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準備会はちゃんと対応してくれたじぇ
(・w・) これで2度目なんだよなー
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すずアリ テーマ;春の雪
「あー、もう。どうして4月になって雪が降っているのよ。誰か説明しなさい!」
「天気に文句を言っても仕方ないよ。滑らないように気をつけてね」
季節は春、暦は4月。本来であれば暖かい陽気に包まれ、春を謳歌しているはずの時。
空からは白い物が降っていました。冷たくて、ふわふわしていて――何度見直しても雪。冬の象徴たる、雪だった。
「アタシ達は桜並木を歩いているのよ? 満開に咲いた、桜の下にいるのよ?」
「けど、雪が降っていることに変わりはないよ」
どれだけ文句を言っても、雪が止むわけではない。
それよりも、風邪をひかないようにぎゅっとくっついて、温まる方が大切だと思うよ?
「綺麗だとは言ってもね、こう寒いと感動も半減するわ」
「さすがに、それはないと思うんだけど。桜も雪も見れるなんて、お得だと思わない?」
寒い時にしか見られない雪。暖かいときにしか咲かない桜。
その2つが共演するなんて、中々見られないことだよ?
写真でも取っておくべきかな?
「お得なもんですか。折角のデートなのに、こう寒かったら思うように動けないじゃない」
「あはは……それは仕方ないよ。たまにしかないんだし、こういったのも楽しめば良いんじゃないかな?」
「すずか、気軽に捕らえすぎよ」
たまにしかない環境の中、いつものように出掛けられている。そのことを楽しめばいいと思うけど。
アリサちゃん、機嫌が悪いの?
「雪が降っていたら、のんびり鑑賞も出来ないでしょ? 折角持ってきたバスケットだって広げられないし」
「それは、そうだね。ちょっと残念かな」
雪が降っているなら、ベンチでのんびりとうわけには行かない。
ピクニックシートを広げても濡れちゃうし、バスケットを開けることも出来ない。
今日持ってきた料理はちょっと自信作だったのに、残念だなぁ。
「すずかの手作りサンド、楽しみにしていたのに。まったく、イライラさせてくれるわね」
「あら、アリサちゃんも楽しみにしてくれていたんだ。んー、サンドウィッチだけでも食べる?」
「良いわよ。帰ってからのんびり頂くわ」
楽しみにしてくれていたのに、食べられない。期待していたのに、食べてもらえなかった。
うーん、少しだけ雪が嫌いになりそうだよ。
空を見上げても、止む気配はない。ゆっくりと、降り注いでいる――
◇
「あっ……」
桜のピンク。雪の白。そして、アリサちゃんの髪色である金。
普段混じることのない色達が、一同に揃っている。
この景色を見ていると、遠くの地に行ってしまった友人達を思い出してしまう。
「すずか、どうかしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
ダメだよね。アリサちゃんと一緒にいるのに、他の人の事を思い出してしまうなんて。
アリサちゃんとデート中なのに、友達のことを思い出してしまうなんて。
「どうせ、なのは達のことを思い出していたんでしょ?」
「え? ち、違うよ。私はただ綺麗だなーって、その……」
全てを見透かし、その上で笑っているような。全てを知った上で、許してくれるような。
アリサちゃんはそんな笑顔を浮かべていた。
「隠す事ないでしょ? アタシだって、思い出していたんだから」
「アリサちゃんもそうなの?」
私が思い出しているように、アリサちゃんも思い出しているんだね。
遠くには行ってしまったけど、大切な友達だから。
「当然よ。アタシにとって見辛い色もあるけど、こんな風景なら仕方ないわ」
「そうだよね」
自分自身の髪色が被っている以上、見づらいのは仕方ないと思うよ。
「まぁ、流石にあの3人を思い出すなって言うほど、アタシは嫉妬深くないわよ?」
「本当かな? アリサちゃん、私が他の人の話をするだけで、凄く寂しそうな顔をするんだよ?」
2人でいる時、アリサちゃんの反応は凄く分かりやすい。
アリサちゃんに関係のある話、アリサちゃん自身の話をしている時は、凄く食いつきがいいんだけど。
他の人の話を楽しげにしていたら、凄く寂しそうだもんね。さすがに、気付くよ。
「うっ……分かってはいるつもりだったんだけどね。アタシ、すずかの負担になっているのかしら?」
どうして、そんな不安そうな顔をするのかな。
私が負担を感じるなんて、アリサちゃんを負担だと感じるなんて、あるはずないのに。
「そんなことないよ。ただ、愛されてるなーって感じるだけだから」
「そう、なら良いわ」
アリサちゃんの愛が大きいように、私の愛もとても大きいから。大きくて、重いから。
私達は普通ではない恋をしている分だけ、とても力強い物になってしまっているから。少し重いくらいで、丁度良いんだよ。
「よし、それなら方針を変えて行きますか」
「方針を変える? 急にどうしたの?」
方針を変えるって、宣言する程大きいことをするつもりなのかな?
うーん、最近忙しそうにしているし、あまり無茶はして欲しくないな。
「すずかが負担だと感じていない今の内に、負担だと分からないほどアタシに溺れさせてあげるわ」
「えーと、それはどういうことかな?」
……えーと、アリサちゃんが変えるのってソッチなの?
更に努力するとかではなく、私を溺れさせるほど愛するってことなの?
いや、それはそれで大変なのかもしれないけど。どうして、そんなに楽しそうなのかな?
「ふっふふ。デート中にもかかわらず、すずかは友達のことを思い出す余裕があったってことでしょ?」
「う、うん。そうだよ」
デート中といえども、慣れてきたから色々と考えるだけの余裕はある。
そのお陰でデートプランの建て直しや、お店の変更も出来るんだよ? 悪いことばかりではないよ?
「まずは、それをなくすことから始めようと思うの」
「えっ? なくすって、どうするつもりなの?」
「大丈夫よ、すずかは何も心配しなくて良いから」
本当に心配しなくても良いの? それとも、心配する余裕すらなくなるのかな?
「ただ、アタシに溺れていれば良いの。デート中、アタシと2人でいる時に、他の事を考えられないようにしてあげるから」
「あははは……ありがとう、アリサちゃん」
どうして、こう、うちのお姫様は積極的なのかな?
いつも私より先に決めて、私より先に動き出してしまう。
なんだか置いていかれそうで、ちょっとだけ怖いな。
――私も頑張らなきゃ