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「エイラ、冷たくて気持ち良いね」
「う、うん。水が冷たいな」
ネウロイとの激戦を制し、ガリアは開放された。それにより第501統合戦闘航空団は解散、私とサーニャはふらっと人探しに出ることにした。
勿論、意味なく彷徨っているわけではなく、サーニャの両親を探してのもの。サーニャの誕生日、あの日に聞こえた旋律はサーニャの父親のものに間違いない。
旋律が聞こえるということは、それなりに元気でいるに違いない。
それが確信できた後のサーニャの喜びようは、凄かった。ずっと一緒にいた私ですら驚かされるような、そんな喜び方。
サーニャのご両親の無事が分かり、私も嬉しい。ただ、その反面、私自身はあまりサーニャの力になれていないということを、実感させられるものとなった。
私だけでは、サーニャの寂しさを誤魔化すことは出来なかった。私だけでは、サーニャを支えきれなかったんだ。
彼女の求める安らぎを与えてあげられなかった。
「ちょっと、悔しいな」
私なりには、結構頑張ったつもりだったのに。全然届いていなかったなんて。
そんな現実を突きつけられるまで、理解していなかったなんて。情けないじゃないか。
「どうしろって言うんだよ……」
努力すれば、今よりも強くなれば、私はサーニャの力になれるのか?
それとも、どれだけあがいたところで、私では無理なのか?
サーニャ本人に問えば、答えがあるのかもしれない。けど、そんな怖いこと、出来るはずがない。
「エイラ、どうしたの? 難しい顔してるよ?」
おっと、そう言えば今は水浴びをしている最中だったな。ボーっとしていたら、サーニャに心配をかけてしまう。
こんなことじゃ、便りにされる以前に心配されちゃうからな。
「なんでもないさ。次はどこを探しに行くか、考えていただけだよ」
ネウロイに占領された地域を通り抜ける。時にはそんな危険を冒しながら、私達の捜索は続いている。
まぁ、当然の結果として戦闘になったりもするけれど、今のところは問題なく進んでいる。
「そろそろ、どこかの軍に頼るか?」
このまま宛もなく探し続けるぐらいなら、どこかの基地に所属し、捜索する方が効率が良いかも知れない。
今まで通り戦闘を切り抜けられるとは限らないし、何より弾薬が心許なくなってきた。
「エイラは、私と2人は嫌なの? もっと、大勢と一緒にいたいの?」
「い、いや、そんなことあるはずないじゃないか。ただ、サーニャを早くご両親と会わせてあげたいんだよ」
サーニャと2人で旅をする。理由がなにであれ、目的がなにであれ、私にとって嬉しくないはずはない。
2人で一緒に飛び、2人で一緒に食事を摂り、2人で一緒に水浴びをして――そんな夢のような生活なのに。
けど、私の嬉しさは良いとして、サーニャはそれで良いのだろうか?
少しでも早く、ご両親に会いたいはずなのに。
「私は、のんびりでも良いよ。お父さんもお母さんも、きっと無事だから」
「確かに占いではそう出ていたけど……」
「大丈夫、私はエイラを信じているから。エイラの占いは当たるんだって、信じているから」
うぅ、そんなこと言われたら、何も言い返せないじゃないか。
嬉しくて、応えたくて、出来そうにないことも出来るって言いそうになってしまう。
まぁ、その嘘でサーニャが元気になれるのなら、私はいくらでも嘘をつくけどな。
私にとっての1番はサーニャであり、それ以外のコトは全て2番なのだから。サーニャを大切に想うのは、当然だろ?
「ありがとうな。もう少し頑張ってみようか」
「うん、よろしくねエイラ」
効率が悪くても、遅くなったとしても、サーニャが私と2人でいることを選んでくれるのなら。私だって、サーニャと2人でいられることを選びたい。
傍にいられる道を、選び取りたい――
◇
「それにしても、エイラどうしてそっちを向いているの?」
「え? あー、その、深い意味はないぞ?」
私達がしているのは水浴び。それにも、お風呂やサウナの代わりになるものだ。
ついでに言えば、旅の為に軽装でいる私達の持ち物に、水着は含まれていない。
「ただ、その、なんとなくな」
「そうなの?」
つまりは、サーニャも私も裸なんだ。
身体を隠すものを1つも持っていない、文字通りの全裸なんだよ。
「サーニャが綺麗だから、つい。見ていたいけど、見つめてるとこっちが恥ずかしくなるんだ」
見ていたら、見つめていたら。どんどんと恥ずかしくなってくる。
サーニャの裸体に。美しい体に、邪な気持ちを抱いてしまいそうになる自分が、恥ずかしくなる。
「だって、仕方ないだろ? 綺麗だから、触りたくなるんだよ。サーニャの肌に、身体に触りたくなるんだよ!」
綺麗だから、美しいから、触ってみたくなる。
どんな感触なのか、私の想像通り柔らかないのか、確かめてみたくなる。
「見ているだけじゃ我慢出来なくて、触れてみたくなってしまうんだ」
見ていれば見ているだけ、その思いが強くなって、いつか暴走してしまいそうだ。
「だけど、サーニャ嫌だろ? 私に触られるのも、そんな目で見られるのも嫌だろ?」
だけd、見られている方は良い気分なわけがない。
触られているほうが喜ぶかと言えば、応えはノーだ。
「だから、そうならないように。そんな気持ちにならないように。ちょっと離れてたんだ」
間違えてしまわないように、間違いが起きないように。
サーニャの身体を見ないよう、感じないように離れていた。
「そっか、エイラも同じだったんだね」
「同じ?」
「うん、私もエイラに触れてみたいから?」
同じ? エイラも同じように、思っていてくれたって事か?
「サーニャ?」
「だって、エイラ綺麗だから。触ってみたかったの」
私に触ってみったかったって、本当なのか?
サーニャも、私と同じ気持ちだったのだろうか?
「けど、中々言い出せなくて、ずっと隠してたんだ」
そりゃ、言えるわけないよな。
あなたの身体を見ていたら、ドキドキします。その気持ちを抑えられなくなるので、触ってみてもいいですかなんて。
恥ずかしくて、言えるわけないよな。
「だから、エイラも同じ気持ちだって分かって。嬉しい」
お互いに同じ気持ちを抱え、言えずにいた。
同じ気持ちを抱えていたのに、分かり合えることなく、ずっと隠していた。
「触りたいって思っていたのが私だけじゃなくて、エイラも一緒だって分かって、嬉しいよ」
ただ、同じ気持ちを隠し続けていたのが分かった今、それが何だか嬉しい。
新しい共通点を見つけられてようで、もっと深く知り合えたようで、嬉しいと感じてしまう。
「あのね、エイラ。1つお願いがあるんだけど良いかな? この先も旅を続けることになるし、エイラとはずっと一緒にいたい」
ずっと一緒にいたいからこそのお願い。
そもそもサーニャがお願いをしてくることなんて少ないし、余程重要な事なのだろう。
「だから、何かがあれば隠さずに教えて欲しいな。私も、勇気を出して言えるように、頑張るから」
確かに、今回みたいな事だったとしても、隠すことなく打ち明けていれば、ここまで恥ずかしい思いをしなくてもすんだのかもしれない。
「……どうかな?」
サーニャからのお願い、それを私が断れるはずない。
「あはは、サーニャに負けたよ。先に言われてしまうなんて、思ってもいなかったさ」
そもそも、いつかは切り出そうと思っていた内容。
この場で解決できるのなら、それはそれでありがたいさ。
「分かったよ。私はサーニャに隠しごとをしない、隠さずに伝えるよ」
――これからもよろしくな。