【アイマス】望むべく未来【はるちは】

４本目だよー

　目標とするものがあるから、人は歩いていける。目的地があるからこそ、途中の苦労を乗り越えていける。

　もし、その目標を失ってしまったら、足を止めてしまうのだろうか？　それとも、新しい目標を探す為、歩み続けるのだろうか？

　道がなくなってしまったら、どうするのだろう？　道が途絶えてしまったら、どうするのだろう？

　そんな時にこそ、本当の強さが、現れるのかもしれない。

　

　

　　　　　望むべく未来

　

　

「あー。あー。らーっ」

　どこまでも延びるように、どこまでも響き渡らせる様に。おなかの動きを意識しながら、喉がひらいていることを確認しながら。

　高く、遠くに及ぶ音。低く、地を揺らすような音。この身体に詰まっている歌を、少しでも正確に表現する。

　彼女が好きだと言ってくれる、私の歌。弟が笑ってくれた、私の歌。悲しい時も、苦しい時も、嬉しい時も、苦しい時も。私の中で、反響し続ける音。

　私の歌で、少しでも元気になってくれる人がいるのなら。私の歌で、わずかでも幸せになってもらえるのなら。意味が持てるから。

　目指すところは、高く遠い。今の私には、形さえ見えない。

　ただ、春香が傍にいてくれるのに、諦めるようなことをしたくない。彼女の元気を分けて貰っている、弾む心を止めたくない。

　どんな時であっても、歌い続けられる、そんな私でいたい。

「らー」

　イメージ通りになるように、正確な音をとるように。歌詞に込められた感情を、曲が伝えようとしている気持ちを、私の歌で表現する。その瞬間を得る為に、レッスンに励む。

　１つ１つの効果は小さくても、継続することが大切。その重みを知る以上、どんなことにも手は抜けない。

「よし、こんなものかしら」

　ランニング前の発声練習。合宿中であれば、春香を待つ時間に終わらせていたものも、今は気にする必要もない。満足できるまで声を出し、そのままの勢いで走り出す。

　一緒にいられる時間は大切だし、もっと増やしていきたいとは思うけれど、お互いに目指しているものがある以上、１人での練習も大切だから。次に会う時までに、少しでも上達していたいから。

　ふふ、春香は知っているかしら？　私が褒めてもらいたいと、凄いと言ってもらいたいと、そんなことを思いながら練習していることを。春香のキラキラした目線を独り占めする為に、春香を驚かせる為に、モチベーションをあげていることを。

　不純な動機かもしれない。けれど、私の歌を好きだといってくれた、春香にも喜んで欲しいから。間違った選択肢ではないわ。

　アイドルの如月千早として、ファンになってくれた天海春香さんへ、笑顔になれる歌を届けたいから。こうして、練習に励むことが出来る。時々出てきそうになる、弱い心をなだめながら、自分を伸ばしていくことが出来る。

「ありがとう、春香」

　アイドルとして目指すもの。私の夢が目指すもの。感謝の印として、届けたいもの。

　昔と比べて、抱えているものは随分と増えてしまった。叶えたいと、自らの願望として抱くものが、増えてしまった。

　けれど、嫌な気持ちではない。叶えたいものが沢山あるからこそ、私は足を止めなくてすむ。前に進む言い訳が増えた分だけ、力強く踏み出せる。

　止まらない足、それに負けないように心を鍛えたい。まだ見えない目標、だからこそ目指す価値もある。

　諦めるところなんて、想像すら出来なくなったから。私の未来に広がるものは、輝きを得ているから。自分に負けたりしないわ。

　

――今日もここから始めましょう