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(・w・) やべーなオイ
製本しろよな
エイラーニャ テーマ:鍵 です
私の心にかかってしまっている鍵。本当の自分を隠して、閉じ込めておく為の鍵。
普段と違う自分が生まれたら、そこに閉じ込める。みんなに変な目で見られないように、私らしくある為に閉じ込める。
誰にも気付かれなくて良い。誰にも知られたくない。
本当の私なんて、誰も知らなくて良いの。
「なぁ、サーニャはどう思う?」
例え目の前で笑っている彼女でも、私を好きだと言ってくれるエイラでも、本当の私は見せられない。
嫌われたくないから、呆れられたくないから。本当のことは伝えられない。
隠して、誤魔化して、エイラのイメージする通りの私が答える。
「それで、良いと思うわ」
大丈夫、辛くはない。エイラの傍にいられるのなら、これくらいなんともない。
本当の私を見せるのなんて、もっと後で良い。エイラに嫌われないと確信出来てからで良いの。
それまでは、エイラが理想とする私のままでいれば良いの。きっと、エイラもそれを望むはずだから。
我侭な私なんて、私の醜い部分なんて、見えなくて良い。
エイラに嫌われるなんて、冷たい目で見られるのなんて耐えられないから。これで良い。
「なぁ、サーニャ」
「どうしたの、エイラ?」
可愛いままの私でいれば良い。のんびりして、おっとりしていて、常に眠そうで。
ちょっとだけ手のかかる子で、甘えるのが下手な。そんな私でいよう。
エイラが許してくれるまで、本当の私を受け止められるようになるまで。私は今のままでいよう。
「気のせいだったら良いんだけどさ。なんか、無理してないか?」
そう決めていたから。本当の私がエイラに出会えるのは、もっと先の事だと思っていたから。
この質問には、驚いたわ。
「……ううん、私は平気よ」
けど、驚いたとしても、返事をするのはいつもの私。本当の私ではないの。
危なかったけど、錠が外れることはないわ。まだ、外せないわ。
「そうなのか? 私の気のせいなのかな」
「エイラ、また寝不足?」
時々鋭い質問をしてくる彼女。私の中に踏み込もうとする彼女。
嫌ではないけれど、まだ早いわ。もう少し、時間が必要よ。
もっと深い中になってから、恋人になってからでないと、本当の私は見せられない。
「サーニャにいわれたからさ、最近は寝てるんだぞ? ほんとだぞ?」
自分の気持ちを伝えるのが下手。自分の好意を伝えるのが下手。
素直になれない彼女。
自分の気持ちを伝えるのが怖い。自分の好意を伝えるのが怖い。
素直になれるはずのない私。エイラにばかり求めている私。
本当に変わるべきは、私なのに。どうしてエイラに求めてしまうのかな。
「おかしいなぁ。さっきのサーニャは、私の知らないサーニャみたいだったんだけどなぁ」
エイラの知らない私。エイラに伝えられない私。
それを感じ取ってしまったのかしら?
「言っていることが分からないわ」
「なんていうか、こう時々あるんだ。サーニャと話しているはずなのに、サーニャの傍にいるはずなのに、私のサーニャがどこかにいるような、どこからか見つめているような気がするんだ」
だけど、感じられているのだとしても、伝えるわけにはいかない。
本当の私がエイラと出会うのは、もっと先。未来の話であって、現在ではないわ。
「それでさ、変な話なんだけど。その私の知らないサーニャは、とても寂しいそうなんだよ。悲しい気持ちを抱えていそうで、助けに行かなきゃーって感じるんだよな」
寂しそう? 悲しい気持ちを抱えている?
そうなの? 本当の私は、エイラと出会えていなくて悲しいの?
「――っ」
「ん? どうか、したのか?」
「な、なんでもないわ」
今のは危なかった。今、この場で考えてはいけない。
本当の私の気持ちを理解しようとしてはいけない。
そんな危険な事、エイラの前では出来ない。
「ごめんなさい。ちょっと用事を思い出したわ」
「もしかして引き止めちゃったか? ごめんな、サーニャ」
「ううん。私も楽しかったから。ありがとう、エイラ」
これ以上、この場にいられない。エイラの傍にいたら、甘え過ぎてしまいそうになる。
心にかかっている鍵が、外れてしまいそう。それには、まだ早いわ。
――ごめんなさい、もう少しだけ時間を