夢の続き

明日はユニゾンインです☆

はい、そんな前日で意外に忙しいのですが
まぁ、UPとは別の話ですよねー

はい、今回はきっちりあげますよ

すずアリ「夢の続き」です
前回のSSでアリサさんをいぢめましたからね
今回で幸せになってもらわないと、私がきついですｗ

最近、アリサちゃんの様子がおかしい。
人前で甘えてくれなかったり、恥ずかしがって腕を組ませてくれないのは前からだけど……。
２人きりの時ですら、逃げられるようになった。
ううん、違う。なんていうか、２人きりにならないように、避けられている感じがする。
何か理由があるのかな？
それとも、嫌われちゃったのかな？
私が気づいていないところで、アリサちゃんを傷つけてしまったのかな？
普通とは違う恋愛。それこそが私達の絆でもあり、弱点でもある。
強く結びついているからこそ、壊れる時はあっさりとなくなってしまう。
この関係が嫌になった時には、トラウマになりそうなぐらい、嫌悪されてしまう。
だけど、そんなリスクがあっても、アリサちゃんを愛しているから願い続けてきた。
どんな危険を孕んでいたとしても、恋人同士でありたかった。
私の気のせいであって欲しい。
私の勘違いであって欲しい。
そう、願い続けていたのに――
「ねぇ、すずか。アタシ達って別れないといけないのよね？」
「突然どうしちゃったの、アリサちゃん？」
彼女の口からは、無慈悲な言葉がつむがれた。
別れる？
それは、私達は恋人でなくなっちゃうってこと？
アリサちゃんと、恋人ではいられないってこと？
「今すぐってわけじゃないけど、ね。アタシ達はそれなりの家に生まれているのよ？　このまま、女の子同士の恋愛に浸っているわけにはいかないでしょ？」
「そんなの、関係ないよ。私達は私達の恋愛をすれば良いんだよ？」
口には出さなかった思い。だって、触れるのが怖かったから。
考えないようにしていた現実。だって、幸せを奪われるから。
私達の関係に、影を落とし続けてきた存在。それが今、このタイミングで襲い掛かってきた。
私だって、分かってはいるよ？
バニングス家と月村家。それなりの地位にある者として、果たすべき責任があることは。
私だって気づいてはいたよ？
女の子同士だと世間的に認めてもらえないし、もしかしたら信用がなくなってしまうかもしれない。
そうすれば、家や家族に迷惑をかけてしまうことなんて分かっている。
そんなのこと、分かってるよ。
でも、最後に辛い現実が待っていたとしても、それでもアリサちゃんを愛していたいのに。
「アタシ達の恋愛か。昔はソレで良かったのよね。パパだって認めてくれたし、アタシだって疑問に思ったことなんてなかったわ」
デビット・バニングスさん。私達が恋人になった時、祝福してくれた人。
反対されちゃうかなって心配していたんだけど、意外な程にあっさりと認めてくれたんだよね。
……もしかして、何か言われちゃったのかな？
「そんな顔しなくて良いわよ。別にパパに別れなさいとか、そんなことは言われていないから」
「そうなんだ。でも、それなら、どうして？」
バニングス家としての意見ではない。そうだとしたら、なぜこんな話をするかな？
幸せな恋人同士のつもりだったけど、私が嫌いになっちゃったのかなぁ。
「その……さっき話したことは事実だし、将来的にぶつかる障害よ」
将来的にぶつかる障害。私達の前に立ちはだかる壁。
でも、それを乗り越えられないって、決まったわけじゃないよ？
私達２人でなら、乗り超えることだって出来るはずだよ？
「はぁ、すずかに嘘をついてもしかたないわね。しょーがない、正直なところを言うわ」
嘘だったんだ。それとも、建前なのかな？
アリサちゃんは、私を傷つけないようにしてくれたんだね。
家を理由に、環境を理由に……これは、本格的に嫌われちゃったのかな？
アリサちゃんの心が戻ってくるように、努力はするけど。
もし、他に好きな人がいるなら祝福してあげないと――
「アタシだと、すずかの幸せを奪っちゃうのよ」
「アリサちゃんが私の幸せを奪う？」
どう話せば良いのか、悩んでいた私は置いてきぼり。
別れ話をされているはずなのに、なんだか優しいよ？
「良い？　アタシ達にはそれなりの立場がある以上、結婚する必要性があるわ。より正確には、結婚する義務があるわ」
家を存続させる大切さ。地位を守る大切さ。
それは家族を守り、私達を支えてくれている人達を守ることに繋がる。
分からないとは言わないし、言える立場ではない。
「当然、今の日本だと女の子同士の結婚は認められていないから、必然的にアタシ達は別れなくてはいけないわ」
「そ、それは分かるけど。何か、別の方法があるはずだよ」
結婚。確かに憧れを抱いていないと言えば、嘘になる。
ドレスを着て、みんなに祝福される。愛しい人と苦楽を共に出来る、幸せの証。
だけど、私の横はアリサちゃんの指定席。誰か別の人と結婚するなんて、考えたくもない。
「……ずっと考えていて、その方法とやらが見つからないから困っているんだけどね」
ずっと考えていてくれた。解決策を考えてくれていた。
それは、私はアリサちゃんを愛して良いってことだよね？
まだ頑張っても良いんだよね？
「企業としてのやり方なら、いくつか方法はあるのよ？」
「なら、私達が別れる必要はないはずだよ」
彼女が見つけている光は、多分私が掴んでいるものと一緒。
提携とか、共同出資とか。逆に力を伸ばすことだって出来る。
「でもね、そのどれを取っても１つだけ欠けてしまうものがあるの」
欠けるもの？
アリサちゃんと私が揃っているのに、欠けるものなんてあるの？
「分からないって顔しているわね。まぁ、そんなところも可愛いんだけど、今回はそうも言ってられないわ」
うぅぅ……アリサちゃんに比べればダメかもしれないけど、傷つくよ。
私、これでも頑張っているんだけどな。
「ねぇ、すずか。子供が欲しくなった時、どうする？」
「え……子供？」
子供ってやっぱり、赤ちゃんのことだよね。
うん、アリサちゃんと私の赤ちゃんなら、きっと可愛い子が――
「産めないのよ。アタシ達は女の子同士だから、産まれないのよ」
女の子同士で、子供を宿すことは出来ない。
努力しても、願っても、それだけは無理なのかもしれない。
「アタシは別に良いの。すずかさえいてくれれば」
夫婦にはなれても、親子にはなれない。子供を産めないから、当然だよね。
アリサちゃんが子供が欲しいっていうなら、考えなきゃいけないけど。
私さえいれば良い、そう言ってくれるなら悩むことはない。
「でもね、アタシの我侭ですずかの幸せを奪うのは嫌なの」
アリサちゃんは私のお姫様。世界で１人だけ、私だけのお姫様。
それなのに、どうして遠慮しちゃうのかな？
アリサちゃんの我侭を聞くのだって、私の幸せの１つなのに。
何度言えば、分かってもらえるのかな？
「アタシはね、すずかに普通以上の幸せな生活を、愛情をあげられるって自信があったの」
私はもう十分幸せなのに、これ以上幸せになれって言うのかな？
それはちょっと難しいよ。
「世界で１番、幸せになって欲しいって。そう、願っているの」
アリサちゃんの傍にいること、傍にいられることが幸せなのに。
他の方法だと、私は幸せになれないんだよ。
「だから、普通に恋して、普通に結婚していれば手に入った幸せ。ソレを奪うなんて、認められないわ。アタシの我侭で、すずかが不幸になるのは嫌なのよ」
不幸になんてならない。不幸になんて、なれるはずがない。
普通の幸せだっていらない。普通以上の幸せなんていらない。
私はただ、アリサちゃんと一緒の幸せが欲しいよ。
「すずかが笑ってくれているなら、たとえ隣にアタシがいなかったとしても、良いのかなって」
笑えない。泣けない。怒れない。悲しむことだって、出来ない。
アリサちゃんの隣にいられない私は、空っぽになっちゃうから。
「大好きな人の幸せこそが、アタシの幸せなんじゃないかなって、そう思ったの」
アリサちゃんの幸せの為になら、笑顔で別れるよ。
アリサちゃんが笑うのに邪魔だって言うなら、悲しくても別れるよ。
「ねぇ……アタシ達、別れましょ」
でも、アリサちゃんが幸せになれないなら、別れてあげない。
アリサちゃんの決意で、アリサちゃんが傷つくなら、私は――


◇


「ありがとう、アリサちゃん。そこまで、私を想ってくれているんだね」
幸せになって欲しい。笑っていて欲しい。例え、その幸せに自分自身がいなくとも……。
そんなふうに考えていたのは、私だけかなって思っていたけど。違ったんだね。
私は、アリサちゃんにこんなにも愛してもらえているんだね。
「当たり前でしょ？　すずかを愛しているんだもの、幸せになって欲しいのよ」
いつもなら恥ずかしがって言ってくれないのに、こんな時だけズルいよ。
大好きって言われても、愛してるって叫ばれても、アリサちゃんが悲しんでいたら意味がないよ。
好きって気持ちは、笑顔になる為にあるんだよ？
「すずかに幸せになって欲しい。今以上に、幸せになって欲しい。だから、別れるの」
私達は似た者同士。自分自身の幸せよりも、愛する人の幸せを願っている。
愛する人の幸せで、自分自身を幸せに出来る優しい心を持っている。
だからこそ、ちょっとだけ弱気になっちゃうんだよね。
「嫌だよ。私はアリサちゃんと別れたりしないよ」
でも、大丈夫。私は譲らないから。
アリサちゃんみたいに、諦めがよくないから。
「……っ、この分からずや！　どうしてなの？　アタシの言ってることが分からないの？」
私の肩を掴み、噛み付きそうな勢いで迫ってくるアリサちゃん。
いつもなら、目を逸らしている。
今までの私なら、ごめんねって謝っている。
でも、今からの私は、それじゃ駄目なんだ。
伝えるんだ。真っ直ぐに目を見つめて。
言葉にするんだ。この胸の、熱い想いを。
「私は、アリサちゃんが好きだから。アリサちゃんを愛しているから。そんなの嫌」
私は逃げない。私は退かない。
私の愛を受け止めてくれる、大好きな人が泣いているから。
私の愛を受け入れてくれた、大好きな人が泣いているから。
私はアリサちゃんのパートナー。
アリサちゃんが間違えてしまっている時には、私は譲れないんだよ。
「アリサちゃん。それじゃ、駄目なんだよ。そんなやり方では、幸せになれないよ」
彼女がどんな悩みを抱えているのか、私には分かる。
彼女がどれだけ苦しんだのか、私には分かる。
痛い程、伝わってくるよ。
「私の心のど真ん中にはね、我侭なお姫様がいるの。いつも私を振り回して、幸せを振りまいてくれるお姫様」
どんな時でも彼女を見ていたのに、どうして気付けないの？
どんな時でも彼女のことを考えていたのに、どうして気付けなかったのかな？
彼女の心が泣いている。彼女の心は傷付いている。
「そのお姫様がいてくれることが、幸せなの。そのお姫様が笑ってくれれば、私は幸せなの」
沢山、泣いたんだよね？
ごめんね、気付いてあげられなくて。
寂しい思いをさせちゃったね。
ごめんね、あてにならない私で。
でも、これだけは知っていて欲しい。
私は、貴女を愛しています。
「幸せになる方法は１つじゃないよ？　幸せの形だって、１つじゃないよ？」
結婚出来れば幸せ。
素敵だけど、絶対ではないよ。
子供を産めれば幸せ。
素敵だけど、絶対ではないよ。
「でもね、幸せになう為には、外せないことがあるんだよ」
小さな幸せ、大きな幸せ。
その時だけの幸せ、永遠に続く幸せ。
どの幸せを選んでも、絶対が１つだけある。
「私はね、アリサちゃんの傍にいるのが幸せ。アリサちゃんの隣で、笑っていられるのが幸せ。アリサちゃんと一緒にいられるのが幸せなの」
今の幸せは永遠には続かない。
山があって、谷があって、伸びたり、縮んだりしながら成長していく。
「ね？　私が幸せになるには、アリサちゃんが必要なの」
ときには小さくなることもある。
大丈夫、静かに見守るよ。
ときには大きくなり過ぎるかもしれない。
でも、私とアリサちゃんの幸せだもの。当然だよ。
「辛い未来が嫌なら、私が壊してあげる。アリサちゃんを悲しませる、全てのものから私が守ってあげる」
王子様とお姫様。
そんな綺麗な関係が終わってしまう、２度目の誓い。
「結婚出来なくても良いよ。赤ちゃんを産めなくても良いよ」
道標がなく、先の見えない茨道。
だから、どうしたの？
私とアリサちゃんを引き裂くには足りないよ。
「私は我侭なの」
我侭なアリサちゃんと、我侭なすずかが恋してるんだもん。
簡単には負けてあげないよ？
それぐらいのことで、負けるわけにはいかないよ。
「私はアリサちゃんが傍にいないのは、嫌なの」
非難されたら、見返してあげる。
中傷を受けたら、取り消させるよ。
私達の幸せは私達のもの。他の誰にも傷つけさせない。
「アタシだって嫌よ、すずかの傍にいたいわよ。でも……」
「もう、泣かないでアリサちゃん。私は、私とアリサちゃんの幸せの為に生きていたいの。アリサちゃんと幸せになる為に、努力したいの」
幸せになってみせる。
そして、彼女も幸せにしてみせる。
「だから、お願い。傍にいて。ずっと、ずっと私の傍にいて」
「すずか……」
「私は、アリサちゃんが傍で笑っていてくれることが幸せなんだから」
もぅ、勇気を出して告白したのに、どうして泣いているのかな？


◇


「実はね、私も同じことを考えていたの」
「そう……そうだったんだ」
私の腕に収まってしまう小さな体。
それをしっかりと抱きしめながら、囁く。
「アリサちゃんの幸せの為になら、私がいなくなる方が良いのかなって。別れちゃった方が、アリサちゃんは幸せになれるのかなって」
辛かったよ。身を引き裂かれそうだった。
大好きな人の未来に、私は必要ない。
辛かったよ。気が狂うかと思ったもん。
大好きな人の幸せを、私が邪魔しているなんて。
「でもね、今日アリサちゃんのお話を聞いて、その考え方を止めることにしたの」
アリサちゃんは黙ったまま、私の言葉を待ってくれている。
その顔が可愛らしくて、少し笑ってしまいそうになる。
「こんなに愛してくれているんだから。私だけのお姫様を手放すなんて、出来るわけないよ」
「滅茶苦茶だわ」
ぷくっと膨らんでいるほっぺた。その顔が物語っている。
どうして、もっと早く止めてくれなかったのかって。
理由は簡単なんだけど、怒られるから教えてあげない。
「滅茶苦茶でも良いの。私だって女の子だもん。たまには、我侭を言うよ」
私の我侭で、この幸せを手放さなくて良いなら、いくらでもね……。
「特に、アリサちゃんとのことなんだもん。譲るわけにはいかないよ」
「はぁ……どっちがお姫様なんだか、分からなくなりそうね」
私達は、２人共女の子してる。
良い意味でも、悪い意味でも、ね。
「大丈夫、安心して。私のお姫様はアリサちゃんだけだから」
「どこをどう聞けば、安心できるのかしら？」
クスリと笑って目を閉じる。
それは彼女がキスをねだる時の合図。

人の思いは不確かで、あやふやなもの。
ちょっと押せば崩れるし、いつの間にか消えてしまう。
でも、だからこそ尊く、大切な想いとなれる。
強固な絆となった想いは、２度と離れることはない。

――私達の夢は現実になる