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なのはとGAのクロス物w
初めてやったのでボロボロですがお暇でしたらどうぞ~
JS事件後、機動六課の一員として、主はやての守護騎士としてそれなりに忙しい日々を送っていたそんなある日。聖王教会の帰りにふらりと立ち寄った店でその女性と出会った。日頃は訪れる事も無く、また意識する事すらないであろう小さな屋台。
寒さをしのぐ為に飲酒をして帰る者もいるようだが、生憎私にはそのような趣味は無い。
ただ、夜闇に浮かぶ赤い光が温かく、イスに腰掛けている女性に興味を持ったからかもしれない。時間も遅く人気の無いこの場所では不貞な輩が出ないとも限らない。だからちょっと心配になったというのもあるのかも、しれなかった・・・。
「らっしゃい、何にします?」
暖簾をくぐって座ろうとした私に店主が声を掛けてきた。
む・・・入ってみたのは良いが、何を頼んでいいのか分からない。目の前にはおでんが所狭しとならんで、湯気を立てているがどうしたものか。
「そうですね・・・」
どれにしようかと悩んでいたところ隣の女性が目に入った。
赤めのショートカットにかなり胸元の開いた大胆な服装、そして目を引いたのは珍しいモノクルだった。
見た目で他人を判断するのは良くないと主はやてに教わってはいるが、どう見ても一般人には見えなかった。
「ん?どうかしたのかい?」
チラリと横目で見たつもりだったが、気づかれてしまったようだ。どうやら見た目通りで間違いないようだ。
「いえ・・・何を食べようかと悩んだもので、参考にさせてもらおうかと・・・」
当たり障りのない会話をしつつ、彼女の様子を探る。食べる物など何でも良いのだが、この女性の事が気になって仕方ない。
「あぁ・・・なら、チクワと大根を勧めるよ。このオヤジが作る奴は絶品だよ」
「お、フォルテさんに褒めて貰えるとは光栄だね。だが、他のヤツだって負けねえぐらい旨いぜ?」
こちらの非礼を指摘する事も無く、親切に教えてくれた。名前で呼ばれているところをみると店主とは顔馴染みなのだろう。
「そうかい?なら私ももう少し頂くとするかね」
「毎度っ。ささ、そっちの姉さんも好きなの頼んどくれよ。うちのはどれでも上手いぜ」
人の話を聞き、それを返すタイミングと言葉を心得ている。管理局の局員には見えないが、どこかの世界で軍にでも入っているのだろうか?少し、話を聞いてみるのが良いだろう。
何にしろ、注文をしなければ店主に怪しまれてしまう。郷に入れば郷に従えということわざもある事だ。ここは彼女に勧められた品を選んでおこう。
「では・・・チクワと大根をお願いします」
私の横で嬉しそうにおでんを食べている彼女。少し、話をさせてもらおうか――――
◇
「あたしはこの世界の住人じゃないんだよ。トランスバール帝国ってところの出でね、軍に所属してるのさ」
「そうですか・・・」
おでんを食べ始めて暫くした頃、彼女のほうから話しかけてきた。
しかし、軍属の者ならばあの態度も肯ける。おそらくそれなりの地位にあり、部下を従えているのだろう。
「しかし、時空管理局の人間がココに来るのは珍しいね。本局だっけ?あそこからはそれなりに距離があるはずだけど・・・」
「いえ、私は近くにある機動六課という部隊に出向していて、今は聖王教会の帰りです」
シスターシャッハとの模擬戦は、テスタロッサとはまた違った面白さがある。射撃や遠距離攻撃を廃し、高速移動と手数で押してくる彼女は、打ち合っていて楽しいと感じる。
「ふーん、あんたも中々大変そうだね。・・・ん?あぁ、聞き覚えがあると思ったらこの前、ゆりかごとか言う戦艦を落とした部隊か」
「最終的に破壊したのは次元航行部隊ですが・・・」
噂となって飛び交えば、尾ひれが付き話が大きくなりすぎるものだ。
「それを差し引いても凄い活躍だったそうじゃないか・・・あっはは、こりゃとんでもない人に会っちまったもんだね」
「はぁ・・・」
酒が入ってる事もあり、彼女のテンションは上がっているようだ。さっきから笑い続けており、話が通じているか分からない。
「という事は・・・地上で頑張ったのはあんたの部下かい?いや~、おちびさんながら立派な事を言ってのけるんで感心したよ」
「ありがとうございます。本人達も喜ぶでしょう」
見ていたのだろうか?地上の様子はTV放映もされていたはずだし、別段珍しい事ではないが、着目している点がやはり普通とは違う。
まぁ、保護責任者としてあの2人を見守ってきたのは、テスタロッサだ。真っ直ぐで素直に育っていくのは当然とも言えるだろう。
「いや~、うちにも新人が入ったんだけどさ、中々うまくいかなくてね。人を育てる難しさを痛感しているところなんだ」
なるほど、部隊を率いている者としては新人への指導も仕事のうちだ。何かを教える事は、学ぶ事の何倍も難しい。これは上に立った者にしかわからない苦労だな。
しかしながら、その事を笑いながら話せる彼女は育てる事を楽しんでいるのだろう。
「まぁ、うちは元々が白き月と儀礼艦エルシオールの護衛だったからね。元々のメンバーも戸惑っているところだし、仕方が無い部分もあるんだけどね・・・」
どこか懐かしんでいるような、遠い目をして語る彼女。
しかし、白き月と儀礼艦エルシオールか・・・聞いたことが無いな。彼女達の世界特有の物だろうか?
「・・・あぁ、そっかコッチの人間に言っても通じる訳ないか。まぁ、私達の護衛対象だと思ってくれればいいさ。それを紋章機って呼ばれるもので護衛するのが本来の仕事さ。で、この紋章機っていうのがロストテクノロジー、コッチでいうところのロストロギアにあたるらしいから、データと調査書を提出してるって事さ」
成程、ロストロギアが絡んでいるのか。・・・ん?
「らしいとは、どういう事でしょう?」
ロストロギアは登録し、危険なものは管理局で直接管理する必要性がある。また、何らかの理由でその世界から動かせない場合は、部隊を派遣し調査するのが普通だ。それなのに調査を現地世界の人間に任せ、更にらしいとはやり方が管理局らしくないな。
「どう言って良いか分からないんだが、ロストロギアってのは魔法が関係する物なんだろ?」
「過去に滅んだ超高度文明から流出する、特に発達した技術や魔法の総称ですから、魔法が絡んでいる事が多いです」
「だからなんだろうね。あたしに指示をだしてきたお偉方も困ってたんだよ。本来魔法文化が低く、質量兵器を用いている世界では稀な事だって・・・」
ほう。では、彼女は質量兵器が使われている世界の人間なのか・・・。古代ベルカでは珍しくは無かった質量兵器も、危険性とその破壊力からこの時代では使われていない。どこか別の世界に移動しない限り、お目にかかる事は無いだろう。
だが、その世界の文明がどうであろうとロストロギアを放置するはずは無いのだが・・・。
「それでも管理局が現地世界の人間に管理をさせているのは不思議です。通常ならば部隊を派遣し、危険性があれば本局で管理するはずですが」
「まぁ・・・ロストテクノロジーはそう簡単に扱えるもんじゃないんだよ。専門の知識を持った者が何人も揃ってやっと一部の機能を稼動させているのが現状でね。中でも紋章機はH.A.L.O.システムってのが積んであってね、適合者しか動かす事は出来ないんだ」
「そうですか」
どうやらレリックやジュエルシードなどとは違い起動自体が難しいようだ。成程、それならば管理局も危険性が低いと踏んだのかもしれない。
「紋章機自体の数が少ない、パイロットとして適合するものは更に少ない。それに私達の世界では信仰の対象になってるから、管理運営は私達がやって、管理局に定期報告をしている状況さ」
報告書だけというのはいかがなものかと思うが、いつでも人手不足な管理局だ。現地世界の人間に任せられるとなれば報告書だけにとどめる事もあるかもしれない。
・・・上の動向はうかがい知れない部分もある。気にするだけ無駄だろう。
「まぁ、私は管理局の帰りに屋台めぐりが出来るからいいけどね。あっ、オヤジそのコンニャクとがんもをおくれ」
「へい、毎度」
前向きと捕らえていいのかどうか迷う発言だが、管理局のやり方自体に不満は持っていないようだ。それに彼女とその部下なら、力を平和の為に使ってくれるだろう。
◇
「はぁ、話し相手になってくれて有難うね。おかげでいつも以上に楽しめたよ」
「いえ、こちらこそ興味深い話をありがとうございました」
勘定をすませ、2人揃って暖簾をくぐる。
随分と遅くなってしまったようだ。この時間帯なら私の家族は全員眠っている頃だろう。
隣を見ると彼女も眠たそうにあくびをしている。
「ふぁぁ・・・。んっ、よし、それじゃアタシは自分の世界に帰るよ」
「えぇ、お疲れ様でした」
トランスポート経由とはいえ、慣れない世界に留まっている事は中々疲れる。それは彼女でも例外ではないだろう。
「お互い大変みたいだけどさ、花は必ず開くからゆっくりまってみなよ。じゃあな、シグナム副隊長さん。縁があればまた会おうじゃないか」
「っ・・・」
名乗った覚えは無いがいつの間に?それとも始めから気付いていたのか?
手を振りながら去っていく彼女の後姿を睨み付け、暫く佇んでいた。
火薬の匂いをさせた彼女と、再び巡りあう時はあるのだろうか――――