【ドキプリ】あなたといること【ありまこ】

OP難しいなぁ。リズムさえ取れればいいのでしょうが、センスのない私には厳しいです。

なにはともあれ
お嬢様が大好きな、そんなまこぴーは好きですか？
真琴さんLOVEなお嬢様が、大好きですか？
私は大好きです。

大切な思い出とは、日常の中から生まれます。特別な出来事も、日常にしか存在しません。
のんびりとまったりと、急がなくても気持ちは大きくなるのです。

・ｗ・）　なに言ってんだろ、私

　暗い雲に覆われた空から、しとしとと小雨が降り続ける午後。わたしは真琴さんと一緒に、お買い物に出かけていました。

　もっとも、お買い物というのはただの口実であり、一緒にいたいという本音を伝えるためのものであることは、お互いの知るところ。気分の沈みそうな天気だからこそ、好きな人とのんびり過ごしたいと、そう願った結果でしかありません。

「今日はありがとうございました。雨の中、わたしのワガママにお付き合い頂き、感謝しておりますわ」

　セバスチャンの淹れてくれる最高の紅茶を避け、あえて喫茶店で頂くというもの楽しいものです。こういった落ち着いたお店であれば、真琴さんの希望にも合いますし、２人で雰囲気に酔えるというのは贅沢ですわね。

「あたしも、ありすと一緒にいたい気分だったから。こっちこそ、ありがとう。このお店も素敵だし、素晴らしい休日になったわ」

　わたしの目の前で、手の届く距離で微笑んでくれる愛しい人。受身過ぎるところがあり、多少の物足りなさも感じますが、これも贅沢な悩みです。普段、目が回ってもおかしくないような、多忙な日々を過ごしている彼女が、わたしの為だけに時間を割いてくれているのです。気にしないようにとは言われましたが、言われたからといって、忘れるわけにはいきませんもの。わたしのやり方で、しっかりとサポートさせて頂きますわ。

　この先、予想外のトラブルや、障害が立ちふさがるでしょう。調べられる範囲では調べて、手を打ってはいますが、それでも避けて通れないものは出てくるはずです。その時こそ、わたしが隣にいるべきなのか、真価を問われることになります。安穏と構えて、流されるだけなんてごめんですから。

「真琴さん、まだ今日は終わりではありませんよ？　ここで最後になってしまうような、悲しいことを言わないで下さいな」

　素晴らしい休日になったと、振り返るにはまだまだ早いですわ。今日が終わっていないのも大切なことですが、２人の時間もまだ終わっていませんよ？

　わたしの知る限り、今日は１日フリーにして頂けていた筈です。日頃の慌しさから遠ざかった、のんびりした時間を味って頂きたいものです。

「そんなつもりはなかったんだけどね、不安にさせちゃったかな？」

　もっとも、のんびりした時間を過ごせるのも、真琴さんの努力のお陰なのですが。彼女のが望んで、アイドルという生き方をしている限り、わたしが故意に手を出させていただくことはありません。彼女のフォローは致しますが、それはあくまで個人レベルの話です。財団として何かをしてしまえば、それだけで失礼なことになりますから。

　こうしてお喋りをして、何気ない時間を２人で積み上げて、次に会える時を楽しみにしていただくのが、わたしのフォローですわ。

「ふふ、いつお仕事が入るか分からない身ですもの。一緒にいられる時は、終わりを見ないようにしたいのです」

　もっとも、真琴さんに会える時を心待ちにしているのは、わたしも同じですから。デートのプランを考え、エスコートの仕方をシミュレーションし、下見にも手を抜いたりはしません。

　もちろん、嬉しいハプニングであったり、お店の定休日が重なったりと、うまくいかないこともありますが、それはそれで楽しめば良いのです。デートにしても、買い物にしても、１番大切なのは一緒にいられることなんですから。そこを忘れてしまっては、いけませんわ。

「それにしても、最近の真琴さんは以前にも増してお忙しそうですが、何か進展があったのですか？」

　真琴さんの仕事の状況に関しては、概要を掴む程度に留めておりますから。その全貌を調査しているわけではありません。

　先に考えていたことと同じですが、全てを知っているような状況では、真琴さんのやる気をそぎ、プライドに傷を付けてしまうことになるでしょう。

　わたしの目的は、あくまでフォローをする為の情報収集です。真琴さん自身に、聞けない間柄ではありません。ご本人から聞かせていただくのが、ベストですわ。

「うん、ちょっと映画に出ることになって。あたしの目的は歌を届けることなんだから、本当は断りたかったんだけど」

「あら、いいではありませんか。ダビィさんもやり手ですね」

　恋人としては、真琴さんの意見を尊重したいところでもありますが、これはダビィさんにも考えがあると見ました。

　メディアへの露出を増やせば、その分だけ王女様の目に触れる可能が増えます。歌声を届けようという今までの行動に加えて、映像も加わるとなれば、確率的にはぐっと引き上げることが出来るでしょう。

　もっとも、話題性のあるアイドルを起用することは、今の映画業界では珍しいことではありませんし、かといって演技を学んでいない真琴さん自身としては、難しいところもあるのでしょう。

　読み合わせなど、わたしに出来ることでしたら、お手伝い致しますわ。

「どうなのかな？　本来の仕事を忘れない程度なら良いかなっておもったけど、ありすといられる時間が減るのは悲しいよ。離れている時間が長くなると、心が枯れていくような感じがするんだ」

「あら、真琴さんとあろう者が、わたしといられない時間を、寂しいと言って頂けるんですか？」

　キュアソードとして戦い、まこぴーとしての生活を送り、剣崎真琴として学業を修める。

　そのように多忙な日々を送る彼女にとって、わたしとの時間はどのような意味を持つのでしょうか？　わたしという恋人は、彼女の生活を変えてしまうような、そんな存在であれるのでしょうか？

　寂しいと感じていただけるのは、心の支えになっている証拠なのでしょうか？　それは、恋人として喜んでも、よろしいのでしょうか？

　沢山の疑問が沸いてしまいます。真琴さんの心を知りたいと、真琴さんの真意を知りたいと。わたしという恋人の価値を知りたいと、気持ちがざわめきます。

　どれだけ愛おしく想っていても、相手の気持ちを真に理解することは出来ません。真琴さんの心の中は、彼女にしか分かりません。

　わたしがどんなに大きな愛を抱いても、受け取っていただけるか分からないのです。

「当たり前でしょ？　あたしは、ありすの傍にいたいから、誰にもさらわれたくないから、行動したんだよ？」

「そういっていただけると、光栄ですわ」

　どうやら、心配する必要はなかったようですわ。

　わたしが真琴さんのことを想い、夜も眠れない時があるように、真琴さんもわたしを求めて下さる。それは、とても光栄なことであり、恋人として涙が出てくるほど、嬉しいことです。

　わたしの気持ちは一方通行ではない、真琴さんに届いていて、真琴さんからもかえってきている。その事実は、とても嬉しいものです。

「ありすは違うの？　あたしと離れていても平気？」

「いえ、平気ではありませんわ。ただ、わたしの場合はＣＤやテレビなど、まこぴーとしての真琴さんに、触れる機会はいくらでもありますから。我慢できないこともありません」

「むー、なんだかズルいなぁ。あたしは寂しくて、ダビィに八つ当たりするくらいなのに」

　わたしの写真などで、多少は紛らわすことも出来るのでしょうか？　そうであれば、いくらでも差し上げますが。わたしはアイドルではありませんので、歌を届けるというわけにはいきませんわ。

　それにしても、ダビィさん、お可哀想に。今度、お菓子の差し入れに伺いますから、我慢して下さいね。

「……カルタの時もそうでしたが、どんどんと子供っぽくなっていませんか？」

「マナ達の前では隠さなくても良くなったし、ありすの前でまで、まこぴーでいるつもりはないよ。ただ、それだけのこと」

　つまり、今まではイメージを守る為に、大人っぽく振舞っていたと？　最近出てきている、幼さを残しているのが、本来の真琴さんということで、よろしいのでしょうか？

　なるほど、これで今までの違和感が解消されますわ。熱くなりやすかったり、むきになってみたりと、思い返せば子供っぽい行動は、それなりにありましたわ。ただ、ダビィさんが上手く隠したり、わたしが注目していなかっただけですわね。

　これは、嬉しい発見かもしれませんわ。

「その、もしかして、嫌いになったりする？　子供っぽい、あたしは嫌い？」

「ふふ、可愛らしいですわ。抱きしめるのを我慢しなければならいほどに、可愛らしいですわ」

　先ほどから、抱きしめようとする両手を抑えるのに、精一杯ですの。机の下で硬くにぎった手には、跡が残っているかもしれませんね。

　真琴さんに気付かれる前に、この衝動を逃がしてしまわないと、大変なことになりますわ。

「どうして？　ありすの方が可愛いよ？　抱きしめるなら、あたしがありすを抱きしめるよ？」

　真琴さんに抱きしめて頂ける。それは、とても素敵なことですが、この場ではダメですわね。

　こちらのお店は懇意にしていることもあり、アイドルがいたからといって騒ぎ立てるような、無粋なお客さんがこられないのは把握しています。だからこそ、熱愛的な部分を見せてしまえば、マスターを困らせることになってしまうでしょう。

　なにより、そういったことは２人きりでないと、少々恥ずかしいものがあります。節度の大切さが、理解できた気がしますわ。

「真琴さん、可愛らしいか、格好良く決めるか、どちらかにして頂けませんか？　わたしの理性がもちませんわ」

「あたしの前でまで、お嬢様でいなくてもいいよ？　あたしは、ありすの全部が知りたいから、我慢はして欲しくないな」

　真琴さんの前では、本当の自分でいる。そうですね、そうできたらよろしいのでしょうけど。

　わたしの場合は、自ら望んで四葉の者となったわけではありませんので、真琴さんとまこぴーのように使い分けることは出来ませんわ。お嬢様としてのわたしも、恋する乙女であるわたしも、真琴さんの恋人であるわたしも、何も変わらないのでしょう。

「ありがとうございます。ちょっと恥ずかしいので、少しずつ努力致しますわ」

　ただ、人は変わるものですから。もしかしたら、本当のわたしというのが、あるのかもしれません。わたしが気付いていないだけで、真琴さんといる内に少しずつ変わっていけるのでしょう。

　我慢はしていません。わたしなりには、ワガママを言っています。真琴さんが全て叶えてくれているだけで、結構なワガママを言っていますよ？

「いつか、本当のわたしになれるよう。本当のわたしを、真琴さんに愛して頂けるよう。ちょっとずつ、変わります」

「そっか。なら、あたしは楽しみにしてる。本当のありすを見られる日を、楽しみに待ってるよ」

「ふふ、もっと求めて頂いてもよろしいんですよ？」

　やはり、受身なのですね。求めていただければ、もしかしたら出てくるかもしれませんのに。待っているだけなんて、すこしいじわるですわ。

　わたしが変わるには、真琴さんの愛が必要ですから。今まで以上の愛を、わたしに注いで下さい。

 

――真琴さんと行く未来。そこには、何が待っているのでしょう？