届かぬもの

３が日でございますね～

（・ｗ・）　何もないけどね～

本日は、ドールのお化粧をしたいんですが、パーツがまだ乾いていません
冬って、不向きなのかしら？


すずアリ　届かぬもの　をUPです
前に別CPでは書きましたね～

アタシが目指すところはずっと遠くにある。

姿形は分かっているのに、探し出すことが出来ずにいる。

もしかしたら、未だに見えていないのかもしれない。探し始めて、歩き出して、結構な時間が経つというのにね。

真直ぐに進めばいいというものではないのかもしれない。上りがあって、時には落下して、曲がりくねっていて――

それでも、後ろに下がることはなく、前進し続けていたはずだ。

辛い時もあった、厳しい時もあった、１人で頑張らなければならない時もあった。

それでも、苦労した分だけは前に進めているという感覚があるから、目指しているところが光り輝いているから、諦めることなく歩き続けられる。

「そもそも、形なんてないのよ」

アタシが目指しているのは、幸せ。すずかと２人で掴み取れる幸せ。

これほどまでに不確かで、果てのないものも珍しいだろう。

恋人になれた、大きな喧嘩をすることもなく、関係を続けられている。お互いの家族にも認めてもらい、周りの人達も受け入れ、応援してくれている。

何よりも気持ちが冷めることもなく、小さな変化を見つける度に嬉しくなり、惚れ直している。

そんな現状は幸せなのかと問われれば、間違いなく幸せ。疑う余地もなく、探る余地すらない程に幸せよ？

ただ、アタシ達は我侭だから、始めから制約の設けられている恋をしてしまっているから。もっと幸せになりたいと、そう願っている。

勿論、アタシだけが幸せになっても、すずかだけが幸せを感じていても、あまり意味はない。アタシ達は、２人で１つなんだから。

２人が幸せに、終始笑顔でいられるほどの日々を送らなければ、満たされることはない。

程度の違いがあったとしても、すずかも同じような気持ちでいてくれているみたいだし、貪欲なほどに幸せを求めて模索している。

「ただし、見つけて、生み出して、育てないと意味がないのよね」

周りから与えられる幸せ、みんなから分けてもらえる幸せ。それを受け取れる環境にいるのは、とても恵まれていることだと思う。

恋人になる時も応援してもらえたし、アタシ達の関係にも理解を示してくれている。

１番心配していたはずの疎外感なんて、明確な形で味わった覚えなんてない。

それでも、アタシ達は気づいてしまったから、環境に頼っている状態から変わらないといけない。変わっていかなければ、この先を目指す事なんて出来ない。

幸せは分けてもらうだけでは、与えてもらうだけでは駄目なんだって。それは、アタシ達が求めている幸せとは、ちょっとズレているんだって。

だって、そうでしょう？

幸せを与えてくれる人達は、アタシ達ではないのだから。心の中を分かっているわけではないし、そこまで求めるのは間違っている。

我侭ではなく、幸せを求める上では間違いだと思うから。アタシ達は変わるように、変われるように努力しなければ意味がないわ。

自分で幸せを見つけなければいけない。自分で幸せを作っていかなければいけない。自分で生み出した幸せを、育てていかなければ、アタシの目指す未来には辿り着けない。

すずかと２人でいられる、そんな未来の為には今以上に頑張らなければいけないのよ。

もっとも、アタシの王子様はアタシ以上に頑張ってしまうだろうから、ぼーっとしていたら置いていかれるって言うのもあるけどね。

「まったく、ふざけてるわね」

２人で幸せになるんだよ。２人だから幸せになれるんだよ。

どんなことがあっても平気。私は、アリサちゃんといられるのが大切なんだから。

そんな甘ったるい言葉を、日頃から垂れ流しているくせに、どこが２人で頑張っているのよ！

アタシが気づかないように、気づけないように立ち回って、感知した頃には終わらせちゃっているのは誰かしら？

２人でいようねなんて良いながら、いつの間にかボロボロになるまで頑張っているのは誰かしら？

すずかにとって、弱い存在なのかしら？　お姫様って呼んで、舞い上がらせておけば大人しくしているような、そんな愚かな女の子だと思っているの？

何よりも、そんなアタシに、すずかは惚れるって言うの？　愛を感じて、注いでいけるって言うの？

「ダメ、やっぱり怒りたい」

すずかがアタシのコトを想って、自分１人で解決しようとしていたのに。

すずかはアタシ達の関係の為に、ここまで頑張ってくれたというのに。

ここで怒ってしまうのは理不尽よ。気づけていなかった、アタシが悪いんだから。

変化には気づけていたのに、何でもないよって言われた言葉を信じてしまったから。信じきって何も考えなくなった、あの時のアタシが悪いのだから、ここで怒るのは身勝手だと分かっている。

ただ、分かっていても起こりたくなる時ってあるじゃない？　今が正に、その時なのよね。

何故、相談してくれなかったの？　アタシでも力になれることはあったでしょ？

何故、助けてって言ってくれないの？　すずかの隣は、アタシの指定席なんでしょ？

何故、大丈夫って無理をしてしまうの？　もうやらないって、約束したはずなのに。

どうして、アタシを置いたまま頑張ってしまうのかしらね。ホント、時々想いが届いていないんじゃないかって、アタシの一方通行なんじゃないかって、悩んでしまうのに。そういったところには、気づいてくれたためしがない。

「ごめんね。もうしないから、許して欲しいな」

ほら、また気安く約束しようとする。アタシを安心させる為だけに、進んで傷つこうとする。

そんなの、アタシが認めるはずないのに。納得も、安心も出来るはずないのに。

「次はないからね。少しは、頼ってきなさいよ」

けれど、怒れないから、怒るわけにはいかないから。アタシが言えるのも、いつもの台詞だけ。

２人で歩こうと約束したはずなのに、すずかは２、３歩先に行こうとする。アタシの後ろに隠れていたはずの少女は、いつのまにかずっと先を歩いてしまっている。

何があったのか、どうしてそこまで頑張ろうとするのか。理由は分かっていても、納得は出来ない。

納得出来ないからこそ、アタシはアタシで動こうかな、なんて。そんなことを思いそうになる。

それをやってしまったら、すずかと一緒なのに。相手のためだなんていいながら、心配をかけてしまうのを知っているのに。

笑顔でいて欲しい相手に、寂しさを与えてしまうと分かっているのに。

「結局は、似た者同士なのよね……はぁ」

「どうかしたの？」

「どう言えばすずかが分かってくれるのか、考えていただけよ」

自分が我慢すれば良い。自分が頑張れば良い。

そうすれば、２人共が幸せになれる。

それが分かっているから、すずかは止まらない。幸せを目指しているからこそ、止まれない。

アタシが傍にいるのが分かっているから、離れないことを理解してしまっているから。

――笑っていて欲しいのは、アタシだって一緒だっているのに。声くらい、かけないさいよね。

「えー、もうしないよ？」

「その約束、何回目か覚えてる？」

何度目か分からない、破られることが前提の約束。守らないことにこそ、意味を見出されている約束。

今のままでいる限り、アタシが変わらない限り、すずかが約束を守ることが出来ない。

「多分、１２回くらいかな？」

なんで、律儀に数えているのよ。合ってるけど、これはこれで納得いかないわ。

やっぱり、分かってて破っているんじゃない。少しくらいは、反省したらどうなの。

「いい加減、少しは改善しなさいよ。心配しているだけって、寂しいのよ？」

「分かってはいるつもりなんだけどな、難しいかなぁ。気づいたら、いつも動いちゃっているから」

言うだけで守られるのなら、いくらでも口を出すけれど。そんな淡い期待は、既に抱いていない。

どうせなら、別のところで頑固になれば良いのに。

「いつから、そんなに落ち着きのない子になったのよ」

出会った頃のすずかは大人しくて、いるのかどうか確認しなければいけないほどだった。

アタシやなのはの陰に隠れて、いつでも後ろを歩いていて。守ってあげなくちゃって感じるような、そんな女の子だった。

今も確認しなければいけないのは変わらないけど、以前とは事情が違う。

「そうかな？　私は、変わったつもりはないよ？」

「だとしたら、気づけてないだけね。昔は、アタシ達の後ろにいたはずなのに。あの可愛かったすずかはドコへ行ってしまったのかしら？」

「それは、今の私は可愛くないってこと？」

分かりきったことを聞いてくるわね。

「可愛いに決まってるでしょ？　けど、昔のすずかもか弱い感じで良かったというだけ」

昔とはまた違った魅力に溢れているだけで、何かが欠けてしまったわけではない。

そんなこと、本人が１番分かっているはずなのに。わざわざ確認しなくても良いでしょ？

「ま、アタシと一緒にいるんだし、ちょっとくらいは仕方ないとして。少し強くなり過ぎじゃない？」

アタシ達の周りの人は受け入れてくれたけど、万人が受け入れてくれるとは思っていない。

だからこそ、強くならなければいけない。弱いままでは、恋愛なんてしていられない。

「んー、アリサちゃんに合わせているだけなんだけどなぁ」

「アタシ、そこまで強くないわよ。これでも、お姫様なんでしょ？」

アタシよりも、すずかの方がずっと強いはずなのに。そんな話を急に振られても困るわよ。

そもそも、強いとか弱いとか、そんな話ではないはずよ？

「その台詞は、ちょっとだけずるいかも」

「ふん、すずかに我侭を言うのはアタシの特権なんだから、少しは我慢してもらうわよ」

「あはは……」

王子様に我侭を言っても良いのは、お姫様だけの特権。そう言ってくれたのは、他ならぬすずかだから。

こんな時くらい、我侭を聞いてもらわないと困るわね。

「とりあえず、今回のコトはもういいわ」

「許してくれるの？」

「許すも何も、起きてしまったことをどうこう言っても直しようがないでしょ？」

やってしまったことを、取り消すことは出来ない。悔やもうが、後悔しようが結果が変わることはない。

それなら、次に同じ失敗をしないように、前向きに考えていく方が何倍もマシよ。

これに関しては、アタシにも非があるんだから、元々起こってないわよ。

「次は勝手なことが出来ないように、アタシが今まで以上に傍にいれば良いだけなんだから」

「それは、巻き込んじゃうかもしれないよ？」

「ふん、巻き込まれるんじゃなくて、アタシが勝手についてくのよ。勘違いしないで頂戴」

アタシを巻き込みたくないなんて、綺麗な言い訳を並べてもダメよ。アタシが勝手に動くんだから、止めようがないでしょ？

「今度は逃がさないからね」

目を離したら、何をするか分からない。どこで苦労しているか、分かったもんじゃないわ。

だから、次からは目を離さない。ずっと傍にいて、アタシが助けてあげるわよ。

 

――１人でいても、つまらないでしょ？