ?」
まぁ、これだけで納得するはずないか。
サーニャは意外に頑固だし、私もきちんと説明していないからな。
「その、な」
そろそろ、話しておいた方が良いのだろう。
嫌われたとしても、拒否されたとしても、きちんと話さないといけない。
「ずっと一緒に寝ていられるのは嬉しいんだ。だけど、なんて言うか、このままでいる自信がない。傍にいて、それだけで幸せなはずなのに。もっと、もっとサーニャの傍に行きたいって、わがままを言ってしまいそうなんだよ」
傍にいて、感じられて。それだけでも幸せなんだ。十分、満たされているのに。
私はきっと、それ以上を求めてしまう。求めて、サーニャに迷惑をかけてしまう。
「私は、そんなわがままな私をサーニャの傍に置きたくないんだ」
そんなのは嫌なんだ。わがままな私を、認めたくないんだ。
サーニャに、冷たい目で見られるのだけは、耐えられないんだ。
「わがままを言うくらいなら、離れてサーニャの幸せを願っていたいんだよ」
そんな私にも、そんな状態にも耐えられない。無理なんだよ。
「ねぇ、どうして? どうして、相談してくれないの? それは、エイラと私、2人の問題でしょ?」
そう、2人の問題。私とサーニャとの問題。
「エイラだけじゃないんだよ? 私にだって関係あるんだよ?」
私が我慢すれば済む、ただそれだけの問題でもある。
だからこそ、話せない。
「でも、だからって話せるわけないだろ。私にだって意地はあるんだ。少しくらいは、我慢させるよ。わがままを通さないように。サーニャに迷惑をかけないように、考えているんだよ」
傍にいる為に、いまの幸せを継続させる為に我慢するんだ。
「頼むから、これ以上困らせないでくれ」
それだって、幸せの1つだろ?
◇
「ねぇ、どうして相談してくれないのかな?」
私が弱くて、私が逃げるから相談できないんだよ。
サーニャは何も悪くないんだから、笑っててくれよ。笑顔を見せてくれよ。
「そんなに、私は頼りにならないの? エイラのわがままを受け止められないくらい、弱い存在なの?」
「そんなはずはない。サーニャはとっても強いよ」
「なら、どうして? 私はの嫌だよ。エイラだけ苦しんでいるなんて、不公平だよ」
私が勝手に苦しんで、私が勝手に我慢している。それだけのことなのに、どうして優しくしてくれるんだよ。
「その、な。私だって苦しみたくて、苦しんでいるわけじゃないぞ?」
だからこそ、言葉が止まらない。止められなくなっている。
全部吐き出してしまったら、もう戻れなくなるのに。
「出来ることなら、我侭を受け止めてもらえるなら、苦しまなくてすむのかもしれない。そんなふうに思ったこともある」
全部伝えてしまったら、嫌われるかもしれないのに。
どうして、この口は止まらないんだ。
「けどな、そんなふうに我侭を言う。サーニャを困らせるような私を、許すわけにはいかないんだよ。私にだって意地がある。見栄だって張りたいんだ」
「エイラ、知ってるでしょ? 私は諦めないよ」
――完敗だ。サーニャの勝ちだよ。
情けないほどに、清々しい負けだよ。
「なぁ、サーニャ。悪いんだけど、もう少しだけ待ってくれないか?」
負けついでに、全部お願いしてしまおう。
情けない私も、我侭な私も。全て伝えてしまおう。
「私だっていつかは向き合う必要があること、分かっているんだ。だから、少しだけ時間をくれないか?」
それでも、サーニャは嫌いになんかならないんだろうな。
私は、サーニャに待ってもらえるんだろうなぁ。
「必ず、答えを出すからさ」
「分かったわ。ゆっくり、待ってる」
甘えて、ごめんな。次は、私が胸を貸すからさ。今回は許してよ。
――サーニャ、ありがとう