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約1ヶ月ぶりに、SSにて更新ですぉー
はい、そんな感じで伝家の宝刀こと【なのフェイ】にて更新
「零れ落ちた星」でございまーす
ちょいと、続き物になりそうです
どう転ぶかは、お楽しみにー
日本には虫の知らせということわざがある。
何か悪いことが置きそうな時、ふと嫌な予感がする。
それが見えないぐらい小さな虫によって起こされていると、昔の人は考えた。
そんなことわざだったと思う。
……私がそれを経験したのは今までに2回。
1度目は、リニスが消えてしまった時。
久しぶりに母さんと食事が出来る。その嬉しさに埋もれそうだったけど、胸を指していた小さな痛みは今でも思い出せる。
2度目は、母さんが次元の狭間に落ちてしまう前。
自分を失いそうな程の絶望。消えてしまいたくなるような、重たい気持ち。
そんな中でも確かに感じられた。
――そして、私は3度目を経験する。
◇
「なのは……」
私と彼女を隔てる、透明な壁。
魔法を使えば一撃で砕けてしまいそうに脆い壁。
でも、それは同時になのはの命を繋ぎとめている壁でもある。
『治療中』
赤く光る、小さな表示。
けして大きくないソレは、私に耐えられないほどの事実をつきつけている。
異世界での任務が終了し、期間中の魔導師達にアンノウンが襲い掛かった。
日頃の彼女であれば、怪我を負うことすらなかった。
元気な彼女であれば、負けるはずの無い相手だった。
それなのに、なのはは落ちた。
誰かの為にと、全力で戦い続けた彼女。
その直向な思いに応えたのは、残酷な現実だった。
「アタシを攻めないのか?」
呆然としている私に尋ねたのは、紅の騎士。
なのはと共に出向き、なのはが落ちた時に傍にいた彼女。
「そんなの意味ないよ。ヴィータも早く治療してもらわないと……」
「あいつがこんな状態なのに、行けるわけねーだろ」
ヴィータを攻めることは容易い。
何故、なのはを守ってくれなかったのか?
何故、なのはだけが落ちたのか?
「なのはが悲しむよ? 私のせいで、ヴィータちゃんが痛い思いをしているって」
でも、私には攻める資格なんてあるはずない。
なのはが必死に戦っている時、私はどこにいた?
なのはが辛い思いをしている時に、私は何をしていた?
「なのはなら大丈夫だから、ちゃんと治しておいで」
「……っち、わーったよ」
そんな私に、ヴィータを攻める権利があるとでも?
私がいれば、なのはは落ちなかったなんて戯言を言う権利があるとでも?
それに、意味があるとでも言うの?
……きっと、私のせいなんだ。
嫌な予感はしていたのに。注意深く考えていれば、分かっていたはずなのに。
私に関わった人は、不幸になってしまう。災難にみまわれるんだ。
リニスも、アルフも、母さんも大変な目にあった。
それなのに、なのはだけが無事ですむはずなかったんだよ。
「私は甘えてしまった」
彼女のくれた日常に甘え、浸ってしまった。
不幸から逃げ、過去から逃げるように浸ってしまった。
それが間違いだったんだ。
それぐらいで、私が振り撒く災厄は止まれなかったんだ。
だから、なのはが落ちたんだ。
私に優しくしてくれて。私の名前を呼んでくれて。私を心配してくれたから。
私に関わったから、不幸になった。
「離れなきゃ」
遂になのはまで手が伸びたんだ。
次はクロノかもしれない。リンディ母さんかもしれない。
はやてに不幸が訪れるかもしれない。アリサが泣いているかもしれない。
すずかが――
「離れなきゃ」
それは嫌だ。そんなの嫌だ。
みんな、何も悪いことはしていないのに。
私に関わっただけで、不幸になっていく。
私に関わったから、不幸になってしまう。
みんなが不幸になれば、なのはを悲しませてしまう。
「そんなこと、嫌だよ」
なのはは、笑っているべきだ。
なのはは、泣かなくてもいいんだ。
「大丈夫、ちゃんと分かってる」
私が離れれば良い。私が消えれば、その望みは叶うんだ。
ちょっと寂しいけど、大丈夫。
みんなが笑ってくれるなら、私は頑張るから。
「バルディッシュ、付き合ってくれる?」
「いえっさー」
本当なら1人で消えたいけど、それは難しい。
私1人では逃げることも、隠れることも難しいから。
……逃げる? うん、そう。逃げるんだ。
いつか来てしまう悲しみに怯えなくて良いように。私の大切な人達が、傷つかなくても良いように。
1人になって、隠れて。悲しみを打ち砕くんだ。
みんなの笑顔を守る為。
みんなとの思い出を守る為に。
私は、1人で戦わなきゃ。
「さようなら、なのは」
君といた日々は楽しかった。温かかった。
でも、それだけじゃ駄目なんだって、気付いたから。気付くことが出来たから。
私は、もう行くね。
もう会えないかもしれないけど、いつまでも友達でいてくれたら嬉しいな。
――騒然とする廊下を抜け、私は闇に飛び込んだ。