リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。
メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
すずアリ テーマ:変化-2 をうpです
黙ってみているだけの世界。何があっても関わることなく、私を中に入れてくれない世界。
仲が良さそうで、温かそうで、優しそうに見える世界。
だけど、その世界には私の居場所なんてない。私がいられるスペースがない。
私はいつも外にいる。何があっても、何が起きていても、私に干渉してくることはなかった。
どれだけ手を伸ばしても、頑張って飛び込もうとしても。触れられるギリギリのところで、私の手は止まってしまう。
寂しかった。辛かった。温かい笑顔に囲まれていても、私の心は冷え切っていた。
どうして、こんなことになっているのだろう?
私は、なにか悪いことをしたのだろうか?
いつもそんなことを考え、これ以上嫌われることが内容にだけ気をつけて、ただそれだけを考えて生きてきた。
そうだよね、笑顔でいれば良いんだよ。
みんなに不快感を与えないように、これ以上嫌われないようにしなきゃいけない。
そうだよね、お喋りが過ぎるのは良くないよ。
誰も私のことになんか興味はないのだから、うるさくしてはいけない。もっと嫌われちゃう。
嫌われないように笑顔でいて、文句を言われないように笑顔いでいて。私にも友達が出来た。
心の中がわからない。何を考えているのか分からない。目の前にいるのに実感がない。
それでも、きっと。うん、友達なんだよ。
一緒にいて、話題を合わせる為にTVを見たりして。みんなに好印象を持ってもらう為にも、塾へと通って。
同時に家族に嫌われないよう、見放されることがないように勉強を頑張って。
私は『月村すずか』を演じ続けた。
――何も問題はなかったはずなの。自分でも満足できるくらい、『月村すずか』でいられたのに。
あの日全てが壊れてしまった。
進級して、クラス替えをして、どうやって友達を作ろうか、そんなことを考えていた頃。
大学までの一貫校で、友達を作っておくことは大切だと学んだから、友達を作る必要があると考えていた頃。
その事件が起きてしまった。
悲しかった。私は何の問題もなく、ちゃんと役割をこなしていたはずなのに。
それなのに、どうしていじめられているのか? この世界で手に入れた、身に着けていられる物まで奪われないといけないのか。私には理解できなかった。
『月村すずか』という女の子を演じ、『良い子』を演じられたご褒美にと、私に与えられたモノなのに。とても大切なカチューシャなのに。
どうして、こんなことをするのかな?
どうして、私がいじめられているのかな?
私は、何をしてしまったの?
私の見ている世界は楽しそうで、私もそこに加わりたかっただけなのに。嘘ではない、楽しいからと。そんなふうに笑ってみたかったのに。
やっぱり、駄目なの?
「くやしかったら、取り返してみなさい」
そんなの、無理だよ。『月村すずか』は良い子だから、喧嘩なんてしない。
お友達になるためにも、喧嘩はしてはいけない。じっと我慢して耐えていれば、いつかは飽きるよ。そしたら、返してくれるはず。
ここまで頑張ってきたのに、ここで失敗するわけにはいかない。こんなところで、失敗できないの。
そう、信じていた。私が『良い子』でいれば、いつか世界は受け入れてくれると。
それだけが、私の心の支えだった。いつかは、私も一緒の世界に行けると。
だけど、それは間違いだった。
あの時、私は失敗したはずだった。とんでもない、取り返しのつかない、そんな失敗をしたはずだった。
アリサちゃんが私のカチューシャを取り上げてしまい、なのはちゃんが取り返そうとしてくれた。
私には不思議だったの。今まで、私の為に怒ってくれた人はいなかったから。私の為に、誰かと喧嘩しようとしているのを初めて見せられたから。
だから、私も叫んでしまった。世界が私に関わってくれたのが嬉しくて、思わずやってしまった。
止めてって、叫んでしまったの。
そうしたらね、2人ともびっくりしていた。私が急に叫んだから、2人には私が叫ぶ理由が分からなかったから、ビックリしたいたの。
うん、今の私になら分かるんだ。あの時、2人が驚いていた理由も、私が叫んだ理由も。
あの後、アリサちゃんが大切にしていたものがなくなる。そんなハプニングが待っていた。
アリサちゃんはクラスでも目立っている存在で、誰かが助けてくれるのかなって。そんなふうに見守っていたけど、彼女は自分だけだ探し始めた。
雨の降る屋上で、傘を差すこともなく、制服が汚れることも気にかけず。
私は、その姿に惹かれるものを感じた。吸い寄せられるものを感じたの。
だから、手伝うって、私も一緒に探すって。そう伝えたんだ。
傍にいれば、一緒に探していれば、私も何かを掴めるかもしれない。
眺めているだけの、そんなつまらない日々が終わるかもしれない。
そんな淡い期待を抱いて、アリサちゃんを手伝ったの。じっとしているだけじゃ駄目なんだって、そう感じさせてくれたから。
――あの時、初めて知った。
雨は冷たいって。歩けば音が出るんだって。人の手は、温かいんだって。
世界は音で溢れていて、だけど喧嘩することなく、時にぶつかったとしても調和して。そして、世界を作っているんだって。
その中に入りたいのなら、私が世界の一員になる為には、私が近づく必要があるって。
待っているだけでは駄目。何か行動を起こさないと、駄目なんだって。そう、気付かせてくれたの。
それからは大変だった。今までにやった事のないこと、今までは知らなかったことにチャレンジし続けた。
大丈夫、無駄にはなっていないよ。あの時の私が頑張ったことは、実を結んだよ。
私の横で眠っている、私だけのお姫様がそれを伝えてくれた。言葉で、行動で示してくれた。
だから、私は今も笑っていて、あの頃とは違う本当の笑顔を手に入れて、毎日を過ごせている。
ありがとう、アリサちゃん。
――私が変われば、世界も変わるんだね