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いや、イベント的には詰めないとまずいんですよね
けど、迷走し始めたのでちょっと寄り道
すずアリ テーマ;アクセサリー
「ねぇ、すずか」
「どうかしたの、アリサちゃん? もしかして、疲れちゃった?」
久しぶりにのんびり出来る休日。ついでに言えば、久しぶりにすずかに会えた日でもある今日。
アタシ達はいつものように街を歩いていた。
デートの内容としては少し落ち着いていて、買い物の後でお茶を飲むコース。勿論、うちに帰って飲む紅茶も、すずかの家で飲む紅茶も美味しいことには変わりはないんだけどね。もう少しこう、派手さを求めたくなる時もある。
「違うわよ。ちょっと気になったことがあるだけ」
ただ、今アタシの頭の中には、紅茶のことを考えられるような余裕はない。
このデートが始まる前からすずかに聞いてみたかったこと。確認したかったことを聞かなければならない。その質問の内容で頭の中はいっぱいだった。
「この前雑誌でね、恋人特集みたいなのをしていたの」
「……それって、私達の年齢で買うには結構勇気のいる雑誌だよね?」
「そうだけど。そんなのは、どうでも良いのよ」
むぅ、結構鋭いところをついてくるわね。
確かに小学生であるアタシが買うにはちょっと、いや随分と勇気がいる。恋人がいて、多少ませているとはいえ、アタシも結構恥ずかしかった。
ただ、今はそんなことはどうでも良い。問題となるのは、その特集だ。
「その記事にね、女にとって彼氏はアクセサリーのような物って。そんなことが書いてあったの」
女にとって、良い男を連れているのは一種のステータスと成り得る。その存在としては、アクセサリーとしての意味合いも持つ。
確か、そんな感じのないようだったと思う。
「その時は、バカなこと書いてるなーって思っただけなんだけどね」
お互いに愛し合っているのなら、アクセサリーなんて軽い表現は使えないはずだ。
そんなどこにでもありそうな物と一緒にしないで欲しい。2人が出会えた、その奇跡自体がチープになってしまう。
アタシとすずかの場合、普通のカップルよりも困難が多い分、今がどれだけの偶然の上に立っているのか痛感しているから。
「アタシ達の関係の場合、どうなるのかなーって。そんな疑問が沸いちゃったのよ」
ただ、今現在は順調であり、周りの人も受け入れてくれた。
「それでね。その、聞きにくいことなんだけど……すずかにとって、アタシはアクセサリーみたいなものなのかなって。そこんとこどうなのかなって、思って」
だからこそ、心配になってしまう。
壁を越えようと奮闘したり、周りに誤解のないように伝えようとしていた頃。アタシは何も心配していなかった。
2人でこの状況を打破し、必ず認めさせてやるんだってやる気に満ちていた。すずかはアタシの傍にいてくれるって、疑いもしなかった。
「最近忙しくて、あんまり会えてなかったし。もしかしたら、すずかも同じ気持ちなのかなって」
だけど、アタシ達の間に平穏が訪れて随分と経つし。何よりも、ここ最近アタシが連絡を取れない状況ですずかには寂しい思いをさせてしまったから。
「もし良かったら、教えて欲しいなーと」
「アリサちゃんにしては、大胆なことを聞くね」
うっ……それはそうなんだけどね。ただ、聞かずにはいられなかったのよ。
「べ、別にいいでしょ。たまには、アタシだって頑張るのよ」
すずかは我慢しようとするでしょ? 寂しくても、辛くても。全部自分で抱えようとするでしょ?
だから、ちょっとくらい強引でも、無理矢理だったとしても、やるしかないじゃない。
「なら、その頑張りに応じて答えないとね」
「ホント? 別に、その、遠慮しなくていいからね。悪いところは直していくから。ちょっとだけ待ってくれれば、どうにかするから。正直に話して頂戴」
まぁ、アタシが頑張れる理由はただ1つ。
すずかが必ず受け止めてくれるって、都合良く信じているから。甘えられる部分は、しっかり甘えようとしているからなのよね。
「うん、なら最後まできちんと聞いてね」
アタシは早とちりをしがちだから、最後まで聞かずに動き出してしまった過去がある。飛び出してしまい、失敗したことがある。
ふふ、流石はすずか。アタシの扱い、上手いじゃない。
◇
「私にとってのアリサちゃんは、確かにアクセサリーみたいな一面もあるよ」
そして、さっきの前置きがある時、ずすかからは結構遠慮のない意見が飛び出してくる。
ふわふわしている様子はそのままで、言葉にだけ刃物がぎっちりの仕込まれる。
「やっぱりそうなんだ」
ただ、原因はアタシにあるから。寂しい思い、させちゃったからね。
ここ3日ほどは、折り返しの電話すら入れれてないし。いくら忙しかったとはいえ、メールの1本も送らなかったのはアタシが悪い。
「けど、それはアリサちゃんがいてこそ、私が輝けるからなんだよ」
そう告げるすずかの表情は穏やかで、アタシが感じでいるほど深刻な事態でないと、雰囲気で伝えてくれる。
安心して良いと、そう教えてくれている。
「それに、私自身もアリサちゃんにとって、アクセサリーみたいな存在でいたいな」
柔らかくて、温かくて、アタシの大好きなすずかであることを、言葉以外でも伝えようとしてくれる。
けど、アクセサリーでいたいって、普通はそんなこと言わないわよ。いつも驚かされているけれど、今回はとびきりね。
「軽過ぎる、代わりのきく物になるつもりはないけどね。重過ぎない、それでいて1番傍においておける大切なもの。そこを目指そうと思うの」
それでいて、アタシに気持ちをストレートにぶつけてくるのは、毎回同じ。
ほんと、どれだけ愛されているのか。どれだけ、すずかの気持ちを奪っているのか。毎回教えられているはずなのに値。
「表現の問題だと思うけど、そんなふうに考えられたらアクセサリーって呼ばれるのも悪くないでしょ? どうかな、アリサちゃん?」
「綺麗ごとだわって笑い飛ばしたいところだけど。すずかの場合、ソレを本気で言っているんでしょ?」
「勿論だよ。私はアリサちゃんを愛することにかけては、世界一なんだから」
あー、もう、ホントこの子は何を考えているのかしら?
アタシには理解できないようなレベルで、アタシへの愛を語りだす。
それを理解できるよう努力すべきか、それとも笑って受けているだけでいいのか。ちょっと判断し辛いわね。
「アタシ達は2共女の子だし、アクセサリーって表現は悪くても、綺麗な物だって意味で言われるなら納得できるかもね」
「でしょ?」
ただ、何の努力もしないのと、受けるだけは全然違う。
アタシはアタシなりの努力をして、その上ですずと向き合えば良い。
その上で分からない時は……まぁ、その時になって考えるわ。
「常に持ち続けたい、肌身離さず実につけたい。そんな大切なアクセサリーになれると思うの」
それは、アタシへの当て付けかしら?
常に傍にいたいのに、離れたくないのに、連絡さえ入れられなかったアタシへの不満?
「ね? だから、私もアリサちゃんの傍にずっとついていたいな」
「……珍しいわね。すずかがおねだりするなんて」
「うふふ、最近はちょっと寂しかったんだよ? いくら約束があって、アリサちゃんに会えることを疑っていなくても。やっぱり、会えなかったのは寂しいな」
格好をつける前に、強がる前に。素直に甘えてくれば良いのよ?
アタシはすずかに助けてもらっているのだから、これくらいはお安い御用よ。
「ごめんなさい。次からは、せめて連絡を入れるようにするわ」
「うん。忙しいところごめんね」
「すずかが謝ることじゃないでしょ?」
謝る癖。抱え込む癖。格好良くあろうとする癖。
ほんと、何も変わらないんだから。少しくらい、素直になりなさい。
――さて、たまにはお姫様を交代しましょうか?