君の手をとって・・・２

ミスは一つとして許されず、私に恐怖を与えるイベント。しかし、それと同時に眠れないほどの緊張感と期待を抱かせるビッグイベント―――そう、明日は私の愛する恋人「高町なのは」との初デートなのだ。
アリサやすずかなど友達には沢山のアドバイスを貰った。
はやてにいたっては当日の朝見るようにと「デートの心得３カ条」を記したメモも貰った。
ここは大円満でデートを終わらせなくてはいけない。

◇

なのはに告白すると決意したあの日、私ははやてに説教を受けていた。
「えぇか、フェイトちゃん。なのはちゃんが好きなんはよぉ分かったけどな、流石にまずいで」
「で、でも早くしないとなのはが･･･」
「落ち着きなさい。さっきのは言葉の綾でな、今日明日になのはちゃんを誰かに取られるゆう意味やない。自分が動かんと相手には伝わらん言いたかっただけや」
なのはは可愛いから誰かに取られてしまうかもしれない。私が考えてもいなかった爆弾発言をしたはやてに何故止められないといけないのか？
「バルディッシュ起動して、更にザンバーフォームなんかで本局へ行ったら嘱託といえども捕まるで？下手したらなのはちゃんに暫く会えんよ？」
う、それは嫌だなぁ。
折角自分の気持ちに気づけたのに･･･なのはと離れさせられるなんて･･･
「離れとうないやろフェイトちゃん、だったら少し我慢し。今夜には帰って来る、それからでも告白は遅うないで」
夜までか、後３時間ほどはあるなぁ。どうしよう今から何て言えば良いのか全然思いつかないよ。
「それに、バルディッシュ。アンタも止めなアカンやろ？大切なマスターなんや。間違いは正したってぇな」
「･･･sorry」
ごめんね、バルシッシュ私のせいで怒られちゃったね。
待機状態に戻ったバルディッシュを胸に抱えながらそっと撫でる。
「えぇかフェイトちゃん？こういったことは雰囲気とタイミングが重要なんや。思わず素敵、と思える場所でやるのがコツやで」
「う、うん。分かったよ」

結局そのまま勢いを失った私は告白の決意が揺らがないよう、はやてに支えてもらいながらなのはを待つことにした。

◇

しまった･･･全然眠れなかった･･･
時刻は午前５時。海鳴市は静かな朝を迎えていた。
屋上で日課の素振りを行い、お風呂で念入りに体を洗った。
朝食をいつも通りの量食べて歯磨き、クローゼットから取って置きの服を取り出した。黒を基調としたワンピース。いつも着ている服よりもちょっと可愛いやつだ。
ハンカチもティッシュも持った。
下着だってもってるやつで一番のお気に入り･･･って必要なのかな？
私やなのはにはまだ、その、ちょっとだけ早い気がするんだけどなぁ。べ、別になのはとそうゆう事するのが嫌とかじゃなくて･･･でもはやてに貰ったメモに書いてあるしな。

デートの心得その１
身支度は出発１時間前には終わらせておくべし
服装は外見は勿論、小物や下着にも気を使うこと

今のところ順調に進んでるよ。この調子で頑張るぞ。
お弁当はなのはが持ってきてくれるからいらないっと、なのはの手料理が楽しみで仕方がない。

デートの心得その２
場所の下見は前日までに行うこと。
当日はアクシデントに備えてデートコースの下見を行うこと。

時刻は８時前、家を出発した私は海鳴臨海公園を一人歩いていた。連日晴れているおかげで水溜りもない。
ピクニックの予定場所も前日まで入念に掃除していたため、非常に綺麗だ。ばっちりだね。

デートの心得その３
待ち合わせ時間より早く行く、恋人を待たせてはいけない。
相手を待たせるなど言語道断、この先の付き合いにも響く。

一番肝心なのはコレだ。なのはは約束の時間よりかなり早く来るタイプだ。だから更に上回る時間には到着しないといけない。
約束した時間よりも２時間早く到着した場所にはなのはの姿は無い。

やったぁ。これではやてから貰った「デートの心得３カ条」全てを守ることが出来た。
後は愛しいなのはが到着するのを待つだけ･･･なんだけど２時間もあるよ。
流石に早く着きすぎたかもしれない。朝からドタバタと慌てて準備をし疲れた私はベンチに座り込んだ。
はぁ、なのは今頃何してるかなぁ。
まだ寝ているだろうか･･･寝顔きっと可愛いんだろうなぁ。普段あれだけ可愛いなのはだ、寝顔なんてもう舞い上がるほど最高だろう。
それとも料理中かな？お弁当の中身は美味しい物を頑張って作るねとしか教えて貰えなかった。
なのはが作るものは当然美味しい、だからこそ検討もつかない。美味しい食事の後にはもちろんデザート･･･なのはが私を食べてって―――。
きゃぁぁ、もう私ったら何を考えているのだろう。
第一私達はまだ小学生なんだからそういった事は早すぎる･･･でもキスぐらいならいいかな？ってダメダメ何考えてるんだろう･･･。
深呼吸を繰り返し何とか平常に戻った。想像の中だけとはいえ私には刺激がだま強すぎる。
まったくなのはが可愛いのが原因だね。

「にゃはは･･･お、お待たせフェイトちゃん」
なのは？
再び想像の海に旅立とうとした私を引き戻したのは愛しい人。
「い、今来たところだから気にしないで･･･あはは」
走って来たみたいだ。そんなに焦らなくても私はいつまでも待ってるのに･･･
息切れを起こし声は出せないけどその顔が語っていた、なぜこんなに早くきているのかと。
「なのはとのデートが楽しみでちょっと早く着すぎちゃったんだ」
そう、私がこんなにも早く動いた理由は単純だった。はやてのメモが無くても大差が無かっただろう。
待てなかったのだ。今日、ココにいればなのはに会えると思ったら居ても立ってもいられなかった･･･。
「もぅ、フェイトちゃん。最近少し肌寒くなったし、風邪でもひいたら大変でしょ？」
「ご、ごめんね。でも、なのはとのデート楽しみで早く来ちゃったの･･･。」
なのはに心配されちゃった･･･。そのせいでポロっと出てしまった本音に２人で赤くなった。
赤くなって照れてる顔も可愛い。
「行こっか」
「うん、なのは」
なのはの左手に右手を重ね、ゆっくりと歩き出した。
嬉しくて恥ずかしい初デートの始まりだ。

◇

「で、結局うちのメモは役に立ったんやろか？」
「あはは･･･多分役に立ったんだと思うよ。なのはと２人ずっと笑っていられたから」
そう、初デートは大成功だった。天気は良かったし、なのはのお弁当だって美味しかった。最高のピクニックになった。
何よりなのはと２人で居られたことが私には嬉しかった。きっとなのはと２人ならドコでも素敵な場所になるだろう･･･
「フェイトちゃーん!!お願いや、話聞いてぇなぁ」
「あ･･･ごめんはやて。ぼーっとしてた」
「蚊帳の外ゆうのは２人の恋路を見守る者としては悲しいわぁ」
はやてが落ち込んじゃった･･･ど、どうしよう。
「え～と、そのね･･･はやてには感謝してるんだよ？本当だよ？」
「ホンマかフェイトちゃん？･･･うち余計な事したんとちゃう？」
「ないない、そんな事ないよ。私に勇気をくれたし、デートが成功するようにメモまでくれた。感謝はしても迷惑だ何てそんな･･･思ってないよ」
そう、今なのはと私が恋人でいられるのははやてが協力してくれたおかげだ。
「ぷっ･･･くくく･･･」
「はやて？どうしたの、大丈夫？」
「あっはははは･･･いやぁゴメンゴメン、困らせるつもりは無かったんやけどな。ふふ･･･そうかぁ、フェイトちゃんはうちに感謝までしてくれるんかぁ」
何ではやては笑ってるんだろ？私何かおかしい事言ったかな？
「うちがフェイトちゃん達をたきつけたんはうちの都合があるからなんや。別に親切でやった訳やないで～」
「え？そうだったの？でも、やっぱりはやては恩人だよ」
「おおきにな、やっぱりフェイトちゃん大好きや。･･･さぁて、幸せは分けて貰ったし、そろそろ寝るわ。ほんならね～」
･･･一方的に電話を切られた。何だったのだろうか･･･。それにはやての都合って何だろ？
もし、はやてが誰かに恋をしているなら私は助けになってあげたいな。私が助けてもらったように応援してあげたい･･･。