辿る道

伝えられない気持ちって、中々なものだと思います
ええ、想像ですが

　赤く染まっていく町並み。良く知っているはずの景色なのに、新しい発見があるのは何でかな？

　当たり前過ぎて忘れているもの、傍に居過ぎて分からなくなっているもの。そういったものこそ、幸せのはずなのに。どうして、あたし達は忘れてしまうのだろう？

　ラビリンスが現れて、プリキュアとして戦って。大切なことを教えてもらった気がする。

　あたし達が忘れてしまっているもの、当然として扱っているもの。それが、どれだけ大切なものか実感している。

　だからこそ、幸せを知らなかった、知る機会もなかった。そんな子のことが気になってしょうがない。

　同じ家で暮らして、１番近くにいるはずなのに、分からないことだらけ。分からないから、気になってしまう。

　彼女の笑顔は、嬉しさから来るものだろうか？　無理をして、あたし達に合わせてくれているだけじゃないか？

　彼女の言葉は、本当に言いたいことを喋っているのだろうか？　無理をしていないか、自分を誤魔化していないだろうか？

　彼女の浮かべる表情１つ１つが気になり、彼女の言葉を聞き漏らさないように気をつけ、寂しさを感じさせない為に、必要以上に抱きついた。

　始めは戸惑った様子だったけれど、あたしの行動は間違っていなかったんだと思う。せつなが笑うようになってくれて、心配しなくても大丈夫だと思えるようになってきて。ちょっとだけ寂しさを感じた瞬間、別の問題が表れてしまった。

「どうして、こうなっちゃったのかな」

　自分の心に渦巻く、強い気持ち。外に向かって弾けようとするそれを、留めておくのにも疲れてしまった。

　伝えてしまいたい。口に出して、言葉にして伝えてしまいたい。

「けど、今じゃないよ」

　あたしの気持ちを伝えるのは、今ではない。今伝えてしまうのは、あたしの望むところではない。

　いつかは分からないけれど、もう少し先。周りの人だけではなく、せつな自身の幸せも見つけて、笑顔になって。その時になって初めて、伝えられる。

　あたしの気持ち、あたしが伝えたい本当の気持ち。

　それにしても、あたしはいつ好きになったんだろう？　いつから、せつなのことを好きでいるのだろう？

　占い館で会った時からかな？　ミステリアスな雰囲気は素敵だったけれど、名前すら知らなかったんだよ？

　商店街で再会した時かな？　名前を聞いて、仲良くなりかけて。瞳の中に、寂しさを見つけた。

　イースとして対峙していた時は、どうかな？　イースとキュアピーチという敵対関係にはあったけれど、結構分かり合えたとは思うんだよね。争うだけではなく、お喋りだって出来たし。

　分からないよ。あたし、頭が悪いから覚えていないんだ。

　気付いたら、せつなに会えるのが嬉しかった。傍にいたいって、思うようになっていた。

　傍にいたくて、笑顔を見ていたくて、声を聞きたくて、気付けばせつなを探していた。どこにいるんだろうって、勝手に心配してたこともある。

　泣いていた時、涙を流していることに気付けてからは、とても悲しかった。あたしは、何も分かっていなかったんだって、とても悔しかった。

　後悔したくなかっただけなのに。後悔して欲しくなかっただけなのに。あたしはバカだから、上手くやることが出来なかったの。ごめんね。

　少しでも、笑って欲しかっただけなの。幸せを、知って欲しかった。

　そう思えた時に、もう止まれないんだって、突き進むしかないんだって分かったの。

　あたしは、せつなが気になってどうしようもなくて、寝ても起きても、せつなのことしか考えていない。

　あたしが幸せになる為には、せつなが必要なんだって、せつなが隣にいてくれなきゃダメなんだって、気付いてしまった。

　始めは、せつなの幸せだけを願えていたはずなのにね。せつなが幸せなら、それで良いって。そう言っていたはずなのに。あたし、自分で思っていた以上に、我侭みたい。

　ねぇ、２人で幸せになろうよ。

　あたしは、せつなの幸せの為に頑張りたい。せつなを笑顔にする為に、努力したい。

　だから、せつなはあたしの為に頑張って欲しいな――なんてね。

　伝えられないのに、こんなこと考えてどうするんだろ？

　伝えられるはずが無いのに、こんなこと考えてどうするつもりだったんだろう？

　

――片思いって、辛いんだね