リンクフリーです。
ご報告頂けたら相互させて頂きます。
メールアドレス
yakisoba_pan◇hotmail.co.jp
◇を@に変えて下さい
~更新内容~
●web拍手から スバティア? バレンタインSSを移動(この記事)
●web拍手に ボカロ関係SS の予告みたいなの入れてみました
うん、内容というか次が書けるのかはすげー不安ですが、のんびりやっていきます ><)ノ
「よーし、がんばるぞー!」
2月14日、乙女の祭典バレンタインだ。
折角のチャンスだし、あたしもチョコレートを作ることにした。あたしだって女の子なんだもん、別に良いよね?
渡したい相手だってちゃんと居るし、普段は素直になってくれないけど、彼女なら受け取ってくれるはず。
「ティア……」
オレンジ色の髪を結い、颯爽と駆ける彼女が思い浮かぶ。いつもは険しい顔をしているけど、ふと気が緩んだ時に見せてくれる笑顔があたしは大好きだ。
「ふふ……驚かせてあげるから待っててね」
意気込みは十分。大作を作れると思っていた。
でも……。
「えっ? 何で何で? どーしてそうなるの?」
目の前では、ぐつぐつと煮立っているチョコレート。とろーりとろけるはずだったのに……。
「あれー? なんで固まらないのかな?」
型に流し込んでも固まらない。多く入れすぎたのかな?
「うぅ……マズイ」
市販のチョコレートを溶かして固めただけで、このありさまだ。
とてもじゃないけど、ティアにこんなの渡せないよ。
「これ、片付けるの嫌だなぁ」
とどめに、嵐が吹き荒れた後のように散乱する調理器具。なべは黒焦げで、冷蔵庫はチョコレート臭が漂っている。
「どーしよ?」
使用しているのは、フォアード用に割り当てられた共有のキッチン。それをこんなにも汚しちゃって……誰かに見つかったら怒られるよね?
それ以前に、普段食べてばかりのあたしが、料理なんかしてたら……怪しまれちゃうよね?
ギリギリまで秘密にしたいし、誰も来ないで欲しいなぁ。
「スバルさー・・・ってコレどうしたんですか?」
そんなあたしの祈りが通じることはなく、ピンク色の髪をした魔道士が着てしまった。笑顔が似合うその顔が、驚きの表情を浮かべている。
あちゃー、見つかっちゃったよ。
「えーとね……その、ほら、もうすぐアレがあるじゃん?」
「アレ……ですか?」
直接言うのが恥ずかしくて、ごまかしてみたけど……駄目みたいだ。これは伝わっていないや。
「えーとね、その、アレだよあれ! 女の子が男の子にチョコレートを贈るイベント」
やっぱり何か恥ずかしい。それに、男の子に贈るわけではないし……。
「あっ! バレンタインですか?」
「そうそう、それ。それの為にチョコレートを作ってたの」
ちゃんと準備して、美味しいのを作ってびっくりさせたかったんだけどなぁ。
今からじゃ間に合う自信ないよ。
「えーと、スバルさんてお菓子作りしたことありますか?」
やっぱり、そこを突っ込むよね……。あたしは作らないもんなぁ。
「クッキーぐらいなら作った事あるよ?」
生地をこねて、型に入れて、オーブンで焼く。たったこれだけだし、あたしでも出来た。
でも、ケーキとかシュークリームとかは難しそうだから作ったことがない。
「チョコレート、作ったことないんですか?」
「その……なんて言うか、あたし食べるの専門だから。さっぱり出来ないんだよ」
あははと乾いた笑いでごまかしてみたけど、情けないなぁ。
「私も作りますし、良かったら一緒にやりますか?」
「え、良いの? ホントに!」
「ええ、キッチンはここしかありませんし、もう時間もないですから一緒に作りませんか?」
キャロからのありがたい提案。あたしはそれに飛びついた。
◇
「スバルさん、湯せんは『お湯の熱で溶かす』のであって、『お湯で溶かす』わけではありません」
「あー、だから固まらなかったんだね」
「そんなことしたら美味しくなくなっちゃいますよ?」
間違っていた手順を1つずつ直しながら、あたし達はチョコレート作りに励む。
ティアだったら怒られているんだろうけど、キャロだとそんな心配もしなくて良い。それに、教わっているというよりも、一緒に作っているような雰囲気なので、とってもやりやすいや。
「あと、直接火にかけようとしないで下さい」
「え? なんで駄目なの?」
そんなことを考えながら作っていたあたしは、キャロの一言に驚いた。
火を使わないの!?
「沸騰させてどうするんですか?」
「えーと、火を良く通さないと、危なくない?」
チョコレートでお腹を壊したって聞いたことはない。でも、しっかりと火が通ってないと、危険じゃないかな?
「どっちにしても直接火にかけたりなんかしたら、焦げちゃいますよ?」
「弱火でやったら、沸騰させれたよ?」
火を使ってはいけない理由が分からないあたしは、さっきの手順を説明してみる。
「そんなところで無駄に努力しないで下さい! どっちにしても、火にかけちゃだめですよ……」
時間と共に驚きを増していた彼女は、遂に爆発した。
「あはは……ごめんね」
「もぅ、笑ってごまかしても駄目ですよ」
キャロの言葉にとげがまじってる。顔では笑っているけど、目が笑っていない。
ここはおとなしく言うことを聞かないと、後が怖いな。いつもは優しいからこそ、怒ったら手がつけられなくなりそうだし……。
「まぁ、気を取り直していきましょう。次はテンパリングをします」
「せんせー、テンパリングって何ですか?」
そんな反省をしていたあたしの耳に、聞きなれない言葉が入ってくる。
テンパリング? 一体何をするのか予想が付かないよ。
「テンパリングとは、温度を調整しながら混ぜる事によって、チョコレートの結晶を綺麗に並べる作業です」
「チョコレートに結晶なんてあるの!?」
「う~ん、私もフェイトさんに教わっただけなので詳しくは知りませんが……そんな感じで良かったと思います」
覚えているだけでも凄いと思うんだけどなぁ。
「とりあえず、テンパリングをすれば舌触りも良くなり、ちゃんとチョコレートとして固まるようになります」
「チョコレートとして固まる? じゃぁ、あれはチョコレートじゃないの?」
私が指さした先にあるのはさっきの残骸。なぜか白っぱくなって、美味しくなかったやつだ。
「あれは油が固まっただけで、美味しくないチョコレートとして固まってしまっているんですよ」
「へ~」
美味しくないチョコレートか……やっぱり、失敗しちゃってたんだね。
「さぁ、おしゃべりしてないで作りましょう。この作業で味が決まりますから、しっかりやらないと……」
「はーい、キャロ先生」
「……恥ずかしいから、先生は止めて下さい」
赤くなっちゃって可愛いな、もう! 抱きしめてあげたいけど、今はそれどころじゃないね。
ティアに美味しいチョコレートを食べてもらう為にも、頑張るぞー!
◇
「ふぅ……後は渡すだけですね」
「うん、手伝ってくれてありがとうね」
激闘を終え、互いの生還を祝うあたし達。その手には、きれいにラッピングしたチョコレートがのっている。
お菓子作りってこんなにも大変だったんだなぁ。
「では、お先に失礼します」
「よーし、あたしもティアを探して、渡さないと……」
丁度お昼だし、今なら誰にも見られずに渡せるかもしれない。そう判断したあたし達は、それぞれの相手へと移動を開始した。
あれ? そういえば、キャロは誰に渡すんだろう?
エリオの分は市販品を渡すって聞いたし……すぐには思いつかないなぁ。
『Received message』
通信? このタイミングで誰だろう?
「あ……スバル、ちょっと良い?」
「うん、問題ないよ」
何とか普段どおりに返せたけど、心臓がバクバクいってるよ。
これから渡す相手から連絡が来るなんて、もしかして?
「悪いんだけど、フォーメーションを見直したいから、訓練に付き合ってもらえない?」
「え? あっ、うん、良いよ。訓練ね、訓練」
ちぇ。あたしの気持ちが通じたのかなって、思ったのにな。がっかり。
「まぁ、良いわ。早めによろしくね」
「うん、ズグ行くよ」
でも、ティアと一緒に居られるなら、良いかな?
「それに、何かある度にあたしを呼んでくれるなんて、ティアも可愛いよね」
どうせ会う相手なんだし、訓練場で渡せば良い。
そう決めたあたしは、走り出した。
待っててね、ティア――