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ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。 ※ 百合思考です。 最近は、なのは以外も書き始めました。
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1986/07/28
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お腹が減る今日この頃、みなさま如何お過ごしでしょうか?

(・w・) 私は目を回しています


すずアリ テーマ:雨の音 をうpです


新学期がスタートし、順調に5月病にかかった。
毎日が億劫で、すずかの傍を離れるのが面倒で、ベタベタとくっついていたあの日々。
今としては少々赤面すべき場面が、多々あったような気もするけれど、まぁ忘れときましょう。
その後にやってくるこの季節こそ、1年の中でももっとも面倒で同時に、乗り越えるべき相手なのだから。
早い時には5月下旬から、明けるのが遅ければ6月下旬まで。日本には梅雨と呼ばれる季節が訪れる。
毎年来るのだから、その現象自体には慣れるしかなく、また農作物のことを考えるのであれば、それは恵みの雨となる。
ただし、雨が降るということは、出掛ける機会が減り、だらけている姿を恋人にさらすことにもなる。
「アリサちゃん、この時期はダメだね」
こんなふうに恋人から非難される程度には、アタシはだらけている。
床に転がり、服がしわになるのも、髪の毛を巻き込んでしまうのも気にせず、ごろごろと這いずっているのだから仕方ないけど。
「仕方ないでしょ? こう連日連夜で雨のせいで、アタシ達のデートプランはぺちゃんこなんだから」
毎年のように、この時期のアタシはダメだ。その程度のことは理解しているけれど、今年は輪をかけて酷いのだって、自分で理解している。
無気力に、見ている方がイヤになるほどに、ネガティブを撒き散らしている。
「うーん、『緑を楽しむデートコース』。楽しみにしていたから、残念なのは分かるけど。床を転がっていても、晴れることはないよ?」
「そんなの分かっているわよ。ただ納得いかないから、不満を体で表しているだけ」
ホントであれば、今日は緑の溢れる道を闊歩している予定だったのに。
満開の桜は少し前に散り終わり、今は完全な葉桜となっている。
そんなものを肴にし、酒を飲もうとする物好きは少なからずいるけども……いや、彼らのような人間は、年がら年中飲んでいるだけか。
人の少なくなった公園で、緑を全身で楽しむのがデート内容だった。
普通であれば動きも少なく、またつまらなそうなプランだけど。すずかが気に入ってくれたみたいだし、気合を入れて3日間ほど頑張ったかいはあった。
デート中に失敗をしないようにシミュレートを繰り返し、虫除けスプレーや応急処置用のクスリなどをそろえ、当日を待っていたと言うのに。2日続きの雨に潰されてしまった。
この日の為に新調したヒールも、ワンピースも、全てが無駄になってしまった。
それが悔しくて、こんなにも落胆している自分が情けなくて、床を転がることで誤魔化そうとしているだけ。
まぁ、すずかにとってみれば、全てお見通しなんでしょうけどね。
「はぁ、それにしてもここまで降ることはないんじゃない?」
昨日から降り続く降水量は中々なもので、水溜りではなく小さな池のようなものを作り始めている。
川の一部では増水が警戒され、既に土嚢が積み上げられているところもあるほど。
「土砂崩れとか、地すべりとか、ろくでもないニュースは遠慮したいわね」
「うん、これだけ降っていると心配になっちゃうね」
川の増水が心配されるレベルなのだから、当然土砂崩れの危険性は高まる。
アタシ達には心配くらいしか出来ないけれど、何も思わないわけにはいかなかった。
――陰のあるすずかに見惚れながら言っても、何の説得力もないけれど。
艶やかな髪は薄い光の中でも存在感を失うことはなく、耳にかかっている箇所にいたっては芸術品と見違えるほどの美しさを秘め、緩やかにカーブを描きながら落ちている様には、思わずため息が出そうになる。
本人にとっては何気なくやっている動作かもしれないけど、頬に手を当てているのも個人的にはグッド。
今この場にカメラがないことと、自身の語彙が乏しいのが悔やまれる。
「あっ……」
「どうかしたの、アリサちゃん?」
ずっと見ていたい光景だったのに、すずかが動くことにより世界はまた動き出してしまった。
いや、止まっていたのはアタシの時だけであり、今この瞬間も未来に向かって流れ続けているのだけど。ちょっと惜しいことをしたわ。
「なんでもないのよ。ちょっと考え事をしていただけだから」
伝えれば喜んでくれるであろうことは、経験から学んでいる。ただ、そんな恥ずかしいこと出来るはずもなく、アタシは目を逸らしてしまった。
何もない、壁を凝視し、先程の姿を脳裏に再生し続けていた。
そんな時にふいに聞こえたきた音。いや、実際にはずっとなり続けていたのだろうけど、気付けなかった音をアタシの耳が捉えた。
ザーザーと機械的に降っている雨の音ではなく、芝生に落ちる音や、水溜りに飛び込む音。
そして、何よりも雨樋を流れている音は、中々に繊細で、それでいて色のある音を出していた。
目で見て、肌で感じる分には鬱陶しく思える雨も、耳で感じているだけであれば、コレほどまでに美しくなりえる。アタシを楽しませてくれる。
ここで目を閉じたら、どんな世界が待っているのだろうか?
機械的に聞こえていた音すら、伴奏へと早変わりし、水溜りに飛び込む音なんてアクセントとしては最適なんじゃない?
ついでに雨樋の音に至っては、ハープと聞き間違えるほどの音色をかもし出してくれるに違いない。
野外であり、無節操であり、ただ地上に落ちているだけだというのに。こんなにも美しい音を奏でていたなんて。
「何で気付けなかったのかしら?」
ふてくされて床に転がる前に、すずかと一緒にこの音に包まれている幸せを感じていれば。
ごろごろ転がって情けない姿をさらす前に、雨の日を楽しむ方法を考えていれば。
もっと、笑顔を増やせたはずなのに。どうして、気付けなかったのかしら?
「どうかしたの?」
そんなアタシの様子に、何かを感じ取ったのかすずかが傍まで来てくれる。
アタシの横で、アタシと一緒にこのコンサートを聞こうとしてくれている。
そのことが嬉しくて、新しい楽しみを見つけてしまって、心が動き出しているのを感じる。
「すずか、ここにきて目を閉じてみて。中々に面白いものが聞けるわよ?」
アタシと一緒で、いやアタシ以上に耳の肥えているすずかだからこそ、この楽しみを感じ取ってくれるはず。
アタシの感じているドキドキを、一緒に感じてくれるはず。
「うふふ。雨の音を聞いてどうするの?」
「こんな素敵なコンサート、滅多に聴けるものではないわ。アタシが独占しちゃ、悪いでしょ?」
楽しいことは分け合えば良い。伝え合って、お互いの心に響かせれば良い。
それは生活を豊かにし、生きる楽しみを理解する術。
感情を伝え合い、時には反発しても、心が離れない限りいつかは溶け合ってしまう。
そんな、アタシ達の未来を描いているような、素敵な音楽がアタシを満たしてくれる。

――たまには、こんな日もアリね

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