ここは「魔法少女リリカルなのは」の2次SSをメインとしています。
※ 百合思考です。
最近は、なのは以外も書き始めました。
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らさ
年齢:
38
性別:
男性
誕生日:
1986/07/28
趣味:
SS書き・ステカつくり
自己紹介:
コメントを頂けると泣いて喜びます。
リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。
メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
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当ブログ内のSSは無断転載禁止です。
恥ずかしいので止めて ^^;
3週間ぶり?
はい、そんな感じでらさです。
SSをうpできなくても、更新だけはしよう。そう思っていた時期が私にもありました。
はい、クリスマスです。
らさはクリスマスとイヴの違いが、いまいち分かりません。
ええ、分かろうって気がないんです。
とにかく、クリスマスSS UPです。
ヴォーカロイドより リン→ミク「クリスマスプレゼント」です。
奇跡は起きないから、奇跡って言うんです。
でも、気付いていないだけで、日常に混じっているものですよね☆
はい、そんな感じでらさです。
SSをうpできなくても、更新だけはしよう。そう思っていた時期が私にもありました。
はい、クリスマスです。
らさはクリスマスとイヴの違いが、いまいち分かりません。
ええ、分かろうって気がないんです。
とにかく、クリスマスSS UPです。
ヴォーカロイドより リン→ミク「クリスマスプレゼント」です。
奇跡は起きないから、奇跡って言うんです。
でも、気付いていないだけで、日常に混じっているものですよね☆
「クリスマスねぇ……」
正直、私達には関係ないイベントだ。
恋人がいるわけでもなければ、パーティーに出かけるわけでもない。
いつものようにコンサートを開き、歌うだけ。
サンタさんにお願いするようなプレゼントもないし、いつもと変わらない日。
私的にはそう思っているんだけど、そうじゃない人もいるみたいね。
「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー」
……はしゃぎ過ぎよ、ミク姉さん。
私の前では、緑髪の女性が楽しそうにしている。
右手には星、左手にはベル。どう考えても、クリスマスツリーの飾りつけだ。まったく、なんでここまで楽しめるのかしら?
世の恋人達はバタバタしているけど、私達には関係ないんだよ?
見せ付けるだけ見せ付けてくれちゃって、イライラするだけなんだから。
「はぁ……空しい」
どんなにひがんでも、恋人達は勝ち組。私は負け組み。ホント、嫌になるわ。
歌って踊れるアイドル、鏡音リンの名が泣くわね。
「リンー、どうしたの? 早くしないと間に合わなくなるよ?」
「あ……うん、分かったわよ」
誰もいない家。それを飾る為の準備。なんて無意味なのかしら。
ホント、それどころじゃないのに――のんきで良いわね。
◇
自覚したのはいつだったかしら?
私の胸に宿る小さな想い。
世間的に認められることはなく、家族にも認めてもらえないもの。
話に聞いたことはあったし、ソレも1つの形なのかなって思えてたわよ?
まさか、自分自身がこんなことになるなんて、想像してなかったし、想像出来るはずないわ。
鏡音リンは、初音ミクに恋をしました。
文書にすればコレだけ。たった1文で終わってしまう、そんな内容。
でも、現実的にはそんな終わり方はありえない。
ミク姉さんが可愛いのは認めるわよ?
ちょっと幼いところはあるけど、私とレンの面倒だって見てくれている。
歌だって上手だし、何よりも優しい。女の子らしくて、意地っ張りな私とは全然違う。
だけど、いや、それだからこそ認められなかった。
だって、普通は憧れるものでしょ?
女性として尊敬して、家族として愛情を持つのは分かるわよ?
抱きついてみたいとか、デートしてみたいとか、キスしたいとか……どう考えても、普通じゃないわ!
私だって結構モテるんだし、さっさと彼氏をつくっちゃえば良かったのよ。
そうよ。そうしていれば、ミク姉さんのコトなんて忘れられたかもしれないのに。
どうして、出来なかったのかしら?
高価な贈り物にも、歯の浮くような台詞にも、心が動かなかった。
ドキドキしたり、ハラハラしたりしたけど、ミク姉さんと一緒にいる時のとは違った。
上手く言えないけど、もっとこう素敵な感じなの。
ミク姉さんといる時のドキドキは、爆発しそうだったの。
ミク姉さんといる時のハラハラは、気絶してしまいそうなぐらい、幸せだったの。
手を繋いだり、抱きしめてもらったり、一緒にお風呂に入ったり。
接近すればする程苦しくて、切なかった。
離れれば離れる程寂しくて、悲しかった。
近づいてもダメ、離れてもダメ。相談なんて出来るわけないし、胸の中でグルグルと渦巻く想い。
否定したくて、認められなくて、散々悩んだ。
ホント、最悪な日々だったわ。
眠れないからイライラするし、お肌は荒れるし、音は外すし……ミク姉さんにも心配かけるし。
でも、どうしようもなくて、泣きそうだった。
どうして、私がこんな思いをしなきゃいけないの?
どうして、私が苦しまなきゃいけないのって。
どんなに悩んでもダメだった。どんなに苦しんでもダメだった。
その苦痛から逃れる方法はただ1つ。そんなのは知っていた。
それを認めれば、別の苦痛が待っている。そんなの分かっていたわよ。
でも、仕方ないじゃない。私の心は決まっていた――
◇
覚悟を決めたあの日。私の悩みはなくなった。
覚悟を決めたあの日。私の苦しみが始まった。
ミク姉さんへの恋心。叶うわけがない、そんな恋。
サンタさんはプレゼントをくれる。でも、願いを叶えてくれるわけじゃないわ。
サンタさんはプレゼントをくれる。でも、恋を叶えてくれるわけじゃないわ。
ミク姉さんとデートしてみたい。腕を組んで街を歩いて、ショッピングしてみたい。
ミク姉さんに抱きしめて欲しい。家族としてではなく、恋人としての熱い抱擁を……。
私だって、夢ぐらいみるわよ? 別に良いでしょ。
だからといって、それを誰かに願うのは筋違い。そんなのじゃ、意味ないわ。
他人任せにして実る恋なんて存在しない。いや、存在しちゃいけないわ。私が認めない。
少なくとも、この鏡音リンの恋は、自分で叶えないと意味ないの。
それがこの胸に宿ってしまった、困った感情に向き合うことだから。
それこそが、ミク姉さんへの誠実な想いだと、信じてるから。
「まぁ、伝えれるのなら、苦労しないんだけどね」
私の前、手を伸ばせば届く距離で彼女は笑っている。鮮やかになっていくツリーに、目を輝かせている。
その笑顔を、他の誰でもない私が贈りたい。
彼女が笑っていられる、そんな素敵な時間をプレゼントしたい。
その瞳で見つめて欲しい。
幼い子供のように透き通った瞳で、私を見つめて欲しい。
「リンー、手が止まってるよー。どうかしたの?」
「何でもないわよ」
純粋に私を心配してくれる。
そんなミク姉さんに、私の想いは伝えられない。
家族としての、姉妹としての、この関係が壊れてしまうのは嫌だ。
「もしかして、飾りつけ面白くない?」
「面白いわけないでしょ」
リビングに飾るには少し大きめのサイズ。
全ての枝を使っても飾りきれないだろう、装飾品。
まったく、誰がこんなに用意したの?
「そうなんだ……残念」
何故ソコで落胆するんですか?
ミク姉さんには、私が楽しそうに見えてたのかしら?
「今夜だってコンサートがあるんだから、最後の調整をするべきでしょ。私達はヴォーカロイドなのよ?」
ミク姉さんの沈んだ顔が見たくないから、言い訳をしてしまう。
ミク姉さんの悲しそうな顔が見たくないから、言い訳をしてしまう。
「生意気と言われるかもしれないけど、時間が勿体ないわ」
家族に注意され続けていること。
だからって、簡単に直るはずがないんだけどね。
「私は、そんなリンが大好きだけどなぁ」
「はぁ、ミク姉さんは気楽で良いですね」
私は私で、色々と悩んでいるんですよ。
歩み寄るのは堕落にならないか?
家族の温かさに溺れてしまって、逃げ出さないかって……。
「えー、そんなことないよ。私だって色々考えているんだよ?」
夕飯のおかずとか、明日着る服のコトでしょうね。
私が言っているのは、そんな簡単なコトではないのよ?
「参考までに聞くけど、何を考えてるの?」
「えへへ~、例えばこんな風にっと……えい♪」
ぽふっと唐突に回される腕。
意外に強く引き寄せる力。
って、ちょっと何するんですか!
「何してるんですか?」
混乱している頭を無理やり働かせ、跳ね回る心臓をなんとか押さえ込む。
冷静になれ。落ち着け。状況を把握しないと。
「リンを抱きしめれば温かいかなって、考えてたの」
「そんなとこだと思ったわ」
「えへへ~」
……はぁ、コッチは心臓が飛び出そうなほど驚いたというのに、ミク姉さんは幸せそうですね。
私は頭が大混乱よ。自分自身が何を喋っているかも、分からないぐらいに。
だからかしら?
いつもの私なら聞きそうにないこと。そんなことを聞いてしまったわ。
「私は……温かいの?」
淡白な子供。可愛げがない。素直になりなさい。
何度も言われ、ずっと反発し続けてきた言葉。
私は可愛くなくても良い。歌で評価されるから。
私に子供らしさは必要ない。歌で評価されてしまうから。
でも、そんな私でもミク姉さんは抱きしめてくれる。
頭を撫でてくれて、可愛いって褒めてくれたわ。
「温かいよ。リンはとても温かい」
「そうですか。それならお好きにどうぞ」
私が温かい……。
そんなことを言ってくれるのは、ミク姉さんだけよ。
「あれ? いつもなら嫌がるのに、良いの?」
いつもの私なら、逃げ出している。
いつもの私なら、振り払っている。
でも、今日だけは特別だもの。
「クリスマスだから。私からミク姉さんへのプレゼントよ」
なんて安いプレゼントだろう?
形に残らなければ、ミク姉さんに得があるわけでもない。そんなもの。
「えへへ、ありがとう」
それなのに、アナタは笑ってくれる。
他のみんながくれるプレゼントとは比較にもならない、こんなもので喜んでくれるのよ。
ホント、抱きしめて貰って嬉しいのは私なのに。
「う~ん、でもプレゼントどうしよっか?」
「誰かに贈るのですか?」
悲しいけど、当然の話。
だって、クリスマスだから。ミク姉さんぐらいになれば、山のようにお返しが必要になるのでしょう。
人気が出るのも考えものね。
「えー、リンに贈る分だよ。時間がなくて、何も買ってないもんなぁ」
……私へ贈る分?
「どうしよっか。今からだと、お出かけも出来ないよね」
どうやら本気みたいね。
はぁ、私はもう十分だというのに――仕方わね、それがミク姉さんだもの。
でも、これ以上を望むわけにはいかないわ。
「このまま、一緒に飾り付けをしてくれますか?」
「え? そんなので良いの?」
アナタにだけは言われたくない?
私を抱きしめるだけで喜ぶような、そんな人が言いますか。
どこまでお人好しなのかしら
「ミク姉さんと一緒にいれば、楽しいから」
ミク姉さんのコトが好きだから。
そう素直に言えれば良いのに。今この場で告白するような、勇気は持ち合わせてないわ。
「そっか。うん、なら一緒に飾り付けしよ♪」
嬉しそうな笑顔。
この瞬間だけだとしても、私が笑顔にした。
この瞬間だけだとしても、私だけに笑顔を見せてくれた。
それだけで、私は幸せよ――
◇
コンサートが終わった会場。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返った闇。
そんな意味のない場所に、私は1人立っている。
「意味は、これから作る」
この胸の想いと一緒。
始めなければ意味はない。動き出さなければ意味はない。
だから、私は始めるの。
この何もない場所から、誰もいない空間から始める。
「私は、ここから始まる。私は、今から始めるわ!」
撤収準備を終えて、家族が私を探す前に。
明日からちょっとだけ、素直になる為に。
私の決意と気持ちを――
私の感謝と想いを――
私を導いてくれる歌に幸せを。
聖夜を過ごす恋人達に幸せを。
私の胸の想い、届きますか?
世界中の家族に幸せを。
世界中の人々に幸せを。
あなたの幸せを見つけて下さい。
――鏡音リンは初音ミクを愛しています
正直、私達には関係ないイベントだ。
恋人がいるわけでもなければ、パーティーに出かけるわけでもない。
いつものようにコンサートを開き、歌うだけ。
サンタさんにお願いするようなプレゼントもないし、いつもと変わらない日。
私的にはそう思っているんだけど、そうじゃない人もいるみたいね。
「ジングルベール、ジングルベール、鈴が鳴るー」
……はしゃぎ過ぎよ、ミク姉さん。
私の前では、緑髪の女性が楽しそうにしている。
右手には星、左手にはベル。どう考えても、クリスマスツリーの飾りつけだ。まったく、なんでここまで楽しめるのかしら?
世の恋人達はバタバタしているけど、私達には関係ないんだよ?
見せ付けるだけ見せ付けてくれちゃって、イライラするだけなんだから。
「はぁ……空しい」
どんなにひがんでも、恋人達は勝ち組。私は負け組み。ホント、嫌になるわ。
歌って踊れるアイドル、鏡音リンの名が泣くわね。
「リンー、どうしたの? 早くしないと間に合わなくなるよ?」
「あ……うん、分かったわよ」
誰もいない家。それを飾る為の準備。なんて無意味なのかしら。
ホント、それどころじゃないのに――のんきで良いわね。
◇
自覚したのはいつだったかしら?
私の胸に宿る小さな想い。
世間的に認められることはなく、家族にも認めてもらえないもの。
話に聞いたことはあったし、ソレも1つの形なのかなって思えてたわよ?
まさか、自分自身がこんなことになるなんて、想像してなかったし、想像出来るはずないわ。
鏡音リンは、初音ミクに恋をしました。
文書にすればコレだけ。たった1文で終わってしまう、そんな内容。
でも、現実的にはそんな終わり方はありえない。
ミク姉さんが可愛いのは認めるわよ?
ちょっと幼いところはあるけど、私とレンの面倒だって見てくれている。
歌だって上手だし、何よりも優しい。女の子らしくて、意地っ張りな私とは全然違う。
だけど、いや、それだからこそ認められなかった。
だって、普通は憧れるものでしょ?
女性として尊敬して、家族として愛情を持つのは分かるわよ?
抱きついてみたいとか、デートしてみたいとか、キスしたいとか……どう考えても、普通じゃないわ!
私だって結構モテるんだし、さっさと彼氏をつくっちゃえば良かったのよ。
そうよ。そうしていれば、ミク姉さんのコトなんて忘れられたかもしれないのに。
どうして、出来なかったのかしら?
高価な贈り物にも、歯の浮くような台詞にも、心が動かなかった。
ドキドキしたり、ハラハラしたりしたけど、ミク姉さんと一緒にいる時のとは違った。
上手く言えないけど、もっとこう素敵な感じなの。
ミク姉さんといる時のドキドキは、爆発しそうだったの。
ミク姉さんといる時のハラハラは、気絶してしまいそうなぐらい、幸せだったの。
手を繋いだり、抱きしめてもらったり、一緒にお風呂に入ったり。
接近すればする程苦しくて、切なかった。
離れれば離れる程寂しくて、悲しかった。
近づいてもダメ、離れてもダメ。相談なんて出来るわけないし、胸の中でグルグルと渦巻く想い。
否定したくて、認められなくて、散々悩んだ。
ホント、最悪な日々だったわ。
眠れないからイライラするし、お肌は荒れるし、音は外すし……ミク姉さんにも心配かけるし。
でも、どうしようもなくて、泣きそうだった。
どうして、私がこんな思いをしなきゃいけないの?
どうして、私が苦しまなきゃいけないのって。
どんなに悩んでもダメだった。どんなに苦しんでもダメだった。
その苦痛から逃れる方法はただ1つ。そんなのは知っていた。
それを認めれば、別の苦痛が待っている。そんなの分かっていたわよ。
でも、仕方ないじゃない。私の心は決まっていた――
◇
覚悟を決めたあの日。私の悩みはなくなった。
覚悟を決めたあの日。私の苦しみが始まった。
ミク姉さんへの恋心。叶うわけがない、そんな恋。
サンタさんはプレゼントをくれる。でも、願いを叶えてくれるわけじゃないわ。
サンタさんはプレゼントをくれる。でも、恋を叶えてくれるわけじゃないわ。
ミク姉さんとデートしてみたい。腕を組んで街を歩いて、ショッピングしてみたい。
ミク姉さんに抱きしめて欲しい。家族としてではなく、恋人としての熱い抱擁を……。
私だって、夢ぐらいみるわよ? 別に良いでしょ。
だからといって、それを誰かに願うのは筋違い。そんなのじゃ、意味ないわ。
他人任せにして実る恋なんて存在しない。いや、存在しちゃいけないわ。私が認めない。
少なくとも、この鏡音リンの恋は、自分で叶えないと意味ないの。
それがこの胸に宿ってしまった、困った感情に向き合うことだから。
それこそが、ミク姉さんへの誠実な想いだと、信じてるから。
「まぁ、伝えれるのなら、苦労しないんだけどね」
私の前、手を伸ばせば届く距離で彼女は笑っている。鮮やかになっていくツリーに、目を輝かせている。
その笑顔を、他の誰でもない私が贈りたい。
彼女が笑っていられる、そんな素敵な時間をプレゼントしたい。
その瞳で見つめて欲しい。
幼い子供のように透き通った瞳で、私を見つめて欲しい。
「リンー、手が止まってるよー。どうかしたの?」
「何でもないわよ」
純粋に私を心配してくれる。
そんなミク姉さんに、私の想いは伝えられない。
家族としての、姉妹としての、この関係が壊れてしまうのは嫌だ。
「もしかして、飾りつけ面白くない?」
「面白いわけないでしょ」
リビングに飾るには少し大きめのサイズ。
全ての枝を使っても飾りきれないだろう、装飾品。
まったく、誰がこんなに用意したの?
「そうなんだ……残念」
何故ソコで落胆するんですか?
ミク姉さんには、私が楽しそうに見えてたのかしら?
「今夜だってコンサートがあるんだから、最後の調整をするべきでしょ。私達はヴォーカロイドなのよ?」
ミク姉さんの沈んだ顔が見たくないから、言い訳をしてしまう。
ミク姉さんの悲しそうな顔が見たくないから、言い訳をしてしまう。
「生意気と言われるかもしれないけど、時間が勿体ないわ」
家族に注意され続けていること。
だからって、簡単に直るはずがないんだけどね。
「私は、そんなリンが大好きだけどなぁ」
「はぁ、ミク姉さんは気楽で良いですね」
私は私で、色々と悩んでいるんですよ。
歩み寄るのは堕落にならないか?
家族の温かさに溺れてしまって、逃げ出さないかって……。
「えー、そんなことないよ。私だって色々考えているんだよ?」
夕飯のおかずとか、明日着る服のコトでしょうね。
私が言っているのは、そんな簡単なコトではないのよ?
「参考までに聞くけど、何を考えてるの?」
「えへへ~、例えばこんな風にっと……えい♪」
ぽふっと唐突に回される腕。
意外に強く引き寄せる力。
って、ちょっと何するんですか!
「何してるんですか?」
混乱している頭を無理やり働かせ、跳ね回る心臓をなんとか押さえ込む。
冷静になれ。落ち着け。状況を把握しないと。
「リンを抱きしめれば温かいかなって、考えてたの」
「そんなとこだと思ったわ」
「えへへ~」
……はぁ、コッチは心臓が飛び出そうなほど驚いたというのに、ミク姉さんは幸せそうですね。
私は頭が大混乱よ。自分自身が何を喋っているかも、分からないぐらいに。
だからかしら?
いつもの私なら聞きそうにないこと。そんなことを聞いてしまったわ。
「私は……温かいの?」
淡白な子供。可愛げがない。素直になりなさい。
何度も言われ、ずっと反発し続けてきた言葉。
私は可愛くなくても良い。歌で評価されるから。
私に子供らしさは必要ない。歌で評価されてしまうから。
でも、そんな私でもミク姉さんは抱きしめてくれる。
頭を撫でてくれて、可愛いって褒めてくれたわ。
「温かいよ。リンはとても温かい」
「そうですか。それならお好きにどうぞ」
私が温かい……。
そんなことを言ってくれるのは、ミク姉さんだけよ。
「あれ? いつもなら嫌がるのに、良いの?」
いつもの私なら、逃げ出している。
いつもの私なら、振り払っている。
でも、今日だけは特別だもの。
「クリスマスだから。私からミク姉さんへのプレゼントよ」
なんて安いプレゼントだろう?
形に残らなければ、ミク姉さんに得があるわけでもない。そんなもの。
「えへへ、ありがとう」
それなのに、アナタは笑ってくれる。
他のみんながくれるプレゼントとは比較にもならない、こんなもので喜んでくれるのよ。
ホント、抱きしめて貰って嬉しいのは私なのに。
「う~ん、でもプレゼントどうしよっか?」
「誰かに贈るのですか?」
悲しいけど、当然の話。
だって、クリスマスだから。ミク姉さんぐらいになれば、山のようにお返しが必要になるのでしょう。
人気が出るのも考えものね。
「えー、リンに贈る分だよ。時間がなくて、何も買ってないもんなぁ」
……私へ贈る分?
「どうしよっか。今からだと、お出かけも出来ないよね」
どうやら本気みたいね。
はぁ、私はもう十分だというのに――仕方わね、それがミク姉さんだもの。
でも、これ以上を望むわけにはいかないわ。
「このまま、一緒に飾り付けをしてくれますか?」
「え? そんなので良いの?」
アナタにだけは言われたくない?
私を抱きしめるだけで喜ぶような、そんな人が言いますか。
どこまでお人好しなのかしら
「ミク姉さんと一緒にいれば、楽しいから」
ミク姉さんのコトが好きだから。
そう素直に言えれば良いのに。今この場で告白するような、勇気は持ち合わせてないわ。
「そっか。うん、なら一緒に飾り付けしよ♪」
嬉しそうな笑顔。
この瞬間だけだとしても、私が笑顔にした。
この瞬間だけだとしても、私だけに笑顔を見せてくれた。
それだけで、私は幸せよ――
◇
コンサートが終わった会場。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返った闇。
そんな意味のない場所に、私は1人立っている。
「意味は、これから作る」
この胸の想いと一緒。
始めなければ意味はない。動き出さなければ意味はない。
だから、私は始めるの。
この何もない場所から、誰もいない空間から始める。
「私は、ここから始まる。私は、今から始めるわ!」
撤収準備を終えて、家族が私を探す前に。
明日からちょっとだけ、素直になる為に。
私の決意と気持ちを――
私の感謝と想いを――
私を導いてくれる歌に幸せを。
聖夜を過ごす恋人達に幸せを。
私の胸の想い、届きますか?
世界中の家族に幸せを。
世界中の人々に幸せを。
あなたの幸せを見つけて下さい。
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