ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
※ 百合思考です。
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1986/07/28
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恥ずかしいので止めて ^^;
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・w・) 好きな人が悩んでいたら、気になりますよね? ね?
そうだと言って下さい
そうだと言って下さい
あたしの好きな人が悩んでいる。あたしが守りたい、あの子が悩んでいる。
その悩みに対して、あたしは解決策を持っていないのかな? 独りで悩んでいるだけで、あたしには相談してくれないのかな?
ありすの悪いクセだよ? 自分の中に悩みを見つけて、自分だけで考えて、独りで解決しようとするの。あたしには許してくれないのに、一緒に解決しますわって、気付いたら横にいてくれるのに。あたしには、手伝わせてくれない。
確かに、ありすから見れば、あたしの力なんて小さなものだし、ありすの問題を直接的に解決することは出来ない。
けど、困っている時にこそ、好きな人の傍にいてあげたいって、そう思うのは悪いことなの?
あたしと、わたし
芸能界と呼ばれる場所に身を置いていると、見たくないような人間関係や、触れたくもないような人間関係を見てしまうことがある。その反動として、綺麗なものを求めてしまっているのは、理解しているつもり。ジコチューとの戦いに疲れた時、安らげるところを探していたのも、理解している。
けど、あたしは、それだけの為に彼女を求めたのではない。自分の幸せの為だけに、自分の足らないものを生める為だけに、彼女を求めたのではない。
ありすに笑って欲しいから、その笑顔を1番近くで見ていたいから。あたしは、告白したんだよ? 恋人になって下さいって、告白したんだよ? そこらへん、ちゃんと分かってる?
「真琴さん、紅茶のお代わりは如何ですか?」
「ありがとう、ありす。けど、それくらいなら、あたしでも出来るよ?」
楽しいはずのお茶会。2人だけの、あたし達だけの時間。
それなのに、ありすの笑顔に陰りがあるのは、なぜ? 今までのような笑顔ではなく、硬い表情になっているのは、なぜ?
執事さんや、ダビィ達は近くにいない。だから、ありすがお茶を注いでくれるのは、そんなに変なことではないけど。どうして、そこまでしようとするの?
ねぇ、気付いてる? さっきから、あたしのことばかり気にし過ぎて、ありす全然飲んでいないんだよ? 席についてから、1度もカップに口をつけていないんだよ?
立ち上っていた湯気は、ちょっと前に消えた。猫舌だと聞いた覚えはない。あたしの表情をうかがいながら、あたしの機嫌をうかがいながら、落ち着こうとせずにそわそわしている。
今まで通りのありすなら、何かお願い事があるのかもしれないと、デートに誘ってくれるのかもしれないと、期待することが出来た。何か伝えたいことがあるのだろうと、その機をうかがっているのだろうと、思えたのかもしれない。
ただ、お願いごとを言うだけなら、ここまでする必要はない。あたし達は恋人なのに、あたしはありすの恋人なのに、どうしてこんなに気を遣われないといけないの? どうして、ご機嫌取りをされないといけないの?
「ねぇ、ありす。何かあった? 何か、悩んでいることでもあるの?」
「いえ、悩みなんてありませんよ? 真琴さんとお茶をしていますのに、どうして悩まなければいけませんの?」
まぁ、素直に話してくれるなんて、思ってもなかったけど。取り付く島すらない。
ただ、悩みという言葉に反応したのは、あたしの質問自体に怯えたのは、隠せてないよ? 嫌なことも多い芸能界だけど、人の表情や感情を読むのには、慣れたつもりなんだ。
いくら四葉の令嬢とはいえ、ありすは鉄面皮ではないのだから、その表情から何も読み取れないわけではない。素直になってくれない子の為に、あたしはあたしの出来ることをするよ。
「ねぇ、ありす。あたしといて、楽しい? あたしといて、幸せ?」
「ええ、もちろんですわ。どうかされましたか?」
びくびくと小動物のように怯えている状態で、ありすは楽しめているのかな? あたしの顔色をうかがうように、観察するかのように見つめてきて、それで楽しめているの?
あたしの知っている、あたしが好きになったありすは、そんな表情は見せなかった。何事にも動じず、自らの決めた道から外れたことをせず、それでいて優しさに溢れている、太陽みたいな子だったのに。
今のありすは、恋人だからこと、見せてくれているものではないよね? そういった、甘え方でもないんでしょ?
「実はね、あたしはちょっとだけ面白くないんだ。今のありすと一緒にいても、心の底からは楽しめないんだ」
「わたし、何かしてしまったのでしょうか?」
あたしは、幸せになる為に告白をした。あたしが、ありすを幸せにしたいから、告白した。
それなのに、2人一緒にいることによって、ありすを苦しめていたら、何の意味もない。ただ、あたしのワガママに付き合わせているだけ。
そんなの、楽しくないし、幸せにもなれない。あたしが幸せなら、ありすも幸せだなんて、そんな妄想に浸るほど、あたしは子供じゃないよ。
「あたしはね、全部の問題を2人で解決しないといけないとは、思っていないんだ。時には自分の力だけで、目の前の問題を乗り越えていく必要があるって、そう思っているの」
恋人だからといって、相手の全てに関わりたいというのは、ただのエゴでしかない。そんなワガママ、相手を困らせるだけでしかない。なにより、ありすの問題を全て解決してあげられるほど、あたしは完璧ではない。
それに、すぐに恋人に頼っているようでは、弱くなってしまうから。そんな甘え方は間違っている。
「だから、ありすが隠そうとしている悩み事や、あたしに相談してくれない問題については、見守るだけにしてきたつもりだよ。ありすの口から話してもらえるまで、もどかしくでも我慢してきたつもり」
あたしにも、全てを話すことは出来ない。ありすには内緒にして、1人だけで挑んでいることもある。ありすを付き合わせるわけにはいかないと、暗い夜を1人で捜索している。
「けど、今回のはちょっとダメかな。ありすが悲しそうな顔をする、そんな問題を見守るのは、あたしには無理なんだ」
頑張ることや努力を重ねることは、大切なことだと思う。1人で積み上げた時間は、自分の力になっていると、あたしはそう信じている。
ただ、悲しみを1人で抱えちゃダメだよ? 悲しい出来事を、1人で抱えようとしてはいけない。
それは、ちゃんと相談して。解決できなくても良い、泣きついても良い。悲しい時に相談されない方が、恋人として寂しいから。
「ねぇ、全部を教えてとは言わないよ? 恋人でも秘密は必要だって、そうも思っているよ?」
全てを話せるような、隠し事のない関係。それは理想でしかなく、理想の中にしか存在しない。
教えたくないこともあるはず。相談しても、何も変えられない問題だってある。
知りたくなかったこともあるはず。知られる前に、どうにかしたいこともあるはず。
「あたしでは、相談にのれないかな? ありすの問題を解決する、手助けにはならないかな?」
あたしに解決できるのか、ありすが相談してくれるのか、そんなことは分からない。どんなに大きな問題なのかも、全く分からない。
ただ、聞く前から逃げる程、あたしは弱くないよ。
◇
あたしが出来るのは、ここまで。ありすが嫌がるなら、無理矢理聞きだしたりは出来ない。
だからこそ、祈る。ありすの心に、訴える。あたしに話して欲しいと、目をそらさずにお願いする。
「参りましたわ。まさか、そこまで見られていたなんて」
「いつものありすなら、気付いているはずだよ? それだけ悩んでいたんだって、少しは自覚してね?」
ありすの心が、弱ってしまっている。周りのことに気付けないほど、追い詰められている。そこまで悩んでしまったことを、次に繰り返さない為に覚えておいて欲しい。
自らを傷つけない為に、あたしという恋人を忘れない為にも、覚えていて欲しい。
「ダメですわね。そこまで言われたら、相談するしかないじゃありませんか」
久しぶりに、ありすの笑った顔を見た気がするよ。仮面ではなく、本当の表情を見た気がする。
まぁ、出来ることなら、満面の笑顔を見たかったところだけど、その疲れた笑顔で我慢してあげる。早く解決して、楽しいことを探そう。ありすが悲しそうな顔をしているのに、あたしだけ楽しくなんてなれないよ。
「真琴さんは、わたし達2人が一緒にいることによって、抱えてしまう痛みについて、どのようにお考えですか?」
「痛み?」
どんな悩みが飛び出してくるのか、それがあたしの予想の出来るものなのか。色々なことを想定して、ありすの言葉を待っていたはずなのに。ありすがやっと話してくれた、そんな話なのに。
質問の意図が理解できず、思わず聞き返してしまった。
抱えてしまう痛みって、なんのこと?
「ええ。わたし達は2人共何らかの影響力を持った立場にいます。だからこそ、2人でいることで、抱えてしまう痛みがあるのではないかと。いつか、真琴さんも巻き込んでしまうのではないかと、不安なのです」
つまりは、四葉財団の令嬢であるありすと、芸能人であるあたし。その2人が一緒にいることによって、なんらかの問題が生じてしまうと。ありすの抱えているものに手を伸ばせば、あたしも同じ悩みを抱えてしまうと言うこと?
1人ならなくても、2人だからこそ、受けてしまうものがあるのは、当然の話。2人で幸せになろうとした1つの結果として、悲劇を引き当ててしまう可能性だって、ありえないわけではない。
分かりやすく考えるなら、恋人であることが週刊誌などに掲載され、熱愛発覚となればどうなるか?
元々が友人であり、多少のことであれば、女の子の友情で片付けられてしまっていたからこそ、掘り返されるのは都合が良くない。恋人としか思えない行動も、友達だと誤魔化せるはずと、多少強引にやってしまったところだってある。
何より、記事が掲載されることにより、ありすや四葉財団がどのような損害を受けるのか、あたしには想像も出来ない。
芸能界に身を置いている以上、スキャンダルと呼ばれるものは、けして他人事ではない。仲良くしてもらっていたアイドル達が、一瞬にして解散に追い込まれるようなケースも見てきている。幸いにして売り出し中となっているあたしは、多少のスキャンダルが報じられたところで、否定すれば逃れられるかもしれない。
ただ、そう言ったものからは縁遠い、ありすはどうなのかな?
四葉財団において、ありす自身の影響力と言うのは、小さくないと聞く。だからこそ、ありすがそういった報道に巻き込まれた場合、全総力を挙げてでも、調査をするはず。その結果、事実であることが発覚すれば、勘当すらもありえるのかな?
「一緒なら、痛みも怖くないよ。ありすが傍にいてくれれば、あたしは強くなれるから」
ただ、そうならないようにするのは、あたし達自身だから。自分たちで気を付けていけば、それで良いのだから。
痛みに襲われそうな時にも、危ないことが起きた時にも、手を放さすに一緒にいるのであれば、怯える必要はない。
あたしは、ありすを守ると誓ったから。ありすの傍にいると、誓ったんだから。何が来たとしても、恐れたりはしない。
「ありすはどうなの? やっぱり、怖い?」
あたしは、ありすといることで強くなれる。ありすと一緒にいれば、幸せがあたしを強くしてくれる。だから、何にも怯えない。
「一緒にいる為の痛みであれば、怖くはありません。それと引き換えに、真琴さんとの時間を得られるのであれば、怖がらず飛び込んでいけます」
ありすにとっての痛みとは、何かな? それは、あたしにも分かるものなのかな?
その痛みと引き換えてもらえるくらい、あたしとの時間は有意義なものなのかな?
ただ、もっと気付くべきところはそこではない。ありすの考え方に、反対するのは気が引けるけど。
それでも、直してもらわないと、ダメだよ?
「痛みは、必要ではないよ? 2人でいる為に、必要なんじゃないよ? 2人でいるなら、怖くないだけだよ? 痛みが消えたりはしないよ」
ありすの言葉では、痛みがあるから、あたし達の時間があることいなっている。痛みがあって、初めてあたし達の関係が成り立つことになっている。
それは、違うよ。あたし達の幸せと、痛みは別だよ。だから、消えたりはしないし、なくなったりもしないよ。
代わりに痛みを伴わなくても、あたし達の関係はあり続けるんだよ。勝手に終わったりしないよ。
「ねぇ、ありす。ありすはどうして、そんなに思いつめてしまうの?」
ありすは、あたし達が一緒にいることを、大きく捉えすぎている気がする。あたし達個人の幸せが、世界に影響すると警戒し過ぎている気がする。あたし達の幸せは、あたし達のものでしかない。周りの人達に、ある程度の影響は与えるかもしれないけど、それでも個人レベルの話でしかない。
「ありすは、色々なものが見え過ぎているのかもしれないね。あたしには想像も出来ないような、大勢の人の生活に関わってしまうから、色んなものが見え過ぎるんだよ。自分の幸せを、大勢の人の幸せとで、天秤にかけてしまってるんじゃない?」
自分の幸せを、大勢の人の幸せとで、秤にかけてしまう。自分だけが幸せになることに、躊躇してしまう。
それが、ありすの献身ぶりにつながってしまうのかもしれない。自分のことを後に回して、他の人を優先してしまう。自分の幸せよりも、他人を優先しようとする。
「そうなのでしょうか? わたし自身には、良く分かりませんわ」
「ありすにとっては、それが普通になってしまっているから。気付けないのかもしれないね」
ありすらしいと、そう言えるのかもしれない。みんなで幸せになるとする優しさこそ、ありすのいいところであり、柔らかい印象を与えるもの。
ただし、それはありすの良いところであるべきで、ありす自身の幸せの障害となっていいものではない。折角のいいところが、障害になるなんて、悲しいでしょ?
ついでに、それを理由にして、あたしに気付かせることによって、本当の問題を秘密にしようとするのは、止めて欲しいな。
「ねぇ、ありす。ありすが悩んでいることって、本当にそれだけ?」
お茶会の最初のほうよりも、小動物感が増し、話を終わりへと導こうとしている。何かに気付かれないように、隠そうとしている。
普段のありすであれば、もっと上手くやるから、あたしには気付けないのかもしれない。
けど、今のありすじゃ無理だよ。
「他の悩みも、ないわけではありませんが。どうか、されましたか?」
「うん、さっきの痛みの話なんだけどね。あれって、ありすが悩んでいる、本当のこと、あたしにも相談出来ない、大きな悩みの入り口なんじゃないの? ありすが解決したい悩みは、もっと奥に、大きなものがあるんじゃないの?」
ただ、これも無理矢理聞きだすことは出来ない。ありすが話してくれるように、促すことしか出来ない。
無理矢理聞き出しても、良いことなんてあるはずないから。そんなことは、出来ない。
お願い、あたしはありすの力になりたいだけなの。ありすと幸せになりたいだけなの。
「……お気付きでしたか」
「なんとなく、だけどね。何に悩んでいるかは、はっきりと分からないし。どうして悩んでいるのかも、良く分からなかったから」
あたしは、エスパーでも、テレキネスでもない。たしかに、プリキュアとしての力はあるけど、それでは解決出来ない。
ありすの心を読むような、そんな力があったら、こんな回りくどいことをしなくても良い。
「ただ、さっきの話を聞いて、なんとなく。ありすの悩みって、この奥にあるんだろうなって、そう感じたの」
「ふふ、ごめんなさい。こちらの悩みは、まだ話せないのです。わたし自身、よく分かっていませんので」
勿論、心が読めるようになってしまったら、面白くないだろうなって、分かってもいる。何より、人間というのは綺麗な感情ばかりではないから、途中で疲れてしまうはず。今でも十分忙しいし、これ以上は遠慮したい。
それに、読めないからこそ、知ることが楽しい。ちょっとずつ知っていけるからこその楽しみもある。
「気にしないで。相談してくれる気になっただけでも、あたしは嬉しいから」
だから、今全部を知りたいとも思わない。今すぐ、全てを話して欲しいとは言わない。
「それに、止めたところで、ありす聞いてくれないもん。傍で見てることにするよ」
恋人として出来ることは、他にもあるはずだから。話してもらえなくても、支えることは出来るから。ありすは、満足するまで悩んでいいよ。
「ただし、辛そうな顔をしたら、今回みたいに聞き出すから。そうなる前に、相談してね」
話すべきタイミングは、ありすが見つけてくれれば良い。
聴く準備だけはしておくから、いつでも良いよ。
「ありがとうございます。真琴さんは、わたしを信頼してくれるのですね」
「当然でしょ? なんたって、ありすは恋人なんだから。この世界でただ1人、あたしの愛している人なんだから」
「まぁ、責任重大ですわ。ふふ、こちらの悩みは、真琴さん絡みですから、いつか解決策を授かりに参りますわ」
あたしが関わっている悩みか。嬉しいような、悲しいような、ちょっと複雑な気分になるよ。
あたしのことで悩んでくれるのは嬉しいけど、あたしが悩みのタネになってしまうのは悲しい。出来れば、幸せになれることに関わりたいと思うのは、ワガママかな?
――ありすの相談、待ってるよ
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